最近の地球の温度調節係はバカなのか?人間がバカになると地球もバカになるんだな。スマホでもやってるんじゃねえか?
鈴蘭燈の並んだ狭いアスファルトの街に人が一杯で、ふと店さきのショー・ウインドーを見ると、独逸製のカットグラスが透明になって消えた。
(彼は誰かの泣声を聞いた。女の声らしかった。)
何故泣くのかと訝りながら、濃い藍色の闇を潜って行くと、生駒山のトンネルを潜ってゐるらしかった。向ふにステンド・グラスのやうな空間が懐しく見える。明るい昼がひかへてゐるらしい。しかしトンネルを出たやうな気がした時、そこは矢張り彼の生れた街の一角だった。橋のたもとへ出てゐて、それも夜であった。妖婦的な女が笑った。その金歯がはっきりと彼の目に映る。早くそれも透明な輪になれ、と彼はぢっと待った。
――原民喜「透明な輪」