ここは、世界一平和な国、メルヘンランド王国。
リコラは、メルヘンランドの仲間たちと共に、平和な日々を過ごしていたのである。
しかし、隣国であるジパング帝国は少子高齢化を止めるべく、婚活法を導入した。
メルヘンランド王国はジパング帝国と平和条約を結んでおり、婚活法が平和条約に盛り込まれたため、
リコラを含むメルヘンランド王国民たちも、婚活をしなければならなくなったのである。
しかしリコラは今では珍しい低身長、低学歴、低収入を併せ持った三低女子であり、
積極性も壊滅的という最も結婚に向いていない女だったのである。
三低女子リコラの、無謀な冒険が、今、始まる。
当時のジパング帝国にとって、メルヘンランドは弱小国家でしかなかった。
婚活法の施行をテレビで知ったリコラたちは、困惑の表情を隠せなかった。
リコラ「お兄ちゃん、滅茶苦茶怒ってたなー。トラブルを起こさないと良いけど。」
マドレーヌ「でも婚活ってどうすれば良いの?あたし婚活した事ないんだけど。」
モンブラン「私に任せとけって。良いアイデアがある。」
メルヘンランド女王「一体どうするのだ?」
モンブラン「誰でも良いから結婚して40歳直前になったら養子を貰えば良いんだよ。」
リコラ「それ、もうみんなやってると思うよ。」
マドレーヌ「そうそう。それに好きな人が相手じゃないとやる気にならないなー。」
モンブラン「じゃあ婚活パーティに行くの?」
リコラ「そうするしかないよ。幸いカップリングしなくても処罰はないみたいだし。テキトーに行ってやり過ごすしかないと思うよ。私はもう世界共通婚活組合に登録を済ませたけど、みんなはどうなの?」
マドレーヌ「あたしも済ませたよ。」
モンブラン「登録作業だけで骨が折れたよ。項目が多すぎてね。」
リコラ「みんな自分でやってて偉いね。お兄ちゃんは登録する気ないとか言ってたから、全部女王陛下がお兄ちゃんのプロフィールを登録するハメになっちゃってね。いつの間にか私も手伝わされてたし。」
2人「(女王陛下の扱い・・・・。)」
マドレーヌ「リコはお兄ちゃん想いだね。」
リコラ「あんなお兄ちゃんでも、いてくれないと店が持たないから仕方なかったの。」
メルヘンランド女王「妾の知る限りだと、婚活イベントは最近になってメルヘンランドに入ってきた風習のようだ。昔はお見合いや職場結婚が当たり前だったからのう。」
マドレーヌ「最近はジパングの影響で婚活だけじゃなくて、合コンなるものも入ってきたそうです。」
モンブラン「私は何度か合コン行ったんだけど、あれは男女が集まって世間話するだけだから全然進展ないんだよねー。相手のスペックを探ろうとしてもかわされちゃうし。」
リコラ「スペックってそんなに重要なの?」
モンブラン「そりゃそうだよー。私は結婚するならやっぱ三高男子は外せないね。」
マドレーヌ「三高って何?」
リコラ「高身長、高学歴、高収入の略称だよ。元々はジパング発祥の基準だけど、私はやっぱりフィーリングの合う人が良いかな。いくらスペックが良くても性格が合わないと駄目かな。そもそも結婚願望もないし。」
モンブラン「うわ、言っちゃったよ。リコは恋愛に興味ないの?」
リコラ「そう言われても、この人ならと思える人に出会った事がないから好きという感情がどんなものか分からないんだよね。お兄ちゃんも自分から誰かに話しかけようとしないし。他に夢中になれるものがあるから、恋愛の必要性自体感じてないのかも。」
マドレーヌ「それ分かる。あたしもファッションデザイナーだからいつも服の事ばっかり考えてるせいで、男と出会う機会なんて全然ないからいざ男に会っても実感がないからさー。」
モンブラン「私もパターンメーカーだからさー。普段は全然男と会わないし、会ってもどう対応して良いか分かんない。」
リコラ「誰か恋愛の専門家でもいれば頼りたいところだけど、うちは貧乏だから結婚相談所にも頼れないや。」
メルヘンランド女王「リコよ、恋愛の専門家が欲しいのか?」
リコラ「はい。でも無償でやってくれる人はいませんからね。」
マドレーヌ「仮に無償でやってくれる人がいたとしても、とっくに依頼が殺到してると思うし。」
モンブラン「えーとなになに・・・・婚活イベントの基本は回転寿司タイプと立食パーティ型またはこの2つの複合型のパーティがほとんどなんだって。婚活イベントの予約が全部締め切りになった場合は、自動でランダムマッチ合コンに参加する事になり、最後に第一希望から第五希望までの人を選択し、相手も自分を選んでいればカップリング成立ってわけだね。」
リコラ「回転寿司タイプって1分から3分しかないんだ。」
モンブラン「たった3分で何が分かるんだか?」
マドレーヌ「誰が誰だか分からなくなりそう。」
偉そうな女性「そんなんじゃ一生結婚できないよ。」
リコラ「あなたは・・・・どちらさんですか?」
偉そうな女性「あたしはジュリー・ファヴァレット。ジュリーって呼んでね。あたし、実は婚活コンサルタントをしているの。」
マドレーヌ「あっ、知ってる。ほら、この前雑誌でも見たでしょ?確か両家からの反対を押し切って結婚した人って特集でも乗ってた。しかもその後は最も成功した婚活コンサルタントに選ばれて多くの婚活難民を結婚に導いたっていう。」
ジュリー「そうそう。さっきあなたたちの話し声が聞こえちゃったからついね。だからあたしで良かったら気軽に何でも話してほしいの。」
リコラ「ジュリーは何で両家の反対を押し切って結婚したの?」
ジュリー「もちろん、夫の事を愛してるから。」
モンブラン「確かパートナーが伯爵家の御曹司でロミー・モンターニャって人だよ。ジュリーは確か子爵家でこの両家は凄く仲が悪かったの。最初は無理矢理引き離されたんだけど、最後は両家とも折れて結婚したんだよね?」
ジュリー「うん、そうなの。その時に両家の和解の仲裁をして下さったのが女王陛下なの。」
モンブラン「ええっ、女王陛下が?」
メルヘンランド女王「そういえばそんな事もあったな。妾の家は侯爵家でな、両方の家と交流があった事もあって妾が仲裁に入ったのだ。今思えばそなたは必死だったのう。」
ジュリー「あれからずっと女王陛下をお探ししていて、一言お礼を言おうと思って目撃情報を聞いて回っていたら、ギルドカフェに住んでると聞いてやってきたのです。女王陛下、あの時は本当にありがとうございました。この恩は一生忘れない所存でございます。」
メルヘンランド女王「あれくらいの事、容易い事である。ジュリーよ、お礼にと言っては何だが、そなたに1つ頼みたい事があるのだ。」
ジュリー「はい。何でしょう?」
メルヘンランド女王「リコたちの婚活の世話をしてほしいのだ。妾がリコたちのためにできる事と言えば、これくらいしか思いつかぬのでな。無理にとは言わぬが頼めるか?」
ジュリー「もちろんです。彼女たちさえ良ければ喜んでお引き受けします。他の誰でもない女王陛下の頼みですから。今なら1ヵ月あたり特別価格、100メルヘンで教えるけど、良かったらどう?」
リコラ「それくらいなら、私は別に構わないよ。私はリコラ・オーガスト・ロートリンゲン。私の事はリコで良いよ。」
マドレーヌ「あたしはマドレーヌ・シェル・プルースト。あたしも婚活の事、いっぱい教えてほしい。」
モンブラン「私はモンブラン・ユリウス。私もずっと合コンとかで苦戦を強いられてるから、是非教わりたいな。」
ジュリー「決まりだね。じゃあ今から講義でもしようかな。」
3人「ええーーーーー。」
ジュリー「ええーーーーーじゃない。今この瞬間にも年を取ってるという自覚を持ちなさい。みんな今日が1番若いんだから、行動するなら断然早い方が良いよ。後になって後悔するのは自分なんだからね。」
リコラ「確かに筋は通ってるね。」
ジュリー「でしょ?じゃあまずあなたたちのプロフィールカードを見せてちょうだい。」
マドレーヌ「プロフィールによって指導が変わるの?」
ジュリー「うん。男子は交際したい女子を品定めする時、容姿と性格と年齢を見るからその条件によって絞るべきターゲットも見えてくるの。だからプロフィールの把握が必要なの。ふーん、リコは23歳でマドレーヌは29歳でモンブランは35歳ね。」
モンブラン「大体何歳くらいがモテるの?」
ジュリー「年齢だけで言うなら基本的に10代から20代なんだよねー。メルヘンランドは10歳から結婚できる上に、婚活イベントは15歳から参加できるから、それもあって15歳から参加する人もいるくらいなの。だから若者が多い婚活イベントは避けた方が良いと思う。」
モンブラン「私やばいじゃん。」
ジュリー「あなたどころか全員婚活問題児だよ。」
3人「婚活問題児?」
ジュリー「まずリコ、あなたはルックスもスタイルも若さも申し分ない。だけどさっきの発言からして、全然他人に対して興味を持とうとしないところとか、三低女子で職人気質なところが大きな課題ね。」
リコラ「三低じゃ駄目なの?」
ジュリー「そうだよ。今じゃ女子も三高の方がモテる時代だし、男女平等後進国のジパングでも働く女子が段々増えてきてるから、なおさらこの傾向は加速すると思う。所属はメルヘンランド王国ギルドカフェでベルガさんと共同で自営業をしてるのね。中学校中退なのは何でなの?」
リコラ「お兄ちゃんが中学でいじめっ子と殴り合いになった後、集団リンチを受けた腹いせに箒で教室中の窓ガラスを全部たたっ切って追放処分になったせいで、その日から同級生にキチガイの妹と呼ばれるようになって、それが嫌でその日の内に中学を中退したの。それからは元々得意だったチョコ作りを極めようと思ってショコラティエになったの。」
ジュリー「それがショコラティエになったきっかけなの?」
リコラ「いや、きっかけは小学生の時、お兄ちゃんがクラスでただ1人バレンタインチョコを貰えなかったのが可哀想だと思ってチョコを作ったら滅茶苦茶喜んでくれたから、それで度々チョコを作るようになったのがきっかけ。」
ジュリー「かなり強烈なお兄ちゃんなのね。ベルガさんはその後どうなったの?」
リコラ「家をカフェに改造して勝手にバリスタを始めちゃって、最初はどうなるかと思ったけど、いつの間にか世界大会でも活躍するバリスタになったの。だけど知名度はあんまりなくて、皮肉にもお兄ちゃんが嫌っている婚活法の影響で、婚活のクエストが増えたおかげで何とか依頼の報酬で潰れずに済んでるけど、店の行く末が心配だよ。」
モンブラン「いくらベーシックインカムがあるとは言っても、貰えるのは生活費だけだから店をやるなら利益を出さないといけないもんね。」
ジュリー「最初はカフェだったんだ。」
リコラ「うん、元々は普通のカフェだったけど、あるクエストをお兄ちゃんが解決した事をきっかけに、次々と依頼人がクエストを持って来るようになって、ここはいつしかギルドカフェと呼ばれるようになったの。」
ジュリー「なるほどねー。もう知ってるとは思うけど、親族に変な人がいるってだけでカップリングを断る人もいるから、ここもかなりのマイナスポイントになってしまうかも。」
リコラ「良いの。お兄ちゃんは本当は良い人だから、それが分からない人とはうまくいかないと思う。」
ジュリー「信頼してるのね。」
リコラ「別に・・・・。」
ジュリー「でも総合的に見ればかなり条件の良い方だから、その消極的な性格さえ何とかすれば苦労はしないと思う。それからマドレーヌはファッションデザイナーをやってるんだっけ?」
マドレーヌ「うん、普段はモンブランと組んで一緒に仕事をしてるの。あたしがファッションを考えて書いたデザイン画を元に、モンブランが型紙を作るの。そしてここはあたしたちの行きつけの店で、初めて来た時にリコと出会ってたの。カフェなのに何故かチョコが売っていて、そこのザッハトルテを食べた時にめっちゃ気に入って以来ずっと通い続けてるんだ。」
ジュリー「それから度々来てるんだね。あたしもここに通っちゃお。」
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リコラは、メルヘンランドの仲間たちと共に、平和な日々を過ごしていたのである。
しかし、隣国であるジパング帝国は少子高齢化を止めるべく、婚活法を導入した。
メルヘンランド王国はジパング帝国と平和条約を結んでおり、婚活法が平和条約に盛り込まれたため、
リコラを含むメルヘンランド王国民たちも、婚活をしなければならなくなったのである。
しかしリコラは今では珍しい低身長、低学歴、低収入を併せ持った三低女子であり、
積極性も壊滅的という最も結婚に向いていない女だったのである。
三低女子リコラの、無謀な冒険が、今、始まる。
当時のジパング帝国にとって、メルヘンランドは弱小国家でしかなかった。
婚活法の施行をテレビで知ったリコラたちは、困惑の表情を隠せなかった。
リコラ「お兄ちゃん、滅茶苦茶怒ってたなー。トラブルを起こさないと良いけど。」
マドレーヌ「でも婚活ってどうすれば良いの?あたし婚活した事ないんだけど。」
モンブラン「私に任せとけって。良いアイデアがある。」
メルヘンランド女王「一体どうするのだ?」
モンブラン「誰でも良いから結婚して40歳直前になったら養子を貰えば良いんだよ。」
リコラ「それ、もうみんなやってると思うよ。」
マドレーヌ「そうそう。それに好きな人が相手じゃないとやる気にならないなー。」
モンブラン「じゃあ婚活パーティに行くの?」
リコラ「そうするしかないよ。幸いカップリングしなくても処罰はないみたいだし。テキトーに行ってやり過ごすしかないと思うよ。私はもう世界共通婚活組合に登録を済ませたけど、みんなはどうなの?」
マドレーヌ「あたしも済ませたよ。」
モンブラン「登録作業だけで骨が折れたよ。項目が多すぎてね。」
リコラ「みんな自分でやってて偉いね。お兄ちゃんは登録する気ないとか言ってたから、全部女王陛下がお兄ちゃんのプロフィールを登録するハメになっちゃってね。いつの間にか私も手伝わされてたし。」
2人「(女王陛下の扱い・・・・。)」
マドレーヌ「リコはお兄ちゃん想いだね。」
リコラ「あんなお兄ちゃんでも、いてくれないと店が持たないから仕方なかったの。」
メルヘンランド女王「妾の知る限りだと、婚活イベントは最近になってメルヘンランドに入ってきた風習のようだ。昔はお見合いや職場結婚が当たり前だったからのう。」
マドレーヌ「最近はジパングの影響で婚活だけじゃなくて、合コンなるものも入ってきたそうです。」
モンブラン「私は何度か合コン行ったんだけど、あれは男女が集まって世間話するだけだから全然進展ないんだよねー。相手のスペックを探ろうとしてもかわされちゃうし。」
リコラ「スペックってそんなに重要なの?」
モンブラン「そりゃそうだよー。私は結婚するならやっぱ三高男子は外せないね。」
マドレーヌ「三高って何?」
リコラ「高身長、高学歴、高収入の略称だよ。元々はジパング発祥の基準だけど、私はやっぱりフィーリングの合う人が良いかな。いくらスペックが良くても性格が合わないと駄目かな。そもそも結婚願望もないし。」
モンブラン「うわ、言っちゃったよ。リコは恋愛に興味ないの?」
リコラ「そう言われても、この人ならと思える人に出会った事がないから好きという感情がどんなものか分からないんだよね。お兄ちゃんも自分から誰かに話しかけようとしないし。他に夢中になれるものがあるから、恋愛の必要性自体感じてないのかも。」
マドレーヌ「それ分かる。あたしもファッションデザイナーだからいつも服の事ばっかり考えてるせいで、男と出会う機会なんて全然ないからいざ男に会っても実感がないからさー。」
モンブラン「私もパターンメーカーだからさー。普段は全然男と会わないし、会ってもどう対応して良いか分かんない。」
リコラ「誰か恋愛の専門家でもいれば頼りたいところだけど、うちは貧乏だから結婚相談所にも頼れないや。」
メルヘンランド女王「リコよ、恋愛の専門家が欲しいのか?」
リコラ「はい。でも無償でやってくれる人はいませんからね。」
マドレーヌ「仮に無償でやってくれる人がいたとしても、とっくに依頼が殺到してると思うし。」
モンブラン「えーとなになに・・・・婚活イベントの基本は回転寿司タイプと立食パーティ型またはこの2つの複合型のパーティがほとんどなんだって。婚活イベントの予約が全部締め切りになった場合は、自動でランダムマッチ合コンに参加する事になり、最後に第一希望から第五希望までの人を選択し、相手も自分を選んでいればカップリング成立ってわけだね。」
リコラ「回転寿司タイプって1分から3分しかないんだ。」
モンブラン「たった3分で何が分かるんだか?」
マドレーヌ「誰が誰だか分からなくなりそう。」
偉そうな女性「そんなんじゃ一生結婚できないよ。」
リコラ「あなたは・・・・どちらさんですか?」
偉そうな女性「あたしはジュリー・ファヴァレット。ジュリーって呼んでね。あたし、実は婚活コンサルタントをしているの。」
マドレーヌ「あっ、知ってる。ほら、この前雑誌でも見たでしょ?確か両家からの反対を押し切って結婚した人って特集でも乗ってた。しかもその後は最も成功した婚活コンサルタントに選ばれて多くの婚活難民を結婚に導いたっていう。」
ジュリー「そうそう。さっきあなたたちの話し声が聞こえちゃったからついね。だからあたしで良かったら気軽に何でも話してほしいの。」
リコラ「ジュリーは何で両家の反対を押し切って結婚したの?」
ジュリー「もちろん、夫の事を愛してるから。」
モンブラン「確かパートナーが伯爵家の御曹司でロミー・モンターニャって人だよ。ジュリーは確か子爵家でこの両家は凄く仲が悪かったの。最初は無理矢理引き離されたんだけど、最後は両家とも折れて結婚したんだよね?」
ジュリー「うん、そうなの。その時に両家の和解の仲裁をして下さったのが女王陛下なの。」
モンブラン「ええっ、女王陛下が?」
メルヘンランド女王「そういえばそんな事もあったな。妾の家は侯爵家でな、両方の家と交流があった事もあって妾が仲裁に入ったのだ。今思えばそなたは必死だったのう。」
ジュリー「あれからずっと女王陛下をお探ししていて、一言お礼を言おうと思って目撃情報を聞いて回っていたら、ギルドカフェに住んでると聞いてやってきたのです。女王陛下、あの時は本当にありがとうございました。この恩は一生忘れない所存でございます。」
メルヘンランド女王「あれくらいの事、容易い事である。ジュリーよ、お礼にと言っては何だが、そなたに1つ頼みたい事があるのだ。」
ジュリー「はい。何でしょう?」
メルヘンランド女王「リコたちの婚活の世話をしてほしいのだ。妾がリコたちのためにできる事と言えば、これくらいしか思いつかぬのでな。無理にとは言わぬが頼めるか?」
ジュリー「もちろんです。彼女たちさえ良ければ喜んでお引き受けします。他の誰でもない女王陛下の頼みですから。今なら1ヵ月あたり特別価格、100メルヘンで教えるけど、良かったらどう?」
リコラ「それくらいなら、私は別に構わないよ。私はリコラ・オーガスト・ロートリンゲン。私の事はリコで良いよ。」
マドレーヌ「あたしはマドレーヌ・シェル・プルースト。あたしも婚活の事、いっぱい教えてほしい。」
モンブラン「私はモンブラン・ユリウス。私もずっと合コンとかで苦戦を強いられてるから、是非教わりたいな。」
ジュリー「決まりだね。じゃあ今から講義でもしようかな。」
3人「ええーーーーー。」
ジュリー「ええーーーーーじゃない。今この瞬間にも年を取ってるという自覚を持ちなさい。みんな今日が1番若いんだから、行動するなら断然早い方が良いよ。後になって後悔するのは自分なんだからね。」
リコラ「確かに筋は通ってるね。」
ジュリー「でしょ?じゃあまずあなたたちのプロフィールカードを見せてちょうだい。」
マドレーヌ「プロフィールによって指導が変わるの?」
ジュリー「うん。男子は交際したい女子を品定めする時、容姿と性格と年齢を見るからその条件によって絞るべきターゲットも見えてくるの。だからプロフィールの把握が必要なの。ふーん、リコは23歳でマドレーヌは29歳でモンブランは35歳ね。」
モンブラン「大体何歳くらいがモテるの?」
ジュリー「年齢だけで言うなら基本的に10代から20代なんだよねー。メルヘンランドは10歳から結婚できる上に、婚活イベントは15歳から参加できるから、それもあって15歳から参加する人もいるくらいなの。だから若者が多い婚活イベントは避けた方が良いと思う。」
モンブラン「私やばいじゃん。」
ジュリー「あなたどころか全員婚活問題児だよ。」
3人「婚活問題児?」
ジュリー「まずリコ、あなたはルックスもスタイルも若さも申し分ない。だけどさっきの発言からして、全然他人に対して興味を持とうとしないところとか、三低女子で職人気質なところが大きな課題ね。」
リコラ「三低じゃ駄目なの?」
ジュリー「そうだよ。今じゃ女子も三高の方がモテる時代だし、男女平等後進国のジパングでも働く女子が段々増えてきてるから、なおさらこの傾向は加速すると思う。所属はメルヘンランド王国ギルドカフェでベルガさんと共同で自営業をしてるのね。中学校中退なのは何でなの?」
リコラ「お兄ちゃんが中学でいじめっ子と殴り合いになった後、集団リンチを受けた腹いせに箒で教室中の窓ガラスを全部たたっ切って追放処分になったせいで、その日から同級生にキチガイの妹と呼ばれるようになって、それが嫌でその日の内に中学を中退したの。それからは元々得意だったチョコ作りを極めようと思ってショコラティエになったの。」
ジュリー「それがショコラティエになったきっかけなの?」
リコラ「いや、きっかけは小学生の時、お兄ちゃんがクラスでただ1人バレンタインチョコを貰えなかったのが可哀想だと思ってチョコを作ったら滅茶苦茶喜んでくれたから、それで度々チョコを作るようになったのがきっかけ。」
ジュリー「かなり強烈なお兄ちゃんなのね。ベルガさんはその後どうなったの?」
リコラ「家をカフェに改造して勝手にバリスタを始めちゃって、最初はどうなるかと思ったけど、いつの間にか世界大会でも活躍するバリスタになったの。だけど知名度はあんまりなくて、皮肉にもお兄ちゃんが嫌っている婚活法の影響で、婚活のクエストが増えたおかげで何とか依頼の報酬で潰れずに済んでるけど、店の行く末が心配だよ。」
モンブラン「いくらベーシックインカムがあるとは言っても、貰えるのは生活費だけだから店をやるなら利益を出さないといけないもんね。」
ジュリー「最初はカフェだったんだ。」
リコラ「うん、元々は普通のカフェだったけど、あるクエストをお兄ちゃんが解決した事をきっかけに、次々と依頼人がクエストを持って来るようになって、ここはいつしかギルドカフェと呼ばれるようになったの。」
ジュリー「なるほどねー。もう知ってるとは思うけど、親族に変な人がいるってだけでカップリングを断る人もいるから、ここもかなりのマイナスポイントになってしまうかも。」
リコラ「良いの。お兄ちゃんは本当は良い人だから、それが分からない人とはうまくいかないと思う。」
ジュリー「信頼してるのね。」
リコラ「別に・・・・。」
ジュリー「でも総合的に見ればかなり条件の良い方だから、その消極的な性格さえ何とかすれば苦労はしないと思う。それからマドレーヌはファッションデザイナーをやってるんだっけ?」
マドレーヌ「うん、普段はモンブランと組んで一緒に仕事をしてるの。あたしがファッションを考えて書いたデザイン画を元に、モンブランが型紙を作るの。そしてここはあたしたちの行きつけの店で、初めて来た時にリコと出会ってたの。カフェなのに何故かチョコが売っていて、そこのザッハトルテを食べた時にめっちゃ気に入って以来ずっと通い続けてるんだ。」
ジュリー「それから度々来てるんだね。あたしもここに通っちゃお。」
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