獅子風蓮のつぶやきブログ

日記風に、日々感じたこと、思ったことを不定期につぶやいていきます。

『居場所を探して』を読む その43

2024-12-04 01:48:52 | 犯罪、社会、その他のできごと

友岡さんがこの本を紹介していました。

『居場所を探して-累犯障害者たち』(長崎新聞社、2012.11)

出所しても居場所がなく犯罪を繰り返す累犯障害者たち。彼らを福祉の手で更生させようと活動する社会福祉事業施設の協力で、現状と解決の道筋を探った。日本新聞協会賞を受賞した長崎新聞の長期連載をまとめた一冊。

さっそく図書館で借りて読んでみました。

一部、引用します。

□第1章 居場所を探して―累犯障害者たち
■第2章 変わる
 ■変わる刑事司法と福祉~南高愛隣会の挑戦をめぐって
 □山本譲司さんインタビュー
□おわりに 


第2章 変わる

変わる刑事司法と福祉~南高愛隣会の挑戦をめぐって

(つづきです)

2012年6月10日。
長崎市内で「障がい者審査委員会」の発足式が行われた。
検察捜査に福祉の視点を取り入れる「新長崎モデル」の柱の1つ。
長崎地検の一室で、田島を代表とする福祉と検察の両者が共同試行に合意してから5カ月が過ぎていた。
任命された委員は10人。大学教授、臨床心理士、特別支援学校長……いずれも長崎県内で名の知れた福祉のプロたちだった。
「ようやくここまでたどり着いた」。田島は感慨深かった。
知人に誘われて出掛けた元衆院議員の山本譲司の講演会で、累犯障害者の存在を知ってから9年。以来、無我夢中で累犯障害者の支援に駆けずり回った。
「福祉の世界で何十年も飯を食っていながら、塀の中の障害者に気付くことも、手を差し伸べることもしてこなかった」
そんな申し訳なさに似た思いが、田島をここまで突き動かしてきた。
「検察が起訴する前の『入り口』の段階で、障害がある容疑者を福祉につなげようという、日本の刑事司法でかつてない画期的な試みが始まります。ハンディキャップを持った人たちが、刑務所ではなく、社会の中でトレーニングしていくことにつながる。そのために皆様に力を発揮してもらいたい。この仕組みを全国に広めたいと思っています」
式で田島がこうあいさつすると、委員たちの表情が引き締まった。

審査委員会が始動してわずか1ヵ月半後の7月24日。
委員会が「福祉施設での更生がふさわしい」と判断した知的障害がある男性について、長崎地検は不起訴(起訴猶予)処分にした。
審査委員会を経て、地検が障害のある容疑者を起訴せず、福祉的な支援につなぐのはこれが初めてのケースだった。
男性は7月上旬に詐欺(無銭飲食)の疑いで逮捕され、国選弁護士が審査委員会に意見を求めていた。委員会は、男性が何度刑務所に入っても更生につながっていない状況から「専門的な処遇が必要」と結論づけ、弁護士と地検の双方に報告した。
男性は1年前、無銭飲食の罪で長崎県内の刑務所を出所したばかり。従来、起訴され、裁判で実刑判決となるパターンだったが、結果は異例の起訴猶予。長崎地検は処分の理由を明らかにしていないが、審査委員会の判断を尊重したことは容易に想像できた。
審査委員会に対して、地検や弁護士から寄せられた依頼は5件(12年9月2日現在)。不起訴処分になった事例は、前出の男性を含めて2件出ている。
長崎県内だけでなく、大分県の弁護士からも大分地裁で公判中の知的障害者の事件について、審査委員会に支援を求める依頼もあった。
長崎の動きを全国が注視していた。
検察に続いて、警察も動いた。
警察庁は3月26日、容疑者の取り調べで試行している録音・録画(可視化)について、知的障害者などにも対象を拡大することを発表し、4月から運用を始めた。
長崎を「起点」にした累犯問題対策は、燎原の火のごとく刑事司法の全域に広がり、障害者を取り巻く風景を一変させようとしていた。

(つづく)


解説
長崎の動きを全国が注視していた。
検察に続いて、警察も動いた。
(中略)

長崎を「起点」にした累犯問題対策は、燎原の火のごとく刑事司法の全域に広がり、障害者を取り巻く風景を一変させようとしていた。

すごいことです。
関係者のご努力に敬服します。


獅子風蓮


『居場所を探して』を読む その42

2024-12-03 01:30:28 | 犯罪、社会、その他のできごと

友岡さんがこの本を紹介していました。

『居場所を探して-累犯障害者たち』(長崎新聞社、2012.11)

出所しても居場所がなく犯罪を繰り返す累犯障害者たち。彼らを福祉の手で更生させようと活動する社会福祉事業施設の協力で、現状と解決の道筋を探った。日本新聞協会賞を受賞した長崎新聞の長期連載をまとめた一冊。

さっそく図書館で借りて読んでみました。

一部、引用します。

□第1章 居場所を探して―累犯障害者たち
■第2章 変わる
 ■変わる刑事司法と福祉~南高愛隣会の挑戦をめぐって
 □山本譲司さんインタビュー
□おわりに 


第2章 変わる

変わる刑事司法と福祉~南高愛隣会の挑戦をめぐって

(つづきです)

2012年4月5日。
大阪地検特捜部の不祥事に端を発した検察改革から1年を機に、最高検は取り調べの録音・録画(可視化)の取り組み状況などを公表した。
それによると、11年4月から12年2月までに、全国の特捜部や特別刑事部が行った独自捜査事件69件のうち、約4割の28件について取り調べの全過程の可視化を実施。独自捜査以外でも、裁判員裁判対象事件で208件(11年9月~12年2月)、知的障害者事件120件(11年4月~12年2月)で、取り調べの全課程を可視化した。
記者会見した最高検検事の稲川龍也は「可視化を全くやりたくないという気持ちから、使えるものという意識に、現場が変わってきた」と述べた。
検察は本当に変わったのだろうか。
東京・霞が関にある検察合同庁舎。
最高検総務部長の林眞琴は手元の資料を繰りながら、おもむろに記者に尋ねた。
「『検察の理念』を知っていますか?」
検察の精神や基本姿勢を示した10カ条の倫理規定。一連の不祥事を受け、最高検が11年秋に制定したものだった。
「特にこだわった部分が2カ所あるのです」と林は続けた。
倫理規定の前文と第8条だった。それはこんなくだりである。

「あたかも常に有罪そのものを目的とし、より重い処分の実現自体を成果とみなすかのごとき姿勢となってはならない。我々が目指すのは、事案の真相に見合った、国民の良識にかなう、相応の処分、相応の科刑の実現である」(前文)
「警察その他の捜査機関のほか、矯正、保護その他の関係機関とも連携し、犯罪の防止や、罪を犯した者の更生等の刑事政策の目的に寄与する」(第8条)

林はそらで読み上げた後、ふっと笑った。
「ここにはね、当たり前のことを書いているんですよ。当たり前だけど、とても大事なこと」
検察を直撃した大阪地検特捜部の不祥事の後、林は最高検に新設された検察改革推進室の室長に就任。今は総務部長の立場で、検察改革を指揮する。
03年から3年間、矯正局総務課長として刑務所改革に携わり、塀の中に多くの障害者がいることを知った。
林は言う。「とかく検事は、捜査・公判までしか関心を払ってこなかった。しかし、被告の更生にとって、本当に大切なステージは『公判後』にあるのではないか。これまでの検察にはそういう意識が欠けていたのかもしれません」
日本の検察は、欧米に比べて容疑者を不起訴にする割合が高い。日本以外の国は「起訴猶予」といういわば、お目こぼし的な措置を許さない風潮がある。少々乱暴に言えば、何でも起訴して、あとは裁判でふるいに掛けるようなイメージである。
検察は、凶悪事件には厳しい態度で臨む一方、容疑者を「許す権限」も行使してきた。しかし、国内では必ずしもそうは見られていない。何が何でも厳罰を求める組織だと思われている。
もちろん、容疑者に「相応の処分」を科す時、それが死刑の場合もある。だが、不起訴にして福祉につなげた方が容疑者の社会復帰、あるいは更生に結び付くのなら、それは絶対に不起訴にすべきではないか。それが「事案の真相に見合った」処分ではないか―。
林は「理念」に込めた思いを語り続ける。
「(理念の)これらの部分が一番凝縮されているのが、知的障害者の事件なんだろうと、私は思っています。ただ、『では検察は変わったか?』と問われれば、急に何かが変わるような話ではない。検察改革は組織的かつ、継続的な取り組みであって、一朝一夕に結果は出ない。でも、知的障害者の事件でいろいろな試みを進めることで、それ以外のカテゴリーの事件も、検察の理念に沿った活動ができるようになると思っている。それができた時、検察は『変わった』ということになるのかもしれない」。林はそう思っている。

(つづく)


解説
検察は本当に変わったのだろうか。

検察の変化に期待したいと思います。


獅子風蓮


『居場所を探して』を読む その41

2024-12-02 01:13:27 | 犯罪、社会、その他のできごと

友岡さんがこの本を紹介していました。

『居場所を探して-累犯障害者たち』(長崎新聞社、2012.11)

出所しても居場所がなく犯罪を繰り返す累犯障害者たち。彼らを福祉の手で更生させようと活動する社会福祉事業施設の協力で、現状と解決の道筋を探った。日本新聞協会賞を受賞した長崎新聞の長期連載をまとめた一冊。

さっそく図書館で借りて読んでみました。

一部、引用します。

□第1章 居場所を探して―累犯障害者たち
■第2章 変わる
 ■変わる刑事司法と福祉~南高愛隣会の挑戦をめぐって
 □山本譲司さんインタビュー
□おわりに 


第2章 変わる

変わる刑事司法と福祉~南高愛隣会の挑戦をめぐって

(つづきです)

設立式が始まる2時間前。
会場の控室で、村木は長崎新聞記者のインタビューに応じた。
かつて「女性キャリアの星」と呼ばれた村木は事件の後、職場復帰し、内閣府政策統括官(局長級)として少子化や自殺対策、障害者施策などを担当。多忙な毎日を送っていた。
以下は記者とのやり取りである。

――弁護士費用を除く賠償金3333万円で「愛の基金」ができた。寄付に至ったいきさつを教えてほしい。

「刑事裁判で無罪になった後、『なぜ私が逮捕されなければならなかったのか』と割り切れない思いが残った。真相を知るために、国などを相手に民事裁判を起こしたが、国はあっけなく賠償金を全額支払うことを認めた。勝訴したのに、がっかりするといういわく言い難い思いだった。裁判の目的は遂げなかったのに、手元に賠償金だけ入ってきた。それで、このお金は公的なことに使ってもらいたいと思い、知人である田島理事長に相談して、基金の形で運用してもらうことにしたのです」

――拘置所生活は5カ月間に及んだ。容疑者・被告として取り調べを受けた経験を通し、累犯障害者の問題についてあらためて思うことは。

「取り調べという特殊な環境で、自分の考えや体験をきちんと主張し、その通りに調書にしてもらうのはすごく難しいと感じた。何十年も社会で仕事をしてきて、役人として文章を読むのも、書くのも慣れている私でさえそうだったのだから、ハンディのある人はなおさらでしょうね……。累犯障害者をめぐる捜査や更生の状況を見ると、彼らが罪を繰り返さずに社会で生きていける仕組みになっていない。何度も刑務所に送るやり方では、本当の意味での更生は果たせない。ハンディに合った更生プログラムが必要なのだと思います。知的障害者の人数は人口比で言えば数%。そういう意味では、累犯障害者の問題は世間では『小さな隙間の話』と思われがちです。しかし一方で、刑務所の受刑者の4分の1は知的障害があるというデータもある。こと刑事司法の分野で、障害者の問題が占めるウエートは小さくない。社会の関心を高めなければいけないと思います」

――村木さんの事件をきっかけに、最高検による検察改革が進んでいる。検察は変わることができると思うか。

「私の取り調べを担当した中堅、若手の検事はその『質』は別にしても、あくまで組織の駒でしかない。あんな事件が起きた原因はやはり(証拠改ざんなどを引き起こす)検事を育ててしまった組織にあるのだと思います。検察組織は特別な権力があって、かつ閉ざされた世界。だからこそ、そうした組織を変えるには大きなエネルギーとうねりが必要でしょう。今そのチャンスが来ている。変わってもらわなければ困りますね」

――村木さんの事件は、メディアの事件報道の問題も浮き彫りにした。

「検察のリークを基に、新聞やテレビが報道し、世論がつくられていくんだと当事者になって初めて分かった。怖いと思いました。メディアは熱しやすく冷めやすい。検察改革の問題にしても、メディアの関心がどこまで続くかが成否を分ける鍵だと思います。興味があるうちは取り上げるが、時間がたつと、追い掛けてもらえなくなるのではないかと心配しています」

――これからの取り組みについては。

「累犯障害者の問題は世間で、一番の日の当たらない場所にあると思います。そこの部分の対策をしっかりやることは、きっと社会全体の底上げにつながります。障害のある人たちが尊厳を持って生きていける社会づくりのために『愛の基金』を役立ててもらいたいと心から願っています」

1時間のインタビューを終え、村木は式に向かった。途中、会場に駆け付けた娘を見付けると、ロビーで二言三言、言葉を交わしていた。
村木の優しげな表情は、どこにでもいる母親のそれに変わっていた。
村木は2012年9月、内閣府から古巣の厚労省に戻った。任ぜられたのは、累犯問題を取り扱う社会・援護局長だった。

(つづく)


解説

村木厚子さんの言葉に感銘を受けました。


獅子風蓮


『居場所を探して』を読む その40

2024-12-01 01:02:37 | 犯罪、社会、その他のできごと

友岡さんがこの本を紹介していました。

『居場所を探して-累犯障害者たち』(長崎新聞社、2012.11)

出所しても居場所がなく犯罪を繰り返す累犯障害者たち。彼らを福祉の手で更生させようと活動する社会福祉事業施設の協力で、現状と解決の道筋を探った。日本新聞協会賞を受賞した長崎新聞の長期連載をまとめた一冊。

さっそく図書館で借りて読んでみました。

一部、引用します。

□第1章 居場所を探して―累犯障害者たち
■第2章 変わる
 ■変わる刑事司法と福祉~南高愛隣会の挑戦をめぐって
 □山本譲司さんインタビュー
□おわりに 


第2章 変わる

変わる刑事司法と福祉~南高愛隣会の挑戦をめぐって

(つづきです)

このころ、東京でも動きがあった。
厚生労働省の文書偽造事件で無罪が確定した元局長、村木厚子が、不当逮捕・起訴を理由に国から支払われた損害賠償金3333万円を、南高愛隣会に寄付することを表明したのだ。
村木と愛隣会の田島は、障害者の雇用施策を通じて知り合った十数年来の知人。大阪地検特捜部に村木が逮捕された後、田島は「支える会」の代表として、村木の無実を訴え続けた。
「累犯障害者の問題に使ってほしい」
村木からこう持ち掛けられた田島は、寄付金を原資にして基金をつくることにした。有識者でつくる運営委員会を組織し、累犯障害者にとって適正な刑事司法や社会復帰を進めるための活動にお金を使うのだ。
基金は「共生社会を創る愛の基金」と名付けられた。
12年3月10日。東京都内で基金の設立式が開かれた。
会場には160人が詰め掛けた。田島をはじめ、「獄窓記」を書いた元衆院議員、山本譲司、元宮城県知事の浅野史郎、最高検検察改革推進室長の林眞琴……。累犯問題に関わるそうそうたる面々が基金の船出を祝った。
一時は「容疑者」「被告」として扱われ、5ヵ月間も不当に勾留された村木。それは人生で味わった最大の屈辱だった。どん底にいる村木を支えたのが、家族であり、職場の同僚であり、古くからの友人たちだった。
晴れの舞台であいさつに立った村木は、静かに語った。
「障害者と刑事司法がクロスする累犯障害者の問題は、社会の中で一番日の当たりにくい場所にあると思うのです。この分野で、賠償金を使ってもらうのが一番いい方法なのだろうなと思いました」

(つづく)


解説
厚生労働省の文書偽造事件で無罪が確定した元局長、村木厚子が、不当逮捕・起訴を理由に国から支払われた損害賠償金3333万円を、南高愛隣会に寄付することを表明したのだ。

(中略)
晴れの舞台であいさつに立った村木は、静かに語った。
「障害者と刑事司法がクロスする累犯障害者の問題は、社会の中で一番日の当たりにくい場所にあると思うのです。この分野で、賠償金を使ってもらうのが一番いい方法なのだろうなと思いました」

村木厚子さんのこの言葉に感銘を受けました。


獅子風蓮


『居場所を探して』を読む その39

2024-11-30 01:53:28 | 犯罪、社会、その他のできごと

友岡さんがこの本を紹介していました。

『居場所を探して-累犯障害者たち』(長崎新聞社、2012.11)

出所しても居場所がなく犯罪を繰り返す累犯障害者たち。彼らを福祉の手で更生させようと活動する社会福祉事業施設の協力で、現状と解決の道筋を探った。日本新聞協会賞を受賞した長崎新聞の長期連載をまとめた一冊。

さっそく図書館で借りて読んでみました。

一部、引用します。

□第1章 居場所を探して―累犯障害者たち
■第2章 変わる
 ■変わる刑事司法と福祉~南高愛隣会の挑戦をめぐって
 □山本譲司さんインタビュー
□おわりに 


第2章 変わる

変わる刑事司法と福祉~南高愛隣会の挑戦をめぐって

(つづきです)

長崎地検やNPO法人長崎県地域生活定着支援センター、最高検、南高愛隣会が共同で試行する「新長崎モデル」とはどんな取り組みなのか。
大きく2つの柱がある。
1つめが、知的障害が疑われる容疑者の取り調べ時の福祉の専門家の立ち会い。もう1つは、外部の専門家による「障がい者審査委員会」を新設し、弁護士や地検が委員会に対して容疑者・被告の障害の特性や、更生の方向性について意見を求めるというもの。
「立会制度」は、取り調べ時に意思疎通を図るのが困難だったり、過去の犯罪歴から障害が疑われたりした場合、地検が立会人に連絡。立会人は、検事と容疑者のコミュニケーションを手助けしたり、双方に助言したりして、誤誘導やうその自白を防ぐ。
都市部の地検で先行して始まった立ち会いは、主に心理学の専門家が行っていて、人数も5地検で7人と少ない。おのずと対応できる事件には限度がある。
長崎の場合は社会福祉士や特別支援学校の職員OBなど福祉の専門家10人が登録。「知的障害、精神障害、発達障害……障害にも色々ある。いろんな障害の人に対応できるように中立公平で幅広い人材を集めた」(田島)という。
「障がい者審査委員会」は、医師や社会福祉士ら5人ずつの2グループで構成する専門家機関。弁護士や検察からの依頼があれば、中立公平な立場で、容疑者・被告の障害の有無や程度を判定したり、社会で更生させる場合にどんな福祉サービスが想定されるかを検討したりするのが役目だ。
審査委の報告を参考にして、検察や弁護士は、起訴するかどうか刑事処分を決めたり、弁護方針を立てたりする。
例えば、地検が「刑務所などの矯正施設ではなく、福祉施設での更生がふさわしい」と判断して不起訴処分にした場合、南高愛隣会がその容疑者を受け入れ、社会復帰に向けた更生訓練を受けてもらうことになる。
刑事政策に詳しい中央大名誉教授の藤本哲也は言う。
「知的障害の疑いのある容疑者の中には、起訴猶予処分で社会に戻っても福祉につながることなく、罪を繰り返している人も相当いると思われる。検察捜査の段階で、福祉的な視点を取り入れる長崎の試みは全国でも例がない」
かつてない検察と福祉の「融合」。新長崎モデルの準備は急ピッチで進められた。

(つづく)


解説
「知的障害の疑いのある容疑者の中には、起訴猶予処分で社会に戻っても福祉につながることなく、罪を繰り返している人も相当いると思われる。検察捜査の段階で、福祉的な視点を取り入れる長崎の試みは全国でも例がない」
かつてない検察と福祉の「融合」。新長崎モデルの準備は急ピッチで進められた。

素晴らしいことだと思います。

獅子風蓮