しばやんの日々 (旧BLOGariの記事とコメントを中心に)

50歳を過ぎたあたりからわが国の歴史や文化に興味を覚えるようになり、調べたことをブログに書くようになりました。

醤油の歴史と本物の醤油の見分け方

2010年03月12日 | 和歌山歴史散策

醤油のルーツは古代中国から伝わったと言われているが、 いつの時代に伝わったかは良く分からない。
大宝律令には宮内庁の大膳職に属する「醤院(ひしおつかさ)」で大豆を原料とする「醤(ひしお)」が作られていたと書かれているそうだ。当時の「醤」は今の醤油と味噌の中間のようなものだったそうだ。

今の醤油はいつごろ生まれたかと言うと諸説があるようだが、湯浅で聞いた話では、鎌倉時代の中頃に紀州の禅寺「興国寺」の開祖「法燈円明国師」が、当時は南宋と呼ばれていた中国から伝えた嘗味噌(なめみそ::経山寺味噌、現在は金山寺味噌と呼ばれている)の醸造法をならって帰国し、その味噌に瓜・茄子などの野菜を漬け込んで発酵させ精進料理としたのだが、その金山寺味噌の製造工程で、樽にたまった汁で食べ物を煮るとおいしいことが発見され、それが「醤油」の起源となったとのことである。

紀州湯浅で生まれた醤油の製法はその後も発展し、天正年間(1580年頃)には日本で最初の醤油屋さんと言われる玉井醤が、味噌・醤油業を開始したとされる。



19世紀初頭に出版された「紀伊国名所図絵」にも、湯浅醤油が日本の醤油の起源として紹介され、玉井醤については「村中大阪屋三右衛門店にて製す。経山寺味噌の類なり。…実に未曾有の味なれば、紀州経山寺の稱、遍く他邦にも聞こえたり。」と記されている。

湯浅の醤油は各地からの引き合いもあり藩も手厚く保護して、江戸時代に湯浅で千戸あった家のうち醤油屋が92軒もあったそうだ。
しかし明治以降は藩の保護もなくなり、大手メーカーの進出により多くの醤油屋が廃業し、今では一部の会社が伝統の製法を守っている。



ここが玉井醤本舗だが、ここの金山寺味噌は今でも有名で、毎年夏の時期にだけ仕込んで無くなり次第販売終了となる貴重な味噌だ。米、麦、大豆になす、しそ、ショウガなどを加え、塩以外の添加物を一切含まないとのことだが、私が2年前に行った時には5月だったので買えなかった。

湯浅で昔ながらの醤油屋を見るのだったら「角長(かどちょう)」。



今も江戸時代の天保年間に作られた蔵を用いて、今も昔と同じ製法で伝統の醤油が作られ、もちろん販売もしているし、平日あるいは土曜日に行くと従業員により、湯浅醤油の歴史や伝統的な製造法について説明を受けることができる。

伝統の製造法で原料となるのは大豆と小麦と塩と水だけで、それらが麹菌、乳酸菌、酵母による発酵過程をへて醤油が出来上がる。醤油の色は発酵させれば「メイラード反応」により自然に赤褐色になるのであって、本物の醤油は一切着色料を使わないということだ。
ちなみにスーパーなどで売られている醤油の原料を見れば、原料にいろいろなものを使っている。大豆も「脱脂加工大豆」という油の搾りかすを原料にしていることが大半だ。
角長の従業員によると「脱脂加工大豆」では醤油独特の色が出ないために着色料を用いざるを得ないし、香りも味わいも乏しくなるから香料を用いているところが少なくないそうだ。



角長では原料にもこだわりがあり、大豆は岡山産、小麦は岐阜産、仕込みの際の塩水はオーストラリア産の天日塩が用いられている。加熱には一切ガスや電気を使わず薪を用い、桶は吉野杉の木桶を今も使っているとのことだ。

伝統的な製造法では「こいくちしょうゆ」の場合、大豆と小麦の分量は大豆5割、小麦5割と決まっているそうだが、この角長では大豆6割、小麦4割で作っているとの話で、昔からの製法を愚直に守ってきた姿勢に感激して、お土産用に一杯醤油を買って帰った。実際使ってみて、大手メーカーの醤油とは香りが全然違う。それ以来、醤油は本物しか買わないことにした。

地方に旅行に行った時に地元産の醤油の原料を確認することがあるが、多くの場合は大豆以外に「脱脂加工大豆」を原料とし、着色料などを使っているのをみてがっかりすることがある。大手メーカーのまねをしてコストを下げたところで、結局は販売力の差では零細企業は勝てないだろう。小さい企業であれば、そこでしか作れないものにチャレンジしてこそ生きる道があるのだと思う。 
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