
まだ半病人のまま大学に行って、なんとか共通科目90分しゃべりきる。今日は、ドストエフスキー「罪と罰」の影響圏と漱石の「個人主義」のお話。授業後には、今学期最初のレポートが提出されてくる。椎名麟三の「ある不幸な報告書」のなかの「罪と罰」について、が課題。一年生が結構やれたはずと期待しつつ、研究室に戻るとふらふらしてきたので、会議を終えたら帰ることにする。
会議の最初に外国人の先生とトランプについてお話をする。わたくしは、なんだか日本人とはトランプの話をしたくない気分であった。
人文学者としては、PC的な人たちも穏健保守も共倒れして頂いて、こりゃ面白い時代になってきたぞと怯えながら思う一方、やはりトランプはだめだと思う。個人的には、彼のヒラリーに言った Such a nasty woman という言い方が非常に嫌だった。なんだか自分が言ったような気がしたからである。ネオコンヒラリーは確かにだめなのであろうが、だからと言って核ボタンを持つ奴が、Such a nasty woman はいけないと思う。勝利宣言の演説は、なかなか穏健になっていたとか言っていた人もいたが、全くそんなことはない。あれは、事実上の孤立主義だか排外主義宣言――「国民以外は知ったことか、文句言うやつは黙れ、我が国の「分断」は許さない」宣言ともいうべきであった。日本でもそうだったように、どんな首相や大統領でもその言葉や行動を模倣する人間は大量に出てくるので、これから大変である。それは所謂低学歴層が模倣するのではなくて、案外、金を持った高学歴層が模倣しているかもしれないのはまわりを見渡しても感じられることではある。トランプによって労働者の革命が起きるなんてのは幻想であろう。むしろ、労働者を使う者の態度がトランプ風になり、労働者もトランプ風に首にされたからあんまり強く出られないといったような現象が起こる。まあ、そんな感じでぼろぼろになりながら、仲間を大切にする自由の精神が復活してくることはありうる。そのかわり被害者も多く出る。
トランプは大統領になってもっとひどいことを言い出しかねないとわたくしは思っている。彼は商売人である。いろんな意味での自分の儲けのために、なんでも言ってくるぞ……。言うまでもなく、人間性やら人権などそうやって簡単に無視できてしまうのが、ある種の商売人である。どこまで我が国は耐えられるかね。もうアメリカ関係なくTPPやってしまうつもりらしいので、その風見鶏的自主独立の精神に期待したい。全く期待できないが……。その前に、トランプが、「アメリカはもう徹底的な孤立主義でいきますよ、つまり平和主義ですよ、日本の九条いただきっ」とか言ってくるとか……さっき、妄想した。