月夜の大学を出る。
中津神社が鶴市町。昔の弦打村の一部である。菊池寛の『義民甚兵衛』の舞台はこの村である。
夜中の狛犬さん(大正十三年)。鳥居は大正十二年であった。
『香川県神社誌』に載っている「中州神社」というのがこの神社かと疑われる。再建が大正十二年とあったからである。祭神は、大国主と年三柱(大年神、御年神、若年神)か。
本殿。
地神さん。
藤作 加担の村が、二百十二カ村になったぞ。夜更けにお城下へ押し寄せて、御家老達の家を叩き壊す云うとるぞ。はよう、用意せい。ええか。分ったか。
甚吉 分った。分った。
(藤作、馳け去る)
おきん(狼狽しながら)どうしょう。どうしょう。
甚吉 仕方がねえ。わし行くぞ。
おきん 阿呆云うな。後嗣のお前に万一のことがあったらどうするんじゃ。われは行くんじゃねえ。
甚三 兄貴は、家に居るがええ。わしが行くだ。わしが。
おきん われも行くでねえ。加担して、後で打首にでもなったら、どうするだ。
甚三 そなな心配がいるもんけ。何万と云う人数じゃもの。ただ附いて行っただけで打首になんか、なって堪るけい。
――菊池寛「義民甚兵衛」
フラッシュなしで狛犬さんをアップで撮ってみる……