goo blog サービス終了のお知らせ 

まほろば俳句日記

毎日見たこと聞いたこと感じたことを俳句にします。JーPOP論にチャレンジ。その他評論・エッセー、学習ノート。競馬も。

【追悼金子兜太】おおかみに蛍が一つ付いていた/一句観賞(再掲)

2018-02-21 15:43:58 | エッセー・評論
【渾身作】おおかみに蛍が一つ付いていた   金子兜太 2001 ※1月20日にアップしたものです。心より御冥福を御祈り致します。  まほろば
日本国において、狼はすでに死滅している。本当にそうだろうか。10年以上前に、四国で日本狼が発見されたという真偽不明のニュースが流れたと記憶している。ところで《狼》とはいったい何ものか?作者によれば、その狼に【蛍】が一つ付いていたという。狼というそもそも存在の不確かなものに、何故か【蛍】が寄り添うように従っていた。この表現上の配置だけで、作者の意図は明らかである。狼は、もはやこの国のどこにも存在せず、ただ【蛍】が個体として作者の眼前に漂っていたのだ。同時に、蛍なる何ものかが、私たち人間にとって決して忘れてはならないものをこの世界に導き、この闇もろともに照らし出した。おおかみとは、作者が魂の源郷と位置付けた《秩父》の地にあって、いまもその存在の威を荒々しくさらけ出して止まないものであろう。そのことを、作者はおのれを【蛍】の実在に託し、わずか17音の定型詩において渾身の力を込めて私たちの前に明らかにした。・・・《続く》
 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【セカイの再生への希求】好きという一語でできた銀河系 乾佐伎/一句観賞

2018-02-20 20:07:27 | エッセー・評論

好きという一語でできた銀河系   乾佐伎  「吟遊」77号

同誌の末尾にある投稿欄(吟遊俳句ギャラリー)の入選作。この句を何の先入観も無しに真素直に読んでみる。まず『好きという一語』と『銀河系』の対比である。これによって、ここにある『銀河系』の季語性を含め、既存の言語認識の対象性からは遠くかけ離れた表現であることがわかる。《好き》という感情がそのまま言語として表出され、それによって自身の発語の全体性が【銀河系】として無限の拡がりを持っている。一次感情と直結した言語(存在)による、この世界の再生への希求である。この作者は、同誌の発行者の愛娘であり、当然ながら今後の大きな飛躍が期待されている。そのための方法はここにすでに提示済みと言ってよい。・・・《続く》

「銀河系」の画像検索結果


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ショートホープは短い希望たとへば雪/北大路翼を読む(7)

2018-02-08 22:13:51 | エッセー・評論

ショートホープは短い希望たとへば雪   北大路翼  「街」129号より

タバコを吸わなくなってから10年以上が経つ。ショートホープが名前の通り、本当に短かったのかどうかまるで記憶にない。私がタバコを吸い始めたのはセブンスターだったが、時折このタバコも吸っていた。ハイライトと並んで否もっと強くはなかったろうか。小さめの紙箱に10本収まっていたように思う。ショートと言うからには、大元のロングもあるはずだが、こちらもハッキリ憶えていない。紙巻ピース同様に、フィルター無しで20本が円筒形の缶に収まっていたのかどうか、いや違っていた。たった今思い出したが、通常と同じ様に20本が紙ケースに収まっていたように思う。そして、フィルターが付いていたような付いていないような・・。いずれにしても、ショートホープは紙箱の10本入りで強かったが、一本々々ゆっくりと吸ったことは間違いない。「ショートホープ」とは短い希望の意味であり、若い時にそれを吸った時、どんなにゆっくり吸ってもアッという間に吸い終えてしまったのは確かだ。その頃、おそらく作者同様に私もまた希望に満ち溢れた青春時代を送っていたとはとても言えず、その一本を冬場に吸っていた時に、あたりは珍しく雪に覆われていたのかもしれない。・・・《続く》

「ショートホープ」の画像検索結果

レミオロメン 『粉雪』

https://youtu.be/KVuqLJYqZ-I?t=38


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ポストまで歩いて2分 走れば春  鎌倉佐弓/一句観賞

2018-02-02 23:49:02 | エッセー・評論

ポストまで歩いて2分 走れば春   鎌倉佐弓

最近、あまり句を読んで感動するということが無い。この間の日曜の所属同人誌の新年会で最新号を渡され、編集者である女流俳人の作品をあらためて目にした。 ポストまで歩いて2分 これはよくあること。現に、わたしが住んでいる家からちょうど2分ばかりの所に小さな郵便局とポストがある。そして、何とは無しにただ一字を空けて・・走れば春 とある。この時間と空間の飛翔感が凄まじい!この【走る】という一大飛躍があってこその《》であろう。作者は、一字の空間の奥深く封じ込められた人生の何事かによって、とてつもなく大きな飛躍を経験し、その飛躍によって《》というかけがえのない自分だけの固有の時間を手に入れることが出来た。何という、生きるということの確信に満ち溢れた清々しい時間なのだろうか。・・・《続く》


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【金子兜太を取り戻せ】おおかみに蛍が一つ付いていた 金子兜太/一句観賞

2018-01-20 22:53:26 | エッセー・評論
【渾身作】おおかみに蛍が一つ付いていた   金子兜太 2001
日本国において、狼はすでに死滅している。本当にそうだろうか。10年以上前に、四国で日本狼が発見されたという真偽不明のニュースが流れたと記憶している。ところで《狼》とはいったい何ものか?作者によれば、その狼に【蛍】が一つ付いていたという。狼というそもそも存在の不確かなものに、何故か【蛍】が寄り添うように従っていた。この表現上の配置だけで、作者の意図は明らかである。狼は、もはやこの国のどこにも存在せず、ただ【蛍】が個体として作者の眼前に漂っていたのだ。同時に、蛍なる何ものかが、私たち人間にとって決して忘れてはならないものをこの世界に導き、この闇もろともに照らし出した。おおかみとは、作者が魂の源郷と位置付けた《秩父》の地にあって、いまもその存在の威を荒々しくさらけ出して止まないものであろう。そのことを、作者はおのれを【蛍】の実在に託し、わずか17音の定型詩において渾身の力を込めて私たちの前に明らかにした。・・・《続く》

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする