森の詞

元ゲームシナリオライター篠森京夜の小説、企画書、制作日記、コラム等

日々の生物(ナマモノ) 第32回

2008年12月21日 | 日々の生物(ナマモノ)
ゲテモノ編-3


Q:「ゲテモノはいつから食べられていますか?」
A:「大昔の人はみんなゲテモノ食いでした」

 この質問、何を「ゲテモノ」とするかで変わってくるのですが、下で「ウニ」が出てきているので、今回は「ナマコ」について答えます。
 ナマコは生きている姿を見ると食う気になれない気持ちの悪い生物で、よく「ナマコを世界で初めて食べた人は勇敢だ」と言われたりもします。たとえば、「ディライト」という映画では主役のシルベスター・スタローンがナマコを初めて食った人がいかに勇敢かを力説していて笑えました。

 ただ、ナマコは日本や中国では古くから食用されており、かの「古事記」にもナマコが出てきますし、松雄芭蕉もナマコを題材に俳句を詠んでいます。

 生きながらひとつに凍る海鼠かな 松雄芭蕉
 意味:桶の中で海鼠が何匹も重なりあい、あわれにも生きたまま、一つになって氷りついているよ

 海鼠とはナマコのことですが、漢字のほうを後から当てはめたようで、昔は調理したナマコを「コ」と呼んでいました。未調理のナマコは生きているので「生のコ」→「ナマコ」です。昔は「コ」と呼んでいたことは、ナマコの内臓の加工品を「コノワタ(コの腸)」と呼んでいることからもわかります。
 狩猟や漁の器具や技術が未発達な昔の人々は、第一に捕まえやすさを重視していました。美味しくても捕まえにくい動物より、グロテスクでも動かない生物のほうがよいということです。特にナマコは刺も毒もなく、逃げもしないので、日本人は神代の時代から食していたようです。


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