社会不適合者エスティのブログ

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三低女子の婚活事情 42ページ「逆転を賭けた愛の告白」

2020年01月26日 | 三低女子の婚活事情
アーサーとモードレッドはついに最高裁で争う事となり死闘を繰り広げた。

アンブローズはティラミスを証人として呼ぶ事でモードレッドの度肝を抜いた。

アーサー「(今さら俺に聞きたい事って何なんだ?)」

ランスロット「あなたはこの前、リコラさんを好きかと聞かれた時に好きではあるがライクかラブまでは分からないと言っていましたね。」

アーサー「ああ、確かに言ってたな。」

ランスロット「どちらともラブの方であれば正当防衛と言えると考えて良いでしょう。しかしどちらかがラブ以外の回答ならただの友人関係となり、過剰防衛と見なします。ライクかラブかの回答は決まりましたか?」

アンブローズ「異議あり。本件とは関係のない質問です。」

ランスロット「恋愛感情があったかどうかは重要です。恋人を守るために殴ったなら話は別ですが、友人を守るために殴ったなら過剰防衛の方を適用するべきです。」

裁判長「異議を棄却します。被告は質問に正直に答えてください。」

アーサー「俺は・・・・リコが好きだ。愛してる。」

モードレッド「こいつは自分が無罪になるために嘘の証言をしているんだよ。」

ランスロット「少し黙っててください。あなたはリコラさんとカップリングはしているのですか?」

アーサー「いや、してない。」

ランスロット「カップリングをしていないという事は、リコラさんの方はあなたの事を友人としか思っていないという事ではないでしょうか?」

アーサー「そうかもしれないな。」

ランスロット「リコラさんはここにはいませんから、確かめようがありません。しかしカップリングしていないとなればそれこそ両想いではないという確実な証拠になるでしょう。これはリコラさんに聞くまでもなく友人関係、つまり過剰防衛です。」

アーサー「俺は肝心なところでいつもリコを守ってやれなかった。自分の無力さを恨んだ事もあった。俺にもっと力があればそもそも裁判さえする事もなかったと思うし、あいつが刺される事もなかったと思う。全ては俺の無力さから起きた事だ。」

傍聴人C「そんな事ない。」

アーサー「えっ?」

傍聴人C「私はアーサー君がどれだけ良い人か知ってる。あなたは婚活法違反によって強制収容所へ連れて行かれるはずだった私たちを救ってくれた命の恩人なのよ。」

傍聴人A「そうだ。そんなに良い人が誰かを殴るのは余程の事があったからだ。」

傍聴人D「大体会社を潰されて大事な人まで傷つけられたら、そんなの俺だって殴ってるよ。」

傍聴人B「むしろ殴らない方がおかしいだろ。」

みんな「そうだそうだ。アーサーは何も悪くない。悪いのはモードレッドだ。」

アーサー「お前ら。」

ランスロット「裁判長、カップリングをしていないのなら過剰防衛で罪に問うべきです。」

裁判長「被告にも相応の事情がある事が分かったのも事実です。しかし、リコラさんに恋愛感情の有無を確認できない以上は仕方ありません。ではこれより判決を下します。」

リコラ「はあ、はあ、待ってください。」

アーサー「リコ、何でここに?」

リコラ「私も当事者です。証言させてください。」

ガウェイン「おい、もう裁判は終わりだ。今さらリコラさんに出番はないぞ。」

裁判長「それは私が決める事です。」

アンブローズ「・・・・裁判長、リコラさんに証人として証言台に立っていただいても構いませんか?」

ランスロット「いけません。リコラさんは大怪我をしています。怪我人を証言台に立たせるなどもってのほかです。」

裁判長「リコラさんはそれで構いませんか?」

リコラ「はい、構いません。」

裁判長「では証言台に立ってください。」

ランスロット「裁判長、それはいくら何でも横暴です。」

裁判長「あなたはリコラさんが証言するのがそんなに嫌なのですか?」

ランスロット「ぐっ・・・・いえ。」

アンブローズ「では私からリコラさんに質問です。あなたは被告の事をどう思っていますか?」

リコラ「はい、私にとってアーサーは正義感が強くて不器用で変に真っ直ぐなところがあって、とても放っておけない人です。でも、アーサーはいざという時にはとても頼りになる人です。私がモードレッドから嫌がらせを受けていた時も、暴漢に襲われた時も体を張って守ってくれました。」

アーサー「リコ・・・・。」

リコラ「私は・・・・そんなアーサーの事が・・・・大好きです。愛してます。」

ランスロット「では何故被告とカップリングしていないのですか?」

リコラ「アーサーは私には勿体ないくらい良い人ですから、カップリングなんて恐れ多くてできません。」

裁判長「もう誰も質問はありませんか?・・・・では判決を下します。被告アーサー・モンターニャ・ファヴァレットを、恋人を守るための正当防衛による無罪とする。」

リコラ「(良かった。本当に良かった。)」

裁判長「そして原告モードレッド・マロリーを、被告の会社との取引を妨害した事による威力業務妨害罪と、他社に圧力をかけて部署を解散させた事による偽計業務妨害罪と、リコラさんに対する脅迫罪により5年の懲役とする。」

モードレッド「はあ?ふざけてんじゃねえぞこの野郎。なんで俺が罪に問われなきゃいけねえんだよー?てめえ後でどうなるか分かってほざいてんだろうなー。」

裁判長「原告を私への暴言により退廷とする。今すぐ出て行きなさい。」

モードレッド「おい、何だよ?放しやがれ。てめえら後で覚えてろよー。」

裁判長「以上で裁判を終了とします。」

最高裁はアーサー側の大勝利に終わり、モードレッドは逮捕され拘置所に入れられた。

しばらくしてリコラが退院すると、ギルドカフェでは勝訴記念にパーティが開かれた。

ベルガ「じゃあリコの退院とアーサーの裁判勝訴を祝って、かんぱーい。」

みんな「かんぱーい。」

リコラ「最初はどうなるかと思ったけど、これでようやく一息つけるね。」

ベルガ「この頃ずっと無茶ばっかりしてたもんね。」

リコラ「以前の私だったらまずしなかったけどね。」

ルーシー「それにしてもまさか裁判中に両方とも愛の告白をするなんて大胆すぎ。」

アーサー「仕方ねえだろ。恋愛感情がある事を証明しないと正当防衛にならないんだからな。」

ジュリー「皮肉な話だけどリコとアーサーが告白できたのも、マドレーヌとモンブランがカップリングできたのも、全部モードレッドがきっかけなのよねー。」

アーサー「言われてみればそうだな。」

ベルガ「簡単な話だよ。人間を団結させる最大の要素、それは共通の敵だ。モードレッドという共通の敵がいたからこそ、団結をしている内に仲良しになっていったわけだ。」

ロミー「なるほどな。俺がジュリーと駆け落ちした時も、両家が共通の敵になってたからな。」

モンブラン「あの裁判の後、社長が私たちを特別待遇で雇うって言ってきたんだけど断ったの。」

リコラ「えっ、なんで?」

マドレーヌ「すぐ権力に屈するような会社に居たらまた振り回されると思うし、経営にも慣れてきたからもういいかなって思ったの。うちの社員はいずれもファンタスティックの民族衣装部に捨てられた戦友だから実質独立みたいなものだけどねー。」

フォレノワール「実はモードレッドさんは暴漢を雇ってリコラさんたちを襲わせた事が発覚して、さらに罪が重くなったそうです。」

アーサー「じゃああの暴漢はモードレッドが雇った連中だったんだな。」

フォレノワール「はい。その暴漢たちも今は逮捕されています。」

ベルガ「とんでもない奴に目をつけられてたんだね。」

リコラ「お兄ちゃんに言われたくないよ。」

シュトレン「リコ、刺された傷は大丈夫なの?」

リコラ「うん、修復の魔法による治療が終わったところだから傷跡も残ってないよ。」

パンドーロ「良かったー。」

ヘレントルテ「もうパーティ始まってたのね。リコ、退院おめでとう。」

リコラ「ありがとう。ヘレンも呼ばれてたんだね。リンツさん、この前はお世話になりました。」

リンツァートルテ「良いんだよ。招待してくれて光栄だよ。リコラさんとアーサーさんには感謝しないとね。」

アーサー「お望み通りの展開になったか?」

リンツァートルテ「そうだね。君が勝訴してくれたおかげでマロリー商社は一気に株価が低迷したよ。それに社長であるロットは息子の犯罪を知りながら見逃そうとした罪に問われて逮捕されたよ。これでボルゴ派の影響力は下がるだろうね。でも最近はボルゴが姿を全く現さないんだ。どこで何をやってるんだか。」

アーサー「一発逆転の兵器でも作ってんじゃねえの?」

リンツァートルテ「まさかね。保守派のボルゴに限ってそれはないと思うけど。」

アーサー「そういえば、この前会った時、やけに自虐的だったけど何かあったのか?」

リンツァートルテ「そうだね。リコラさんとアーサーさんには話しておいても良いかな。僕がウィトゲンシュタイン家の分家の者だって事はもう知ってるよね?」

リコラ「はい、この前聞きましたね。」

リンツァートルテ「僕は数ある分家の1つであるウィトゲンシュタイン第五侯爵家の四男として生まれた。3人の兄はいずれも芸術や政治や軍事で成功を収めていた。でも僕には芸術の才能も政治の才能も軍事の才能もなくて落ちこぼれと呼ばれたもんだ。」

リコラ「そんな過去があったんですね。」

アーサー「ていうかどんだけ分家あるんだよ?」

リンツァートルテ「大体20種類くらいの分家があるよ。祖先がたくさんの子持ちだったからね。そして本家である第一公爵家がある。本家は後継者がいなくて困った事が何度かあるんだけど、そうなる度に分家の中から特に優秀な人を養子を迎えて血縁を維持するんだ。」

アーサー「そうやって血縁を繋いできたのか。」

リンツァートルテ「そして本家の長男であるドボシュトルタは無性愛者で結婚すら考えてないし、ヘレンは再婚相手の連れ子だから相続資格がない。そこで公爵は僕の家から2人の兄を養子に迎えて、その内の1人が結婚して子供までいる。」

アーサー「だったら万事解決じゃないか?」

リンツァートルテ「それがそうもいかないんだよ。第五侯爵家に残った三男はジパングとの防衛戦争で僕をかばって戦死。僕は中身が女子のトランスジェンダーで女子には全く興味がないから子供は産めない。」

リコラ「つまり才能もなくて子供も産めないのが原因で落ちこぼれって呼ばれるようになったんですか?」

リンツァートルテ「ご明察。特に僕のせいで兄を戦死させた事で他の分家の人からたくさん罵倒されたよ。僕は英才教育も嫌になって家に引きこもるようになったんだ。でもそんな時にテレビでベルガさんの活躍を見たんだ。」

リコラ「お兄ちゃんの活躍って事はワールドバリスタカップの事ですか?」

リンツァートルテ「ああ、彼は見事にメルヘンランド人初の優勝を飾り、インタビューで優勝の秘訣を聞かれた時にこう言ってたんだ。優勝するのに必要なのは好きなものに意欲的に没頭する事。優勝したのは僕だったけど、他のバリスタのコーヒーも素晴らしいものだった。何が正しいかじゃなくて、自分らしく生きる事が何より大事なんだと思うよってね。」

リコラ「お兄ちゃんらしい台詞ですね。」

リンツァートルテ「僕はあの台詞に感銘を受けた。ずっとウィトゲンシュタイン家の人間として正しい生き方をする事にばかりに囚われていた自分に気づかされたんだ。だから彼のように好きだと思ってた事に没頭するようになったんだ。」

アーサー「それでバリスタを始めたのか?」

リンツァートルテ「そうだね。家業である不動産の仕事をしながら、不動産兼カフェを建ててみたら大好評になったんだ。クライアントと不動産の話をしながらコーヒーを飲んだりできるし、待っているクライアントにコーヒーブレイクをしてもらう事もできるから、それもあって売り上げが大幅に上がったんだ。」

リコラ「商売の才能に目覚めたんだね。」

リンツァートルテ「基本的にはベルガさんの模倣だから自分の考えで生きてるかって言われるとそうでもないけどね。」

アーサー「たとえ模倣でも自分なりの工夫があるなら、それは自分の考えじゃないのか?」

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