森の詞

元ゲームシナリオライター篠森京夜の小説、企画書、制作日記、コラム等

日々の生物(ナマモノ) 第31回

2008年12月20日 | 日々の生物(ナマモノ)
Q:「スカシカシパンって何ですか?」
A:「ウニ」

 スカシカシパンは、棘皮動物ウニ綱タコノマクラ目カシパン亜目スカシカシパン科に属する生物です。簡単に言えば、ウニです。ウニですが平べったく、長い刺がありません。
 このスカシカシパンは昨年、かの中川翔子がブログでネタにしたので、少しだけ(本当に少しだけ)ブームになっております。この質問もそれを知っているからでしょうね。
 ちなみにブログでの紹介文章は以下の通り。

「スカシカシパンは、カシパンにそっくりだし、花のようなもようと、すかし穴がある、カシパンににた海の生き物なんだお ギザカワユス みてるとお腹すいてくるお でもじつはウニ」

 ……実に的確で無駄のない文章ですね。
 たった80文字でカシパンの生物学的な分類と特徴を説明しつつ、感想文までも書くとは並の文章力でできることではありません。
 何でも彼女のブログを元にローソンでスカシカシパンをモチーフにしたパンが発売され、アニメ化もされるそうです。

 ちなみにカシパンというのは明治以降についた名前です。
 現在は刺のあるなしに関わらず「ウニ」と呼んでいますが、昔は様々な名前がついていました。実際、ウニというだけでも漢字は「海胆」、「海栗」、「雲丹」と色々な漢字がついています。
 一般的には生きているウニを「海胆」、食用にする中身だけだと「雲丹」と表記します。だから、スーパーなどに置かれている加工品だと「雲丹」の表示になります。
 ちなみに食べている部分はウニの「生殖腺(精巣・卵巣)」です。
 胆は内臓を表す漢字ですね。海にいる内臓だけの生物、という意味でしょうか。丹は朱色を表すので、生殖腺の色を示していると思われます。

 他にもウニの名前は本当に適当で、連想したことをそのまんま名前にしたようなものが多くあります。
 例えば、学名にもなっている「タコノマクラ(蛸の枕)」や「バフンウニ」、「ブンブク」というのもあります。どちらも刺がないタイプのウニの呼び方です。特に「タコノマクラ」なんか最高ですね。タコがウニを枕にして寝ている光景を想像すると実に楽しい(実際にはそんなこと起こりませんが)。
 「ブンブク」は狸が茶釜に化けたという「ぶんぶく茶釜」に由来します。刺のないウニは茶釜に似ている→「ぶんぶく茶釜」という連想ですね。
 ウニは海岸で普通に見かけるので(おまけに逃げない)、話の種にしやすかったのでしょう。

 その中で最近になってできたのが「カシパン」と言う呼び方です。
 詳しくはわかりませんが、明治以降に「菓子パン」ができてから広まった呼び方のようです。
 日本で初めて作られた独自の菓子パンは1874年(明治7年)に木村屋が作った「あんパン」ですが、形から考えると「パンケーキ(ホットケーキ)」の方をイメージしていたのかもしれません。

 ちなみに、「スカシカシパン」の「スカシ」のほうは中川翔子の文章にもあるように、殻に5つの穴が開いていることから「透かし」とつけられたようです。


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