社会不適合者エスティのブログ

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三低女子の婚活事情 50ページ「運命を変えた者たちの行方」

2020年03月29日 | 三低女子の婚活事情
リコラはアーサーに誘われて完備された冬のプールにまで遊びに来ていた。

そこでトラブルに巻き込まれるがリコラはアーサーへの想いが募っていった。

リコラ「私も今日は今までできなかった分遊び尽くすんだから。」

アーサー「その意気だ。」

リコラ「うん、じゃあいくよ。それそれっ。(こんなに遊んだのって何年ぶりかな。小さい時はずっとお兄ちゃんとこうやって遊んでた気がする。アーサーと一緒にいると、私が小さかった時の事を思い出させてくれる。)」

アーサー「おらおらっ。あっはは。顔にかかったな。」

リコラ「あーもう、髪乱れちゃった。」

アーサー「俺が直してやるよ。」

リコラ「できるの?」

アーサー「昔はよくルーシーの髪を乾かしたり、色んな髪型にして遊んだりしてたんだ。」

リコラ「女子の髪をいじるなんて。昔のアーサーって残酷。」

アーサー「子供は残酷なんだよ。世の理を知らないからこそ、たくさんやらかしながら学んでいくんだ。」

リコラ「また理屈ばっかり。」

アーサー「じゃああれ乗るか。」

リコラ「浮き輪に乗って滑るんだね。何人も乗れる大きさだね。」

アーサー「浮き輪借りてくるか。」

リコラとアーサーは夕方になるまで色んなプールで遊び尽くした。

帰宅ラッシュになり疲労困憊になったのか人気のない所で休んでいた。

リコラ「ふう、疲れた。でも凄く楽しかった。」

アーサー「俺もこんなに遊んだの、何年ぶりだろうな。」

リコラ「あれっ、ほとんど人がいないね。」

アーサー「もう夕方だからな。」

リコラ「私たちも帰ろうか。」

アーサー「いや、俺はもっとリコの水着姿を見ていたい。」

リコラ「いつからそんなに変態になったの?」

アーサー「俺は身内には一切遠慮しないんだ。もう人もいないから今の内に済ませよう。」

リコラ「えっ?あん、ああっ、ちょっと、何するの?」

アーサー「水着越しでもしっかり伝わってくるなー。このたまらない感触。」

リコラ「まさかとは思うけど、ここでするの?」

アーサー「どうせシャワーで全部流れるんだから問題ないだろ。」

リコラ「それはそうだけど、んっ、ちゅっ。あんっ、あんっ。」

アーサー「しー、そんなに大きな声出したらばれるぞ。」

リコラ「アーサーの意地悪。」

アーサー「んんっ、ちゅっ。」

リコラ「んっ、ああっ、気持ち良い。」

アーサー「まさかたったの1年で、リコの体を自由に触れる日が来るなんて思ってなかったよ。」

リコラ「あんっ、せめて場所を選んでほしかったけど、アーサーなら・・・・良いよ。」

アーサー「リコ・・・・愛してる。ちゅっ。」

リコラ「私も、愛してる。ちゅっ。」

アーサーは後ろからずっとリコラの豊満な胸を揉みしだいていたが、

いつの間にか水着を脱ぐとばれるかどうかのスリルを楽しんでいた。

アーサー「うっ、はあ、はあ。」

リコラ「はあ・・・・はあ・・・・もう、全部中に出しちゃってるし。」

アーサー「最初にやった時と同じだな。体位は違うけど。夕食食べに行くか。」

リコラ「もう私のお腹いっぱいなんだけど。」

アーサー「じゃあシャワー行ってこいよ。外で待ち合わせな。」

リコラ「うん・・・・はあ、まさかここでするとは思わなかった。(アーサーって結構大胆なところあるんだね。でも誰かにばれてたら本当にやばかったかも。それとも普段の私が真面目過ぎるのかな。)」

マドレーヌ「あっ、リコ、久しぶり。こんな所で会うなんて偶然だねー。」

リコラ「マドレーヌにモンブラン。何でここに?」

モンブラン「私たちも遊びに来ていたの。店の方は全然客が来なかったからねー。」

リコラ「という事は今日はオフだったの?」

モンブラン「うん、すっごく楽しかったよー。」

マドレーヌ「リコも来てたんなら一緒に遊びたかったなー。」

モンブラン「もしかしてアーサーと一緒に来てたの?」

リコラ「うん、ずっと一緒に遊んでたの。けどもう体力の限界。」

マドレーヌ「こんなに羽を伸ばすの久しぶりだからねー。じゃああたしたちもう帰るから、じゃあねー。」

リコラ「うん、じゃあね。私も早く出ないと。」

アーサー「おっ、リコ。先に出てたんだな。」

リコラ「うん、今着替えたとこ。」

アーサー「さっきオフで遊びに来ていたアルホたちにばったり会ってな。つい話し込んじまった。」

リコラ「私もさっきマドレーヌたちに会ったの。」

アーサー「えっ、マドレーヌたちって店番だったはずじゃないのか?」

リコラ「店に全然人が来ないから暇潰しに来たんだって。」

アーサー「俺たちみんな友人に会ったのか。世間は狭いな。」

リコラ「多分これのせいじゃないかな?」

アーサー「あー、なるほどなー。そういえばここ、今は冬だからっていう事もあって今日から半額セールになってたんだよ。俺もそれでリコを誘ったんだ。」

リコラ「最初からここでやるつもりだったくせに。」

アーサー「そう言うなよ。リコだって気持ち良さそうにしてただろ。」

リコラ「一生の不覚だよ。」

アーサー「分かった。じゃあ今日は俺が奢るよ。」

リコラ「それならこの前のドライブデートの時に見つけた店に行こうよ。フルコースでも注文しようかな。」

アーサー「容赦ないな。」

リコラ「あんな恥ずかしい思いさせたんだから、これくらいは当然でしょ。」

アーサー「分かったよ。」

リコラとアーサーは夕食を済ませるとギルドカフェへと帰っていった。

ベルガたちも旅行を終えて帰ってきたがそこには意外なゲストもいた。

リコラ「お兄ちゃん、帰ってたんだね。」

ベルガ「うん、プールに行って夕食を済ませてきたみたいだから夕食を作る手間が省けたよ。」

リコラ「そうだね。今日はアーサーも泊まるから。」

ヘレントルテ「私も今日はここで泊まるの。」

ベルガ「ずっと他の女子の相手をしてたから、なかなか一緒に寝られなかったんだよね。」

ヘレントルテ「そういう事よ。」

リコラ「で?このお兄ちゃんにそっくりな人は誰なの?」

ベルガ「ロムル・オーガスト・ブルートゥルス。」

リコラ「えっ、メルヘンランド王国初代国王の?」

アーサー「嘘だろ。まさか本当に。」

ロムル「君たちには初めましてだね。」

リコラ「リコラ・オーガスト・ロートリンゲンです。リコと呼んでください。」

アーサー「アーサー・モンターニャ・ファヴァレット。リコとつき合ってるんだ。」

リコラ「不老不死になって世界中を冒険しているって噂になってましたけど、本当だったんですね。」

ロムル「ああ、元々は対外進出を企んでいた息子の計画を阻止するために、息子よりも長生きする目的で不老不死の魔法を開発して使ったんだが、強大な軍事力を前に諦めざるを得なかった。いくら不老不死でも体力が尽きればしばらくは魔法が使えなくなるからね。」

ベルガ「魔法兵器はその気になれば世界を滅ぼす事もできる。それを危惧していたんだろう?」

ロムル「そうだ。だが息子は魔法兵器が持つ力に溺れ、世界を魔法兵器で支配できると思うようになった。だが息子は気づいていなかった。国は力で支配できても、人の心は力では支配できないんだ。たとえ世界征服を実現したとしても、後に続く王に統治者としての才がなければ、いずれ分裂して元に戻ると警告したが、息子は聞く耳を持たなかった。」

リコラ「それが理由だったんですね。」

ロムル「僕は息子の愚かな計画の末路を見届けるために生き続けた。結局は僕が思った通りになってしまったがな。」

アーサー「一応補足しておくと、2代目国王のレムスが求めていたのは、かつてあんたが望んでいた平和な世の中だ。レムスはあんたがメルヘンランド島を統一するまでの過程を見ていたから、力でしか平和を実現できないって思うようになったんだ。」

ロムル「随分と詳しいね。かなりランクの高い大学を出ているようだね。確かに君の言う通りだ。僕は息子たちに悪いロールモデルを見せてしまったようだ。」

アーサー「でも悪い事ばかりじゃない。最盛期には餓死者が1人も出なかったくらいどこもかしこも栄えてた。正真正銘の世界平和が実現された世の中だった。今でも全世界の言語には古代メルヘンランドの名残が残ってる。レムスはあんたが実現した国内の平和を外の人にも教えたかったんじゃないかな。」

ロムル「僕や子孫たちのした事が正しかったかは分からない。だが僕はどうしても平和な世の中を作りたかった。本国以外の国が全て独立して、王国が共和制に変わったのを知ってからは、偽名を使いながら世界中を回って事件という事件を解決に導いてきた。かつて子孫たちがしてきた事への罪滅ぼしになると思ってね。」

ヘレントルテ「もう統治者にはならないのですか?」

ロムル「僕の力ではせいぜい一国の面倒を見るのが限界だ。かつての子孫たちがそうだったように。それにもう統治者は飽きた。今は世界中で起きている事件の解決が僕の仕事だと思ってる。」

メルヘンランド女王「ロムルよ、久しぶりだな。」

ロムル「いつもと変わらないようだな、エイリス。」

リコラ「エイリス?」

アーサー「女王陛下の本名はアリス36世だ。一度退位したけど後に許されて元老院から象徴国王の称号を授けられたんだ。大学の歴史学の授業でやってたんだ。」

リコラ「そうだったんだ。でも何でエイリスなの?」

ロムル「アリスは現代語だ。古代メルヘンランド語ではエイリスと読むんだ。」

メルヘンランド女王「妾も皆の者から本名で呼んでほしいのだが、なかなか呼んでくれないのだ。」

リコラ「仮にも女王陛下ですから、仕方ありませんよ。」

ベルガ「それじゃあ、ロムルの謎が全て解けたところで、有終の美を飾るために乾杯しよう。」

リコラ「そうだね。早速飲み物を入れるね。」

ロムル「この国も随分と賑やかになったものだ。そうは思わないか?」

メルヘンランド女王「そうだな。かつてのように平和な国になってほしいものだ。」

ベルガ「人数は昼よりも減っちゃったけど、婚活法の終焉にかんぱーい。」

みんな「かんぱーい。」

それから3年の時が過ぎるが、リコラとアーサーは順調に交際を続け、

ついに新居を構えてベルガから独立し、2人で一緒に暮らす事になった。

アーサー「婚活法から解放されてもう3年か。」

リコラ「色んな事があったけど、こうしてアーサーと会えたのは収穫だったかな。」

アーサー「俺は婚活法がなくったって、リコとはどっかで会ってたと思うけどな。そういえば、ベルはどうしたんだ?」

リコラ「お兄ちゃんは独裁官として防衛戦争に参加してるよ。当分は戻って来れないって言ってた。」

アーサー「あいつもついに独裁官か。いつかなるとは思ってたけど、忙しくなるだろうな。」

リコラ「あのまま権力を独占しちゃったりしてね。」

アーサー「マドレーヌたちはどうしたんだ?」

リコラ「マドレーヌとモンブランは民族衣装の事業がうまくいって、今じゃウィトゲンシュタイン家が宣伝してくれた事もあって、注文が殺到してるんだって。」

アーサー「2人共結婚したんだよな。」

リコラ「うん、シュトレンたちもうまくいってるんだって。」

アーサー「リコはチョコレート専門店とショコラティエ教室を始めて、ここから全国大会の優勝者が出てから一気に有名店になったもんな。」

リコラ「アーサーだって、今じゃ余った食材で作った食品が多くのスーパーやコンビニで売れるようになったでしょ。」

アーサー「お互い出世したもんだな。」

リコラ「そうだね。実はね、嬉しい報告があるの。」

アーサー「どうしたんだ?」

リコラ「お腹に赤ちゃんがいるの。」

アーサー「リコ・・・・そうか。きっと良い子になるよ。」

彼女の名前はリコラ・オーガスト・ロートリンゲン。

後に、著名な洋菓子職人たちを育て上げ、メルヘンランド王国の料理評論家となった女である。

しかしそんな彼女も、若い頃は悩み苦しみながら、

婚活をさせられていた、引っ込み思案な三低女子だったのである。

自分がどんな道を歩んでいくのかを、この女はまだ知らない。

彼女の戦いは、まだ、始まったばかりなのだから。

50ページ目終わり

三低女子の婚活事情 49ページ「周囲の変わっていく者たち」

2020年03月22日 | 三低女子の婚活事情
リコラたちはオーブの結婚相手を見つけるためにジュリーに頼るが、

彼女の指摘でようやくお互いの目的の違いに気づき始めたのである。

リコラ「こうも噛み合わないとはね。」

ジュリー「ええ、ルーシーは結婚相手を見つけさせるため。オーブはルーシーに自分をあたしに紹介してると思ってたのね。」

オーブストトルテ「僕は帰らせてもらうよ。」

ジュリー「待って、ルーシーが唯一無二なんて考えてるうちは結婚なんてできないよ。」

オーブストトルテ「どういう事だい?」

ジュリー「ていうかあたしの事を覚えてないの。昨日ギルドカフェで会ったでしょ。」

オーブストトルテ「ギルドカフェ・・・・あっ、まさかあの時ルーシーの近くの席にいた。」

ジュリー「やっと思い出してくれたね。あなたの言動はずっと見てたけど、あんな強引な性格じゃルーシーとはまず合わないと思うし、ルーシーが嫌がってる以上は、本気でルーシーの幸せを願ってるなら諦めてくれない?」

オーブストトルテ「そ、そんな。」

ジュリー「その代わり、ルーシーに匹敵する婚活女子たちを紹介するから。ねっ。もしかしたらルーシーよりも相性の良い相手に出会えるかもしれないでしょ。」

オーブストトルテ「本当にルーシーに匹敵する相手を紹介してくれるのかい?」

ジュリー「もちろんよ。あなたなら色んな婚活女子の中から選び放題だし。」

オーブストトルテ「・・・・分かったよ。」

リコラ「大丈夫ですよ。ジュリーは今までに多くの婚活している人たちをカップリングに導いたんですから。」

オーブストトルテ「(凄く可愛い。ファッションセンスも悪くない。そして何より、でかい。)ジュリー、彼女とお見合いさせてくれないか?」

ジュリー「駄目よ。彼女はもう相手がいるから。」

オーブストトルテ「なんという事だ。僕が良いと思った相手に限って既に相手がいる展開ばかりじゃないか。」

ジュリー「そりゃそうよ。あなたが最初から婚活していれば、リコやルーシーみたいな人とカップリングできたはずなのに、あなたはずっと婚活法の間はお茶会でごまかしてたんでしょ。その間に良い人はみんなカップリングしていったの。」

オーブストトルテ「そうだったのか。ジュリー、僕に婚活の極意を教えてくれないか?」

ジュリー「ええ、もちろんよ。」

オーブはジュリーの指導を受ける事になり、リコラはギルドカフェに帰った。

リコラは店番をしながらチョコ作りをし、アーサーと仲睦まじく話していた。

アーサー「テンパリングはじっくりやってたのに、ミルクチョコレートはかなり迅速にやるんだな。」

リコラ「ミルクとチョコは混ざりにくい上に、早くかき混ぜないと分離した状態で固まっちゃうから、混ぜるのは少しずつだけど混ぜる時は迅速にやるの。」

アーサー「分かってはいたけど相応の工夫が必要なんだな。これをショコラティエ教室でやってるのか?」

リコラ「うん。何かを極めた人がずっとプレイヤーで居続けるのも良いけど、私は何かの頂点に立ったら今度は後に続くプレイヤーに教える立場になるべきだって思ったの。」

アーサー「いつかリコの指導を受けた人の中からワールドチャンピオンが出てくるかもな。」

リコラ「だと良いね。」

アーサー「そういえば、オーブはもう迫ってこなくなったのか?」

ルーシー「ええ、彼が次の相手を見つけるためにお母さんに紹介するって言ったら、あたしと結婚するものだと思ってお母さんに紹介してるって勘違いされたけど、今頃はお母さんの婚活コンサルティングに夢中になってるはずよ。」

アーサー「とことん勘違いが多いんだな。」

ルーシー「彼、悪い人じゃないんだけど、彼の芸術の素晴らしさが全然分からなかったし、性格や価値観にも一般の人との乖離があったから、あたしとは人生観合わない気がしたの。」

リンツァートルテ「ルーシーさん、うちの兄が世話になったね。」

ルーシー「リンツ、どうしたの?」

リンツァートルテ「ベルガさんがワンダー島までお出かけしちゃったから僕も行きたかったんだけど、ヘレンに反対されて行けなかったからこっちに来たんだ。」

リコラ「お兄ちゃんなら明日には帰ってくると思いますよ。」

リンツァートルテ「そうか。思えばずっとリコラさんは苦労の連続だったね。慣れない婚活法に振り回され、婚活市場での色んな人との出会いがあった。でもそれがあったからここまで成長できたんだと思うよ。」

リコラ「確かに婚活法がなかったら、お兄ちゃんみたいにずっとプレイヤーの立場だったかもしれませんね。」

アーサー「あいつは婚活法の状態になっても教える立場にはならなかったけどな。」

リンツァートルテ「ベルガさんはぶれないからね。」

ルーシー「あたし決めた。リコの魅力を超える人に出会ったら、その人とつき合おうと思う。相手が男子でも女子でもその他でも関係なく、ずっと愛しぬくわ。」

リコラ「ルーシーも次の目標が決まったんだね。」

ルーシー「リコはアーサーに取られちゃったからねー。まっ、リコの魅力を超える人なんてそうそう現れないと思うから、その日が来るまではずっと仕事一筋でやっていこうと思うの。」

リコラ「当分はアーサーの会社を伸ばしていかないと心配だもんね。」

アーサー「あのなー、俺がルーシーを雇ったのは専属モデルになってもらうだけじゃないぞ。うちの会社が伸びていけば、どっかのモデル事務所がルーシーに注目するかもしれないだろ。このやり方で誘いを受けたなら、それはもう本人の力で勝ち取ったものと言えるだろ。」

リコラ「ルーシーの扱いに慣れてるんだね。」

アーサー「俺がまだ小さい時に、誰かに叶えてもらったものを夢とは言わないって、お袋が言っていたのを思い出したんだ。もしかしたらルーシーもそう思ってるんじゃないかと思ってな。」

ルーシー「アーサー。」

手の平返し女「ねえ、あなたアーサー君でしょ?あたしの事覚えてる?ずっと前婚活イベントで会ったでしょ。」

アーサー「そういえば会った事あるな。あんたの事はよく覚えてるよ。確か俺の会社が倒産した後、婚活法対策課所属になったって事を知った途端に俺から離れていったよな?」

手の平返し女「あー、あの時はそうだったけど、今はまた起業して事業もうまくいってるって聞いたの。あたしそれでアーサー君の事見直したの。ねえ、良かったらあたしとつき合わない?」

アーサー「断る。」

手の平返し女「えー、どうして?」

アーサー「もうすでにカップリングしている女がいるんだ。それに、たとえ俺が誰ともカップリングしていなかったとしても、失敗した時に見限る女なんかとつき合いたくないんだよ。」

手の平返し女「ひ、酷い。うわあああああん。」

リコラ「帰っちゃったね。」

アーサー「あれで良いんだよ。」

ルーシー「リコはアーサーがどんなにピンチでも決して見捨てなかったもんね。あっ、あたしもう帰るね。明日はうちの会社のプロモーションで出かけないといけないから。じゃあね。」

リコラ「ルーシーも仕事頑張ってるんだね。」

アーサー「あれはルーシーなりに気を遣ってくれたんだよ。さっきの客がいなくなって3人だけになったから、こうして俺たちを2人きりにするために帰ったんだ。明日のプロモーションだって午後からだし、もっとゆっくりしようと思えばできたはずだ。」

リコラ「アーサーってたまにお兄ちゃんみたいな事言うよね。」

アーサー「これは推理じゃないぞ。ずっと一緒に暮らしてると、何故か自然に分かるようになるんだ。」

リコラ「そうだったんだ。」

アーサー「確か明日は休みだったよな。良かったら久しぶりにデートに行かないか?」

リコラ「うん、良いよ。でも仕事は良いの?」

アーサー「良いんだよ。俺も経営者だからな。休もうと思えば休めるんだよ。」

リコラ「私もお兄ちゃんと共同経営者だから休みの日は選べるけど、普段はお兄ちゃんがヘクセンハウスと一緒に出かけちゃうから全然休めなかったなー。私も婚活法が終わった記念にデートしちゃおっかな。」

アーサー「じゃあプールでも行くか。明日の正午にアウグストのプールに集合な。」

リコラ「うん、分かった。あっ、でも水着持ってない。」

アーサー「水着なら貸し出ししてるから問題ないぞ。」

リコラとアーサーは翌日になると昼食を済ませて水着に着替え、

プールサイドで会うがアーサーの顔は真っ赤になっていた。

リコラ「どうしたの?顔赤いよ。」

アーサー「やっぱ胸大きいな。くびれもあるし。」

リコラ「もう、触らないでよ。ただでさえ恥ずかしいんだから。」

アーサー「じゃあもっと恥ずかしくしてやろうか。周りを見てみろよ。」

リコラ「周り?ええっ、何で私見られてるの?」

エロい男「すげえ、あの子スタイル良いじゃん。」

よこしまな男「顔も可愛いし、何より、でかい。」

魔性の女「理想的な顔と体ね。触ってみたい。」

アーサー「これで分かっただろ。リコは顔も体もかなり恵まれてるんだよ。」

リコラ「私が小さい時はクラスメイトから地味な子扱いされてたから気にならなかったのに。」

アーサー「ウォータースライダーでも行くか。」

リコラ「あれって、カップルは2人で滑れるって書いてるよ。」

アーサー「もうカップルなんだから問題ないだろ。俺後ろに座るから。」

リコラ「あんまり並んでないね。」

アーサー「今は冬だからな。でも室内は恒温の魔法で温度も水温も一定に保たれてる。俺はそれを知ってるから誘ったんだ。メルヘンランド大学の魔法学の授業でやってたんだ。」

リコラ「ここにきて教養の差が出たね。」

アーサー「ほら、俺の上に座れよ。」

リコラ「う、うん。ひいっ、あああああぁぁぁぁぁ。」

アーサー「おおおおおぉぉぉぉぉ。」

リコラ「ふふっ、結構楽しいねこれ。」

アーサー「じゃあ今度はあっちのウォータースライダー行ってみるか。」

リコラ「うん。」

不良の男「なあ、そこの彼女。そんな男なんかより俺と一緒に遊ぼうぜ。」

リコラ「遠慮しときます。」

不良の男「そんな事言わずにさ。なっ?良いだろ?」

リコラ「止めてください。離してください。」

アーサー「その汚い手を離せ。お前ら外国人観光客だな。だったらこの国のルールくらい守れよな。」

不良の男「ああん?この国のルールなら守ってるだろうが。」

アーサー「ここはコミュ障が多数派の国だ。ナンパなら他の国でやってくれ。」

不良の男「何だとてめえ。俺とやろうってのか?」

アーサー「あいにくだが、人を殴って訴えられるのはもうんざりなんでね。ちょっと警備員呼んでくるわ。女子を誘拐しようとしてるから職質してくれってな。」

不良の男「てめえ、ぶん殴られてえのか。」

アーサー「今俺を殴ったら間違いなく強制送還だぞ。それでも良いならやってみろよ。」

不良の男「・・・・ちっ、何だよ偉そうに。たくっ、やってらんねーぜ。」

アーサー「ふう、逃げてくれたか。」

リコラ「また助けられちゃったね。でも前にもこんな事あった気がする。」

アーサー「最初に婚活パーティで会った時の事を思い出すな。もうあんな事には関わりたくなかったんだけど、リコが魅力的すぎるからみんな放っておかないんだよ。」

リコラ「モテるって良い事ばかりじゃないんだね。」

アーサー「良い奴だけじゃなくて悪い奴も引き寄せてしまうからな。モテるのもモテないのも一長一短だ。」

リコラ「ていうか強制送還って本当なの?」

アーサー「あんなの嘘に決まってるだろ。せいぜい厳重注意がいいとこだ。」

リコラ「アーサー・・・・ありがとう。」

アーサー「ちゅっ、ちゅっ。」

リコラ「んっ、ちゅっ。」

アーサー「リコが無事で良かった。」

リコラ「もう、恥ずかしいよ。また胸触ってるし。」

アーサー「じゃあ次行くか。」

リコラ「あっ、誤魔化した。」

アーサー「それっ。」

リコラ「もう、いきなりそばにある水鉄砲使うんだからー。じゃあ私もお返し。」

アーサー「うわっ。やっぱり遊び足りないんだな。ならとことんつき合ってやるよ。」

リコラ「私も今日は今までできなかった分遊び尽くすんだから。」

49ページ目終わり

三低女子の婚活事情 48ページ「勘違い男に混乱させられる者たち」

2020年03月15日 | 三低女子の婚活事情
リコラたちは婚活法が終焉を迎えるとやりたい事を思う存分楽しむ生活をしていた。

ベルガたちは婚活法が終わった記念にリゾート地へと遊びに行っていたのである。

ジュリー「リコ、最近ショコラティエ教室を開いてるって聞いたけど本当なの?」

リコラ「うん、チョコの作り方は極めたから、今度はチョコの作らせ方を極めようと思って始めたの。ショコラティエの知り合いに教える場所を設けたいって話してたら喜んで貸してくれたの。」

アーサー「俺も今度行って良いか?」

リコラ「うん、良いよ。」

ルーシー「じゃああたしも行く。」

ジュリー「随分と気前の良い知り合いがいたのね。」

リコラ「知り合いがキルシュと知り合いだった事もあって、キルシュが教室用の建物を貸してくれる事になったの。」

アーサー「キルシュって妊娠した状態でワールドパティスリーカップの国内予選と本選に出場して優勝した子だろ。今回はたまたま自国での開催だったから良かったけど、外国での開催だったら反対されてただろうな。」

リコラ「重労働にあたる仕事はサポーターに任せてたから大丈夫だったの。今は無事にお兄ちゃんの子供を出産してるよ。」

アーサー「やっぱりベルの子供だったか。」

リコラ「元気な男の子だって、それから数日後にはバウムも男の子を出産したの。」

アーサー「叔母になったんだな。」

リコラ「お兄ちゃんと同じ事言わないでよ。アーサーだって義理の叔父でしょ。」

アーサー「まだ結婚してないだろ。」

ジュリー「まだって事はこれからするの?」

アーサー「するとしても事実婚だ。」

リコラ「私もそれが良い。」

ジュリー「うーん、やっぱり今の若い子に結婚は重すぎるのかなー。」

ロミー「法律婚でも事実婚でも同等の扱いだけど、余程の決意がなければしちゃいけないって思ってるんだろうな。統合してないだけで内容は一緒なんだけどな。」

リコラ「そうだったんだ。」

ジュリー「そうなの。基本的に一生を共にする決意をしている相手とは法律婚、気軽に会いたい時だけ会う場合は事実婚を選ぶという意味合いが強いんだけど、法律上はどっちも同じ扱いなの。」

ルーシー「ねえ、リコ。またオーブから結婚の催促をされてるんだけど、どうしよう。」

リコラ「えっ、まだ諦めてなかったの?」

ルーシー「うん。明日ウィトゲンシュタイン家のパーティに招待されちゃって、友達を1人まで同伴できるんだけど、一緒に来てくれない?」

リコラ「直談判しろって事?」

ルーシー「あたしの言う事には耳を貸さないから、ウィトゲンシュタイン家に縁のあるリコなら何とかできるんじゃないかなって思ったの。」

リコラ「となると公爵を説得する事になるね。」

ロミー「ルーシー、こんなに良い縁談はもうないと思うが、本当に良いんだな?」

ルーシー「当たり前でしょ。あたしは本気で愛し合える人じゃないと嫌なの。相手が男子でも女子でもその他でもそれは同じよ。」

リコラ「分かった。じゃあ明日一緒に行くよ。友人の頼みだからね。」

ルーシー「ありがとう。」

ジュリー「ルーシー、もし相手がしつこいようなら通報するのよ。」

ルーシー「分かってるよ。」

翌日にリコラとルーシーはウィトゲンシュタイン家のパーティ会場へ行き、

公爵を説得する事になるがオーブに先手を打たれてしまったのである。

オーブストトルテ「待ってたよ、僕の愛しのルーシー。友人も連れてきたんだね。」

ルーシー「あたしは公爵に直談判しに来たの。公爵に会わせて。」

オーブストトルテ「おいおい、そう照れなくても良いのに。」

高貴な男「リコちゃん久しぶりだね。」

リコラ「お久しぶりです。」

オーブストトルテ「知り合いなの?」

高貴な男「ああ、ベルとリコちゃんは私が仲良くしていた民族衣装専門店をやっていた友人の子供だ。君と会うのは初めてだね。私はプリンツレゲンテントルテ・フォン・ウィトゲンシュタイン。みんなからは公爵と呼ばれているよ。」

ルーシー「あたしはルーシー・モンターニャ・ファヴァレット。今日は公爵に言いたい事があって来たの。」

オーブストトルテ「ルーシー、父さんに対して無礼じゃないかい?」

プリンツレゲンテントルテ「まあまあ、良いじゃないか。彼女にも何か思う事があるのだろう。」

ルーシー「ずっと交際を断ってるのに息子さんがしつこいから、直談判しに来たの。」

プリンツレゲンテントルテ「えっ、そうなのか?確かロミーから息子の彼女を探しているなら、うちの娘を紹介すると聞いたのだが。」

リコラ「ロミーはルーシーに何も知らせないまま縁談を勧めていたんです。」

プリンツレゲンテントルテ「そうだったのか。しかし昨日オーブがルーシーのためにと言って婚約指輪を買っていたぞ。」

ルーシー「はあ?オーブ、一体どういう事なの?」

オーブストトルテ「よくぞ聞いてくれた。この婚約指輪はエウロパから取り寄せた特注品だ。」

ルーシー「そういう事を聞いてるんじゃないの。断ってるのに何でこんな事するのって聞いてるの。」

オーブストトルテ「そりゃー愛する君のファンだからさ。サプライズだよ。」

プリンツレゲンテントルテ「オーブ、確か彼女とつき合ってるって言ってなかったか?」

オーブストトルテ「だからこうして来てくれたんだよ。つき合う気がないなら最初から来ないでしょ。」

ルーシー「(あちゃー、こいつに交際の口実を与えてしまったわね。)」

オーブストトルテ「今日は婚約記念に一杯どう?」

ルーシー「遠慮しておくわ。あたしはお見合いを正式に断る意思を伝えるために来たの。勘違いしないでくれる?」

オーブストトルテ「ええっ、でも君は初めて会った時も僕に笑顔を振りまいてくれたじゃないか。」

リコラ「あのー、基本的にモデルは誰に対しても笑顔を振りまくものですよ。」

ルーシー「どうやら恋愛未経験のようね。」

プリンツレゲンテントルテ「オーブ、彼女にその気はないようだ。彼女の事は諦めなさい。」

オーブストトルテ「そんなー。」

ルーシー「今度からはちゃーんと相手の意思を確認する事ね。」

リコラ「オーブさんは婚活イベントの経験はあるんですか?」

プリンツレゲンテントルテ「それが婚活法があった時は、ずっと家でホームパーティをしていたんだ。外の婚活イベントへ行かせれば婚活女子たちによる奪い合いになると思ってね。それに配慮して行かせなかったんだ。」

ルーシー「スペックだけは申し分ないんだけどねー。」

リコラ「だから女子の気持ちに鈍感な上に勘違いまでしたんですね。」

ルーシー「ホームパーティって事はそこまで真面目な婚活イベントじゃないって事だから、身近な人たちだけでカップリングもせずに過ごしてきたから勘違い男になっちゃうのよ。」

オーブストトルテ「ひ、酷い。」

エステルハージトルタ「まあまあ、誰にでも失敗はあるのですからもうこの辺にしておきましょう。」

プリンツレゲンテントルテ「そうだリコちゃん。もし良ければオーブに婚活のコツを教えてやってくれないか?」

リコラ「それなら私よりも適任がいますから紹介しておきますね。」

プリンツレゲンテントルテ「それは助かる。」

ルーシー「なにぽかーんとしてんの?いつか君を超える女とカップリングしてみせるよ、くらい言ったらどうなの?」

オーブストトルテ「婚活はもううんざりだ。」

エステルハージトルタ「あっ、ちょっと。お待ちください。」

プリンツレゲンテントルテ「放っておけ。あいつは元々こういう事には向いてないのだから。」

エステルハージトルタ「はい、公爵様。」

リコラ「エステルさん、やっと元気出してくれたんですね。」

エステルハージトルタ「は、はい。私の事を心配してくださったのですか?」

リコラ「はい。婚活戦線を共に戦った戦友ですからね。」

エステルハージトルタ「ありがとうございます。あれは結局独裁官の采配ミスという事で、私の責任はかなり寛大なものになったんですよ。私は誰ともカップリングはできませんでした。お嬢様が無事にベルガさんと結ばれたので私は満足です。お嬢様の幸せが私の幸せですから。」

リコラ「もしかしてヘレンと結ばれたかったんですか?」

エステルハージトルタ「違うと言えば嘘になりますが、私にはお嬢様のパートナーという大役は恐れ多くもあります。」

リコラ「ヘレンとは昔からの仲なんですか?」

エステルハージトルタ「はい。元々私の家は貴族だったのですが、祖父の代で没落してからは貧しい生活を強いられるようになって、それで不遇の毎日を送ってきた私をお嬢様が救ってくださったのです。私は優雅で知的で慈悲深いお嬢様に心を奪われてしまったのです。」

リコラ「助けてくれた人を好きになるってよくある話ですけど、やっぱり惹かれちゃいますよね?」

エステルハージトルタ「はい。今後もお嬢様にご奉仕する所存です。それが私にできるお嬢様への貢献ですから。」

リコラ「確かメイド長になったんだよね?」

エステルハージトルタ「はい。以前メイド長をしていた者が防衛戦争に駆り出されたので、それで私が繰り上がりでメイド長になりました。お嬢様が推薦してくださったのです。」

リコラ「エステルさんも海軍中将ですよね?」

エステルハージトルタ「はい。必要があれば私も臨時で参戦するかもしれません。しかし私は采配の方はさっぱりなので、比較的平和な東海岸の防衛を担当しています。そこでメイド長の仕事が休みの時は、そこで実戦訓練を積み重ねるようにしています。」

リコラ「ヘクセンハウスが言ってたんですけど、あのダイヤモンドハーバーの大敗で王国軍のどこの部署も実戦訓練が必修化したんですよね。」

エステルハージトルタ「そうなんです。でも次は同じ手は食わない覚悟で挑みます。」

ルーシー「オーブ、一度あたしのお母さんに会わせたいんだけど良いかな?」

オーブストトルテ「ん?そうか、やっとその気になってくれたか。良いぞ、じゃあ今から行こうか?」

ルーシー「(やっぱこの人単純ね。)」

リコラ「(また誤解されそう。)」

リコラたちはパーティを抜け出して結婚相談所ノヴァーリスへと向かった。

そこでジュリーによって婚活男子としての資質を見極められる事となった。

ジュリー「リコにルーシーじゃない。ルーシー、もしかして婚活したくなったの。」

ルーシー「あたしじゃなくてこの人よ。」

ジュリー「あら、もしかして彼と仲良くなったの?」

オーブストトルテ「久しぶりだね。オーブストトルテだ。ルーシーが一度親に僕の事を・・・・むぐぐ。」

ルーシー「お母さん、この人にピッタリの人いない?」

ジュリー「そうね、まずはプロフィールカードを見せてもらおうかしら。あたしはジュリー・ファヴァレット。ここで婚活コンサルタントをやってるの。ルーシーはあたしの娘なの。よろしくね。」

オーブストトルテ「よ、よろしく。どうぞ。」

ジュリー「ふーん、さすがにウィトゲンシュタイン本家の人は違うわね。音楽プロデューサーで年収1000万メルヘンなのね。凄いじゃない。」

オーブストトルテ「音楽プロデューサー以外にも父さんの家業であるホテルの社長も任されてて、世界中にある自社の株を持ってるから実際はもっと多いよ。1億メルヘンくらいあるんじゃないかな。」

ジュリー「これだけ仕事があるとデートする暇もないんじゃない?」

オーブストトルテ「そこは問題ないよ。休暇が欲しい時は役員に代行を頼めるからね。」

ジュリー「じゃあ後は相手を決めるだけね。」

オーブストトルテ「何を言ってるんだい?ジュリーさんはルーシーに相応しいかを判断してたんじゃないのかい?」

ジュリー「えっ、婚活しに来たんじゃないの?」

ルーシー「えーと、ここは結婚相談所で、あんたの相手を見つける手助けをしようと思ったの。」

オーブストトルテ「そんな。僕はてっきりルーシーが親に僕を紹介してくれると思ったのに。」

ルーシー「だから今紹介したのよ。新しい恋を見つければ気も変わるでしょ。」

ジュリー「これは2人共とんでもない勘違いをしているようね。」

リコラ「こうも噛み合わないとはね。」

48ページ目終わり

三低女子の婚活事情 47ページ「終わった婚活法と始まった恋路」

2020年03月08日 | 三低女子の婚活事情
リコラとアーサーはカップリングを報告してベルガたちから祝福を受けるが、

アーサー以外の家族が失業の危機になっている事を知り解決を模索する事になる。

ルーシー「そんなのあたしの知った事じゃない。」

オーブストトルテ「たしか君は事務所が倒産して、今はフリーのモデルになってるんだってね。」

ルーシー「何でそんな事知ってるのよ。きもっ。」

オーブストトルテ「酷いなー、傷ついたよ。まあいい、ウィトゲンシュタイン家御用達の大手モデル事務所のメンバーにちょうど空きが出たところなんだけど、良かったら来ないか?」

ルーシー「どうせそれと引き替えにつき合えって言うんでしょ?」

オーブストトルテ「ただの大手モデル事務所じゃないぞ。メルジーネだ。」

ルーシー「メルジーネ。」

アーサー「知ってるのか?」

ルーシー「知ってるも何も、あたしはメルジーネのトップモデルに憧れてこの仕事を始めたの。生え抜き新人の場合はメルジーネが全国に所有するモデル養成所を首席で卒業した人しか入れない。しかも中途採用の場合でも他の事務所でアウコレに出るくらいの成績を収めないと入れないモデルの登竜門って言われてる最大手のモデル事務所よ。」

アーサー「アウコレ?」

ロミー「アウグストコレクションの略で、世界中からトップモデルが集まるイベントだ。」

ルーシー「でもあたしは特にこれといった実績も残してないから入れないと思うけど。」

オーブストトルテ「元々はウィトゲンシュタイン家がメルヘンランドの民族衣装を世界中に広めるために始めた事務所だ。ヘレンが民族衣装を必死で探していたのはこのためだ。」

エルトベアトルテ「私たちが養子に入る前の父がそこの社長で、母はそこの元モデルだ。」

オーブストトルテ「うちの母が君の事を気に入ってね。それで特待生としてうちの養成所で直々に育てたいって言い出したんだ。君さえ良ければ是非迎え入れたい。」

ルーシー「あたしが・・・・メルジーネの特待生。」

ジュリー「ルーシー、さっきアーサーの会社の専属モデルになる話してなかったっけ?」

アーサー「良いんだよ。これはルーシーが決める事だ。」

エルトベアトルテ「悪い話ではないと思うぞ。特待生は養成所の生徒でありながらモデルの仕事にも参加できるし、実績を残せば首席扱いで卒業できる待遇だ。」

オーブストトルテ「僕とつき合うとは言っても、友達から出構わないからさ。ねっ。」

ルーシー「・・・・馬鹿にしないでよ。」

オーブストトルテ「えっ?」

ルーシー「あんたはあたしがそれくらいお膳立てしないとトップモデルになれないと思ってるの?」

オーブストトルテ「いやいや、そういうわけじゃないよ。事務所が倒産したって聞いたから、モデルの仕事を提供しようと考えたんだ。」

ルーシー「そんな事しなくったってあたしは自分の力でトップモデルになってみせる。それにあたしの事が好きだって言うなら、もっとあたしの事を信頼してほしかった。何で先回りして石を取り除くようなマネをするの?そんなやり方でトップに立っても、あたしはちっとも嬉しくない。」

アーサー「ルーシーの逆鱗に触れちまったな。」

オーブストトルテ「どういう事だ?」

アーサー「ルーシーは昔から負けず嫌いでな。どうしようもない時以外で助けようとすると反発するんだ。自力で成し遂げたものでなければ目標とは言えない。それがあいつの座右の銘だ。」

ベルガ「彼女のプロフィールカードにも書いてあるだろ。ちゃんと確認しなかったのが災いしたな。」

オーブストトルテ「・・・・気に入った。」

ルーシー「えっ?」

オーブストトルテ「僕はますます君が気に入った。僕はね、目標を達成するためなら手段を選ばないんだ。どうしても断るなら、君を連れ去ってでも僕のものにしてみせる。」

ルーシー「ちょっと、離してよ。」

リコラ「止めてください。嫌がってるのが分からないんですか?」

オーブストトルテ「何だね君は?」

リコラ「リコラ・オーガスト・ロートリンゲンです。ルーシーの友人です。」

オーブストトルテ「ふーん、君もなかなか良い女子のようだ。君もモデルを目指さないか?」

リコラ「結構です。私には私の仕事があるので。」

オーブストトルテ「ロミー、これはどういう事かな?」

ロミー「申し訳ない。でも娘が決めた事だから、この縁談はなかった事にしてくれ。」

オーブストトルテ「この僕に恥をかかせた事を後で後悔する事になるよ。」

ジュリー「はいそこまで、オーブ、無理強いは良くないよ。」

エルトベアトルテ「今日のところはこれくらいにしておけ。」

オーブストトルテ「(僕は諦めないぞ。ルーシー・モンターニャ・ファヴァレット。)」

エルトとオーブはすぐに帰宅したが、リコラの脳裏には嫌な予感が浮かんだ。

ルーシーの縁談の話は一旦保留となり、安心した彼女は一息ついたのである。

ルーシー「まさかここまで来るなんて思ってなかったわ。」

ロミー「すまんな、公爵と話した時に2人共酔っぱらってたんだ。公爵がそれを覚えててこうなった。」

アーサー「オーブに対してめっちゃお粗末な扱いしてたな。」

ベルガ「僕はああいうキザでカッコつけで気取ってる奴が好きじゃないんだ。」

リコラ「ルーシーだけじゃなくてお兄ちゃんの逆鱗にも触れてたんだね。」

アーサー「たまにいるんだよなー、意図せず相手を怒らせる奴っていうのが。」

ジュリー「一旦保留になったけど、あの様子じゃまた迫ってくるよ。」

ルーシー「何度来たって答えは同じよ。」

アーサー「親父、あのエルトとオーブは何者なんだ?」

ロミー「エルトは元々ウィトゲンシュタイン第五侯爵家の長男でオーブはそこの次男。第一公爵家が本家なのは知ってるな?」

アーサー「ああ、リンツから聞いた。」

ロミー「公爵の子供であるドボシュトルタは結婚する気がないと分かって、公爵は分家の中でも特に実績のあった第五侯爵家から養子を2人迎える事になった。それであの2人が公爵家に養子入りしたわけだ。」

アーサー「エルトはもう結婚していて、子供が2人いるんだよな。」

ロミー「そうだ。エルトは元老院議員として将来の執政官候補と言われている実力者だ。オーブは音楽プロデューサーで王国グラミー賞を取った事もある。だがさっき見ての通り、対人関係に難ありでなかなか結婚できないんだ。」

ベルガ「オーブは悪い奴じゃないけど強引なところがあるから、そこを控えめにするだけでもかなり違うと思うけどね。」

ロミー「全くだ。俺は立場上そんな事は言えないんだけどな。そして三男は軍人で将来の提督候補だったが、防衛戦争で指揮の乱れから敵の砲撃を受け、その時同行していた四男のリンツをかばって戦死。その後リンツは不動産兼カフェで成功した。」

ジュリー「揃いも揃って実力者ばかりなのね。」

ロミー「幼少期から英才教育を受けてるからな。教育費も桁違いだ。」

リコラ「オーブさん後悔させてやるって言ってたけど、どうなっちゃうのかな?」

ベルガ「ロミーの情報は全部筒抜けだろうから、婚活法対策課を全力で潰しにかかるだろうな。」

ロミー「そうなったらベルが言ってた通り、婚活法対策課と同じ事業内容の会社を作るしかないか。」

ジュリー「それは良いけど、利益を上げられなかったら倒産だから今までみたいにのんびり仕事をするわけにはいかないよ。」

ロミー「何とかなるだろ。」

それからしばらく時間が過ぎたが婚活法対策課は解体する事となった。

ロミーたちは全員解雇となり新たに結婚相談所を創設する事となった。

ロミー「婚活法対策課は婚活法の廃止を理由に解体されたが、事業のバックアップをしておいたおかげで傷が浅くて済んだ。予定通りジュリーを柱にして一緒に解雇された連中を社員として雇った。」

アーサー「つまり親父が所長でお袋が結婚相談所専属の婚活コンサルタントになったわけか。」

ジュリー「そういう事。名前はあたしが決めたの結婚相談所ノヴァーリス。ノヴァーリスは古代メルヘンランド語で新開墾地という意味なの。メルヘンランドではまだまだ結婚相談所が少ないし、みんな職を失った状態だったし、まさに今のあたしたちにピッタリの名前だと思うの。」

ルーシー「良かった。あたしがわがまま言わなかったら、婚活法対策課は存続してたかもしれないのに。」

リコラ「ルーシーが気に病む事ないよ。お兄ちゃんも言ってたけど、遅かれ早かれどの道解体される破目になるって。」

ジュリー「そういえば、ベルはどこに行ったの?」

リコラ「お兄ちゃんならワンダー島までみんなと遊びに行ったよ。婚活法が終わった事を祝いたいんだって。」

ロミー「ワンダー島か。確かメルヘンランド諸島の東海岸にある島だよな。」

ジュリー「東海岸の近くにある島は防衛戦争の被害を受けなかったから人気なのよ。」

ルーシー「えー、あたしも行きたかったなー。」

アーサー「無理だろ。ルーシーは俺の会社の専属モデルとして、宣伝をする仕事があるだろ。」

ルーシー「啖呵切ったのは良いけど、あれじゃトップモデルの道は遠いわね。」

ロミー「会社の名前は何にしたんだ?」

アーサー「前の会社と一緒だよ。株式会社ミンネザング。ミンネザングは古代メルヘンランド語で愛の歌って意味だ。愛の歌は目には見えないが、どんなに時代が変わっても色褪せる事はない。そんな会社にしたいんだ。」

リコラ「素敵な社名だね。」

アーサー「ありがとう。今度は潰れないようにしないとな。リコに心配はかけたくないし。」

リコラ「アーサー、私の事なら心配しないで思う存分事業を成功させてよ。」

アーサー「そうだな。そういえば、俺がまた事業を始めた時、かつてうちと取引してた会社の人がこぞって来たんだ。みんなモードレッドに圧力をかけられて俺との取引を中止したって言って謝りに来たんだ。」

リコラ「それでアーサーはどうしたの?」

アーサー「俺はそいつらを許した。もう権力に屈しないと約束するなら取引を再開しても良いって言ったんだ。どちらかと言えばあいつらも被害者だからな。」

メルヘンランド女王「成長したのう。」

アーサー「女王陛下。」

メルヘンランド女王「以前のそなたであれば突っぱねていたであろう。困難を乗り越えた器はまた一段とその大きさを増すのだ。」

アーサー「あいつらは好きで権力に屈してたわけじゃない事に気づいてただけだよ。」

シュトゥルーデル「婚活法がなくなってから顔色が変わったな。」

アーサー「シュトゥルーデル、何でここに?」

シュトゥルーデル「女王陛下にベルの代役を頼まれたんだ。」

ヘクセンハウス「兄貴と戦場以外で仕事をするとは思わなかったぜ。」

シュトゥルーデル「リコちゃんはベルと一緒に遊びに行こうとは思わなかったのか?」

リコラ「うん、全然。アーサーと一緒にいたいから。」

ヘクセンハウス「カップリングしたもんな。」

シュトゥルーデル「そりゃ良かったな。俺の見立てではもうとっくにカップリングしてるものだと思ってたけどな。」

リコラ「色々と障害があったから、思うようにデートもできなかったの。アーサーが一度倒産するまでは女子が取り合いしてたの。」

ヘクセンハウス「倒産してからリコとデートしたって事は、他の女子は三高男子という肩書きの男子とつき合う事を目標にしていた事になるな。」

ジュリー「どうりでアーサーとつき合いたい女子が急に減ったわけね。」

リコラ「私は条件とか考えてなかったから、気にならなかったんだけどね。アーサーはアーサーだし。」

ジュリー「そうそう。相手が落ち目になっても全く態度を変えないところが決め手になって、あたしはアーサーの相手はリコが良いんじゃないかって思ったの。」

ロミー「俺もリコちゃんの誠実なところが気に入って、リコちゃんならアーサーと支え合っていけると確信したんだ。」

シュトゥルーデル「親を攻略してから恋人を落とす作戦か。外堀から埋めて本陣を叩くあたり意外と戦略家だな。」

ヘクセンハウス「兄貴、それは戦場の見過ぎだぜ。」

ジュリー「リコ、最近ショコラティエ教室を開いてるって聞いたけど本当なの?」

47ページ目終わり

三低女子の婚活事情 46ページ「モンターニャ家の仕事危機到来」

2020年02月23日 | 三低女子の婚活事情
リコラとアーサーは無事にカップリングが成立して共に生きる事を誓った。

2人は今までの苦労を慰め合うように体を重ねて翌朝を迎えるのだった。

アーサー「それを言っちゃおしまいだろ。」

ベルガ「アーサーは婚活法が理由でリコとつき合ったのか?」

アーサー「婚活法はあくまできっかけだ。本気じゃなきゃつき合えないだろ。」

ベルガ「僕がいない時は、君がリコを守ってくれ。じゃあ僕も仕事してくるわ。」

アーサー「あ、ああ。」

桜子「おはようございまーす。あれっ、アーサーさんは仕事しないんですか?」

アーサー「婚活法対策課は近い内に辞める事になった。でも婚活法対策課が継続するか解体するかが決まるまではいるつもりだ。」

桜子「辞める職場なら普通はそこがどうなろうと知ったこっちゃないって思いますけど、アーサーさんは違うんですね。」

アーサー「そうだな。以前の俺ならそうしてたかもな。」

桜子「お父さんがいるからですか?」

アーサー「それもあるけど、婚活法対策課がなくなったらそこにいるみんなが居場所をなくしてしまう。ジパングでも金なし非モテのおっさんが切羽詰まって犯罪に走る事件がよくあるだろ。ああいう事が起きないように誰でも社会との接点を作れる居場所を残しておくべきだと思ったんだ。」

桜子「ジパングやナニワだと家庭の問題と見なされますけど、メルヘンランドだと社会の問題として扱うんですね。」

アーサー「ああ。責任を個人に押しつけるのは簡単だ。けどそれじゃ何の解決にもならない。そもそも孤立しがちな人から居場所を奪う社会構造を何とかするべきなんだ。無敵の人になったら失うものがないからこそ何をするか分からない怖さがあるんだ。」

桜子「社会全体で孤立する人を作らないようにすれば良いんですね。」

アーサー「そういう事だ。」

桜子「もし暇でしたら店の営業見学していきますか?」

アーサー「ああ、そうするよ。」

リコラたちはいつも通りに午後から営業を開始してアーサーは見学し、

ランチタイムを過ぎるとジュリーたちがギルドカフェにやって来た。

ジュリー「アーサー、どうしよう。」

アーサー「どうしたんだ?」

ベルガ「婚活難民が一気に減ったから、それで仕事がないんだろ?」

ジュリー「うん。ジパング警察が出て行った事で、婚活法による強制力がなくなってから依頼件数が一気に減っちゃったの。やっぱりみんな、あたしに依頼してたのは婚活法のためで、真剣に結婚をするためじゃなかったのかな。」

リコラ「そんな事ないよ。ジュリーのおかげで色んな人がカップリングできたんだから。」

ジュリー「そうだけど、これからどうしよう。」

アーサー「親父の次はお袋がピンチかよ。」

ジュリー「生活していくだけなら問題ないけど、このままだと婚活コンサルタントが名ばかり奉行になっちゃうわ。」

リコラ「大丈夫だよ。婚活イベント自体は毎週やってるんでしょ?」

ジュリー「そりゃそうだけど、カップリングに導けた人はいずれも卒業しちゃったからねー。」

リコラ「私だってジュリーのおかげでカップリングできたんだよ。」

ジュリー「ええっ、それじゃまさか。」

リコラ「うん。私、アーサーとカップリングしたの。」

ルーシー「えー、そうなのー。おめでとう。」

ジュリー「おめでとう。」

ロミー「アーサーの事、大事にしてやってくれよ。」

リコラ「うん、ありがとう。」

ルーシー「ううっ、やっと、リコが幸せになったんだね。」

リコラ「何で泣いてるの?」

ルーシー「嬉しいからに決まってるじゃない。友達の婚活がやっと報われたのよ。」

ジュリー「アーサー、こんなに良い子なかなかいないんだから大事にするのよ。」

アーサー「分かってるよ。」

リコラ「私は婚活してるつもりはなかったんだけど、アーサーとの毎日の会話が婚活になってたんだって気づいたの。」

ジュリー「そうね。何も婚活イベントだけが婚活じゃないからね。」

ベルガ「今日はリコとアーサーのカップリング記念日だから、ご馳走でも作っちゃおうかな。」

キルシュトルテ「何作ってくれるの?」

ベルガ「うーん、じゃあキルシュトルテでも作ろうかな。キルシュ、悪いけど手伝ってくれない?」

キルシュトルテ「うん、良いよ。」

アーサー「この国だから成立する会話だな。」

ジュリー「はあ、リコとアーサーのカップリングは嬉しいけど、もう婚活コンサルタントの時代は終わりなのかなー。」

ベルガ「恐らく1週間も経たないうちに王国内での婚活法は廃止される。」

ジュリー「そうなったらさらに依頼が減るでしょうね。」

ベルガ「だったら婚活法対策課と組んでやっていくしかないんじゃない?」

ジュリー「婚活法対策課と手を組むとは言っても、存続の危機があるのよ。」

ロミー「元々婚活法対策課は婚活法に対応するために作られた部署だ。婚活法がなくなったら署名があったとしても厳しいだろうな。」

ベルガ「それなら存続したパターンと解体されたパターンのどっちになっても良いようにすれば良いんだ。存続した場合は婚活法対策課とジュリーの合同で活動を維持する。解体された場合は婚活法対策課と同じ事業内容の会社を作ってロミーが経営者になれば良いんだ。」

ジュリー「なるほど、その手があったわね。それならどっちに転んでも活動を維持できる。」

ロミー「ちょっと待ってくれ。婚活法対策課は公務員扱いだから給料は国から出る。けど起業なんてしたら給料は俺たちが払う事になる。」

ジュリー「生活していくだけならベーシックインカムがあるから、普段何もしない分削っても問題ないんじゃない?」

ロミー「そうするにしても、俺たちは分家してるから全然お金もないし、経営だってやった事ないんだぞ。今までずっと中間管理職だったから経営の事はさっぱりだ。」

ジュリー「そうね。あたしも個人事業で婚活コンサルタントをやってきたけど、経営には向いてないのよねー。」

リコラ「経営の専門家ならここにいるでしょ。」

アーサー「俺かよ。それは良いけど、基本的には俺の起業を優先するからな。」

ジュリー「起業資金貯まったの?」

アーサー「ああ、どうにかな。」

ルーシー「あのさ、凄く言いにくいんだけど良いかな?」

リコラ「どうしたの?」

ルーシー「あたしが所属してた芸能事務所が倒産しちゃったの。」

リコラ「ええっ、どうして?」

ルーシー「皮肉な話だけど、あたしがいた所はマロリー家御用達の芸能事務所で、モードレッドが良い女をストックするためにあったの。でもモードレッドが失脚した事で事務所の株価が暴落して倒産しちゃったの。だから今はフリーのモデルってわけ。」

リコラ「そうだったんだ。」

アーサー「おいおい、これじゃ家族全員が事実上の無職って事じゃねえか。」

リコラ「ルーシーはモデル以外にできる事ってある?」

ルーシー「それがモデル以外の仕事やった事ないから、勉強も運動も職人技も全然体得してないの。」

アーサー「品質保存の魔法と新鮮回帰の魔法は使えるか?」

ルーシー「ええ、それなら使えるわ。」

アーサー「じゃあうちの専属モデルになってくれよ。」

ルーシー「専属モデル?」

アーサー「ああ。以前うちが潰れた原因は結束の固い取引先を確保できなかった事だ。それもそのはず。あの時のうちには決定的な人気の象徴がなかったんだ。そこで、もう一度起業したら今度はマスコットを作ろうと思うんだ。」

ルーシー「つまりあたしにアーサーの会社のマスコットになれと?」

アーサー「ああ、やりたい仕事が見つかるまで良いんだ。」

ルーシー「嫌よ。それじゃ完全に見世物じゃない。」

ジュリー「モデルって見られてなんぼの仕事だと思うんだけど。」

ルーシー「ファッションショーとか雑誌用の撮影ならともかく、会社で作業をしながらマスコットをやるなんて無茶よ。」

リコラ「ルーシー、マスコットだって大事な仕事だよ。イベントとかあったら見に行くから。ねっ。」

ロミー「せっかくなんだからやってみらどうだ?モデル以外にも色んな事を経験しておけば、独立する時に役に立つぞ。」

リコラ「ルーシーのマスコット姿、見てみたいなー。」

ルーシー「・・・・リコがそこまで言うなら仕方ないわね。」

アーサー「じゃあ早速手続きを進めるか。以前雇ってた連中も集めてこないとな。」

ルーシー「マスコットって何すれば良いの?」

アーサー「会社の顔として宣伝するんだ。イメージキャラクターってやつだ。ルーシーならきっと取引先と強固な関係を築けるよ。」

ルーシー「はあ・・・・先が思いやられる。」

明歩「みんなは稼がなくても生きていけるのに凄く働き者だよね。」

桜子「それ私も思ってました。」

ベルガ「人間は退屈にも苦役にも耐えられない生き物なんだよ。労働してる時は休みたくなるし、休みが続くと暇つぶしに労働を始めちゃう。もし2人共働かなくて済むようになった場合でも、何かしら好きな分野で労働を始めると思うよ。」

明歩「私たちの場合は働かないと生きていけないというある意味の強制力があるから、それが想像できないのかもね。」

桜子「ずっと休んでいろって言われるのも苦痛ですね。何かしたくなっちゃいますよ。」

怪しい男「ルーシー、ようやく見つけたよ。さあ、僕と結婚しよう。」

ルーシー「げっ、何であんたがここに?」

怪しい男「君のいるところはすぐに分かるんだ。僕らは運命の赤い糸で結ばれてるからね。」

ベルガ「きもっ。」

怪しい男「何だこの人は?」

ルーシー「あたしの友達。ベルガ・オーガスト・ロートリンゲンっていうの。」

冷静な男「その辺にしておけ。彼女が嫌がってるだろ。」

怪しい男「なるほど、あの天才バリスタか。」

冷静な男「私はエルトベアトルテ・フォン・ウィトゲンシュタイン。ウィトゲンシュタイン家第一公爵家の者だ。エルトと呼んでくれ。お前も名乗ったらどうだ?」

怪しい男「分かったよ。僕はオーブストトルテ・フォン・ウィトゲンシュタイン。オーブと呼んでくれ。僕はルーシーに会いに来たんだ。」

エルトベアトルテ「ルーシーさん、弟が無礼なマネをしてすまない。」

ルーシー「良いのよ、いつもの事だから。」

オーブストトルテ「ルーシー、そう照れなくても良いんだよ。」

ルーシー「何をどう勘違いすればその考えに至るのよ。あたしはあんたとのお見合い断ったはずだけど。」

オーブストトルテ「僕の父と君の父は仲が良いんだ。それで君の父の方から縁談の話をしてお見合いしようって事になったんだけどね。」

ルーシー「お父さん、それ本当なの?」

ロミー「ああ、オーブ君がルーシーのファンだって事を公爵から聞いて、それでお見合いの話になっちゃったんだ。」

ルーシー「なんて事をしてくれたのよ。」

ロミー「すまん。あの頃は婚活法の真っ只中で、公爵もオーブ君の結婚相手を探すのに必死だったんだ。」

ルーシー「どうりで頻繁に会うようになったわけだ。」

オーブストトルテ「そういう事だ。お見合いをすれば僕の良さが伝わるだろうに。」

ベルガ「あのさ、ここで飲んでいかないなら帰ってくれない?」

オーブストトルテ「おいおい、客に対してそれはないだろう。なるほど、君もルーシーを狙ってるんだね?」

ベルガ「あいにくだけど、僕は女子よりもコーヒーが好きなんでね。それに世継ぎならもうエルトが2人も産んでるんだから良いじゃないか。君はエルトの保険で養子になったんだから。」

オーブストトルテ「失礼な事を言うんだね。」

エルトベアトルテ「何故分かるんだ?」

ベルガ「話はリンツから聞いた。子供が2人いる事はここに子供を連れていない事から分かった。生まれたばかりの一人っ子なら心配性の君が放っておけないだろうからね。」

オーブストトルテ「あいつ、余計な事を。分かったよ。注文すれば良いんだろ。」

エルトベアトルテ「では私も貰おうか。」

ベルガ「エスプレッソ2つだね。」

オーブストトルテ「ルーシー、これはロミーから言い出した事なんだ。だからさ、お見合いをしてくれないか?」

ルーシー「そんなのあたしの知った事じゃない。」

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三低女子の婚活事情 45ページ「戦争の幕開けとカップリングの深夜」

2020年02月16日 | 三低女子の婚活事情
リコラとアーサーはようやく平穏を取り戻してドライブデートをしていた。

日常やこれからの夢やベルガの事などを話してくつろぐように過ごしていた。

リコラ「口では言ってないけど、背中がそう語ってたんだよね。」

アーサー「背中で語ってた?」

リコラ「お兄ちゃんは小さい頃から何か疑問があるとすぐに質問ばかりして周りを困惑させてたの。ちゃんとした理由のないルールには全く従おうとしなかったし、茶髪でロングヘアーだったから、王帝国境私立学校初等部の時からよく黒に染めろとか短髪にしろとか言われてたの。」

アーサー「それ人権侵害だろ。リコは何も言われなかったのか?」

リコラ「私のクラスはメルヘンランド人の教師が担当してたし、私自身は黒髪だった事もあって初等部では無難に過ごしてたけど、お兄ちゃんはそうはいかなかったみたい。それもあって早い内から自分はみんなとは違うという意識を植えつけられてたの。」

アーサー「ベルが目標に向かって突っ走るようになったのは、周りからの攻撃をかわす手段だったのかもな。」

リコラ「お兄ちゃんが言うには、将来の夢をよく聞かれる事が多い学校だったから無理くり目標を持たされてたの。」

アーサー「好きでバリスタを目指してたんじゃないのか?」

リコラ「子供って将来の夢を何度も聞かれたりすると、何か目標を持たないと駄目なのかなって無意識に思っちゃうんだって。お兄ちゃんも例外じゃなかったって事だね。」

アーサー「俺も似たような経験がある。学生の時はやりたい事なんて全然なかったからなー。」

リコラ「私もやりたい事なんてなかったよ。防衛戦争の最中に通学してたから、平和な生活ができればそれで良いって思ってた。」

アーサー「そりゃ毎日航空機が飛んでいく光景を見ながら通学なんて、スリル満点もいいとこだ。ん?噂をすればあんな大量に。」

リコラ「王国空軍が演習してるんだね。えっ?嘘でしょ?」

アーサー「何で演習中の航空機が王国海軍を攻撃してるんだ?」

リコラ「あれって帝国自衛隊の航空機じゃない?」

アーサー「ジパングとは平和条約を結んでいるはずだぞ。早く避難してみんなにこの事を知らせないと。」

リコラ「どうしてこんな事に。」

リコラたちは急いでギルドカフェに避難したが、いつも以上にベルガの落ち込みは激しく、

この攻撃を受けてメルヘンランドはジパングに宣戦布告し、再び防衛戦争の幕開けとなった。

リコラ「お兄ちゃん、そう落ち込まないでよ。」

ベルガ「落ち込んでないよ。気分が沈んでいるだけだ。」

リコラ「それを落ち込むって言うんだよ。」

ベルガ「今日は僕のフィアンセの姉の結婚式だったんだ。それなのにジパングは平和条約を破棄してダイヤモンドハーバーに攻撃してきた。その時近くにあった結婚式場が帝国自衛隊に爆撃されたんだ。」

リコラ「何でそんな事になったの?」

ベルガ「あの結婚式場は元々軍事基地だった建物を建て替えたものだ。だから上空から見れば軍事基地と変わらないし、人も集まってたから軍の集会と勘違いして攻撃したんだ。」

リコラ「酷い。」

アーサー「フィアンセの姉はどうなったんだ?」

ベルガ「死んだよ。パートナーと一緒に。」

アーサー「元老院はジパングに宣戦布告したんだってな。」

ベルガ「ああ。王国内にいるジパング人たちが迫害を受けないと良いけどね。」

アーサー「こんな時までジパング人をかばうんだな。」

ベルガ「インターネットが普及した今、国民国家の時代は終わった。僕からすれば防衛戦争なんて同じ人間同士の争いにしか見えないし、ジパング人にも良い人がいるのは知ってるだろ?」

アーサー「そうだな。桜子たちはどうするんだ?」

ベルガ「安全のためにしばらくはうちで一緒に住む事になった。」

桜子「しばらくお世話になりまーす。」

明歩「まさかベルの家に泊まる事になるなんてねー。」

桜子「私お客さんからジパング人は国へ帰れって言われたんですけど、ベルガさんが何の罪もない個人の責任を問おうとするなら、お前が帰るべきだって言ってくれたんですよ。」

明歩「ベルにそこまでの度胸があったなんて意外。」

アーサー「そうだったのか。」

ベルガ「悪いのはジパング人じゃなく、黒杉内閣の方だからね。」

アーサー「ジパング人にも良い人がいるのは知ってるけど、あの怒りに任せた報道じゃ、国民もジパング人を憎むようになるんじゃないか?」

ベルガ「大半は黒杉内閣が悪いと認識してるけど、一部の人はジパング人に怒りを向けてるからね。」

リコラ「じゃあもう婚活イベントはしなくて良いんだね。」

ベルガ「今はそうだけど奴らとの戦争に負ければ、またやらされる破目になる。」

アーサー「何で奴らはダイヤモンドハーバーに攻めてきたんだ?」

ベルガ「プファンが妊娠中なのを知ったからだろう。」

アーサー「プファンって確かずっと前の防衛戦争でジパングから制海権を取り返した提督だろ?」

ベルガ「そうだ。黒杉内閣はプファンが妊娠中でしばらくは海軍を動かせない事を知って、対外進出を企んでいるという名目で攻めてきたんだ。」

アーサー「対外進出って、とんだ言いがかりだな。」

ベルガ「ボルゴが軍事費を大幅に増やしたのが原因だろう。しかも意図が不明なままだから、それでジパングが不信感を持って攻撃してきたんだ。無力化の魔法が発動する情報も漏れていただろうな。」

アーサー「無力化の魔法を使えば、ジパングに流出した魔法兵器を無力化できるからな。それにしてもこんな時に妊娠か。全然男が寄ってこないって言ってたけど、相当肝が据わった奴が見つかったんだな。」

ベルガ「それ・・・・僕なんだ。」

アーサー「マジかよ。じゃあプファンの子供って。」

リコラ「お兄ちゃんの子供だよ。」

ベルガ「結果的に僕がダイヤモンドハーバー攻撃の口実になっちゃったんだよね。だから僕にも責任はあるんだ。」

アーサー「まあ、済んだ事は悔やんでも仕方ない。これからどう行動するかだ。ベルが俺に教えてくれた事だろ?」

ベルガ「ふふっ、そうだね。そういえばデートはもう終わったの?」

リコラ「攻撃を受けた場所の近くにいたから避難してきたの。だからデートの続きをここでしてるの。」

ベルガ「じゃあ夕食作ろうか。せっかくだから泊まっていったら?」

アーサー「良いのか?」

ベルガ「良いんだよ。僕の部屋には桜子と明歩が泊まるから、リコの部屋しか余ってないけど。」

リコラ「私は別に構わないよ。」

アーサー「・・・・分かった。じゃあお言葉に甘えようかな。」

リコラたちは夕食を済ませると深夜になって寝床に就こうとしていた。

アーサーはリコラからカップリングをするかどうかの返事を聞いていた。

アーサー「リコのパジャマ姿初めてだな。」

リコラ「あんまりじろじろ見ないでよ。恥ずかしいから。」

アーサー「そう言われてもな。魅力的な女子を見るなと言う方が難しいよ。」

リコラ「さっきから胸ばっかり見てるし、そんなに気になるの?」

アーサー「気にならないって言えば嘘になるな。」

リコラ「さっきの返事だけど。」

アーサー「ああ、正直に言ってくれ。」

リコラ「私なんかで良かったら・・・・喜んでつき合わせてもらうね。」

アーサー「リコ・・・・ああ、ずっとリコの事大事にするよ。」

リコラ「アーサー・・・・んっ、ちゅっ。」

アーサー「ちゅっ、ちゅっ。」

リコラとアーサーは今までの遅れを取り戻すかのように激しく唇を重ねた。

アーサーはキスしたままリコラの豊満な胸を何度も揉みしだいて服を脱がした。

リコラ「んんっ、あんっ、ちょっと・・・・アーサー。」

アーサー「前々から思ってたけど、リコって胸大きいよな。それに・・・・凄く柔らかい。」

リコラ「でもこれで得した事なんて全然ないよ。」

アーサー「何でだよ?」

リコラ「いつも男子から視線を感じるし、女子からは嫉妬の目で見られるし、物を持つ時だってこれのせいで下が見えなくて段差が怖い時あるし、何でみんな、こんな大きいだけの胸を欲しがるのか意味が分からないよ。」

アーサー「ないものねだりは人の宿命みたいなもんだ。それにただ大きいだけじゃないぞ。張りもあって形も良い。乳首だって色も形も良いし、思わず吸いつきたくなる理想的な胸だ。」

リコラ「感想なんて求めてないんだけど。」

アーサー「乳首の感触はどうかな。」

リコラ「ああんっ、だめっ、んっ、気持ちいいっ。」

アーサー「やっぱり感じやすいんだな。」

リコラ「あんっ、あんっ。んんっ、だめぇー。」

アーサー「(凄い。全身がマシュマロみたいだ。ずっと抱き合っていても飽きないくらい気持ちいい。)」

リコラ「もう汗が出てきた。」

アーサー「パンツが濡れてるな。」

リコラ「誰のせいだと思ってるの?」

アーサー「濡れたらちゃんと脱がないとな。」

リコラ「あっ、ちょっと。もう・・・・恥ずかしい。」

アーサー「リコの全裸ってこんなに奇麗なんだな。」

リコラ「こんな事するの、アーサーだけだからね。」

アーサー「分かってるよ。んっ、ちゅっ。」

リコラ「んんっ、ちゅっ。はあ、はあ、ねえアーサー。」

アーサー「何だよ?」

リコラ「こうして2人共全裸になって、体も温まってきたのにいつまで焦らす気なの?」

アーサー「焦らすって?」

リコラ「分かってるくせに・・・・お願い・・・・もう我慢できない。」

アーサー「だから何?」

リコラ「その・・・・入れてほしいの。体を・・・・重ねてほしいの。」

アーサー「言えたじゃねえか。」

リコラとアーサーは暑い夜を過ごし、もう一度風呂に入ってぐったりしたまま、

熟睡して朝を迎えたものの、ベルガにはすぐに見抜かれてしまい赤面していた。

リコラ「はあ、まさかこんなに疲れるなんて思わなかった。」

ベルガ「昨晩はお楽しみだったね。」

リコラ「そう言うお兄ちゃんは誰と寝てたの?」

ベルガ「やだなー、僕は桜子と明歩と普通に寝ただけだよ。」

リコラ「お兄ちゃんの普通は世間の普通じゃないからね。」

アーサー「起きてたのか。ていうか仕事時間までまだなんだよな。」

ベルガ「そうだよ。うちは午後から仕事だ。」

リコラ「お兄ちゃんは夜行性だからね。午前中は熟睡してる事が多いの。」

アーサー「だからギルドカフェは昼からなのか。」

ベルガ「いつもはリコが午前中に仕込みとかしてるんだよ。」

リコラ「ケーキとかチョコとかは作るのに時間がかかるから、午前中に作らないと間に合わないんだよね。」

アーサー「今日はしなくて良いのか?」

リコラ「今日は簡単レシピで済ませるから大丈夫だよ。」

アーサー「いつもならもう起きてたのか?」

リコラ「うん。9時5時の人と同じリズムだよ。」

ベルガ「アーサーとずっと一緒にいたから寝られなかったもんね。」

アーサー「お、おう、そうだな。」

リコラ「じゃあ今から仕込みしてくる。」

ベルガ「行ってらっしゃい。カップリングおめでとう。リコの体気持ち良かったでしょ?」

アーサー「何で分かるんだよ?」

ベルガ「昨日の夜中にリコとアーサーが風呂に入っていたのが分かったからさ。今になっても床が所々湿っている。いつもより遅い時間にもう一度入浴したからだ。血と汗を洗い流すためにね。」

アーサー「もしかして怒ってるのか?」

ベルガ「とんでもない。リコを悲しませていたなら怒ってたけど、凄く機嫌が良かったから心配はせずに済みそうだ。」

アーサー「全部ベルの推理通りだよ。俺、今日からリコと正式につき合う事になったんだ。もうあんな女子とは二度と出会えないだろうからな。ずっと彼女の事大事にするよ。」

ベルガ「婚活イベントから解放されてからのカップリングだから、無理につき合ってるわけじゃないって証明できるね。」

アーサー「そうだな。ジパング警察にも届ける必要ないのが幸いだな。」

ベルガ「警察や婚活イベントごときの認定がないとできないカップリングなんて、本当の意味でのカップリングじゃないよ。」

アーサー「それを言っちゃおしまいだろ。」

45ページ目終わり

三低女子の婚活事情 44ページ「勝ち取った平穏とそれぞれの夢」

2020年02月09日 | 三低女子の婚活事情
アーサーは祝勝会を楽しんでいたが婚活法対策課が近いうちに解体される事を知り、

リコラたちの助力を得て婚活法対策課の延命処置という最後の仕事を画策していた。

ジュリー「だからみんなで食べる時、ベルだけ端っこの方にいたのね。」

ベルガ「だって姿勢とか食べ方とかを指摘されるの苦痛なんだもん。」

朱音「確かに言われてみれば主人という呼び名も、一人よりもみんなで食べた方が美味しいという価値観も決めつけな気がしてきたなー。ナニワはジパングほどじゃないけど、まだまだジパングだった時の影響が大きいからね。」

ジュリー「ベルって本質的に結婚に向いてないのに、たくさんの人と事実婚の約束してるよね?」

ベルガ「下手に一緒に住むよりも、必要な時だけ会う方が長続きすると思うからね。」

アーサー「デートとかするの大変じゃないか?」

ベルガ「デートなんてたまにで良いんだよ。一緒に過ごしてるだけでもデートしてるようなもんだし。頻繁に一緒に居たらそれが当たり前になって、一緒にいる事のありがたみが分からなくなっちゃうよ。」

ジュリー「夫婦って距離が短すぎて相手の事が見えなくなっちゃう事もあるんだよねー。だからその意見には長期的には賛成かな。」

アーサー「俺は一度に大勢の女の面倒を見るのは向かないな。」

リコラ「それはお兄ちゃんが特殊なだけだから。」

ロミー「重婚の国とは言っても、大半の人は5人くらいまでだからな。」

ベルガ「そんな事より、どうすれば婚活法対策課は延命できるのかな?」

リンツァートルテ「行政が無期限延長を認めたらずっと残るよ。」

リコラ「婚活イベントなら今まで居場所がなかった彼らもこなしてたくらいだから、社会に居場所が必要な人たちの就職支援と婚活イベントを兼ねた部署にすれば残るんじゃないかな?」

アーサー「俺もそう思ってたところだ。」

ベルガ「署名を集めて役所に提出すれば良いんじゃないかな。婚活法違反者たちなら喜んで協力してくれると思うよ。」

ジュリー「あたしもクライアントに片っ端から当たってみる。」

ルーシー「あたしもモデル仲間を当たってみる。」

ロミー「じゃあ署名を集めたら俺が提出しに行くよ。」

ルーシー「そういえば次の婚活イベントはどうするの?」

ジュリー「今は確か非常事態宣言がされてるから、ジパング警察もジパングの企業も撤退する事になったわ。だから婚活イベントに出なくても捕まる事はないよ。」

リコラ「やっと仕事に専念できる。」

ベルガ「いつもより気合入ってるね。」

リコラ「昨日まで婚活ばっかりさせられてたからね。しかも裁判まであったから今の内にしっかりやっとかないと腕が鈍っちゃう。でもずっとショコラティエとは違う事ばかりしてたから、改めてこの仕事が好きなんだって事が分かった。私決めた。ショコラティエの素晴らしさを後世に残す仕事がしたい。チョコの作り方は極めたから、今度はチョコの作らせ方を極める事にする。」

メルヘンランド女王「やりたい事が決まったようだな。」

リコラ「女王陛下。」

メルヘンランド女王「目標に向かって歩むも人生、目標なく気ままに過ごすも人生。悔いのない方を選ぶのだ。」

ジュリー「仰る通りです。働くも遊ぶも自分で選ぶべきですからね。リコもようやく自分で選べるようになったって事ですね。」

リコラ「言われてみれば、いつの間にか自分の道は自分で選ぶようになってた。」

ヘクセンハウス「ベルの影響だな。あいつと一緒にいると、周囲に流されるのが何故か嫌になるんだ。」

ルーシー「ベルは何でも自分で判断するところがあるから、それでリコも自分で選ぶようになったんじゃない。」

リコラ「でもこの前までは大事な事を全部他人に決めてもらってた気がする。」

ルーシー「アーサーと色々あったからじゃない?ずっとアーサーと苦労を共にするようになってから以前よりも責任感に磨きがかかってるし、人は守るものができると強くなるって言うじゃない。逆境がリコを強くしたのよ。」

リコラ「そうなのかな。」

ジュリー「ええ、アーサーには勿体ないくらい良い子になったわ。」

リコラ「反対はしないんだね。」

ジュリー「反対なんてしないに決まってるじゃない。」

ロミー「リコはジュリーが育てた婚活女子の中で最も人気のある女子だ。むしろこっちがアーサーとの交際をお願いしたいくらいだ。それを反対するなんて、自分の育て方が間違ってたって宣言するに等しいからな。」

アーサー「あのなー、そう急かさないでくれよ。」

ルーシー「あたしもアーサーとなら安心かな。(あたしともつき合ってほしかったけど、リコが選んだ道だから仕方ないか。)」

ジュリー「そういう事だから、つき合うと決めた時は安心してつき合うと良いわ。」

リコラ「気持ちは嬉しいけど、まずは婚活法対策課の延命が先だよ。」

リコラたちは何日もかけて署名を集めロミーが市役所に提出した。

しばらくしてからリコラはアーサーとデートに出かけていたのである。

リコラ「お兄ちゃんが田舎の方に行けば知り合いに邪魔されずに済むって言ってたけど、本当に知り合いもいないから落ち着くね。」

アーサー「そうだな。西はジパングが度々攻め込んできてたから建物が崩壊してる場所もあったけど、東の方はかなり安全だったから崩れてる建物とか全然なかったな。」

リコラ「言われてみればそうだね。誰にも邪魔されないドライブデートなんて考えたね。」

アーサー「この前は首都圏を歩いてデートしてたからな。だから田舎を車で回りながらデートすれば問題ないって思ったんだ。しかも車だったら広範囲で色んな所を回れるしな。」

リコラ「それにしてもこの車って凄いよね。全自動で色んな所をコンピューターがガイドしてくれるし、こんな最新式の球型モデルで全方向が見渡せる車なんてよく借りれたね。」

アーサー「リンツはボルゴ派の有力者であるマロリー家と権力争いをしていた。あの裁判でマロリー家の権威が失墜したおかげで、富裕税を導入されずに済んだらしい。この車はそのお礼にくれたんだ。普通に買ったら50万メルヘンはするらしい。」

リコラ「50万メルヘンって高級車じゃん。ん?」

アーサー「どうした?」

リコラ「この車売ったらすぐに起業資金貯まるんじゃない?」

アーサー「そうかっ、その手があったか。確かリンツは気に入らなかったら売っても構わないって言ってたけどそういう事だったのか。全然気づかなかった。」

リコラ「直接お金渡しちゃうと賄賂になっちゃうから、彼女なりの配慮だと思うよ。」

アーサー「報酬にしては多すぎる気がするけどな。」

リコラ「それだけ相手が手強かったって事だよ。」

アーサー「こんなつもりはなかったけど、そういう事ならありがたく使わせてもらおうかな。もう一度やり直す機会を与えられた気がする。一区切りしたら婚活法対策課に辞表のメールを出すよ。」

リコラ「やっと卒業できるんだね。」

アーサー「そうだな。今思うと、この1年間は俺がリコと一緒になるための試練だったのかもしれないな。」

リコラ「恥ずかしいよ。」

アーサー「俺はちっとも恥ずかしくないぞ。」

リコラ「何で?」

アーサー「俺には勿体ないくらいの女子が好きって言ってくれたんだから、むしろ誇らしいくらいだ。」

リコラ「・・・・あのさ、本当に私で良いの?」

アーサー「何だよ急に?」

リコラ「私はお兄ちゃんみたいに強くないし、肝心な時にアーサーの足を引っ張っちゃうし、私と頻繁に会わなかったらアーサーはずっと嫌な目にも遭わずに会社をやってたんだろうなって思った事もあるの。それでも良いのかなって。」

アーサー「良いに決まってるだろ。リコがいなかったら、俺は誰も愛する事なく人生を終えてただろうし、俺が会社を始めたのだって俺がリコをかばったのがきっかけだからな。」

リコラ「私が中等部を退学した後、今度は私をかばったアーサーがいじめられたんだよね。」

アーサー「ああ。それであいつらを見返してやろうと思って、必死に勉強して飛び級したんだ。おかげであのメルヘンランド大学を卒業できたし、やりたい事を見つける事もできた。」

リコラ「だから2年も飛び級したんだね。」

アーサー「そういう事だ。リコは全然迷惑なんかじゃない。むしろ俺の人生において色んなところで原動力になってる。あの時出会ってなかったら俺は流されて生きてたかもしれない。」

リコラ「私と再会した事も後悔してない?」

アーサー「してないよ。あのままお互いに気づかなかったら、リコはモードレッドに連れて行かれてただろうし、リコが歩むはずだった最悪の運命を変えたと思えば安いもんだ。」

リコラ「あとは私の気持ちだけなんだね。」

アーサー「そういう事。今すぐ返事をくれなんて野暮な事は言わない。じっくり考えて決める事だ。」

リコラ「その間ずっと待っててくれるの?」

アーサー「そうだな。今はリコ以外には全く興味ないし、当分は起業のやり直しの事を考えないとな。」

リコラ「少し考えさせてほしい。こんなに誰かの事を考えるのは初めてだから。」

アーサー「分かった。」

リコラ「私がどっちを選んでも、アーサーは私の大事な人だから。それだけは変わらないよ。」

アーサー「俺だってリコはかけがえのない存在だ。それにギルドカフェは凄く居心地の良い店だから、ずっとあの店の常連で居続けるよ。常連なら恋人でも友人でも自然な形で会えるからな。」

リコラ「アーサーが常連なら大歓迎だよ。」

アーサー「そういえばベルは俺の事で何か言ってなかったか?」

リコラ「特に大した事は言ってなかったよ。一応反対しないのって聞いたけど、反対している時点で保護者としての教育を間違えたって認めたのと同じだって言ってたの。」

アーサー「ベルらしい答えだな。」

リコラ「分かるの?」

アーサー「正しい育て方をしていれば、保護者が反対するような悪い奴を好きになる事はまずないって事だ。そういう奴を好きになった時点で教育失敗って事なんだろうな。」

リコラ「良くも悪くも似た者同士が惹かれ合うんだね。私もアーサーと似てるところあるのかな?」

アーサー「あるんじゃないか。仕事に誇りを持ってるとか。」

リコラ「誰でも何かしら誇りを持ってると思うよ。お兄ちゃんなんて誇りを持たない事に誇りを持ってるし。」

アーサー「ふふっ、何だよそれ?」

リコラ「他にも逃げるなとか言う奴は逃げる事から逃げてるとか、信念がない人はいない。信念がないように見える人も信念を持たないという信念を持っているとか。」

アーサー「言葉遊びが好きなんだな。」

リコラ「普段から他人の愚行とか矛盾に対して皮肉の利いた言葉を容赦なく浴びせたりしてるくらいだからね。この前だっていじめがない事で有名な学校の噂に対して、もしそれが本当ならその学校には生徒が1人もいないんだろうって言ってたんだよ。」

アーサー「あははははは。確かに生徒がいなかったらいじめ起きないもんな。」

リコラ「そうそう。お兄ちゃんはそれもあって他人からは嫌われがちだけど、私はそんなお兄ちゃんがとても気に入ってるの。」

アーサー「俺も結構好きだけどな、そういうタイプ。」

リコラ「アーサーも気に入ってるんだね。」

アーサー「最初は不真面目な奴って思ってたけど、自分に一切妥協しないし身内には激甘なところとか見てると憎めないんだよなー。」

リコラ「アーサーも気づいてたんだね。」

アーサー「ベルを好きになれる奴じゃないと無理なんて言うから、無意識のうちにあいつを観察してたんだ。」

リコラ「何故かいつもお兄ちゃんの話になっちゃうね。」

アーサー「無理もないだろ。リコはずっとベルと一緒に過ごしてきたんだし、言わば価値観の基になった人だろ。」

リコラ「うん。私はずっとお兄ちゃんを見てきたから目標のない人はカッコ悪いなんて思ってたけど、目標がなくても別に良いって事を女王陛下が教えてくれたの。」

アーサー「目標がないのが悪いっていうのはベルが言ったのか?」

リコラ「口では言ってないけど、背中がそう語ってたんだよね。」

44ページ目終わり

三低女子の婚活事情 43ページ「戻る事のない友人関係」

2020年02月02日 | 三低女子の婚活事情
アーサーはモードレッドとの裁判に勝利してリコラが無事に退院したため、

祝勝杯をしていたがリンツァートルテから過去の話を聞いていたのである。

アーサー「たとえ模倣でも自分なりの工夫があるなら、それは自分の考えじゃないのか?」

リンツァートルテ「えっ?」

アーサー「現代の魔法や科学の技術なんて、全部過去の模倣だ。他人から得た知識や技術の中にオリジナリティがあるなら、それはもう自分のものと思って良いはずだ。」

リンツァートルテ「そんな風に受け取ってくれたのはアーサーさんが初めてだな。リコラさん、良い恋人を持ったね。」

リコラ「えっ、こ、恋人。」

アーサー「まだ正式につき合ってるわけじゃないんだけどな。」

リンツァートルテ「でも君たちは裁判中にみんなの前で愛の告白をした。それで友人による過剰防衛を恋人による正当防衛にしてもらったのだから、もう以前のような友人関係には戻れないんじゃないかな?」

リコラ「それを言われると弱りますね。」

リンツァートルテ「あんな良い男そうそういないよ。つき合わないなら僕がアーサーさんを奪っちゃうから。」

リコラ「それは聞き捨てなりませんね。」

アーサー「何話してんだ?」

リコラ「内緒。」

リンツァートルテ「僕は正直、君たちが羨ましいよ。自由で才能に溢れて豊かで。」

アーサー「リンツだって誰もが羨む権力者だろ。」

リンツァートルテ「みんなこっちの事情も知らずに権力者になりたがるけど、それが言えるのは当事者以外何も知らないからなんだ。大いなる力には大いなる責任が伴う。資格のない者が権力者になれば、その力で自らを滅ぼす事になる。」

ヘレントルテ「一般の人ならさっき言ってたような事があっても、誰も気にしないものね。」

リンツァートルテ「ヘレン、聞いていたの?」

ヘレントルテ「聞いてたも何も、同じ家の人の事は嫌でも耳に入ってくるもの。」

リンツァートルテ「面目ない。」

ヘレントルテ「良いのよ。挫折の1つや2つくらい誰にでもあるわ。」

アーサー「リコ、俺のために体を張ってくれてありがとう。」

リコラ「アーサーも私を守ってくれてありがとう。」

アーサー「俺たちってもう友人に戻れないのかな?」

リコラ「戻れそうにないね。」

アーサー「リコ、改めて言わせてくれ。俺は・・・・リコが好きだ。」

リコラ「私も・・・・アーサーが好き。」

アーサー「俺さ、会社が潰れてからは婚活女子たちに手の平を返されたように相手にされなくなってさ。それでやっと気づいたんだ。婚活女子たちが見ていたのは白馬の王子様であって俺じゃないんだなって。」

リコラ「アーサーは私の王子様だよ。」

アーサー「俺は王子の器じゃないよ。でも俺の会社が潰れた時も、リコは俺に対する見方を変えずに分け隔てなく接してくれた。思えばその時からずっとリコの事ばかり考えてたな。」

リコラ「私も気づいたらずっと、アーサーの事考えてた。」

アーサー「お袋が言ってたよ。俺がいない時にもずっと俺の話をしてたって。」

リコラ「そんな事言ってたんだ。」

アーサー「リコ、良かったら今度デートしないか?」

リコラ「ええっ、デート?」

アーサー「ああ、この前のデートは度々邪魔が入ったけど、今度は誰にも邪魔されずに2人きりのデートがしたいんだ。その時に・・・・俺がリコの恋人に相応しいか確かめてほしいんだ。」

リコラ「うん、良いよ。じゃあ今度一緒に行こ。」

ベルガ「リコ、この際だからカップリングしちゃえば?」

リコラ「駄目だよ。ちゃんと恋人に相応しいか確かめてほしいって言われてるんだから。アーサーとの約束を無下にしちゃいけないの。」

ベルガ「置いてけぼりが1番応えるか。」

ジュリー「カップリングしないならまた婚活イベントに行く事になるよ。それでも良いの?」

アーサー「良いんだよ。どうせ婚活イベントでも誰も俺に近寄る事すらないだろうし、リコとのんびり話してるよ。」

ベルガ「また変な男が寄ってくるかもしれないぞ。」

アーサー「今度はちゃんと話し合いで解決するよ。それに今の俺たちなら問題ない。」

リコラ「次からはもう決めている相手がいるって言うから大丈夫だよ。」

ヘレントルテ「じゃあ私の家に来る?」

リコラ「良いの?」

ヘレントルテ「ええ、毎週ウィトゲンシュタイン家主催のティーパーティをやっていて、婚活イベントに興味のない人も来ているの。」

リコラ「うん、そういう事なら行く。アーサーも行く?」

アーサー「あんまり気は進まないけど、リコが行くなら俺も行くよ。変な男が寄ってこないようにしないとな。」

ヘレントルテ「うちには育ちの悪い人は1人もいないから安心しなさい。」

アーサー「さっき聞いたんだけど、相続資格がないって本当なのか?」

ヘレントルテ「ええ、私は元々ウィトゲンシュタイン家の外戚にあたるザイン家の連れ子だったの。だから本家であっても私の相続順位は他の分家の人を含めて最下位なの。だから私には事実上相続権がないのよ。」

アーサー「そうだったのか。」

ヘレントルテ「私はあの家の一員になろうと努力したわ。けど義理の兄弟の面倒すら見させてもらえない。一度ボルゴの企みでジパングとの同盟のために黒杉家に売られそうになった事もあったけど、あの時私はあの家の人たちの捨て駒なのだと確信したわ。」

アーサー「ヘレンも大変だったんだな。」

ヘレントルテ「そうね。だから馬鹿にされないように教養を身につけてガリアの大学まで卒業したわ。それもあって今ではウィトゲンシュタイン家専属のソプラノ歌手と財務官を任されるようになったの。」

アーサー「なんかウィトゲンシュタイン家の事を誤解してたな。」

ヘレントルテ「誤解?」

アーサー「最初は王国民から集めた金を湯水のように使う連中だと思ってたけど、そっちはそっちで人知れず苦労があるんだと知った。だからもう成り上がりの連中だと思うのはやめにするよ。」

ヘレントルテ「私たちは必要に迫られてお金を使ってるだけなのよ。」

ベルガ「でも桁が違いすぎて誤解されるんだ。あの家にいると金銭感覚が狂っちゃうからね。」

ヘレントルテ「もう、人をブルジョワみたいに。」

ベルガ「立派なブルジョワだよ。良心的で善良なね。」

マドレーヌ「ヘレンさんは民族衣装が好きなの?」

ヘレントルテ「ええ。でも最近はなかなか良い専門店が見つからなくて困ってるのよ。」

マドレーヌ「じゃああたしたちが作るよ。」

ヘレントルテ「やってくれるの?」

マドレーヌ「うん、私たちに任せて。」

モンブラン「ちょ、ちょっと待って。確かに民族衣装専門店とは言っても、まだ始めたばっかりだよ。先月だって赤字出しちゃったし。」

マドレーヌ「元々ウィトゲンシュタイン家の要望で大手のアパレル会社に民族衣装部ができたからあたしたちは出会えたんだよ。それにあたしは自分のブランドにも自信あるし。」

モンブラン「言いたい事は分かるけど、予算はどうするの?」

マドレーヌ「あっ。」

ヘレントルテ「必要があるならうちが予算を出すわ。それでやってくれるかしら?」

マドレーヌ「やる。」

モンブラン「気持ちは嬉しいけど、本当に良いの?」

ヘレントルテ「あなたたちの腕が良い事はその民族衣装を見れば分かるわ。だから定期的な納品をお願いするわ。」

2人「やったー。」

リコラ「良かったね。」

リンツァートルテ「そういえばアーサーさんはまた起業したいんだよね?」

アーサー「いつ聞いたんだよ。」

リンツァートルテ「ジュリーさんから聞いたんだ。アーサーさんは婚活法対策課にいるって事は転職活動してるのかなって思ったんだ。」

アーサー「転職活動?」

リンツァートルテ「そうだよ。婚活法対策課はジパング警察の怒りを買った事で活動中止になってるから、その内潰れると踏んで転職活動をしていると思ったんだけど違うの?」

アーサー「婚活法対策課が潰れるってどういう事だよ?」

リンツァートルテ「言葉の通りさ。アウグスト警察署襲撃事件は知ってるよね?」

アーサー「ああ、ベルも巻き込まれたやつだな。」

リンツァートルテ「結果的に婚活法対策課による婚活法違反者の大移動がトリガーになって起きた事件だ。恐らく婚活法対策課の責任は免れないだろうから、このままだと近いうちに解体されるだろうね。」

アーサー「婚活法対策課は何も悪い事してないだろ。」

リンツァートルテ「やった事が問題なんじゃない。ジパング警察を怒らせた事が問題なんだ。君はずっと婚活法対策課から出たかったんだろう?だったら転職した方が良いんじゃないか?」

アーサー「確かにそうだけど、あそこは親父たちの唯一の居場所だ。潰さないようにする方法はないのか?」

リンツァートルテ「ない事もないけど、どうしてそんなに婚活法対策課を守りたいのかな?」

アーサー「俺も最初はいつ潰れてもおかしくない部署だと思ってた。でも婚活法対策課の連中も主催のパーティに来ている人たちも、凄く楽しそうだった。あそこは元々環境的要因で不遇な思いをしてきた連中の唯一の居場所なんだ。俺も自分の居場所を奪われる辛さは痛いほど分かるからな。」

ロミー「そうだな。社会に居場所がない連中から居場所を奪ったら、社会を恨んでまた犯罪に走るかもしれない。そうなったら行政の責任が問われる事になる。だからそういう連中の受け皿が必要だ。」

アーサー「ああ、俺の婚活法対策課での最後の仕事は、婚活法対策課を存続させる事だ。」

ロミー「存続させるのは良いけど、何らかの存在意義がないとアーサーが出た後解体すると思うぞ。」

アーサー「存在意義ならあるだろ。婚活自体は何も婚活法ありきで成立していたわけじゃない。婚活法がない時にも婚活イベントは毎週あったんだからそれが存在意義だ。」

ジュリー「つまり婚活法がなくなった後も、毎週婚活イベントをするために必要って事ね。」

リコラ「それなら私も協力するよ。」

マドレーヌ「じゃああたしも。婚活法対策課にはお世話になったからね。」

モンブラン「署名活動くらいならできるかな。」

ヘレントルテ「随分と人気のある部署になったものね。私からも行政に働きかけてみるわ。」

ベルガ「アーサーはやっぱり経営者向けだな。」

リコラ「そうだね。これだけ大勢の心を動かせるんだから、転職しても本質は変わらないね。」

リンツァートルテ「ヘレンが言うなら僕も協力させてもらおうかな。」

朱音「あっ、ベル。久しぶり。今日は大盛況だね。」

ベルガ「妹が無事に退院したからね。本田さんと結婚したみたいだね。おめでとう。」

朱音「ありがとう。ていうか何で分かったの?」

ベルガ「左手の薬指に指輪がある。分かりやすいヒントだ。」

朱音「あー、そういう事か。まあそういうわけなんだけど、結婚の手続きって本当に大変なんだね。」

ベルガ「僕は絶対にしたくないね。」

ジュリー「ずっと気になってたんだけど、ベルが結婚したくない理由って何なの?」

ベルガ「結婚制度自体が時代遅れだからだ。元々ジパングをはじめとした国では特定の男に異性が集中しないように、一夫一婦制にする事で長男が必ず結婚できるようにしたんだ。それで先祖代々の田畑を長男が継ぐ事で、分割による荒地化を防ぐ意味もあった。あとは家を守る事で路頭に迷うのを防ぐ意味もあったけど、今はそんな事をする必要ないでしょ。」

朱音「確かにそうだね。」

ベルガ「しかも結婚するとジパング人から主人って呼ばれるでしょ。」

朱音「そうだけど、それって普通じゃないの?」

ベルガ「全然普通じゃないよ。夫婦は本来対等なものなのに、主人なんていう主従関係を意味する言葉を用いるのは文法として間違ってるし、それに一人飯ができなくなるのも非常に痛い。」

ジュリー「一人飯好きなんだ。」

ベルガ「学校で食べる時は早く食べろと言われて、家で食べる時はゆっくり食べろなんて言われたら嫌にもなるよ。」

ルーシー「学校と家庭のギャップが大きすぎたのね。」

ジュリー「だからみんなで食べる時、ベルだけ端っこの方にいたのね。」

43ページ目終わり

三低女子の婚活事情 42ページ「逆転を賭けた愛の告白」

2020年01月26日 | 三低女子の婚活事情
アーサーとモードレッドはついに最高裁で争う事となり死闘を繰り広げた。

アンブローズはティラミスを証人として呼ぶ事でモードレッドの度肝を抜いた。

アーサー「(今さら俺に聞きたい事って何なんだ?)」

ランスロット「あなたはこの前、リコラさんを好きかと聞かれた時に好きではあるがライクかラブまでは分からないと言っていましたね。」

アーサー「ああ、確かに言ってたな。」

ランスロット「どちらともラブの方であれば正当防衛と言えると考えて良いでしょう。しかしどちらかがラブ以外の回答ならただの友人関係となり、過剰防衛と見なします。ライクかラブかの回答は決まりましたか?」

アンブローズ「異議あり。本件とは関係のない質問です。」

ランスロット「恋愛感情があったかどうかは重要です。恋人を守るために殴ったなら話は別ですが、友人を守るために殴ったなら過剰防衛の方を適用するべきです。」

裁判長「異議を棄却します。被告は質問に正直に答えてください。」

アーサー「俺は・・・・リコが好きだ。愛してる。」

モードレッド「こいつは自分が無罪になるために嘘の証言をしているんだよ。」

ランスロット「少し黙っててください。あなたはリコラさんとカップリングはしているのですか?」

アーサー「いや、してない。」

ランスロット「カップリングをしていないという事は、リコラさんの方はあなたの事を友人としか思っていないという事ではないでしょうか?」

アーサー「そうかもしれないな。」

ランスロット「リコラさんはここにはいませんから、確かめようがありません。しかしカップリングしていないとなればそれこそ両想いではないという確実な証拠になるでしょう。これはリコラさんに聞くまでもなく友人関係、つまり過剰防衛です。」

アーサー「俺は肝心なところでいつもリコを守ってやれなかった。自分の無力さを恨んだ事もあった。俺にもっと力があればそもそも裁判さえする事もなかったと思うし、あいつが刺される事もなかったと思う。全ては俺の無力さから起きた事だ。」

傍聴人C「そんな事ない。」

アーサー「えっ?」

傍聴人C「私はアーサー君がどれだけ良い人か知ってる。あなたは婚活法違反によって強制収容所へ連れて行かれるはずだった私たちを救ってくれた命の恩人なのよ。」

傍聴人A「そうだ。そんなに良い人が誰かを殴るのは余程の事があったからだ。」

傍聴人D「大体会社を潰されて大事な人まで傷つけられたら、そんなの俺だって殴ってるよ。」

傍聴人B「むしろ殴らない方がおかしいだろ。」

みんな「そうだそうだ。アーサーは何も悪くない。悪いのはモードレッドだ。」

アーサー「お前ら。」

ランスロット「裁判長、カップリングをしていないのなら過剰防衛で罪に問うべきです。」

裁判長「被告にも相応の事情がある事が分かったのも事実です。しかし、リコラさんに恋愛感情の有無を確認できない以上は仕方ありません。ではこれより判決を下します。」

リコラ「はあ、はあ、待ってください。」

アーサー「リコ、何でここに?」

リコラ「私も当事者です。証言させてください。」

ガウェイン「おい、もう裁判は終わりだ。今さらリコラさんに出番はないぞ。」

裁判長「それは私が決める事です。」

アンブローズ「・・・・裁判長、リコラさんに証人として証言台に立っていただいても構いませんか?」

ランスロット「いけません。リコラさんは大怪我をしています。怪我人を証言台に立たせるなどもってのほかです。」

裁判長「リコラさんはそれで構いませんか?」

リコラ「はい、構いません。」

裁判長「では証言台に立ってください。」

ランスロット「裁判長、それはいくら何でも横暴です。」

裁判長「あなたはリコラさんが証言するのがそんなに嫌なのですか?」

ランスロット「ぐっ・・・・いえ。」

アンブローズ「では私からリコラさんに質問です。あなたは被告の事をどう思っていますか?」

リコラ「はい、私にとってアーサーは正義感が強くて不器用で変に真っ直ぐなところがあって、とても放っておけない人です。でも、アーサーはいざという時にはとても頼りになる人です。私がモードレッドから嫌がらせを受けていた時も、暴漢に襲われた時も体を張って守ってくれました。」

アーサー「リコ・・・・。」

リコラ「私は・・・・そんなアーサーの事が・・・・大好きです。愛してます。」

ランスロット「では何故被告とカップリングしていないのですか?」

リコラ「アーサーは私には勿体ないくらい良い人ですから、カップリングなんて恐れ多くてできません。」

裁判長「もう誰も質問はありませんか?・・・・では判決を下します。被告アーサー・モンターニャ・ファヴァレットを、恋人を守るための正当防衛による無罪とする。」

リコラ「(良かった。本当に良かった。)」

裁判長「そして原告モードレッド・マロリーを、被告の会社との取引を妨害した事による威力業務妨害罪と、他社に圧力をかけて部署を解散させた事による偽計業務妨害罪と、リコラさんに対する脅迫罪により5年の懲役とする。」

モードレッド「はあ?ふざけてんじゃねえぞこの野郎。なんで俺が罪に問われなきゃいけねえんだよー?てめえ後でどうなるか分かってほざいてんだろうなー。」

裁判長「原告を私への暴言により退廷とする。今すぐ出て行きなさい。」

モードレッド「おい、何だよ?放しやがれ。てめえら後で覚えてろよー。」

裁判長「以上で裁判を終了とします。」

最高裁はアーサー側の大勝利に終わり、モードレッドは逮捕され拘置所に入れられた。

しばらくしてリコラが退院すると、ギルドカフェでは勝訴記念にパーティが開かれた。

ベルガ「じゃあリコの退院とアーサーの裁判勝訴を祝って、かんぱーい。」

みんな「かんぱーい。」

リコラ「最初はどうなるかと思ったけど、これでようやく一息つけるね。」

ベルガ「この頃ずっと無茶ばっかりしてたもんね。」

リコラ「以前の私だったらまずしなかったけどね。」

ルーシー「それにしてもまさか裁判中に両方とも愛の告白をするなんて大胆すぎ。」

アーサー「仕方ねえだろ。恋愛感情がある事を証明しないと正当防衛にならないんだからな。」

ジュリー「皮肉な話だけどリコとアーサーが告白できたのも、マドレーヌとモンブランがカップリングできたのも、全部モードレッドがきっかけなのよねー。」

アーサー「言われてみればそうだな。」

ベルガ「簡単な話だよ。人間を団結させる最大の要素、それは共通の敵だ。モードレッドという共通の敵がいたからこそ、団結をしている内に仲良しになっていったわけだ。」

ロミー「なるほどな。俺がジュリーと駆け落ちした時も、両家が共通の敵になってたからな。」

モンブラン「あの裁判の後、社長が私たちを特別待遇で雇うって言ってきたんだけど断ったの。」

リコラ「えっ、なんで?」

マドレーヌ「すぐ権力に屈するような会社に居たらまた振り回されると思うし、経営にも慣れてきたからもういいかなって思ったの。うちの社員はいずれもファンタスティックの民族衣装部に捨てられた戦友だから実質独立みたいなものだけどねー。」

フォレノワール「実はモードレッドさんは暴漢を雇ってリコラさんたちを襲わせた事が発覚して、さらに罪が重くなったそうです。」

アーサー「じゃああの暴漢はモードレッドが雇った連中だったんだな。」

フォレノワール「はい。その暴漢たちも今は逮捕されています。」

ベルガ「とんでもない奴に目をつけられてたんだね。」

リコラ「お兄ちゃんに言われたくないよ。」

シュトレン「リコ、刺された傷は大丈夫なの?」

リコラ「うん、修復の魔法による治療が終わったところだから傷跡も残ってないよ。」

パンドーロ「良かったー。」

ヘレントルテ「もうパーティ始まってたのね。リコ、退院おめでとう。」

リコラ「ありがとう。ヘレンも呼ばれてたんだね。リンツさん、この前はお世話になりました。」

リンツァートルテ「良いんだよ。招待してくれて光栄だよ。リコラさんとアーサーさんには感謝しないとね。」

アーサー「お望み通りの展開になったか?」

リンツァートルテ「そうだね。君が勝訴してくれたおかげでマロリー商社は一気に株価が低迷したよ。それに社長であるロットは息子の犯罪を知りながら見逃そうとした罪に問われて逮捕されたよ。これでボルゴ派の影響力は下がるだろうね。でも最近はボルゴが姿を全く現さないんだ。どこで何をやってるんだか。」

アーサー「一発逆転の兵器でも作ってんじゃねえの?」

リンツァートルテ「まさかね。保守派のボルゴに限ってそれはないと思うけど。」

アーサー「そういえば、この前会った時、やけに自虐的だったけど何かあったのか?」

リンツァートルテ「そうだね。リコラさんとアーサーさんには話しておいても良いかな。僕がウィトゲンシュタイン家の分家の者だって事はもう知ってるよね?」

リコラ「はい、この前聞きましたね。」

リンツァートルテ「僕は数ある分家の1つであるウィトゲンシュタイン第五侯爵家の四男として生まれた。3人の兄はいずれも芸術や政治や軍事で成功を収めていた。でも僕には芸術の才能も政治の才能も軍事の才能もなくて落ちこぼれと呼ばれたもんだ。」

リコラ「そんな過去があったんですね。」

アーサー「ていうかどんだけ分家あるんだよ?」

リンツァートルテ「大体20種類くらいの分家があるよ。祖先がたくさんの子持ちだったからね。そして本家である第一公爵家がある。本家は後継者がいなくて困った事が何度かあるんだけど、そうなる度に分家の中から特に優秀な人を養子を迎えて血縁を維持するんだ。」

アーサー「そうやって血縁を繋いできたのか。」

リンツァートルテ「そして本家の長男であるドボシュトルタは無性愛者で結婚すら考えてないし、ヘレンは再婚相手の連れ子だから相続資格がない。そこで公爵は僕の家から2人の兄を養子に迎えて、その内の1人が結婚して子供までいる。」

アーサー「だったら万事解決じゃないか?」

リンツァートルテ「それがそうもいかないんだよ。第五侯爵家に残った三男はジパングとの防衛戦争で僕をかばって戦死。僕は中身が女子のトランスジェンダーで女子には全く興味がないから子供は産めない。」

リコラ「つまり才能もなくて子供も産めないのが原因で落ちこぼれって呼ばれるようになったんですか?」

リンツァートルテ「ご明察。特に僕のせいで兄を戦死させた事で他の分家の人からたくさん罵倒されたよ。僕は英才教育も嫌になって家に引きこもるようになったんだ。でもそんな時にテレビでベルガさんの活躍を見たんだ。」

リコラ「お兄ちゃんの活躍って事はワールドバリスタカップの事ですか?」

リンツァートルテ「ああ、彼は見事にメルヘンランド人初の優勝を飾り、インタビューで優勝の秘訣を聞かれた時にこう言ってたんだ。優勝するのに必要なのは好きなものに意欲的に没頭する事。優勝したのは僕だったけど、他のバリスタのコーヒーも素晴らしいものだった。何が正しいかじゃなくて、自分らしく生きる事が何より大事なんだと思うよってね。」

リコラ「お兄ちゃんらしい台詞ですね。」

リンツァートルテ「僕はあの台詞に感銘を受けた。ずっとウィトゲンシュタイン家の人間として正しい生き方をする事にばかりに囚われていた自分に気づかされたんだ。だから彼のように好きだと思ってた事に没頭するようになったんだ。」

アーサー「それでバリスタを始めたのか?」

リンツァートルテ「そうだね。家業である不動産の仕事をしながら、不動産兼カフェを建ててみたら大好評になったんだ。クライアントと不動産の話をしながらコーヒーを飲んだりできるし、待っているクライアントにコーヒーブレイクをしてもらう事もできるから、それもあって売り上げが大幅に上がったんだ。」

リコラ「商売の才能に目覚めたんだね。」

リンツァートルテ「基本的にはベルガさんの模倣だから自分の考えで生きてるかって言われるとそうでもないけどね。」

アーサー「たとえ模倣でも自分なりの工夫があるなら、それは自分の考えじゃないのか?」

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三低女子の婚活事情 41ページ「最高裁の戦いに燃える男」

2020年01月19日 | 三低女子の婚活事情
リコラは証拠を掴む事を急いだのが災いしてティラミスに刺されてしまう。

しかしアーサーの会社を潰したのがモードレッドである事を突き止めた。

リコラ「ごめんね・・・・心配ばかりかけて。」

ベルガ「良いんだよ。無事だったから良かったけど、今度からこういう事をする時は透明の魔法を使う事だ。」

アーサー「透明の魔法って公共の場所じゃ禁止されてなかったか?」

ベルガ「証拠隠滅のために始末されるよりかはずっとマシだろ。一応僕、魔法が使えるって事が最近分かったんだ。」

リコラ「えっ、お兄ちゃん魔法使いだったの?」

ベルガ「うん、リコも魔法を学習して活用すると良いよ。僕が使えるならリコも使えるはずだからね。」

アーサー「リコ、あとの事は俺たちに任せてくれ。リコが命懸けで掴んでくれた証拠は無駄にしない。必ず裁判にも勝ってあの傲慢野郎に一泡吹かせてやるからさ。」

リコラ「分かった。ここから見守ってるからね。」

ベルガ「任せろ。アンブローズにはもう伝えてある。」

アーサー「この状態なら婚活イベントには行けないな。」

リコラ「そうだね。皮肉な話だけど、大怪我したおかげで婚活イベントから逃れたようなものだからね。」

アーサー「ベル、ティラミスがリコを刺したのも婚活法の弊害から生まれた悲劇なんだ。あいつは仕事を失ったら親に結婚させられて、専業主婦として家に縛りつけられるって言ってた。だから一刻も早く婚活法を廃止してほしいんだ。」

ベルガ「分かってるよ。僕も婚活法は嫌いだからね。」

リコラ「というかそんなに結婚するのが嫌だったんだね。」

ベルガ「モードレッドはクビになると結婚させられるのがティラミスの弱みだと分かってたんだな。」

アーサー「だがモードレッドの事だ。他の会社には何も喋らないように手を回してるだろうな。」

ベルガ「だったらティラミスを法廷に出席させれば良い。」

アーサー「ティラミスは殺人未遂の罪で警察に捕まってるんだぞ。どうやって引きずり出すんだ?」

ベルガ「今から僕が言った通りにしてほしい。」

それからしばらくして最高裁が始まり、アーサーとモードレッドの、

最後の戦いが幕を開け、傍聴席に至っては満席になっていたのである。

裁判長「ではこれより最高裁を始めます。被告は友人を傷つけられた事に腹を立て、原告に対して暴行を振るった件ですが、原告側の弁護人は質問を始めてください。」

ガウェイン「友人を傷つけられたというだけで殴る事について聞いた際、被告は自分の常識と相手の常識が違うと言ったが、常識が違うからと言って法律に違反してはいけないとは思わなかったのか?」

アーサー「こいつが言っただけで分かる奴なら説得に甘んじていただろうな。あんたも知っていると思うが、そいつは筋金入りの減らず口だ。言っただけで分かるような奴じゃないし、リコに対する脅迫を止めなかったら止めなかったでこいつの脅迫に黙認という形で加担した事になる。それでも説得だけで済ませるべきだったと言うのか?」

ガウェイン「他にも方法があったはずだ。殴る以外の手段は考えられなかったのか?」

アーサー「今まで誰からも躾けられてこなかったような奴に、交渉の余地なんてないと思うけどな。それとも一旦踏みとどまって脅迫罪で訴えた方が良かったか?」

ガウェイン「・・・・俺からは以上だ。(くっ、こいつが脅迫の事実を認めていなければ、ここまで押される事はなかったというのに。このままではまずい。何か策を考えなければ。)」

裁判長「検察からは何か質問はありますか?」

ランスロット「はい。被告は原告に対する暴行を正当防衛だと思っていますか?」

アーサー「ああ、もちろんだ。」

ランスロット「前回の裁判では原告がリコラさんに執拗にメールを送っていた事、周囲の方の証言から脅迫を行っている事も確認されましたが、それらの事情を考慮しても過剰防衛にあたると考えます。もしそちらが承諾していただけるのであれば、被告から原告への和解金の支払いで被告の罪を問わないと原告側から案が出ておりますが、いかがなされますか?」

アーサー「断る。」

ランスロット「アンブローズさんはどうお考えですか?」

アンブローズ「お断りします。今和解などすれば、原告の罪を問うタイミングがなくなりますからね。」

裁判長「それはどういう事か、お聞かせ願えますか?」

アンブローズ「はい。実は原告が被告の会社を倒産に追いやった事が判明したのです。」

ガウェイン「異議あり。これは原告を不当に侮辱している。」

裁判長「異議を棄却します。被告側の弁護人は説明を続けてください。」

モードレッド「(ふん、ティラミスは今警察署内にいる。他の連中も裁判が終わるまでは何もしゃべらないよう約束させた。この裁判さえ乗り切れば後はどうにでもなる。)」

アンブローズ「リコラさんが被告の会社と取引していた会社、ルンペルシュティルツヒェンに調査をしに行った結果、そこの社長が原告から圧力を受けた事で、取引の担当だったティラミスさんが被告の会社と取引をしなくなった事が判明したのです。そのため被告の会社は取引できる相手がいなくなって倒産したのです。」

モードレッド「言いがかりだ。名誉棄損で訴えるぞ。」

裁判長「静粛に。原告は勝手に発言しないように。」

アンブローズ「ティラミスさんは取引中断の秘密をリコラさんに知られた事で、証拠隠滅のためにリコラさんをナイフで刺して社長用の更衣室に閉じ込めましたが、被告によって救出されました。しかしリコラさんはリンツァートルテさんに証拠となるメールを既に送っていたため、この事が発覚したのです。」

ランスロット「しかしメールだけでは証拠になりませんよ。もしかしたらリコラさんが被告と手を組んで謀略を働いた可能性もあります。」

傍聴人A「なあ、あの男どっかで見なかったか?」

傍聴人B「そうだな。リコラさんって確か俺たちを助けてくれた人だよな?」

傍聴人C「お前ら今頃気づいたのかよ。あそこにいるのはあの時リコラさんと一緒にいたアーサー君だよ。」

傍聴人A「そうだよ。きっとそうだ。婚活法対策課の人だよ。」

裁判長「傍聴人は静粛に。」

アンブローズ「メールだけで証拠にならないのでしたら、ティラミス容疑者に来ていただきましょうか。」

ランスロット「容疑者はここには来れないはずですが。」

アンブローズ「裁判長、証人を呼んでもよろしいでしょうか?」

裁判長「構いません。」

アンブローズ「ではティラミスさん、入場してください。」

モードレッド「嘘・・・・だよな?」

アンブローズ「では質問を始めます。」

ガウェイン「異議あり。殺人未遂を犯した犯人を証言台に立たせるなどもってのほかだ。こいつは刑務所内にいないといけない人間だぞ。警察の許可は取ったのか?」

アンブローズ「許可なら取りました。ティラミスさんは司法取引により、証言台に立って証言する事を条件に罪を減刑する事が決定していますし、被害者であるリコラさんの許可も得ています。」

ガウェイン「ぎっ・・・・ぐぅ。」

裁判長「異議を棄却します。被告側の弁護人は質問を始めてください。」

アンブローズ「はい。ティラミスさんは原告に弱みを握られ、被告の会社との取引を中止しましたか?」

ティラミス「ああ、間違いない。俺はモードレッドに弱みを握られていた。俺が会社をクビになったら専業主婦として好きでもない相手とお見合いっ婚させられるところだったんだ。モードレッドはそれを知って俺にアーサーの会社との取引を中止しろって言ってきたんだ。」

モードレッド「てめー、いい加減にしろよ。どこにそんな証拠がある?」

ティラミス「社長はまだ口を割ってないけど、あの様子じゃ吐くのは時間の問題だ。それに会社にはお前が俺と話してた時の防犯カメラの映像もあるんだ。」

モードレッド「防犯カメラだと。」

アンブローズ「仕事用の建物は防犯カメラの設置が法律で義務付けられています。記録を消した場合は証拠隠滅罪に問われるため、ルンペルシュティルツヒェンの防犯カメラに残っていました。その映像がこちらです。」

傍聴人D「確かに映ってる。モードレッドだ。」

傍聴人A「間違いないな。」

モードレッド「だっ、だからって俺がこいつの弱みを握った証拠にはならないだろ。」

アンブローズ「ではティラミスさんと何を話していたのか、答えていただきましょうか。」

モードレッド「今後の仕事について話してたんだ。うちはルンペルシュティルツヒェンとも繋がりがあるからな。」

ティラミス「さっきのところをもう1度再生してくれ。音声がないから俺が台詞を再現する。」

アンブローズ「分かりました。」

ティラミス「このまま好きでもない奴と結婚させられるなんて嫌だよなー。アーサーとの取引を中止しろ。さもないと一生専業主婦だぞ。」

モードレッド「おいおい、嘘八百の吹き替えも大概にしとけよ。」

ティラミス「俺は一度見たり聞いたりした事は絶対に忘れられないんだ。たとえそれがどんなに嫌な事であってもな。」

アンブローズ「あなたはもしや、完全記憶能力の持ち主ですか?」

ティラミス「ああ、俺はそれのおかげで物忘れとか一度もした事ないし、そのおかげで大学まで卒業できた。でもうちの親は俺を幼馴染の娘と結婚させて相手の家の家業を継がせようと必死だった。俺はそんなの嫌だったから、自由にさせてもらう代わりに会社をクビになったら結婚して相手の家に入ると約束した。それをうっかり口の軽い同僚に話したのが間違いだった。」

モードレッド「何故俺がそんな事をしないといけねえんだよ?」

アンブローズ「原告はリコラさんといつも一緒にいた被告が気に入らなかったのでしょう。原告が被告に対して会社を潰すと言っていた事も、リコラさんとその周囲にいた人が証言していました。そこで原告は被告の会社を潰す事で被告をリコラさんから引き離そうとしましたが引き離せず、リコラさんの友人がいた会社の部署を解散させ、結果的にリコラさんの友人を辞職に追いやった。」

モードレッド「だからそんな証拠があるのかって聞いてんだよ。」

アンブローズ「証拠ならあります。リコラさんの友人が所属していたファンタスティックの民族衣装部がマロリー商社の人に言われて解散させられたとファンタスティックの社長が認めました。マロリー商社は原告が役員を務めている会社です。」

傍聴人A「ひでえ事しやがる。」

傍聴人B「ああ、全くだ。」

傍聴人C「アーサー君だけじゃなく関係ない人まで巻き込むなんて。」

傍聴人D「噂通りきたねえ奴だ。」

モードレッド「うるせえぞてめえら。黙って聞いてりゃ好き勝手言いやがって。」

裁判長「原告と傍聴人は静粛に。」

アンブローズ「ティラミスさんは原告の言う通りにした事がばれそうになってリコラさんを刺したのですか?」

ティラミス「そうだ。これがばれたら俺はクビになって結婚させられる。それだけは絶対に避けないといけないと思った。だが殺人未遂で捕まった事で結婚はもうしなくていいって親に言われたよ。親の幼馴染からも縁談を断る申し出が来たからな。」

アンブローズ「そこまでして結婚をしたくなかった理由は何ですか?」

ティラミス「結婚して専業主婦になったら、相手の娘の家業を継がないといけなくなる。そうなったらもう自由に生きられなくなるし、大体結婚制度自体が時代遅れなんだよ。どいつもこいつもいつまでも家に囚われやがって。ジパングが婚活法なんて制度を押しつけてきやがったせいで俺の人生滅茶苦茶だよ。」

アンブローズ「なら何故戦わなかったのですか?」

ティラミス「結婚したくないなんて言ったら、世間体が悪いから言えなかったんだよ。」

アンブローズ「世間の目が何です。あなたは自分のために戦うべきだったのです。今のリコラさんたちのように。」

裁判長「質問は以上ですか?」

アンブローズ「はい。証人への質問は以上です。」

ランスロット「では私から被告へ質問をさせていただきたいのですが?」

裁判長「構いません。」

アーサー「(今さら俺に聞きたい事って何なんだ?)」

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