石橋湛山の政治思想に、私は賛同します。
湛山は日蓮宗の僧籍を持っていましたが、同じ日蓮仏法の信奉者として、そのリベラルな平和主義の背景に日蓮の教えが通底していたと思うと嬉しく思います。
公明党の議員も、おそらく政治思想的には共通点が多いと思うので、いっそのこと湛山議連に合流し、あらたな政治グループを作ったらいいのにと思ったりします。
湛山の人物に迫ってみたいと思います。
そこで、湛山の心の内面にまでつっこんだと思われるこの本を。
江宮隆之『政治的良心に従います__石橋湛山の生涯』(河出書房新社、1999.07)
□序 章
□第1章 オションボリ
□第2章 「ビー・ジェントルマン」
□第3章 プラグマティズム
□第4章 東洋経済新報
□第5章 小日本主義
□第6章 父と子
□第7章 政界
□第8章 悲劇の宰相
■終 章
□あとがき
終 章
(つづきです)
湛山は周恩来との秘密会談も持った。その席上で、持論である「日中米ソ平和同盟」を打診した。
「いいですか、米ソの冷戦は世界を東西に分極化して、政治、経済、軍事、イデオロギーなど多面的に敵対する事態を生んでいるのです。これは貿易立国を目指す日本にとっては死活問題なのですよ。もしも冷戦が第三次世界大戦にまで発展したなら、核兵器によって世界文明と人類が滅亡する危険につながると思うのです。しかし、今や米ソには緊張緩和の動きがあります。そこで、日中、日ソの関係改善に立って、そこにアメリカを加えた四カ国の多国間関係を再構築する。それが、日中米ソ平和同盟の骨子なのです」
「石橋先生、その案は原則的には賛成です。これからの世界は、先生がおっしゃったこの四つの国がリードすることになるでしょう。とりわけ日本の経済に関する役割は大きいと思いますよ。その構想はぜひ進めたいですね」
「周首相、もう一つ提案があります。いや、お願いと言ってもいいでしょう。中国による台湾への武力行使はやらないでほしいのです。平和のうちに一つの中国をつくってほしいのですよ」
「分かりました。先生の心配には及びません。中国から台湾への武力行使はしませんから」
湛山は、二つの大きな提案に基本的に周恩来が同意したことに満足した。
「梅子、中国に来た甲斐があったよ」
梅子はホテルで、いつになく機嫌のよい夫を見て安心した。
湛山は共同声明に署名した後に、劉少奇国家主席とも会談して、9月26日に帰国した。
(つづく)
【解説】
「周首相、もう一つ提案があります。いや、お願いと言ってもいいでしょう。中国による台湾への武力行使はやらないでほしいのです。平和のうちに一つの中国をつくってほしいのですよ」
「分かりました。先生の心配には及びません。中国から台湾への武力行使はしませんから」
湛山と周首相とのこの秘密会談の内容は重要です。
現在の中国共産党のトップが、この会談の精神を思い出していただければいいのですが。
獅子風蓮