社会不適合者エスティのブログ

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三低男子の婚活事情 20ページ「権力と略奪に試される本気の恋」

2019年07月28日 | 三低女子の婚活事情
リコラたちはパンチャタントラを次の合コン会場にしてもらい、

シュトレンたちの手助けをリンツにお願いする事になった。

ジュリー「だからクエストが事件に関連するものばかりなのね。納得したわ。」

フォレノワール「おかげで昔よりも治安が良くなったんですよ。これもベルガさんの助力あっての事です。思った事をそのまま言ったり、社会性が壊滅的なのが玉に瑕ですが。」

ジュリー「信頼してるのね。」

フォレノワール「そうですね。」

アーサー「今度の合コンだけど、今までに会った人を集めるとか言ってたけど、どうやって集めるつもりなんだ?」

ジュリー「一応予約だけど、リコもアーサーも会った事がある人たちを優先的に呼んでるって事よ。元々この合コンはリコに人馴れしてもらうためのものだし、パンチャタントラの売り上げにも貢献できるでしょ?」

アーサー「つまりは身内の合コンって事だな。」

ジュリー「そういう事。」

ルーシー「そんな私的な事に自分の経費使って良いの?」

ジュリー「みんなが会った事がある人を呼ぶとは言っても、他の登録者とかも一緒に来るから、知り合いが比較的多い合コンになるってわけ。」

モンブラン「あれっ、今日は明歩も桜子もいるんだ。久しぶりだね。」

明歩「久しぶり。」

桜子「お久しぶりでーす。もしかしてまたカップリングできなかったんですか?」

モンブラン「うん。今度はいけそうって思ったのに、結局私よりも若い人とカップリングしちゃってさー。それでさっきマドレーヌを誘ったんだけど、彼氏とデートだから行けないって言われてさー。なんか私だけ取り残された感が出てきちゃった。」

ジュリー「じゃあモンブランも今度の身内合コンに来る?知り合いとかが比較的多いから飲みに来るつもりで来てくれると嬉しいんだけど。」

モンブラン「合コンだとカップリングできないと思うけど。」

ジュリー「たまには息抜きも大事よ。もしかしたらひょっと良い人が現れたりするかもよ。」

モンブラン「分かった。じゃあ行こうかな。」

そして数日後にはパンチャタントラで合コンをする事になり、

当日リコたちが店に向かうと宣伝効果もあって人が集まっていた。

シュトレン「まさかこんなに人が集まるなんて。」

パンドーロ「夢みたいですね。」

リコラ「ここでの合コンはジュリーにお願いして、パンチャタントラの宣伝はリンツさんにお願いしたの。」

シュトレン「リンツって・・・・あの問題児をよく説得できたわね。」

リコラ「お兄ちゃんの休日と引き換えに交渉に応じてもらったの。」

シュトレン「休日?」

リコラ「あっ、今までに知り合った人もいる。」

アーサー「まさか俺の同級生まで来るとはな。」

チャラい男「よお、アーサー。大学卒業以来だな。何その可愛い子?お前の彼女か?」

アーサー「彼女じゃねえよ。元同級生だ。」

チャラい男「おっと、自己紹介が遅れたな。俺はマクシム・クバーセク。マクシムと呼んでくれ。普段は全自動タクシー会社の社長やってるんだ。普段みんなが使ってるタクシーはうちのものだよ。」

リコラ「そうだったんですね。いつもお世話になってますよ。」

恥ずかしがりやな女「私はエステルハージトルタ・ハプスブルクです。エステルと呼んでください。普段はウィトゲンシュタイン家でメイドをしています。」

パンドーロ「メルヘンランド大学にいたのにメイドなんですか?」

エステルハージトルタ「はい。ウィトゲンシュタイン家のメイドは高学歴で教養のある人しかなれないんですよ。ウィトゲンシュタイン家は世界各国から首脳や王族を招いたりするので、世界各地の言語や文化を勉強しないといけないんですよ。」

マクシム「エステルは次期メイド長筆頭と言われている上に、海軍の中将もやってるんだぜ。」

エステルハージトルタ「王国軍の下で長く勤めていただけで、戦争はした事ないんですけどね。」

シャイな男「俺はアルホ・パルニラ。アルホで良いよ。俺は普段俳優やってるんだ。俺たちみんな年齢は違うけど、みんなアーサーが大学の時の同級生なんだ。」

シュトレン「アルホって今有名な俳優じゃない。ずっとテレビで見てたよ。」

アルホ「それは嬉しいね。」

リコラ「私はリコラ・オーガスト・ロートリンゲンです。リコと呼んでください。アーサーとは中等部時代の同級生です。ずっと前の婚活イベントで再会して、度々情報交換とかしてるんですよ。だから・・・・友人という事で良いのかな?」

アーサー「ああ、そうだな。」

マクシム「リコちゃん、俺と一緒に話さない?」

エステルハージトルタ「マクシムだけずるいですよ。私もリコさんと話したいです。」

アルホ「じゃあ俺はアーサーと話すわ。」

シュトレン「ねえ、エステルは女子が好きなの?」

エステルハージトルタ「はい。私は体は女子なんですけど、心は男子なんです。」

アルホ「そういう事。ちなみに俺は男子にしか興味がないんだ。だからアーサーと話したいなー。」

アーサー「あのな、俺たちはあくまで友人だって事を忘れるなよ。」

アルホ「分かってるよー。釣れないなー。」

パンチャタントラでの合コンは司会のジュリーの下で順調に進んでおり、

リコラは色んな人たちと交流を深めたがアーサーの事が気になっていた。

リコラ「(さっきアーサーを友達って呼んだ時から、何故か胸のもやもやが取れない。何だか嘘を吐いている時のような罪悪感がする。原因が全然分からないのに、何故か人に聞くのが凄く恥ずかしく思える。)」

アーサー「リコ、どうしたんだ?」

リコラ「いや、何でもないよ。」

ルーシー「ねえ知ってる?リコが何でもないって言う時は、大抵何かある時なんだよ。」

シュトレン「詳しいわね。それ知ってるの私だけだと思ってた。」

ルーシー「もしかしてシュトレンもリコを狙ってるの?言っとくけど、そう簡単にリコは渡さないから。」

シュトレン「上等じゃない。私だってあんたにリコを渡す気はないから。」

アーサー「お前ら何やってんだよ。」

プファンクーヘン「お前らも来てたんだな。」

リコラ「プファン、来てくれたんだね。」

プファンクーヘン「ああ、私も久しぶりにヘクセンハウスが作りたくなってな。ネットでヘクセンハウス専門店の広告があったからそれで来ようと思ったんだ。」

リコラ「ここのヘクセンハウスの材料は大手チェーン店にはない独特の材料もあるんだよ。(リンツさん、ちゃんと宣伝してくれたんだ。まあ、お兄ちゃんとのデートがかかってるから当然だよね。)」

パンドーロ「私の仕事・・・・取られちゃった。」

モードレッド「やあ、やっと会えたね。リコちゃん。」

リコラ「何か用ですか?」

モードレッド「ご挨拶だなー。せっかく会いに来たのに。大事な話があるんだ。ちょっと良いかな?」

リコラ「交際の件ならお断りしたはずですが。」

モードレッド「そうじゃない。それよりもっと大事な話だ。」

アーサー「リコ、こいつの話には乗るな。嫌な予感がする。」

モードレッド「外野は黙っててくれないかなー。確か君の会社は今赤字なんだってね。その気になれば止めを刺す事だってできるんだぞ。」

アーサー「それは脅しか?」

モードレッド「とんでもない。忠告しただけだよ。だからリコちゃんさー、この男の会社が大事ならついてきてくれないかなー?」

リコラ「・・・・分かりました。アーサーの会社には手を出さないでください。」

アーサー「何言ってんだ。俺の会社の事は気にするな。」

リコラ「大丈夫。アーサーはここで待ってて。」

アルホ「なんかあの人ガツガツしすぎというか、男の俺から見ても無理だわー。」

マクシム「あいつリコちゃんに気があるのかな?」

アーサー「最初の婚活イベントの時から、ずっとリコを追いかけてるんだ。リコに会うためにリコの友人まで利用していたんだ。」

エステルハージトルタ「リコさんはモテますからね。」

モードレッドは人気のない所にリコラを呼び出し、

尋問をするように彼女から情報を聞き出していた。

リコラ「あの、一体私に何の用なんですか?」

モードレッド「そう慌てるなよ。せっかくこうして2人きりになれたんだからさ。」

リコラ「ちょっと、触らないでください。」

モードレッド「これ、何だか分かるか?」

リコラ「ファンタスティックの株ですか?」

モードレッド「そうだ。今これを一気に売り払ったらどうなるかな?」

リコラ「どうなるんですか?」

モードレッド「察しが悪いなー、ファンタスティックが潰れるって事だよ。利益も筆頭株主もいない会社は倒産するしかないからな。」

リコラ「だから何だというんですか?」

モードレッド「俺とつき合ってくれないなら、俺がファンタスティックの社長にマドレーヌとモンブランをクビにすれば、株の売却は勘弁してやるって伝えたらどうなるかな?」

リコラ「やっぱり脅しじゃないですか。」

モードレッド「リコちゃんに選択肢を与えてるんだから脅しじゃないよ。好きな方を選べば良い。まあ、今回俺とこうして話してくれたからアーサーの会社には手を出さないでおいてやる。だがファンタスティックは別だ。で?どうする?」

リコラ「・・・・カップリングせずにつき合うという事で良いですか?」

モードレッド「良いよ。カップリングしてもしなくても、事実婚でも法律婚でもつき合ってたら一緒だからね。あ、そうそう。この事は一切他言無用だぞ。」

そして合コンは終わったがリコラのどこか悲しげな表情に、

アーサーが気づいたが彼女はモードレッドと一緒にいた。

モードレッド「リコちゃんは俺とつき合う事になったから、よろしくね。」

ルーシー「は?あんた何言ってんの?」

アーサー「嘘だろ?リコ、お前どういうつもりだよ?」

リコラ「・・・・本当だよ。私、モートレッドとつき合う事になったから。」

アーサー「口ではそう言ってても、顔が違うって言ってるぞ。モードレッド、お前リコに何を吹き込んだ?」

モードレッド「つき合ってほしいって言っただけだよ。」

アーサー「嘘だ。リコはお前みたいな奴とつき合おうと思う奴じゃない。」

ルーシー「そうよ。あなたリコに何かしたんでしょ?」

モードレッド「証拠はどこにあるんだ?」

ルーシー「しょ、証拠って。」

アーサー「証拠はない。だがお前がリコに何かを吹き込んで、思い通りに操っている事だけは分かる。」

モードレッド「証拠もないのにそんな事を言うなんて、名誉棄損もいいとこだ。あんまり楯突くと、お前の会社を潰すぞ。」

リコラ「アーサー、もういいの。これ以上は駄目だよ。」

アーサー「・・・・やってみろよ。」

モードレッド「あ?何だって?」

アーサー「潰せるもんならやってみろよって言ったんだ。お前みたいな奴と一緒になっても、お前は彼女を幸せにはできない。」

モードレッド「じゃあなにか?お前ら2人は恋人なのか?」

リコラ「・・・・。」

アーサー「いや、恋人じゃない。」

モードレッド「だったら邪魔する理由がないだろ。そこまで啖呵切ったんだ。覚悟はできてるよな?」

アーサー「ああ、望むところだ。たとえお前と刺し違える事になっても、彼女は俺が守る。」

リコラ「アーサー。」

モードレッド「減らず口を叩いていられるのも今の内だ。さっ、行こっかリコちゃん。」

リコラ「は、はい。(アーサー、ごめん。今は言えないけど、いつか必ず話すから。)」

シュトレン「アーサー、どうしたの?」

アーサー「リコがモードレッドとつき合う事になった。」

シュトレン「ええっ、嘘でしょ。」

アーサー「本当だ。だが口ではつき合うって言っていても、顔は違うって言ってた。リコは嘘を吐くのが下手だからな。恐らくモードレッドに何か言われたんだ。」

パンドーロ「リコさん、可哀想。ねえ、シュトレン。何とかしてあげてよ。リコさんは私たちの店の危機を救ってくれたんだから、今度は私たちがリコさんを助ける番だよ。」

シュトレン「ええ、私もそのつもりよ。」

アーサー「俺はこの事をベルに伝える。」

20ページ目終わり

三低女子の婚活事情 19ページ「ウィトゲンシュタイン家の問題児」

2019年07月21日 | 三低女子の婚活事情
シュトレンの店であるパンチャタントラは店存続の危機に立たされていた。

そんな中リコラはリンツと共にギルドカフェへと行きアーサーは帰宅した。

シュトレン「良いのよ。今の私たちは向かい風が吹いてるけど、いつか追い風を吹かせてみせるから。」

パンドーロ「やっといつものシュトレンに戻りましたね。」

シュトレン「いつだっていつもの私だよ。」

パンドーロ「あなた、リコさんにも惚れてるんじゃないんですか?」

シュトレン「ちょ、ちょっと、何言い出すのよ。」

パンドーロ「リコに慰められた時、あなた雌の顔してましたよ。初めて私と一緒にデートした時と同じ目を。」

シュトレン「リコはストレートなんだから無理に決まってるでしょ。」

パンドーロ「それでも好きなら好きって言った方が良いですよ。」

リコラはリンツと共にギルドカフェへと戻ったが、

ベルガには既にリンツの事が筒抜けであった。

桜子「あっ、リコさんお帰りなさーい。」

リコラ「ただいま。桜子は今来たの?」

桜子「はい。少し前からいましたよ。今度休みたいんでー、今の内に労働日を消費しておこうと思ったんですよ。」

リコラ「そうなんだ。お兄ちゃんに会いたい人がいるんだけど、良いかな?」

ベルガ「別に良いけど。」

リンツァートルテ「ベルガさん、初めまして。僕はリンツァートルテ・フォン・ウィトゲンシュタイン。気軽にリンツと呼んでくれ。ずっとあなたに会いたかったんだ。」

リコラ「さっきシュトレンの家で会ったの。」

ベルガ「なるほど、シュトレンの店の存続と引き換えに僕を紹介するようにでも言われたんだろ?」

リンツァートルテ「えっ?まさかリコラさんがメールで告げ口したのか?」

ベルガ「告げ口なんかしなくても分かるよ。シュトレンは以前会った時は毎日違う服で来ていたが、この頃ずっと安値の服を着回ししている。店の経営が悪化した事で服を選ぶ余裕がなくなったからだ。シュトレンの店で会ったという事は、君はシュトレンの土地と店を没収しに来たが、リコが僕の妹だと知ると彼女の良心につけ込んで店の存続と引き換えに僕と会わせるように言った。違うか?」

リンツァートルテ「噂には聞いていたけど、まさかそこまで言い当ててくるとはね。確かに僕はあの店を買いに来たんだけど、ちょうどリコラさんがいたからお願いしたんだ。」

ベルガ「シュトレンの店の経営が悪化している事と、君の名前を聞いてすぐに分かったよ。ウィトゲンシュタイン家のやり方は昔から変わらないからね。相変わらずワンパターンだな。」

リンツァートルテ「・・・・カッコ良い。」

ベルガ「えっ?」

リンツァートルテ「僕は昔、ワールドバリスタカップで活躍するあなたをテレビで見た時からずっとあなたに憧れていたんだ。やはりあなたは僕の運命の人だ。」

リコラ「もしかして、お兄ちゃんが好きなの?」

リンツァートルテ「もちろん。メルヘンランド人初のワールドバリスタチャンピオンだからね。今までは仕事や習い事でなかなか会いに行けなかったけど、ようやく休みを取りやすいポジションについたから、ベルガさんに会いに来れたってわけさ。僕も不動産業の傍らバリスタもやっていて、以前からうちの職場をカフェ兼不動産屋にしてもらったんだ。」

ベルガ「建て替え大変だったんじゃないの?ただでさえ君の家は大きいだろうに。」

リンツァートルテ「そうでもないよ。大体100万メルヘンくらいはかかったけど、これぐらいならお小遣いの範囲内だよ。」

2人「100万メルヘンっ。」

桜子「あのー、100万メルヘンってジパング円だとどれくらいなんですか?」

ベルガ「1億円だ。」

桜子「1億っ。もしかして実家がお金持ちなんですか?」

リンツァートルテ「うん。うちはウィトゲンシュタイン家の分家だけど、お金なら無尽蔵にあるから建て替えくらいどうって事ないよ。まあそんな事はどうでもいい。ベルガさん、僕はあなたが好きだ。僕とつき合ってほしい。」

ベルガ「断る。」

桜子「ええっ、何でこんな可愛い子の告白を断るんですか?」

ベルガ「こいつは男子だ。」

桜子「こんなに可愛いのに男子なんですか?」

ベルガ「厳密に言えばただの男子ではない。体は男子で心は女子で頭脳は子供だ。」

リンツァートルテ「子供言うな。確かにそうだけど・・・・どうしても駄目?」

ベルガ「駄目。」

桜子「ちょっと、いくら相手を遠ざけたいからってアウティングは駄目ですよ。少しは相手の事も考えてくださいよ。ばらされた後で彼・・・・じゃなかった、彼女がどれだけ傷つく事になるか分かってるんですか?」

リンツァートルテ「平気だよ。メルヘンランドじゃ性的少数者は当たり前の存在だから、別に問題ないんだよ。」

桜子「えっ、そうなんですか?」

リンツァートルテ「うん。でもそこまで僕の事を考えてくれたのは素直に嬉しいよ。あなたは他のジパング人とは違うようだ。」

リコラ「お兄ちゃんの社会性のなさは今に始まった事じゃないから、許してあげて。」

桜子「・・・・さっきは怒鳴ってすみませんでした。」

ベルガ「良いんだよ。僕じゃなきゃ気づかなかっただろうし。」

桜子「トランスジェンダーって噂には聞いていましたけど、本当にいたんですね。」

ベルガ「この国では元から中性的な顔立ちの人が多いから、初見じゃ分からない事もよくあるんだ。」

リコラ「それよりもリンツさんに1つ頼みがあるんです。」

リンツァートルテ「頼み?」

リコラ「パンチャタントラを宣伝してほしいんです。」

リンツァートルテ「僕にそれをやるメリットは何?」

リコラ「もしやってくれたら、お兄ちゃんを1日だけ好きにして良いですよ。」

ベルガ「えっ?」

リンツァートルテ「その話乗った。」

ベルガ「乗るなよ。」

桜子「さっき無礼を働いた分はちゃんと返さないと駄目ですよ。」

ベルガ「店はどうするの?」

リコラ「それなら心配ないよ。ヘクセンハウスに店番してもらうから。」

ベルガ「そんなー。」

リンツァートルテ「ベルガさんとのデート、今から楽しみになってきたなー。じゃあ僕は帰るね。パンチャタントラの宣伝なら任せといて。知り合いに広告会社の社長がいるから頼んでおくよ。ごきげんよう。」

リコラ「何とかうまくいった。」

ベルガ「何故僕がこんな目に。」

リコラ「いつ出かける事になっても良いように2人も雇ったんじゃないの?」

明歩「あのさ、これだけスタッフがいるのに厨房にいるのがあたしだけっておかしくない?」

ベルガ「分かった。僕が厨房を手伝うよ。」

ジュリー「リコ、アーサーから聞いたよ。パンチャタントラで合コンする事を勧めてくれたんだって?ちょうど良かったわ。きっとシュトレンも喜ぶでしょうね。」

リコラ「うん、さっきウィトゲンシュタイン家の人にパンチャタントラの宣伝を頼んだの。だから合コンの人数確保は何とかなると思うよ。」

ロミー「それは助かる。リコは婚活をするよりも、婚活を仕掛ける側の方が向いているのかもしれないな。」

ジュリー「それを言ったらおしまいでしょ。」

フォレノワール「あれっ、ベルガさんがいませんけど、今日も婚活イベントですか?」

リコラ「いえ、今は厨房を手伝ってます。さっきまで明歩さんが1人で客を捌いてたので。」

フォレノワール「過重労働じゃないですか。誰かが1人でも労働基準法に反する労働をしていたら、経営者が逮捕されて屋号や企業が名前を晒されますから気をつけてくださいね。」

ロミー「詳しいんだね。」

フォレノワール「一応私、警察官なので。」

ジュリー「ベル、彼女のプロフィールを教えてくれない?」

ベルガ「彼女はフォレノワール・アルザス・ロレーヌ。メルヘンランド警察のアウグスト警察署所属の巡査部長。家が貧しくて病気の母親の手術費用を稼ぐためにメルヘンランド警察に入社した後、何の罪もない僕に職質したり、解決が困難な事件を僕に依頼したりするやりたい放題女子だ。」

フォレノワール「やりたい放題じゃないですよ。それと職質したのは明らかに不審な動きをしていたからですよ。」

ベルガ「22歳独身で婚活中だ。さっきも警察署内の婚活パーティで同僚とメアドを交換したが、しつこくメールを送られた事にうんざりしてコーヒーを飲んで落ち着こうと思ってここへ来た。」

フォレノワール「何故それを?」

ベルガ「婚活用の私服に加えて、スマートフォンを見る度に不機嫌になってたからね。」

明歩「あんたは厨房の仕事が先でしょ。」

ベルガ「客の要望に応えてただけなのにー。」

ジュリー「しつこくメールするのは印象が悪くなる行為なのに、何でそれが分からないかなー。」

ロミー「婚活してる人の多くは性格に問題を抱えている人だからね。それを改善して結婚に導くのが俺たちの仕事さ。」

フォレノワール「一応何度も丁寧に断ったんですけど、それでもメールが絶えないんですよ。」

ジュリー「あまりしつこいとブロックするってハッキリ言った方が良いと思う。もしかして他の人ともメアド交換したの?」

フォレノワール「はい。応じないのは失礼かと思いまして。」

ジュリー「あなたって凄く生真面目なのね。もっと力を抜いて良いのに。メアドだって好きじゃない相手とは交換しなければ良いのに。」

フォレノワール「私は真面目に仕事に取り組む事しかできないので。」

ジュリー「もしかして真面目さだけが自分の取り柄だと思ってるの?」

フォレノワール「いえ、むしろ取り柄がないから真面目にやるしかないと思ってます。私にはベルガさんやヘクセンハウスさんのようなずば抜けた才能はありませんから。」

ジュリー「才能のない人間なんていないよ。自分の才能に気づいていない人間がいるだけよ。警察官になったのはどうしてなの?」

フォレノワール「母の手術費用を稼ぐためになるべく稼げるところに就職しようと思って色んな企業を受けたんですけど、全部実技試験で落ちてしまったんです。そんな時にメルヘンランド警察に駄目元で応募した書類選考で受かった後の実技試験は、真面目にやっていれば受かるような試験だったので、それが元で警察官になったんですよ。」

ジュリー「じゃあ警察官の仕事は好きな仕事じゃなくて、手術費用を稼ぐために割り切ってやってるって事?」

フォレノワール「正直に言えばそうですね。」

ジュリー「本当は何がしたかったの?」

フォレノワール「・・・・本当は歌手になりたかったんです。でもオーディションには全然受からないまま高校卒業を迎えたんです。それと手術費用を一刻も早く稼がないといけなかったので、自分のやりたい事なんて考えてる暇なかったんですよ。」

ジュリー「そうだったの。その事は他の婚活してる人には話したの?」

フォレノワール「ある程度仲良くなってから話してるんですけど、一緒に手術費用を稼ぐ事になるのが嫌なのか、いつもはそこで音信不通になりますね。」

ロミー「一緒に困難を乗り越えてこそ夫婦だと思うけどな。」

ジュリー「親が介護を受けてるとか病気でお金がかかるとか、そういった話を聞くだけで敬遠する人も婚活市場には多いのよ。40を過ぎたバツイチの人なんかも親世代が心配で結婚してもらえない人が多いの。」

ロミー「ハウスキーパー制度は駄目なのか?」

ジュリー「それだけじゃ限界があるのよ。常につきっきりでいられる人は家族に限るでしょ。好きなタイプはどんな人なの?」

フォレノワール「誰かのために一生懸命になれる人です。私には憧れの人がいて、その人の相棒になりたかったんですけど無理でした。」

ジュリー「ふーん、ベルとはどういう関係なの?」

フォレノワール「私が警察官になった初日にパトロールをしていたら、ベルガさんが不審な動きをしているので職質したんです。そしたら私の特徴から過去まで全部言い当てられてびっくりしたんですよ。でもこの能力は事件解決に活かせると思って、難事件にぶつかる度にベルガさんを頼るようになったんですよ。」

ジュリー「だからクエストが事件に関連するものばかりなのね。納得したわ。」

19ページ目終わり

三低女子の婚活事情 18ページ「ヘクセンハウス伝統の危機」

2019年07月14日 | 三低女子の婚活事情
リコラはシュトレンの店であるパンチャタントラへと行き、

赤字で潰れそうな彼女の店を手伝う事になったのである。

リコラ「そうだったんだ。」

シュトレン「そんな事より、どうやったら経営を立て直せるわけ?」

リコラ「そんな事言われても、私は経営とか専門外だよ。」

シュトレン「はぁ?あんたねー、店を手伝ってくれるんじゃなかったの?」

リコラ「手伝うとは言ったけど、経営までは分からないというか、勢いでここまで来ちゃったけど、具体的な策は全くないの。」

シュトレン「期待した私が馬鹿だった。」

パンドーロ「まあ良いじゃないですか。せっかく来てくれたのですから、いっぱい見ていってくださいね。」

リコラ「はい。これってこの前の大会で使ってた材料と同じじゃない?」

シュトレン「ええ、ヘクセンハウスの組み上げを婚活イベントにしようと思ってうちから出したの。」

パンドーロ「まさかシュトレンを超える人がいるなんて聞いた時はびっくりしましたけど、リコラさんなら納得ですね。」

リコラ「リコで良いですよ。」

パンドーロ「じゃあ私の事もパンドーロって呼んでください。それと私とは普通に話してくれて良いですよ。シュトレンとも仲良いみたいですし。」

リコラ「うん。シュトレン、ここで作っても良いかな?」

シュトレン「別に良いけど、どうするの?」

リコラ「シュトレンはヘクセンハウスを作るの楽しい?」

シュトレン「なっ、何を言い出すのよ。そんなの・・・・楽しいに決まってるじゃない。ヘクセンハウスは食べられる物だけで作るお菓子の芸術作品なんだから。」

リコラ「でもシュトレンが大会の時は全く楽しそうにしてなかったよ。周りの客の質問にも答えなかったって聞いたし、恐らく一刻も早く店を立て直そうと必死になるあまり、ヘクセンハウスを作る事の楽しさを忘れてるんじゃないかなって思ったの。」

シュトレン「リコは楽しそうに作ってたよね。確かに私は物作りの楽しさを忘れていたのかもしれない。」

リコラ「経営ならお兄ちゃんの方が詳しいと思うから、明日お兄ちゃんも連れてきて良いかな?」

シュトレン「それは良いけど、私はあの社会不適合者苦手だわ。」

リコラ「そうなんだ。じゃあ別の人にしようかな。」

リコラはヘクセンハウスを作り終えるとみんなでそれを食べ、

翌日には助っ人としてアーサーを同行させたのである。

シュトレン「いらっしゃい。あっ、リコにアーサーじゃん。もしかして助っ人ってアーサーの事?」

リコラ「うん。アーサーは経営者やってるから的確な助言ができると思ったの。」

アーサー「事情は道中でリコから聞いた。俺もこの店を手伝う事にするよ。」

シュトレン「そう・・・・ありがとう。」

アーサー「他でもないリコの頼みだからな。じゃあまずはこの店の仕組みから見る事にするか。」

パンドーロ「シュトレン、もしかして狙ってた男子ってこの人なんですか?」

シュトレン「ちょっと、憶測だけで言わないでよ。確かに狙ってたけどここで聞く事じゃないでしょ。」

リコラ「既にパンドーロとカップルなのに彼氏も欲しいの?」

シュトレン「メルヘンランドは重婚の国なんだから別に良いでしょ。ルームシェアなんて全然珍しくないし、パンドーロと2人だけだと不安だから店の宣伝も兼ねて彼氏も探してたの。」

リコラ「なるほどね。確かにうちもヘクセンハウスと女王陛下とルームシェアしてるし。」

シュトレン「女王陛下と?」

リコラ「うん、気がついた時にはずっと居座ってたよ。」

パンドーロ「女王陛下の実家であるロイヤルファミリーレストランのシュペッサルトにもずっと戻ってないって噂では聞いていましたけど、まさかリコさんの家でルームシェアしてたなんて知りませんでしたよー。」

アーサー「経営方針に問題がないとは言えないな。何というか、閉鎖的で外から中の様子をうかがえないのがネックだな。一度知ってもらえさえすれば何とかなると思うが、このままだとかなり厳しいな。」

シュトレン「対策とかないの?」

アーサー「宣伝はしたのか?」

シュトレン「宣伝はお金がかかるし、今のうちの財政だと材料費の確保だけで精一杯なの。」

アーサー「お金がかからず多くの人に伝えられて、常連が根づきやすい方法か。なかなか難しいな。」

シュトレン「一応私なりに婚活イベントを利用して色んな人にメアドと一緒にこの店の住所を送ったんだけど、全然人が来ないから材料費を削減しないといけなくなってきて、このままだと店が倒産してウィトゲンシュタイン家にこの家を没収される事になるの。」

アーサー「ここはシュトレンの家じゃないのか?」

シュトレン「一応今は私の家だけど、うちの初代店長がウィトゲンシュタイン家と家と土地を買う契約をした時に、20万メルヘンを投資する代わりに倒産した時点で借金を返せなかった場合は家も土地も全部没収される事になってるの。今は借金を全部返したけど倒産したら結局没収されるから逃げられないのよ。」

アーサー「ウィトゲンシュタイン家お得意の貸し付けか。」

パンドーロ「ウィトゲンシュタイン家と契約してたのは知ってたけど、他の不動産と契約するのは無理なの?」

アーサー「無理だな。メルヘンランドにある全ての土地は事実上ウィトゲンシュタイン家の私有地だ。この国であの家以外に不動産をやっている会社はないし、倒産した時はもちろん、引っ越しで立ち退く際にもウィトゲンシュタイン家に売却しないといけない決まりになってるんだ。しかも純利益が一定水準を超えると家賃が発生して、純利益の10%を家賃としてウィトゲンシュタイン家に納めないといけないから、どこの家の人も必ずウィトゲンシュタイン家との契約書を交わさないと、メルヘンランドに住んだり店を開いたりできない仕組みになってる。だから他の財閥さえウィトゲンシュタイン家には頭が上がらないんだ。」

リコラ「まさに不動産王だね。」

シュトレン「だからあの家は好きになれないのよ。」

アーサー「あからさまな金融支配だからな。利益を上げたら上げたで家賃を取れるし、利益がなかったらなかったで土地と店を没収できるからな。この国に住む時点であの家の蟻地獄に片足を突っ込んだようなものだ。」

可愛い人「失礼だな。人の家を蟻地獄呼ばわりとは。」

シュトレン「あんた一体何なの?」

可愛い人「せっかく買い物をしに来たってのにご挨拶だなー。僕はリンツァートルテ・フォン・ウィトゲンシュタイン。リンツと呼んでくれて構わない。以後お見知りおきを。」

アーサー「お前確かウィトゲンシュタイン家の分家の4番目の息子で問題児だろ?」

リンツァートルテ「問題児言うな。大体この土地と店だってうちのおじいちゃんが赤字になるのを分かった上で、快く貸してくれたものだって聞いてるんだぞ。さもウィトゲンシュタイン家が悪党みたいに語ってるけど、王国の統率のために必要な事をしてるだけなんだからな。まあそれはいいとして、このまま赤字が続くようなら土地と店は没収だからね。」

シュトレン「そこを何とか、来月には利益を上げるから待って。」

リンツァートルテ「嫌だ。おじいちゃんが初代店長を気に入っていたから、なあなあの関係で、しかも利益度外視でこの店が成り立ってたようなもんだったけど今は時代が違うんだよ。それ分かってる?」

リコラ「シュトレンはこの店を立て直そうと必死なんです。せめて再興計画を見届けてからでも遅くはないと思いますが。」

リンツァートルテ「君は?」

リコラ「リコラ・オーガスト・ロートリンゲンです。リコと呼んでください。」

リンツァートルテ「・・・・もしかしてベルガさんの妹か?」

リコラ「はい。ベルガは私の兄です。」

リンツァートルテ「ふーん、そうなんだ。じゃあさ、僕をベルガさんに紹介してくれよ。そしたら来月まで見送る事を考えても良いよ。」

アーサー「お前どういうつもりだよ?ベルはこの事と関係ないだろ。」

リンツァートルテ「嫌なら今すぐこの店を没収しても良いんだけどなー。」

リコラ「・・・・分かりました。今うちにいますけど、来ますか?」

リンツァートルテ「もちろん。じゃあ僕は外で待ってるから、君が来るまで待ってるよ。」

リコラ「分かりました。すぐ行きます。」

アーサー「良いのか?そんな約束して。」

リコラ「何とかなるよ。」

シュトレン「ごめん。私のせいで、リコにまで迷惑かけて。」

リコラ「困った時はお互い様でしょ。」

シュトレン「リコ・・・・。」

アーサー「それよりもこの店を繁盛させる方法を考えないとな。数日後にはお袋主催の合コンだってのに、全然アイデアが思いつかねえ。」

リコラ「合コン・・・・アーサー、今度ジュリーが主催する合コンの場所ってまだ決まってなかったよね?」

アーサー「まだ決まってなかったはずだけど、それとこれとは関係ないだろ。」

リコラ「それがあり得るかも。」

アーサー「どういう事だ?」

リコラ「パンチャタントラを次の合コンの場所にしてもらえば良いんだよ。」

アーサー「そうか、そういう事か。確かにそれなら場所代を稼げる上に、色んな人にこの店を知ってもらえるきっかけができるな。」

シュトレン「リコあったまいいー。」

アーサー「早速お袋に伝えてみるよ。どこも予約がいっぱいで場所に困ってたって言ってたから喜ぶかもな。」

リコラ「昨日ここでヘクセンハウスを作ったの。これが写真。」

アーサー「へー、めっちゃ手が込んでるなー。俺も久しぶりにヘクセンハウスを作ってみるか。今じゃ大手ヘクセンハウス専門店が完成した状態で販売してるけど、俺はやっぱ自分で作った方が楽しいから全然買ってなかったんだ。でもまさかヘクセンハウスの材料に特化した専門店があるのは今まで知らなかったなー。」

シュトレン「ヘクセンハウスを作る楽しさ、分かるの?」

アーサー「ああ、たまにルーシーと一緒にヘクセンハウスを作って遊んでたからな。今じゃそんな風習も誕生日とか特別な日にくらいしかしなくなったけど、昔は平日でもよくやってたなー。」

シュトレン「私もそう。日にちをかけて城を作った事もあったの。」

アーサー「よほどヘクセンハウスが好きなんだな。俺はもう帰るけど、リコも早く行った方が良いんじゃないか?」

リコラ「そうだね。私も帰らないと。また買いに来るね。」

シュトレン「ええ、ありがとね。」

パンドーロ「あの、少し良いですか?」

シュトレン「何?どうしたの?」

パンドーロ「せっかくですから、ここでもう1度リコさんと勝負したらどうですか?ずっとリコさんにリベンジしたかったんじゃなんいですか?」

シュトレン「それはそうだけど、勝負だったらまた機会がある時にすれば良いじゃない。」

パンドーロ「エウロパークからのヘクセンハウスの材料納品が打ち切りになったんですよね?」

シュトレン「何で知ってるのよ?」

パンドーロ「シュトレンがいない時にエウロパークの担当者がここに来て、代理で私が話を引き受けていたら材料納品を打ち切る事を宣告されて、理由は話したはずと言われました。何で黙ってたんですか?」

シュトレン「ごめん。私、ずっと自分だけで抱え込んでて、他の人を頼る余裕なんて全くなかった。」

パンドーロ「辛いのはあなただけじゃないんですよ。愛するあなたが辛そうな顔をしている姿を見ている私も辛いんですよ。私もこの店には小さい時からずっと通い続けたんですから、私だってこの店がなくなるのは寂しいんです。」

シュトレン「分かった。何とかしてこの店を守りましょ。」

パンドーロ「はい。私、シュトレンの元で働けて幸せですよ。」

シュトレン「パンドーロ・・・・んっ、ちゅっ。」

パンドーロ「んんっ、ちゅっ、ちゅっ。」

空気が読める客「あのー、ヘクセンハウスの材料を・・・・失礼しましたー。」

シュトレン「あっ、いや、違うの。店は開いてるから。」

パンドーロ「貴重なお客さんだったのに・・・・ごめんなさい。」

シュトレン「良いのよ。今の私たちは向かい風が吹いてるけど、いつか追い風を吹かせてみせるから。」

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三低女子の婚活事情 17ページ「追い詰められたお菓子の家」

2019年07月07日 | 三低女子の婚活事情
マドレーヌがカップリングした事でモンブランは落ち込んでしまい、

同じく婚活難民であるプファンクーヘンと意気投合していたのであった。

モンブラン「うん。私はモンブラン・ユリウス。おお、同士よ。」

プファンクーヘン「共に頑張ろう。良ければ情報交換しないか?」

モンブラン「喜んで。」

リコラ「何?この意気投合。」

シュトレン「分からない。」

ジュリー「あら、マドレーヌは来てないの?」

モンブラン「今日はシュトゥルーデルと遊園地だって。」

ジュリー「ふーん、その様子だと順調のようね。あの2人なら合うと思ってお見合いさせてみた甲斐があるわ。」

プファンクーヘン「今、お見合いさせてみたって言わなかったか?」

ジュリー「ええ、そうよ。」

プファンクーヘン「私にも婚活の必勝法を教えてくれないか?」

ジュリー「それは良いけど、あなたは?」

プファンクーヘン「プファンクーヘン・ホレーショ・コリングウッドだ。」

ジュリー「もしかしてコリングウッド家の令嬢なの?」

プファンクーヘン「ああ。だが全くカップリングしないんだ。」

ジュリー「そうだったのね。ベル、彼女のスペック教えて。」

ベルガ「彼女は王国海軍の元帥で実家は広大な土地の小麦粉農園だ。それが元でパン屋を営んでいる。」

ジュリー「海軍元帥でベーカーなのね。凄いじゃない。」

シュトレン「確か防衛戦争の時、駆逐艦部隊で倍以上の戦艦部隊を壊滅させたメルヘンの悪夢。王国軍屈指の提督だからモテても不思議じゃないと思うけどね。」

ベルガ「だが男勝りな性格と実績がある上に、仕事の忙しさが原因で出会いの機会そのものが乏しい。しかも30を過ぎてからは男がさらに遠ざかって、今じゃ立派な婚活難民だ。」

プファンクーヘン「気にしてる事を堂々と言うな。」

リコラ「でも何で女子は30を過ぎたら男子が遠ざかるのかな?」

ジュリー「若い子が好きな人が多いからよ。これは30を過ぎた男子でも見られる現象だけど、女子の方が顕著に出るの。どうしても産める年齢の限界が近づいているとみなされちゃうからね。」

ベルガ「メルヘンランドの技術力なら50歳までなら無理なく出産できるんだけどね。」

ジュリー「それでも大半の男子はより若い女子を求めるものなの。プファンはどんな男子が好きなの?」

プファンクーヘン「年下で面白い人だな。他は特にない。」

ジュリー「意外と条件軽いのね。」

プファンクーヘン「生活なら私の稼ぎだけで十分だし、理想のタイプなら無職でも構わないぞ。」

ジュリー「じゃああなたが求めるのは年上好きで稼いでいる女子をタイプとしている人で良いのかな?」

プファンクーヘン「そうだな。でも出会った男子からは男勝りなのが生意気だとか、同い年か年下がタイプの人ばかりで全くカップリングができなかったんだ。」

ジュリー「今までどんなタイプの婚活イベントに行ってきたの?」

プファンクーヘン「合コンだ。」

ジュリー「そりゃカップリングできないわけだ。」

プファンクーヘン「何か問題があるのか?」

ジュリー「合コンは婚活イベントの中でも結婚したくない人が婚活法の規定を誤魔化すために行く人ばかりなのよ。」

プファンクーヘン「なん・・・・だと。そうだったのか。」

ジュリー「お勧めは年上好き男子と年上好き女子限定編とかかな。」

プファンクーヘン「参考になった。サンクス。」

ジュリー「良いのよ。あなたは単に努力の方向音痴だっただけかもね。」

リコラ「あっさり解決したね。」

ベルガ「カップリングが決まったわけじゃないけどね。」

プファンクーヘン「なんか言ったか?」

ベルガ「べ、別に。」

リコラ「ところで今週はどんな婚活イベントがあるの?」

ジュリー「そうねー。こんな出会いがしたいとか希望ある。」

リコラ「うーん、私は一目惚れとかはしないタイプだから、出会った後から少しづつ歩み寄る感じが良いかな。」

ジュリー「じゃあ今まであった人たちと合コンしてみる?」

リコラ「合コン?」

ジュリー「うん、さっきも言った通り合コンは婚活法の規定を誤魔化すために行く人が多いから、婚活が目的じゃなくても問題なく参加できるし、知り合い以上の相手ばかりなら緊張する必要もないでしょ?」

リコラ「確かに。じゃあそれにしようかな。シュトレン?どうかしたの?」

シュトレン「えっ、何が?」

リコラ「さっきからずっと落ち込んでいるように見えるけど、何かあったの?」

シュトレン「店が潰れそうなの。」

リコラ「店が潰れそう?」

シュトレン「ええ、私の店はヘクセンハウスの材料を売る専門店なの。この前のヘクセンハウス限定編も店を宣伝する目的で出ていたの。最近大手チェーンのヘクセンハウス専門店が台頭してきて、すっかり客を奪われちゃったの。」

リコラ「そっちの方がお手軽って事?」

シュトレン「そうかも。うちのヘクセンハウスは材料を購入してもらってから客に作ってもらう方針なのだけど、大手ヘクセンハウス専門店は予め作られたヘクセンハウスを売る店なの。忙しい人からすれば既存のものを買う方が手軽だからね。」

ジュリー「そうなの。でもあたしは自分で手作りする方が好きだけどね。ベル、シュトレンのスペックを教えてくれない?」

ベルガ「彼女はシュトレン・ケルストストル・マルチパン。彼女はヘクセンハウス専門店の店長で母親の引退で店を継ぐが、その直後から大手ヘクセンハウス専門店との不利な競合を強いられる事になった。24歳独身。嫉妬深い性格で負けず嫌い。」

シュトレン「最後の方は余計だけど、何でそこまで知ってるの?」

ベルガ「観察しただけだ。」

リコラ「これはお兄ちゃんの偶然妄想トリックだよ。」

シュトレン「偶然妄想トリック?」

リコラ「うん。お兄ちゃんは人の気持ちは分からないのに、人の行動とか癖とか生活習慣は全部分かっちゃうの。」

シュトレン「何それ怖いんだけど。」

ベルガ「その様子だと何らかの因縁がありそうだけど、2人はどこで知り合ったの?」

リコラ「シュトレンとはエウロパークで出会って・・・・というわけなの。」

ベルガ「なるほど、リコがシュトレンの店の復興のチャンスを潰す格好になってしまったわけか。どうりでこの頃うちに客が多いわけだ。追加でスタッフを雇っていて良かったよ。」

リコラ「それ店がピンチな人の前で言う台詞じゃないよね?」

ベルガ「えっ、どういう事?」

ジュリー「シュトレンの店がピンチなのに自分の店が繁盛している事をわざわざ教える必要ないでしょって言ってるの。」

ベルガ「何で?何か問題あるの?」

リコラ「さっきシュトレンは嫉妬深い性格って自分で言ってたでしょ。なのに相手の嫉妬心を逆撫でするような事してどうすんの。」

ベルガ「僕はそんなつもりはないけど、嫉妬してる暇があるんなら相手に勝てるように自分磨きでもすれば良いじゃん。」

シュトレン「あんたには・・・・分からないでしょうね。才能に恵まれて、必死に守るべきものがないんだから。」

リコラ「あっ、シュトレン。お兄ちゃん、言い過ぎだよ。ちょっとシュトレンの様子を見てくるね。」

ベルガ「えっ、怒ってるの?何で?」

ジュリー「ベルって本当に空気が読めないのね。シュトレンの店はお母さんの形見なの。もし利益を上げられずに赤字のまま店を失ったら、店も土地もウィトゲンシュタイン家に売却しないといけなくなるの。幸い働かなくても生きていける国だから衣食住は確保されるだろうけど、彼女からすれば生きる希望を失ったのと同じなのよ。」

ベルガ「知らなかった。」

ジュリー「あなたが何故社会不適合者と呼ばれているのかがようやく分かったわ。」

その頃リコラはシュトレンと話しながらその場を歩いていた。

シュトレンはリコラに自分の店の事情を話していたのである。

リコラ「じゃあ店が潰れたらお母さんの形見がなくなっちゃうって事なんだね。」

シュトレン「ええ、だから何としても私はあの店を守らないといけないの。」

リコラ「今からシュトレンの店に行っても良いかな?」

シュトレン「良いけど、あんたは店大丈夫なの?」

リコラ「今から店に戻ってもやる事ないし、今日の分の仕事はとっくに終えてるからね。」

シュトレン「良いよ。じゃあついてきて。」

リコラ「店の名前は何て言うの?」

シュトレン「パンチャタントラ。ずっと昔から続いてきたヘクセンハウスの専門店。お母さんがパンチャタントラを気に入ってからは安定した職を捨ててまで当時の店長の下働きになって才能を開花させたの。」

リコラ「随分思い切ったね。」

シュトレン「それもあってパンチャタントラはお母さんの代までは売り上げも順調だったんだけど、お母さんは私と店を残してそのまま防衛戦争で戦死。それからは私が店を継いだのだけど、お母さんの売り方がほとんど資料に残ってない上に、大手ヘクセンハウス専門店が出てきた事もあって、あっという間に押されて赤字を出すようになったの。」

リコラ「店にいるのはシュトレンだけなの?」

シュトレン「一応雇ってる人もいるけど、今の売り上げだと1人を雇うのが限界なの。」

リコラ「お兄ちゃんに相談した方が良いんじゃない?」

シュトレン「できれば自分の手で解決したいんだけど。依頼したらお金かかるから。」

リコラ「シュトレンは友達に頼る時にお金を渡すの?」

シュトレン「えっ?」

リコラ「手伝わせてよ。」

シュトレン「私はずっとリコをライバル視してきたのに、何でそうお人よしなのよ。」

リコラ「そりゃー、私のせいでシュトレンの店を窮地に陥れる格好になった部分もあるから、赤字を解消するまで店を手伝うよ。」

シュトレン「・・・・分かった。ううっ、ううっ。」

リコラ「何で泣いてるの?」

シュトレン「私・・・・自分が情けない。技術があるのに店もまともに経営できないし、お人好しなライバルに頼るハメになるし、こんな思いは二度とごめんよ。」

リコラ「1人でできる事なんて知れてるよ。私もお兄ちゃんも1人じゃとても生きていけないし。」

シュトレン「リコ・・・・そうね。(1人でできる事なんて限られてるのに、何で私、何でも1人で抱え込むようになってたのかな。やっぱり店の事ばかりを考えるようになってから、いつも自分の事ばかり考えて、他の人の事なんて全く考える余裕なんてなかったかも。そんなんでリコに勝とうなんて思っていた時点で、負けていたのかもしれないわね。)」

リコラ「シュトレン、どうかしたの?」

シュトレン「何でもないわ。着いたよ。ここが私の店、パンチャタントラ。」

リコラ「この家自体がヘクセンハウスみたいだね。」

シュトレン「そうなの。このドアの部分もチョコレートをイメージして茶色にしてるの。パンドーロ、今帰ったよ。」

パンドーロ「シュトレン。今日もお客さん来ませんでしたよ。その方は?」

シュトレン「彼女はリコラ・オーガスト・ロートリンゲン。私の・・・・友人よ。」

パンドーロ「リコラ・オーガスト・ロートリンゲンって、あのワールドチョコレートカップで優勝した世界一のショコラティエじゃないですか。私ずっとファンだったんです。」

リコラ「そ、そうですか。」

パンドーロ「私はパンドーロ・ルアーナ・スカンツィオ。シュトレンとはカップルなんです。」

リコラ「そうだったんですね。シュトレンにも恋人いたんだ。」

パンドーロ「意外って顔してますね。」

リコラ「女子とつき合ってるとは思ってなかったので。」

シュトレン「私は両性愛者で彼女は同性愛者で同じ学校の同期なの。メルヘンランドじゃ王国民の5割が性的少数者なんだから、別に不思議じゃないでしょ?」

リコラ「そうだね。じゃあ何で婚活してるの?」

シュトレン「店の宣伝に決まってるでしょ。パンドーロとは洋菓子専門学校のヘクセンハウス科で隣の席だったの。普段は配布されたアプリで学習してたから学校にはほとんど行ってないけど、実技の日だけクラス分けされた教室に行くからその時にね。」

リコラ「そうだったんだ。」

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