しばやんの日々 (旧BLOGariの記事とコメントを中心に)

50歳を過ぎたあたりからわが国の歴史や文化に興味を覚えるようになり、調べたことをブログに書くようになりました。

「お彼岸」で先祖を祀るのは仏教以前の風習か

2010年03月17日 | 日本の四季の行事と伝統文化

もうすぐ春分の日だが、この日を挟んで前後三日ずつの一週間を「春のお彼岸」といい、今年の春の「彼岸の入り」は3月18日で、「彼岸の明け」は3月24日だ。
同様に秋分の日を挟んだ一週間を「秋のお彼岸」と言い、今年の秋の「彼岸の入り」は9月20日で「彼岸の明け」は9月26日となる。

「彼岸」とは向こう岸を意味する言葉だが、仏教では煩悩を脱した悟りの境地に達した事を言い、煩悩や迷いに満ちた現世の事を、こちら側の岸「此岸(しがん)」という。

何故「お彼岸」に仏事をするようになったのだろうか。この時期に仏事を行うのは仏教国多しといえど日本だけだそうだ。

春分の日や秋分の日は丁度昼夜の長さが同じで太陽が真西に沈む。仏教の浄土思想では「西方極楽浄土」といって阿弥陀様が治める極楽浄土は西方のはるかかなたにあると考えられている。そこで、太陽が真西に沈むこの時期に、遥かかなたの極楽浄土に思いをはせたのが、「彼岸会」の始まりと説明されている。

しかし、何故日本だけなのだろうか。何故御先祖様をこのお彼岸の間にお参りするのだろうかと考えると、よくわからなくなってくる。何となく太陽信仰のようなものを感じたりもする。



では、「彼岸会」はいつごろから始まったのであろうか。

佐伯恵達氏の「廃仏毀釈100年」によると「推古天皇の時(593)、聖徳太子が四天王寺を建立されて、東門より西門を通じて極楽浄土を欣求する道を開かれたことにはじまるといわれています」(P341)とある。仏教伝来が538年とか552年とか言われているが、日本しか行われていない「彼岸会」が始まった時期にしては少し早過ぎはしないか。ひょっとしたら、日本の古来から春分の日や秋分の日にこのような風習があったのではないか、と思ってネットで調べてみると、いろいろ面白い記事が見つかる。

たとえば、「西野神社社務日誌」にはこんなことが書いてある。
http://d.hatena.ne.jp/nisinojinnjya/20070920

「…日本では大陸から仏教が伝来する以前から、固有の信仰(神道)によって御先祖様をお祀りする年中行事が営まれており、特に彼岸には太陽を崇拝する行事を行う所が多かったと云われています。例えば、丹後(京都府)や但馬・播磨(兵庫県)などの地方では、春分の日の朝は「日迎え」といって東の堂に集まり、昼は南の堂に移動し、夕方には「日送り」といって西に集まって拝むという風習がありました。つまり、一日中太陽のお供をして歩くのです。

また、熊本県や鹿児島県では「彼岸籠もり」といって、春・秋それぞれの彼岸の頃に山登りを行って御先祖様をお祀りするという風習があり、秋田県でも、子供が山に登って「万灯火」という火を焚いて御先祖様をお迎えするという風習があります。これは、山という所が、田の神が下界へ降りてきたり帰っていったりする神聖な場所であると同時に、御先祖様の霊が宿っている所であるとも考えられていたからです。…(引用終わり)」

と、なかなか面白いことが書いてある。

また別のサイトでは、「彼岸」は「日願」という説もあると書いてある。
http://www.ffortune.net/calen/higan/higan.htm

しかし、この時期に先祖をおまいりするのが日本古来の風習だとするならば、何故正月や節分のように神社でずっと行事が執り行われてこなかったのか。「彼岸会」が一般民衆に広がって各地の寺院で法要が営まれるようになったのは江戸時代だといわれているが、それまでは先祖をどのようにお祀りしていたのであろうか。



毎年春分の日や秋分の日には、毎年宮中の皇霊殿で歴代の天皇の霊を祀る春季皇霊祭や秋季皇霊祭を執り行われ、全国の神社で皇霊遥拝式がなされるが、この儀式は明治政府が明治11年に廃仏毀釈の流れの中で始められたものであり、それほど古い歴史があるわけではない。
神道の考え方では死とは穢れであり、神の聖域である神社で先祖の霊を祀る発想は明治まではなかったのではないか。神葬という神道の葬式が始まったのは明治五年だ。その2年後に明治政府は寺院の葬式を禁止しているが、さすがにこのことは徹底できなかった。

彼岸で先祖を祀るのは本来神社の行事と考える人もいるようだが、この考え方には無理がある。日本古来の風習がそのまま仏教にとりこまれたのではないだろうか。民衆は太陽に祈って、長い間先祖をお祀りしてきたのかもしれない。

これからも、祖先を敬いなくなった人を偲ぶ日本の良き伝統は、末永く続いてほしいと思う。 
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