畑倉山の忘備録

日々気ままに

アメリカは日朝国交正常化を望まない

2018年05月05日 | 国際情勢
アメリカは日朝国交正常化を阻止するために、拉致問題も利用しています。拉致被害者たちがなぜホワイトハウスで歓迎されたのか。クリントンが日本に来たとき、なぜわざわざ横田滋・早紀江さん夫妻をアメリカ大使館に呼んで、「われわれも頑張ります」などといったのか。そんなことを口ではいっているけど、アメリカは拉致問題解決のために具体的に何かやってくれましたか。何もやっていません。ただ、アメリカがそういうと、拉致被害者の人たちもだんだん感情が昂ぶって、アメリカもやってくれるといっているのに日本政府は何をやっているのか、という気持ちになる。世論もマスコミもそういう論調になる。それで日本政府は北朝鮮との交渉がにっちもさっちもいかなくなる。それがアメリカの狙いです。

アメリカがなぜそこまでやるのかといえば、アメリカは米朝国交正常化前に、日朝が国交正常化することは何としても阻止したいのです。それはなぜかといえば、・・・第一に、マネーの問題です。通貨圏の問題です。(中略)

もし日本が先に日朝正常化をして日本から大量のお金がいくとなると、かつての韓国と同じです。1965年の日韓国交正常化、日韓基本条約が締結されたとき、韓国経済は最低でした。こんな状態では北朝鮮にやられてしまうと共産化することを恐れたアメリカは日本に韓国と国交正常化して金を出せ、と圧力をかけてきました。それで日本は無償3億ドル、有償2億ドル、それに民間借款として3億ドル出すことにした。1965年当時は、まだ1ドル360円の時代です。

当時の日本の外貨保有高は18億ドルぐらいしかなかったから、宮澤喜一さんだったか誰かが、「朴正熙(当時の韓国大統領)は日本の有り金を全部持っていくつもりか」と激怒したぐらいでした。その間、瀬島龍三さんなんかが裏で活動した。(中略)その結果、どういうことになったかというと、韓国経済はテイクオフすることができ、今日の基礎を築いたのです。

現在、韓国のGNPに占める輸出入の割合は40〜45%です。日本はわずか15%ぐらいですから貿易にかかる割合がものすごく高い。しかも韓国が輸出すればするほど対日貿易の赤字が累積していく。なぜかというと、輸出品の部品を日本から買わなければならないからです。一時は対中貿易で得た黒字と、対日貿易赤字が相殺(そうさい)されるぐらいだった。それで韓国の人たちが怒った。われわれは何のために働いているんだ、中国で儲けて、みんな日本に払うのか、われわれはただ働くだけか、と。

そこへきて日本が日朝国交正常化で、いまいわれている5兆円とか、それが高くなって10兆円とかの金が北朝鮮にいくとなると、北朝鮮は小さな国ですから、たちどころに日本経済の構造に取り込まれてしまう。またぞろ朝鮮半島全体が円の経済圏になってしまうのです。(中略)

この再来をアメリカはいちばん恐れている。何がなんでも朝鮮半島の日本経済圏化を阻止して、ドル圏にしなければならない。どう見てもアメリカの意図はそこにあるのです。

(菅沼光弘『この国の権力中枢を握る者は誰か』徳間書店、2011年)