獅子風蓮のつぶやきブログ

日記風に、日々感じたこと、思ったことを不定期につぶやいていきます。

『居場所を探して』を読む その29

2024-10-12 01:47:58 | 犯罪、社会、その他のできごと

友岡さんが次の本を紹介していました。

『居場所を探して-累犯障害者たち』(長崎新聞社、2012.11)

出所しても居場所がなく犯罪を繰り返す累犯障害者たち。彼らを福祉の手で更生させようと活動する社会福祉事業施設の協力で、現状と解決の道筋を探った。日本新聞協会賞を受賞した長崎新聞の長期連載をまとめた一冊。

さっそく図書館で借りて読んでみました。

一部、引用します。

□第1章 居場所を探して―累犯障害者たち
■第2章 変わる
 ■変わる刑事司法と福祉~南高愛隣会の挑戦をめぐって
 □山本譲司さんインタビュー
□おわりに 


第2章 変わる

変わる刑事司法と福祉~南高愛隣会の挑戦をめぐって

(つづきです)

一足飛びに「進化」していく長崎の動きを、専門家はどう見ていたのか。
「日本の刑事司法を占う試金石になるだろう」
京都市伏見区にある龍谷大学の研究室。
同大法科大学院教授の浜井浩一は、南高愛隣会を中心とした取り組みをそう評価した。浜井は刑事政策の専門家で、かつて法務省の心理技官として横浜刑務所に勤務した異色の経歴を持つ。
浜井によると、日本の刑事司法は、罪の報いとして刑罰を科すことを前提に運用されている。社会的な孤立や生活困窮といった事件の背景や更生環境は、同情すべき要素の一つに過ぎないととらえられているのが現状だ。
累犯障害者が生まれる背景には、「刑事司法、福祉双方の大きな『欠陥』がある」と浜井は言う。一つが司法の縦割りの問題。日本の刑事司法には、捜査、裁判、刑務所、更生保護という一連の過程をつなぐシステムがない。裁判官は判決を出せばそれで 終わり。その後にある更生については「自分たちに権限はない。それは別の人の仕事だ」と考えている。刑罰の目的は更生にあるという共通認識がないのだ、という。
一方、福祉の側にも問題はある。刑務所を出所したばかりの知的障害のあるホームレスの男性が、福祉の職員に取り合ってもらえず、行き場を失った結果、JR下関駅(山口県下関市)を全焼させる事件を起こしたことがあった(2006年1月)。動機は「刑務所に戻りたかった」。福祉がうまく機能していれば、もしかしたら防ぐことができた事件なのかもしれない、と浜井は悔やむ。
刑事司法と福祉がバラバラに運用されている日本と違って、イタリアでは刑罰の目的は「更生にある」と憲法に明確に規定している。刑事裁判の判決が出た後、臨床心理士らが刑の執行内容を検討するための専門の裁判所があるし、社会の中での更生環境を調整する福祉の専門機関もある。刑事司法と福祉が有機的に結び付いているのだ。
浜井は言う。「累犯障害者問題の解決には、司法と福祉が連携した仕組みづくりが欠かせない。そういう意味で南高愛隣会を中心とした試みは、日本の刑事司法を変える大きなきっかけになるのかもしれません」

(つづく)


解説

「累犯障害者問題の解決には、司法と福祉が連携した仕組みづくりが欠かせない。そういう意味で南高愛隣会を中心とした試みは、日本の刑事司法を変える大きなきっかけになるのかもしれません」

田島良昭氏と南高愛隣会の取り組みに、敬意を表したいと思います。

 


獅子風蓮


『居場所を探して』を読む その28

2024-10-11 01:31:49 | 犯罪、社会、その他のできごと

友岡さんが次の本を紹介していました。

『居場所を探して-累犯障害者たち』(長崎新聞社、2012.11)

出所しても居場所がなく犯罪を繰り返す累犯障害者たち。彼らを福祉の手で更生させようと活動する社会福祉事業施設の協力で、現状と解決の道筋を探った。日本新聞協会賞を受賞した長崎新聞の長期連載をまとめた一冊。

さっそく図書館で借りて読んでみました。

一部、引用します。

□第1章 居場所を探して―累犯障害者たち
■第2章 変わる
 ■変わる刑事司法と福祉~南高愛隣会の挑戦をめぐって
 □山本譲司さんインタビュー
□おわりに 


第2章 変わる

変わる刑事司法と福祉~南高愛隣会の挑戦をめぐって

(つづきです)

愛隣会の「挑戦」はこれで終わりではなかった。
09年から引き続き、厚労省のモデル事業として、別の角度から累犯障害者の支援に取り組むことにした。今回のテーマは、罪を犯した障害者に対して、容疑者あるいは被告の段階から福祉がかかわり、刑務所ではなく社会の中での更生を支えるというもの。
「地域社会内訓練事業」と名付けられた。
南高愛隣会が前回取り組んだモデル事業(06~08年度)は、障害者が刑務所を出た後、いかに福祉につなげるかということに眼目が置かれていた。いわば「出口」の部分である。
しかし、田島はそれで事足りたとは思わなかった。むしろ、疑問は深まっていた。
「どうして障害のある人たちが、健常者と同じ刑務所に収容される仕組みになっているのか。本当に障害者の更生につながっているか」
09年度からの第2期のモデル事業は、こんな素朴な疑問が出発点だった。
第2期モデル事業では、長崎県内の弁護士や精神科医、福祉の専門家の協力を得て、「判定委員会」「更生プログラム開発委員会」「検証委員会」の3つの委員会(委員各約10人)をつくった。
そこでどんな取り組みが行われたか。
まず、知的・精神障害がある人(疑い含む)が、窃盗や無銭飲食、放火など何らかの罪を犯した場合、接見した弁護士が「判定委員会」に連絡する。判定委員会の事務局はNPO法人長崎県地域生活定着支援センター(長崎市)にある。事務局が委員を招集し、容疑者・被告に障害があるのか、刑務所での矯正がふさわしいのか、それとも福祉施設で専門的な処遇をした方が更生につながるのかについて議論する。
「福祉施設での更生がふさわしい」と結論付けた場合、委員会として裁判所に刑の猶予を求める意見書を提出。執行猶予判決が出たら、南高愛隣会が運営する地域社会内訓練事業所「トレーニングセンターあいりん」に入所してもらい、個別の更生計画に沿って就労・生活訓練を受けてもらう。罪を犯した障害者が刑務所に入る前、つまり「入り口」の部分で福祉が関与する試みである。
「更生プログラム開発委員会」は罪を犯した障害者にとってどんな更生計画が適切なのかを研究。
「検証委員会」は定期的に対象者と面談しながら、更生が完了したかどうかを判断する役割を担った。
「出口」から「入り口」へ。「特別調整」「地域生活定着支援センター」などといった取り組みが全国でようやく緒に就いたころ、南高愛隣会の累犯障害者の支援は、新たなステージへと移っていった。

(つづく)


解説

愛隣会の「挑戦」はこれで終わりではなかった。
09年から引き続き、厚労省のモデル事業として、別の角度から累犯障害者の支援に取り組むことにした。今回のテーマは、罪を犯した障害者に対して、容疑者あるいは被告の段階から福祉がかかわり、刑務所ではなく社会の中での更生を支えるというもの。
「地域社会内訓練事業」と名付けられた。

南高愛隣会の取り組み、素晴らしいですね。

なぜこんな素晴らしい活動ができるのでしょうか。

キリスト教などの宗教を母体とする団体なのでしょうか。

南高愛隣会のホームページで調べてみましたが、初代理事長の田島良昭氏の考えに基づいてできた法人のようで、特に宗教とのかかわりは見つけられませんでした。

同ホームページによると、初代理事長の田島良昭氏は、2021年に逝去されたとあります。

ご冥福をお祈り申し上げます。

 


獅子風蓮


『居場所を探して』を読む その27

2024-10-10 01:00:33 | 犯罪、社会、その他のできごと

友岡さんが次の本を紹介していました。

『居場所を探して-累犯障害者たち』(長崎新聞社、2012.11)

出所しても居場所がなく犯罪を繰り返す累犯障害者たち。彼らを福祉の手で更生させようと活動する社会福祉事業施設の協力で、現状と解決の道筋を探った。日本新聞協会賞を受賞した長崎新聞の長期連載をまとめた一冊。

さっそく図書館で借りて読んでみました。

一部、引用します。

□第1章 居場所を探して―累犯障害者たち
■第2章 変わる
 ■変わる刑事司法と福祉~南高愛隣会の挑戦をめぐって
 □山本譲司さんインタビュー
□おわりに 


第2章 変わる

変わる刑事司法と福祉~南高愛隣会の挑戦をめぐって

(つづきです)

09年、累犯障害者を社会的に支える仕組みや制度が初めてできた。
罪を繰り返す障害者の更生と再犯防止は、治安維持の観点からも、刑務所の運営コストの観点からも、政府にとって座視できない政策課題となっていた。
その一つが、障害者が刑務所を出た後、福祉的なサービスにつなぐ「特別調整制度」。全国の刑務所に福祉のプロである社会福祉士を配置し、「刑務所を出ても帰る場所がない」「高齢で、障害がある」など支援が必要な受刑者がいれば、保護観察所に連絡する仕組みだ。保護観察所から連絡を受け、出所後すぐに福祉サービスを受けられるように手配する機関が「地域生活定着支援センター」。この年から長崎県を皮切りに全国で順次設置が進められ、現在すべての都道府県にできた。刑務所から福祉への「懸け橋」の役割を担っている。
この制度は南高愛隣会がモデル事業として取り組んだものが土台となっている。
南高愛隣会はこの年の4月、更生保護施設「雲仙・虹」を開所した。社会福祉法人が更生保護施設の運営に乗り出すのは全国で初めてだった。
更生保護施設は、刑務所を出た後、帰る場所がない元受刑者を緊急避難的に受け入れ、衣食住を提供する施設。「雲仙・虹」も含めて全国に104カ所ある。入所期間は原則半年間で、その間にどこで暮らすかを決めなければならない。そうした性格から「中間施設」「シェルター」と呼ばれている。
刑務所を出た人を支援する更生保護施設は、一部の篤志家が更生保護法人をつくって、半ばボランティアとして取り組んできた歴史がある。基本的に障害がある人たちの支援には不慣れだ。田島はそこに着眼した。
「雲仙・虹」は定員20人。職員たちは社会福祉士や保護司の資格を持ち、福祉的な更生プログラムを取り入れている。開所以来、延べ102人(2012年9月末現在)を受け入れ、「虹」での生活を経て、順次、地域のグループホームなどに移行させている。
「雲仙・虹」の施設長、前田康弘は社会福祉法人が更生保護施設を運営する利点をこう説明する。「就労や生活訓練をした上で社会復帰させないと、障害者の更生にはつながらない。障害がある人たちの支援は福祉の人間がやらなければ成果は上がらないと思う。更生保護施設の役割はこれから重要になると思っています」
ただ、前田の期待とは裏腹に、社会福祉法人が更生保護の分野に参入するケースは、南高愛隣会以降、まだ1件もない。

(つづく)


解説

「雲仙・虹」の施設長、前田康弘は社会福祉法人が更生保護施設を運営する利点をこう説明する。「就労や生活訓練をした上で社会復帰させないと、障害者の更生にはつながらない。障害がある人たちの支援は福祉の人間がやらなければ成果は上がらないと思う。更生保護施設の役割はこれから重要になると思っています」

「雲仙・虹」のような更生保護施設が、全国に広がっていけばいいですね。


獅子風蓮


『居場所を探して』を読む その26

2024-10-09 01:49:53 | 犯罪、社会、その他のできごと

友岡さんが次の本を紹介していました。

『居場所を探して-累犯障害者たち』(長崎新聞社、2012.11)

出所しても居場所がなく犯罪を繰り返す累犯障害者たち。彼らを福祉の手で更生させようと活動する社会福祉事業施設の協力で、現状と解決の道筋を探った。日本新聞協会賞を受賞した長崎新聞の長期連載をまとめた一冊。

さっそく図書館で借りて読んでみました。

一部、引用します。

□第1章 居場所を探して―累犯障害者たち
■第2章 変わる
 ■変わる刑事司法と福祉~南高愛隣会の挑戦をめぐって
 □山本譲司さんインタビュー
□おわりに 


第2章 変わる

変わる刑事司法と福祉~南高愛隣会の挑戦をめぐって

(つづきです)

発表の翌日。田島の元に、当事者の家族会などから抗議が寄せられた。
「障害者福祉に携わる者でありながら、あなたは障害者を冒涜するのか」
「障害者は危険な存在だと思われたらどうする!」
抗議に訪れた人たちは怒りに身を震わせていた。田島は一人一人と会って、丁寧に調査の意図や内容を説明した。そして、自戒を込めてこんな話をした。
「私たち障害者福祉に関わる人間は、これまで障害者がすべて善人であるかのようなイメージを振りまいてきたし、それに異を唱えるような言説とは断固戦ってきた。それが障害者を守ることであるし、彼らの幸せにつながることだと信じていた。でも、考えてみてください。そうした私たちの勝手な思い込みが、刑務所の中にいる障害者の存在を覆い隠し、悲惨な状態に長く置いてきたことの原因にもなっていたのではないでしょうか。取り繕いながらやる福祉は、もうやめにしませんか」
納得してくれた人も、そうでない人もいた。
しかし、真っ向から反論する者は1人もいなかった。
05年に宮城県福祉事業団の理事長を退任した田島は、古里の雲仙市に戻り、累犯障害者対策に動き始めた。
「いま一度初心に帰って、ライフワークとしてこの問題に取り組む」。 
そんな決意を胸に宿していた。
厚生労働省のモデル事業(06~08年度)として、障害のある元受刑者を愛隣会の施設で受け入れ、就労・生活支援をした上で社会に復帰してもらう取り組みを始めた。累犯障害者たちは帰る家も、仕事も、温かく受け入れてくれる人たちもないまま、放り出されるように刑務所を出所し、生活に行き詰まり、再び罪を繰り返している。07年に公表した研究班の調査結果からそんな実態が浮かび上がったからだった。
自立して生きていくために、職業的なスキルを身に付けてもらう。刑務所を出た後、路頭に迷わないために居住地を確保する態勢をつくる。
「そうすれば、お金がなくてやむにやまれず食料品を盗んだり、無銭飲食をしたりしなくても済むのではないか」と田島は考えた。

(つづく)


解説

05年に宮城県福祉事業団の理事長を退任した田島は、古里の雲仙市に戻り、累犯障害者対策に動き始めた。
「いま一度初心に帰って、ライフワークとしてこの問題に取り組む」。 
そんな決意を胸に宿していた。

ひとりの人間が決意し行動することで、歴史は作られていくのですね。

 


獅子風蓮


性的ディープフェイク画像はアウト

2024-10-08 03:01:28 | 犯罪、社会、その他のできごと

9月27日の朝日新聞にこんな記事がありました。

引用します。

 


朝日新聞 2024年9月27日

性的ディープフェイク画像 所持も処罰
__韓国 改正法案可決

韓国で生成AI(人工知能)を活用して合成されたディープフェイクとよばれる性的な偽画像を所持したり見たりした場合に処罰される改正法案が25日、国会で可決された。これまでも処罰対象だった作製した罪も最大5年以下の懲役から7年以下に引き上げられる。
韓国では知人女性や少女らの顔写真を使った性的なディープフェイク画像が、通信アプリ「テレグラム」で拡散される被害が広がり、処罰対象の拡大や厳罰化を求める声が上がっていた。改正法案は、ディープフェイクと知りながら性的な偽画像を所持や購入、保存したり、見たりした場合、3年以下の懲役か3千万ウォン(約327万円)以下の罰金が科せられる。作製する罪は「流布する目的」が立証されなければいけなかったが、この要件も削除された。
(ソウル=太田成美)


解説

日本では、XなどSNSで、ディープフェイク・エロコンテンツがあふれています。
一部は、有料のアダルトサイトに誘導するための、詐欺的行為です。
韓国では、知人女性や少女らの顔写真を使った犯罪的行為にディープフェイク偽画像を使うようで、目的は少々違うようですが取り締まりが厳しくなるようです。

日本でも、一定の法的な規制が必要かと思われます。

獅子風蓮