社会不適合者エスティのブログ

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三低女子の婚活事情 28ページ「気持ちの迷走の重圧感」

2019年09月29日 | 三低女子の婚活事情
リコラはアーサーとデートをしていたがそこで様々な助言や妨害をもらい、

一緒に過ごしているうちにお互いに相手への思いが強くなっていくが。

アーサー「恋人じゃないよ。俺には勿体ないくらいだ。」

アントン「でもリコちゃんが離れて行った時、一瞬寂しそうな表情だったぞ。」

アーサー「気のせいだろ。」

アントン「じゃあ俺がリコちゃんとつき合っても良いか?」

アーサー「駄目だ。あっ、いや・・・・すまない。」

アントン「やっぱり好きなんだな。」

アーサー「・・・・ああ、そうだよ。」

アントン「分かるぜ。俺もリコちゃん大好きだからな。あの色白で透き通ったピチピチの肌。豊満で形の良いバスト。絶妙なカーブを描いているくびれたウエスト。周囲の目を惹くほどに引き締まったヒップ。棒のように細長くしなやかな脚。モデルか女優になってたら間違いなく今より稼げてたのになー。」

アーサー「リコは何度かモデルのスカウトに声をかけられた事があるらしいけど、自分がやりたい事を貫くために全部断ったそうだ。」

アントン「リコちゃんはベルにとっての精神安定剤みたいなもんだ。リコちゃんが稼ぐために出稼ぎなんてしに行ったら、ベルは間違いなく常連と揉めるようになるだろうな。」

アーサー「どうりでリコが変な男に無理やりつき合わされた時に、相手の家を放火しに行こうとしてたわけだ。」

アントン「そんな過激な事してたのか?」

アーサー「ああ。ヘクセンハウスと女王陛下が全力で阻止したから事なきを得たけど、放っておいたらどうなっていたか。」

アントン「重度のシスコンだな。」

アーサー「俺もそう思う。」

アントン「相変わらずベルはベルやってんだな。」

アーサー「ついにベルが動詞になったか。」

アントン「あいつが羨ましいよ。情緒不安定だけど行動的で腕も立つし、色んな女子とフィアンセになってるともっぱらの噂だ。」

アーサー「元々恋愛には控えめなはずだったのに、どうしてそうなったんだか。」

その頃リコラとマリユスはアレッサンドリアでアイスを選びながら、

時間を忘れて今までの婚活の話やベルガの話をしていたのである。

リコラ「ピンポイントでお兄ちゃんとアントンとランダムマッチしてましたよね?」

マリユス「はい。まさかランダムに選ばれた3人がいずれも知り合いになるとは思いませんでしたよ。あの、アーサーさんとは友達なんですよね?」

リコラ「はい、そうですけど。」

マリユス「今はつき合ってる相手はいますか?」

リコラ「いえ、いません。」

マリユス「じゃあ・・・・その、僕とつき合ってみませんか?」

リコラ「えっ、マリユスさんとですか?」

マリユス「はい。僕はベルの友人ですし、友人の妹さんで元から交流もあるリコラさんとなら、うちの親も安心すると思います。無理にとは言いませんが、どうでしょうか?」

リコラ「今の段階では無理だと思います。」

マリユス「つき合ってる相手がいないのに無理という事は、好きな相手がいるからですか?」

リコラ「気になる人はいるんです。でも好きかどうかまでは自分でも分からないんです。こんなの今までなかった気持ちですから。」

マリユス「やっぱアーサーさんには勝てないんですね。」

リコラ「あの・・・・別にアーサーの事を言っているわけじゃ。」

マリユス「隠さなくても良いんですよ。家族以外であそこまで誰かと打ち解けているリコラさんを見たのは初めてでしたから。」

リコラ「アーサーは私が変な人につきまとわれた時に、自分の会社を投げ出してまで私を助けてくれたんです。その時からずっとアーサーの事が頭から離れなくなったんです。」

マリユス「惚れましたね?」

リコラ「・・・・。」

マリユス「あれだけ他人に無関心だったリコラさんを振り向かせるなんて、凄く良い人なんでしょうね。普通は他人のために自分の会社を投げ出すなんてしませんから。」

リコラ「でも同時に私のために大事なものを投げ出してるアーサーに対する罪悪感もあるんです。誰かのために尽くす恋愛ってもっと楽しいものだと思ってたんですけど、アーサーが私のために犠牲を払うのがとても辛いんです。アーサーは気にするなって言ってましたけど、私に言わせれば気にしない方が難しいですよ。恋愛って一体なんなんでしょうね?」

マリユス「あなたが今感じているものがそれですよ。あなたがアーサーさんを好きだからこそ感じる気持ちなんですよ。どうでもいいって思ってたら辛さなんて感じませんからね。」

リコラ「好きだからこそ辛さを感じるんですか?」

マリユス「そうですね。どうでもいい人から振られても何も感じませんけど、好きな人に振られたら辛いっていうのと同じですよ。」

リコラ「確かに。何だか少し気分が晴れました。ありがとうございます。」

マリユス「いえいえ、僕も誰かと恋愛したいんですけど、なかなか。」

リコラ「結構皮肉な話ですけど、婚活法がなかったらここまで誰かを思ったり、誰かとつき合ったりなんてしなかったと思います。普段は引きこもりのショコラティエですから。」

マリユス「僕も普段は引きこもって焙煎ばかりしているので、リコさんとここまで話す機会なかったと思います。振られましたけど。」

リコラ「そうですか。」

マリユス「でも諦めたってわけじゃないですよ。もしアーサーさんがリコさんを粗末に扱うようでしたら、その時は僕との交際も考えてくださいね。リコさんへの気持ちなら僕も負けてませんから。」

リコラ「気持ちは嬉しいのですが、その時は来ないと思います。私は重度のブラコンなので、お兄ちゃんみたいな人じゃないと好きになれないと思います。」

マリユス「ふふっ、それは残念です。」

ザッハトルテ「あのさー、さっきからずっと雑談ばっかりなんだけど。来たんならさっさと選んでくれない?」

マリユス「あー、ごめんなさい。オレンジシャーベットとジパングティーください。」

リコラ「ストロベリーチョコとミントソーダちょうだい。」

ザッハトルテ「やっと注文入った。じゃあここに指を置いてね。とけないうちに食べてね。」

リコラ「うん、お兄ちゃんが世話になったね。」

ザッハトルテ「世話になったのは僕の方だよ。ベルがいなかったら店が潰れてた可能性があるから、ベルには感謝してもしきれないよ。この前ベルの家に泊まった時以来だね。」

リコラ「そうだね。お兄ちゃんの部屋から喘ぎ声が聞こえてたから分かってたよ。」

ザッハトルテ「ちっ、違う。ご、誤解だから。」

リコラ「じゃあそういう事にしとく。じゃあね。」

マリユス「知り合いなんですか?」

リコラ「はい。お兄ちゃんのフィアンセです。」

マリユス「結婚はしないって言ってたのに、彼女はたくさんいますよね。」

リコラ「制度に縛られたくないって言うのがお兄ちゃんのモットーですから。」

マリユス「リコラさんも制度には縛られたくない方ですか?」

リコラ「縛られるのは好みませんけど、恋愛してから結婚の方が性に合ってると思います。」

マリユス「そこはベルとは違うところですね。ベルは勢いのまま突っ走るとこがありますけど、リコさんは慎重というか冷静というか、順序を踏んで進むタイプですね。」

リコラ「そうなんですかね。アーサー、買ってきたよ。」

アーサー「ああ、ありがとう。いくらだった?」

リコラ「私の奢りだから気にしないで。就職したばっかりでしょ?」

アーサー「分かったよ。」

アントン「就職したばっかりって事は会社が潰れたのか?」

アーサー「ああ。さっきも言ったけど、元々は菓子製造業の経営者だ。俺の経営ミスで倒産した後、親父のコネで婚活法対策課に就職したんだ。来週から親父の仕事を手伝う事になってるけど、お金が貯まったらまた起業するつもりだ。」

アントン「婚活法対策課って、俺たちが普段世話になってる場所だよな?」

マリユス「うん、何度か婚活法対策課主催の婚活パーティに参加したよね。ただ運営のまとまりが悪いというか、何度もグダグダになってるから正直合コンとかで良い気がする。」

リコラ「本当に問題児しかいないんだね。」

アーサー「ギルドカフェでの婚活イベントでも途中から指揮の乱れがあったからな。あのまとまりの悪さを何とかしないと。」

アントン「あっ、もうこんな時間かよ。そろそろ行かないとやばいぞ。」

アーサー「何かあるのか?」

マリユス「実は今日合コンの日で、僕らは今日中に婚活イベントに参加しないと、ジパング警察に連れていかれちゃうんですよ。じゃあ僕らはもう行きますね。」

リコラ「うん、じゃあね。」

アーサー「課題が1つ見つかったな。」

リコラ「課題って。」

アーサー「まずは婚活法対策課で頑張ってみるよ。」

リコラ「あのさ、私も婚活法対策課に行って良いかな?」

アーサー「見学ぐらいなら別に良いんじゃないか。親父には俺から言っておくよ。」

リコラ「うん、分かった。」

リコラはアーサー遊び回った後で夕食を終えるとギルドカフェに戻り、

いつも通りベルガにデートの様子を全て見抜かれていたのである。

ベルガ「アーサーとデート中に色んな人に絡まれたみたいだね。ランチにパンを食べた後、暴漢に襲われたが誰かに助けられた。そしてアイスクリームショップに通って夕食を済ませて帰ってきたんだね。」

リコラ「光学迷彩型追跡カメラ使ってたの?」

ベルガ「そんなの使わなくても分かるよ。服にパンくずが付いているが、時間が経っているから昼間食べたものだ。」

リコラ「暴漢は何で分かったの?」

ベルガ「膝に土が付いている。誰かが倒れたところに駆け寄って膝をついたからだ。袖がしわくちゃになっている。誰かに掴まれて引っ張られたからだ。アーサーの性格からしてそんな乱暴な事はしないから、複数いる暴漢の1人にアーサーが殴られて倒れ、そこに駆け寄って膝をついた時に腕を掴まれて引っ張られたが、誰かに助けられて難を逃れた。」

リコラ「アイスクリームは?」

ベルガ「ミントソーダの香りがする。それを売っているのはザッハの店だけだ。そこから最も近いベーカリーはプファンの店だからパンはそこで食べたんだろ?」

リコラ「さすがは偶然妄想トリックだね。」

ベルガ「酷いなー、証拠に基づいた事実を言っただけなのに。アーサーとはかなり仲良くなったみたいだね。酷い目に遭っていながら帰ってきてからもずっと笑顔だし、もしかして好きなのか?」

リコラ「お兄ちゃんはもう少しデリカシーを勉強した方が良いと思うよ。」

ベルガ「やっぱり好きなのか。僕は別に反対しないよ。アーサーならリコと相性ピッタリだと思うし。」

リコラ「お兄ちゃんは何も分かってないよ。」

ベルガ「えっ?」

リコラ「もういい、お風呂入って寝るから。」

ベルガ「う、うん。一体何があったのやら。」

メルヘンランド女王「何やら悩んでおるようだな。」

ベルガ「女王陛下、リコが何を考えているか全く分からないんだ。」

メルヘンランド女王「乙女心は複雑故、全く見当もつかぬ事もあろう。結論を急ぐ必要はないのだ。ここはもう少し冷静に待つ事が大事であると思うぞ。リコは今悩んでおるのだ。自分がどうあるべきかをな。」

ベルガ「自分がどうあるべきかなんて考える必要ないと思うけどね。もっと自由に楽しく生きれば良いのに。」

メルヘンランド女王「誰もがベルのように確かな目標を持ち、自由に生きたいと思っておるわけではないのだ。リコのように誰かの下で拘束されながら働き、平穏な生活がしたいだけの者もおるのだ。」

ベルガ「それってつまんなくない?」

メルヘンランド女王「自由に楽しさを追い求めるだけが人生ではなかろう。自由だと申すなら、何も考えずに拘束されて生きる事もまた自由なのだ。それが分からぬそなたではあるまい。」

ベルガ「乙女心が複雑だという事は良く分かったよ。じゃあおやすみ。」

メルヘンランド女王「リコよ、ベルに察してもらうのは至難の業だぞ。」

リコラ「そうみたいですね。」

メルヘンランド女王「リコはどうしたいのだ?」

リコラ「私にも・・・・分かりません。」

28ページ目終わり

三低女子の婚活事情 27ページ「友達以上恋人未満のデート」

2019年09月22日 | 三低女子の婚活事情
リコラはモンブランとの賭けに負けたアーサーから誘われてデートする事になったが、

プファンが経営するベーカリーで昼食をしながら彼女と話す事になったのである。

アーサー「先が思いやられる。手続きは親父がやってくれたけど、いつクビになる事やら。」

プファンクーヘン「元々はクビにできなくて干されてる連中が集まってるところだから、そう簡単にはクビにならないと思うぞ。私だったら実家に引きこもって頭を冷やすけどな。」

リコラ「プファンの店はチェーン店まで構えてるくらいだし、特に問題なさそうだけど。」

プファンクーヘン「そうでもないぞ。飲食店は流行り廃りの影響をもろに受けるし、この世の中に問題が何もなくて安定してる職業なんて存在しないと思った方が良い。」

リコラ「うちもちょっと前までは赤字続きだったし、それは言えてるかも。あ、そうだ。参考までに聞きたいんだけど、プファンはなんでお兄ちゃんが好きなの?」

プファンクーヘン「なんで好きかって?ふっ、あははははは。」

リコラ「何かおかしな事言った?」

プファンクーヘン「聞き返すようで悪いが、誰かを好きになるのに理由が必要なのか?」

リコラ「えっ・・・・それは。」

プファンクーヘン「私は確かにベルの事が好きだが、何故好きなのかは考えた事がないんだ。ただあいつと一緒にいるだけで、凄く気持ちが安らいで心が満たされるんだ。」

リコラ「(今の私と同じだ。)」

アーサー「(確かに俺もリコと一緒にいるだけで凄く落ち着く。特に気を引くような事をしなくても、彼女の笑顔を見ているだけで飽きる事なく時間を過ごせる。)」

プファンクーヘン「何だ?2人してだんまりか?」

アーサー「いや、確かにプファンの言う通りだと思う。俺は恋愛を難しく考えすぎてたのかもしれない。」

リコラ「アーサーもなんだね。」

プファンクーヘン「お前ら恋人同士じゃなかったのか?」

リコラ「ええっ、なっ、何言ってるの。そんなわけ・・・・。」

プファンクーヘン「分かりやすい反応だな。顔が赤くなってるぞ。」

リコラ「それはこのホットドッグが辛いからだよ。」

アーサー「正直に言うと、どういう関係かは自分でも分からないんだ。」

プファンクーヘン「なるほどな。友達以上恋人未満ってわけか。昔の私もベルとはそういう関係だったからな。その時友人につき合ってんのかって言われた時は焦ったよ。」

リコラ「プファンもそういう時期があったんだね。」

アーサー「俺はその関係のままで良いと思ってる。独り身の方が何かと楽だし、元はと言えば全部婚活法のせいだからな。」

リコラ「とか言ってる割には全然不満そうな顔してないけど。」

アーサー「気のせいだろ。そろそろ行くか。」

リコラ「うん、そうだね。」

プファンクーヘン「もう行くのか。じゃあまた来てくれよな。私の方が人生経験あるんだから、相談くらい乗るぞ。」

リコラ「ありがとう。美味しかったよ。」

アーサー「リコに任せて正解だったよ。」

リコラ「プファンの店には一度行ってみたいって思ってたから、ちょうど良かったかな。」

アーサー「今度はどこ行く?」

リコラ「こういう時はアーサーがリードしてほしい。普段引きこもりの私よりかは土地勘あるでしょ?」

アーサー「しょうがねえなー。」

チャラ男A「なあ、姉ちゃん。そんな男よりもさ、俺たちと一緒に遊ぼうぜ。」

チャラ男B「そうだぜ。姉ちゃんみたいな美人でおっぱいも大きい子なら大歓迎だぜ。」

リコラ「お断りします。」

チャラ男A「そんな事言わないでさー、ほら。」

アーサー「その汚い手を放せ。嫌がってるだろ。」

チャラ男B「随分と生意気な口を利くじゃねえか。じゃあ俺たちと勝負して勝った方がこの女とデートでどうだ?」

アーサー「ふざけんな。そんな事に俺がつき合うわけ・・・・がはっ。」

リコラ「アーサー。大丈夫?」

アーサー「俺は平気だ。何するんだてめえ・・・・ぐふっ。」

チャラ男A「こいつ口先だけだな。喧嘩した事ないんじゃねえの?」

チャラ男B「じゃあこの子は俺たちが連れて行くぜ。」

アーサー「待てよ。お前らなんかには、絶対に渡さねえ。(この前はリコを守れなかった。だから・・・・今度は絶対に守ってみせる。)」

チャラ男A「まだやられ足りねえみたいだな。」

アーサー「ぐはっ・・・・があっ。」

リコラ「もう止めてくださいっ。私たちが何をしたって言うんですか?」

チャラ男B「こいつは俺たちのボスから彼女を奪った不届き者だ。だからきっちりお仕置きしておく必要があるんだよ。姉ちゃんが俺たちについて来るって言うなら、こいつにはこれ以上手は出さねえよ。なあ、ついでにその豊満なおっぱい揉ませてくれよ。」

リコラ「い、嫌です。」

チャラ男A「じゃあこいつがどうなっても良いんだな?」

アーサー「そいつらに構うな。俺を殴りたきゃ好きなだけ殴れ。彼女には手を出すな。」

リコラ「アーサー・・・・私の胸なら好きなだけ揉んでもらって構いませんから、彼には手を出さないでください。」

アーサー「おい、何言ってんだ。」

チャラ男B「ぐへへ、じゃあお言葉に甘えて。があああああっ。」

チャラ男A「これは遠距離スタンガン。ぐおおおおおっ。」

マロングラッセ「全く、女子の扱いも知らない連中なのね。怪我はない?」

リコラ「はい。アーサーは怪我しましたけど私は無事です。ありがとうございました。」

マロングラッセ「良いのよ。私はマロングラッセ・カレーム。普段はアウグスト警察署の署長をしているの。あなたたちは?」

リコラ「リコラ・オーガスト・ロートリンゲンです。」

アーサー「アーサー・モンターニャ・ファヴァレット。さっきはありがとう。」

マロングラッセ「仕事だから気にしないで。警察署に戻ろうとしていたら偶然あなたたちを見かけたの。アーサー君は倒れてて、リコラさんは泣いていたから怪しいと思って来てみれば、こんな事になってたのね。怪我は大丈夫なの?」

アーサー「これくらい平気だ。1人で歩けるよ。」

マロングラッセ「さっきお互いにお互いの事を守ろうとしてたけど、ここまで絆の深いカップルは初めて見たわ。」

アーサー「いや、俺たちはカップルじゃないんだ。」

マロングラッセ「えっ?じゃあさっきお互いを助けようとしてたのはどうしてなの?」

アーサー「リコは元同級生で友人なんだ。」

マロングラッセ「そうなの?」

リコラ「はい。間違いありません。」

マロングラッセ「元同級生で友人だとしても、あそこまでかばい合うなんて普通はあり得ない事よ。それだけ仲が良いならカップリングすれば良いのに。それともカップリングできない事情でもあるの?」

リコラ「(うっ、それを言われると弱い。)」

アーサー「俺はあんまり異性というものを知らないから、それで試しにデートの練習をしてるってだけだ。デートの練習をすればお互いに本命が見つかった時に役立つだろ?」

マロングラッセ「それもそうね。じゃあこの2人は私が連行するから、くれぐれも変な人には気をつけてね。」

アーサー「ああ、分かった。」

リコラ「お世話になりました。」

マロングラッセ「(アーサー君は明らかに自分の気持ちを誤魔化してるわね。リコラさんもアーサー君に話を合わせている感じがするし、何の事情があるのやら。)」

アーサー「危なかったなー。」

リコラ「そうだね。」

アーサー「まさかあんな事を聞かれるなんて思ってもみなかったな。」

リコラ「アーサー、なんで私をデートに誘ってくれたの?」

アーサー「実はな、モンブランと賭けをする事になったんだ。」

リコラ「賭け?」

アーサー「モンブランがもし自分がカップリングしたら、俺にも本当に伝えたい事を伝えろって言ってきたんだよ。」

リコラ「モンブランが賭けを申し込んでくるなんてね。(デートのきっかけを与えてくれた彼女には感謝しないとね。)」

アーサー「初めての婚活パーティで出会ってからかなり経つのに、リコと1回もデートしてないのはおかしいって思ってたからさ。だから一度はデートに誘ってみたかったんだ。」

リコラ「どうりでアーサーにしては積極的になってたわけだ。」

アーサー「経営者で婚活法なんてなかった時は、こんな事まず考えなかったからな。でも今暇人になったから、自分を見つめ直す良い機会になったかもしれない。だから早く起業資金を貯めないとな。」

リコラ「お兄ちゃんが言ってたんだけど、アーサーが起業したがるのは人に指示されるのが嫌だからって言ってたよ。」

アーサー「学生の時は常に親とか教師から指示されてばかりで頭にきてたんだ。だから将来は絶対に人から指示されずに済む仕事をしようと決めて、メルヘンランド大学の経営学部に入ったんだ。でも大学を卒業したまでは良かったんだが、何がしたいかまでは決まってなかった。」

リコラ「最初はパティシエになろうとして、他のパティシエに圧倒的な才能の差を見せつけられて断念した後、余った食材が捨てられているのを見て衝撃を受けて、余った素材を無駄なく利用するために菓子製造業を始めたんだよね?」

アーサー「よく覚えてるよな。もう忘れたものだと思ってたよ。」

リコラ「普通の人はそこまで考えないよ。お金目的で起業する人が多い中で、赤字覚悟で自分の信念を貫くために起業する人はなかなかいないから、凄く印象に残ってたの。いつもはクールだけどホットな心を持ってるんだなって思った。」

アーサー「それはお互い様だろ。リコだって普段は無表情で冷たい印象だけど、長時間労働に力仕事ばかりのショコラティエなんて、熱い信念がないと続かないだろ?」

リコラ「私にはそれしかなかったから。」

アーサー「たしかベルが1人だけバレンタインチョコを貰えなかった時に、哀れに思って作った手作りチョコをあげて、めっちゃ喜んでもらえたのがきっかけだったよな?」

リコラ「よく覚えてるよね。もう忘れたものだと思ってた。」

2人「ふっ、あははははは。」

アーサー「リコ、俺、どうしても言っておきたい事があるんだ。」

リコラ「何?」

アーサー「実は俺・・・・。」

アントン「リコちゃん、久しぶりだな。」

マリユス「ランダムマッチ合コン以来ですね。」

リコラ「久しぶりですね。えっと、彼は私の友人のアーサーです。」

アーサー「アーサーだ。以前は菓子製造業の経営者やってたんだ。」

アントン「俺はアントン。コーヒー豆の卸売業者だ。こっちは友人のマリユスで、コーヒーの焙煎やってるんだ。」

マリユス「マリユスです。アーサーさんは友人なんですね。一緒に笑いながら話していましたから、てっきり恋人同士だと思いましたよ。」

リコラ「こ、恋人。」

アントン「リコちゃんはこの話に不慣れなんだからあんまりいじるなよ。」

アーサー「ランダムマッチ合コンという事は、ランダムの組み合わせで知り合ったのか?」

アントン「いや、元々俺もマリユスも知り合いで、ギルドカフェっていう店の常連だからリコちゃんとも知り合いだったんだ。」

アーサー「数多くの人数の中から知り合い同士がランダムマッチするって物凄く低い確率だぞ。」

ユリウス「それがそうでもないんですよ。大半の人は婚活イベントが決まってますから、婚活イベントに無頓着な者同士の場合は凄く当たりやすいんですよ。アントンともランダムマッチ合コンで何度も当たってますからね。それに住所が近いとなおさら当たりやすいんですよ。」

リコラ「そうだったんですね。」

アーサー「あっ、あそこにアレッサンドリアがあるな。ストロベリーチョコにするか。」

リコラ「じゃあ私が買ってくるよ。」

マリユス「じゃあ僕も一緒に行きますね。僕もちょうど食べたいと思ってたので。」

アントン「俺はアーサーとここにいるよ。俺はオレンジシャーベットな。」

マリユス「うん。じゃあ行きましょう。」

リコラ「はい。行ってきます。」

アントン「アーサー、本当に恋人じゃないんだろうな?」

アーサー「恋人じゃないよ。俺には勿体ないくらいだ。」

27ページ目終わり

三低女子の婚活事情 26ページ「熱くなるほど言えない想い」

2019年09月15日 | 三低女子の婚活事情
リコラたちはギルドカフェの婚活パーティに参加していたが、

モードレッドの妨害で彼女の仲間たちが失業する事になった。

カトルカール「いえ、その時にはもうギルドカフェにお住まいでしたが、たまにお戻りになられる事もありますよ。」

モンブラン「そうなんだ。なんか私と違って凄く立派なキャリアだね。私も大卒だけど相当な差だ。」

カトルカール「そんな事はありませんよ。こんな事、あなたじゃなければ話していませんでしたよ。仲間の事をあれほど思いやれるほど素敵なあなたなら、話しても良いと思えたんです。」

モンブラン「そんな事あるよ。私は以前いた職場でも、上司の責任を擦りつけられて懲戒解雇だし、今度は調子に乗ってずっと一緒にやってきた仲間まで巻き込んじゃったし。なんか・・・・駄目だな・・・・私。」

カトルカール「そう泣かないでください。ハンカチをどうぞ。」

モンブラン「ありがとう。なんか気を遣わせちゃったね。」

カトルカール「いえいえ、私はあなたと話せてとても良かったですよ。ここまで言いたい事を言えたのは久しぶりですから。」

ジュリー「それではフリータイム終了です。気に入った相手の番号を書き込んで持ってきてください。」

モンブラン「もう時間か。あっ、これ返すね。」

カトルカール「はい。どうか希望をもって笑顔でいてください。あなたはもっと自信を持つべきです。」

モンブラン「やっぱり口のうまい人だね。今日はありがとう。おかげで少し元気が出たよ。」

カトルカール「いえいえ、こちらこそ。」

リコラ「ようやく終わったね。今日も飲もうかな。」

アーサー「そうだな。俺もつき合って良いか?」

リコラ「うん、良いよ。」

モンブラン「アーサー、ちょっと良い?」

アーサー「良いけど、どうしたんだよ?」

モンブラン「さっきリコに何か言いかけてなかった?」

アーサー「いや・・・・別に。」

モンブラン「言いたい事は言える内に言わないと後悔するぞ。」

アーサー「うるせえな。」

モンブラン「じゃあ私がお手本見せてあげよっか?」

アーサー「何だよお手本って?」

モンブラン「リコ、私ね、本気で恋しちゃったかも。」

リコラ「えっ、本当?」

モンブラン「うん。アーサー、私がカップリングできたらあんたも言いたい事言ったら?」

アーサー「まだからかうつもりかよ。」

モンブラン「私は本気だよ。」

アーサー「・・・・分かったよ。」

ジュリー「今回はなんと、8組のカップリングが成立しました。それでは最初のカップルを発表します。男性13番の方、女性24番の方・・・・それでは最後のカップルの発表です。」

アーサー「(ここまでモンブランの19番はなしか。こりゃ俺の勝ちだな。)」

モンブラン「(お願い。きてっ、私の19番。私はもっと、彼を知りたい。だからっ、お願い。)」

ジュリー「男性2番の方、女性19番の方です。」

モンブラン「えっ?」

カトルカール「一緒に前へ行きましょうか。」

モンブラン「う、うん。(や、やったぁ。)」

アーサー「嘘・・・・だろ。あいつがカップリングするなんて。」

リコラ「アーサー、その言い方は失礼だよ。今は祝ってあげようよ。仲間のカップリングを。」

アーサー「そうだな。」

モンブランはカトルカールとカップリングを果たし、

その夜のギルドカフェはモンブランの祝勝会だった。

ジュリー「やったじゃない。あなたならできると思ったわ。」

モンブラン「何言ってんの。ジュリーが私の喋りすぎちゃう癖を見破って、聞き上手になれるように徹してくれたからだよ。」

ジュリー「ふふっ、そういう事にしておくわ。」

リコラ「モンブラン、おめでとう。」

モンブラン「ありがとう。生きてて良かった。」

アーサー「カトルカールはどうしたんだ?」

モンブラン「彼なら仕事があるからって帰ったよ。それに今度一緒にデートする事になったから全然問題ないよ。レストランはギルドカフェと違って夜もやってるからね。」

リコラ「ギルドカフェは午後12時から午後6時までだからね。」

ルーシー「条件の良い人は基本的に忙しいから仕方ないよね。」

アーサー「いつも思うんだが、短すぎないか?」

リコラ「お兄ちゃんは体力ないし、他にやりたい事もあるからそこまで時間は割けないみたい。今の時間は2階で動画作ったり、メルヘンランドの民族衣装を作ったりしてるよ。」

アーサー「とことん自分本位なんだな。」

リコラ「人生は死ぬまでの暇潰しだから、自分のために使うのが1番だって言ってるくらいだし、もっともこれはお兄ちゃんが束の間自分勝手になる時の常套句なんだけどね。」

ルーシー「モンブランの祝勝会なのに2階にいるくらいだもんね。」

ロミー「自由すぎる人だね。何だか羨ましいな。」

ジュリー「1日中暇人のくせに。」

ロミー「酷いなー。俺だって今日の婚活パーティの運営してたってのに。」

リコラ「ジュリーも婚活法対策課の人なの?」

ジュリー「あたしは婚活法対策課からの依頼で婚活イベントを宣伝したり、司会を務めたりしてるの。いわゆる外注ってやつね。」

ロミー「うちの課はみんなコミュ障やら問題児ばかりでな。婚活法対策課だってのに宣伝も司会もロクにできないんだ。」

モンブラン「ねえ?男女30人ずつの60人で8組のカップリングって、カップリング率高い方なの?」

ジュリー「ええ、これでも確率的には高い方よ。いつもだったらカップリング率は10%を切ってるからね。これはジパングのデータだけど、35歳の高齢女子が5年後に結婚してる確率は500人に1人だから、あなたはとても運が良い方なのよ。」

モンブラン「そうだったんだ。だったらなおさら彼の事大事にしないとね。」

ジュリー「36歳ソムリエで大卒のエリートでダンディーな人とカップリングできるなんて凄いじゃない。あなたの理想にも適ってるみたいだけど、あなたもその人に釣り合うくらいの女子にならないと駄目よ。」

モンブラン「そうだね。ていうか私無職になったの忘れてた。早くどうにかしないと。」

アーサー「リコ、ちょっと良いか?」

リコラ「良いけど、どうかしたの?」

アーサー「俺とつき合ってくれ。」

リコラ「えっ?」

アーサー「あっ、いや、そういう意味じゃなくて、俺とデートしてほしいんだ。」

リコラ「アーサーとデート?」

アーサー「俺、リコとだったら安心して一緒にいられるって思ったんだ。だからその、俺がリコの相手に相応しいかどうか確かめてほしいんだ。俺はもっとリコの事が知りたい。そう思ったのはリコが初めてなんだ。」

リコラ「アーサー・・・・うん、良いよ。明日で良ければつき合うよ。」

ジュリー「あら、あなたたちもつき合う事になったの?」

アーサー「ちげーよ。デートしに行くだけだ。ていうか盗み聞きすんなよ。」

ジュリー「あたしが地獄耳なの忘れたの?リコ、あたしはアーサーとつき合うのに賛成だよ。」

ロミー「そうだな。リコちゃんならアーサーを幸せにしてくれそうだしな。俺も賛成するぞ。」

アーサー「冷やかすなよ。まだつき合うかどうかも決まってないってのに。」

モンブラン「恋人になる前に親公認かー。リコは外堀から埋めるタイプなんだね。」

リコラ「親公認なのは嬉しいけど、最初から外堀なんてなかったよ。」

ルーシー「リコを選ぶなんてお目が高いわね。でもそう簡単にリコは渡さないからね。」

アーサー「何でだよ?」

ルーシー「当たり前でしょ。あたしだってリコが好きなんだから。」

アーサー「そこはあたしだってじゃなくてあたしはだろ?その言い方じゃまるで俺も・・・・。」

ルーシー「まるで何だって?」

アーサー「あっ、もうこんな時間か。じゃあ俺帰るわ。じゃあな。明日寝坊すんなよ。」

リコラ「うん、分かった。」

ルーシー「あー、アーサー誤魔化した。」

モンブラン「(ふーん、約束は覚えてたようだね。)」

ジュリー「モンブラン、会社の同僚は何て言ってたの?」

モンブラン「あなたは悪くないって言ってたよ。事情を話したらみんなすぐに分かってくれたし、良い同僚を持ってただけに残念だな。」

ジュリー「じゃああなたがその人たちを雇ってアパレル会社作ってみたら良いじゃない。」

モンブラン「そうかっ、その手があった。ねえ、ジュリーも起業家でしょ?企業のノウハウ教えてよ。」

ジュリー「まず何人で一緒に起業するかを決めた後、市役所に開業届を出すだけで良いのよ。」

モンブラン「それだけ?」

ジュリー「ええ、面倒な手続きは市役所が勝手にやってくれるから。個人か法人かを聞かれるけど、小規模な事業を1人でやる場合とか小遣い稼ぎ程度でやるなら個人で良いし、誰かと共同でやる場合とか大勢でやっていくなら法人の方が良いわ。」

モンブラン「分かった。マドレーヌにも他の同僚にも伝えてみる。」

そして翌日を迎えるとリコラは集合場所であるアウグストの郊外で、

待っていたアーサーに会って一緒に街中を探検する事になった。

リコラ「待った?」

アーサー「ああ、10分待ったよ。時間通りだけど。」

リコラ「そこは待ってないって言うところだと思うけど、アーサーだから許しちゃう。」

アーサー「何だよそれ。」

リコラ「だって、どこかお兄ちゃんに似てるんだもん。だからどことなく安心しちゃう。」

アーサー「俺はベルの代わりか。」

リコラ「お兄ちゃんのマネは誰にもできないけどね。」

アーサー「知ってる。何だか人が混んできたな。」

リコラ「ええっ、アーサー、何で手を握ってくるの?」

アーサー「こうした方がはぐれないで済むだろ。リコは小さいから、はぐれたら簡単には見つからないだろうし。」

リコラ「失礼な。これでも昔より伸びてるんだよ。栄養のほとんどが胸に回ってるだけだから。」

アーサー「それ他の女子が聞いたら嫌みかって思うだろうなー。」

リコラ「アーサーが言わせたのが悪いんだよ。」

アーサー「そうか、ここら辺は老舗の激戦区なんだ。だから郊外なのに人が多いんだ。」

リコラ「アーサー、あのベーカリーでランチしようよ。料理とかもやってるみたいだし。」

アーサー「そうだな。ちょっと混んでるけど、腹も減ったし入ってみるか。」

プファンクーヘン「ん?リコにアーサーか。ここで会うなんて珍しいな。」

リコラ「そうだね。お兄ちゃんとフィアンセになったんでしょ?」

プファンクーヘン「ああ、最近暇を見つけてはベルの家に泊まりに行く事もあるから、その時はよろしく頼む。」

アーサー「泊まりに行ってんのか?」

プファンクーヘン「ああ、メルヘンランドじゃ、恋人の家に泊まりに行くのは当たり前だぞ。まあ、ゆっくりしていけ。ここはメルヘンランドでも屈指のベーカリー、ストラパローラだ。この時間に来るって事は昼飯か?」

リコラ「うん、お腹空いたからここに来たの。おすすめとかある?」

プファンクーヘン「そうだなー、じゃあこのホットドッグとチーズフォンデュのセットでどうだ?」

リコラ「美味しそうだね。じゃあそれにする。」

アーサー「俺はこのレインボーサンドウィッチセットだな。」

リコラ「1つ1つのサンドウィッチ全部に全く違う具材が入ってるからレインボーなんだね。」

プファンクーヘン「そうだ。うちのはボリュームあるけど、ハーフサイズにしなくて大丈夫か?」

アーサー「ああ、大丈夫だ。」

プファンクーヘン「じゃあここに指を置いてくれ。まずリコからな。」

リコラ「うん。うわ、もう今月ピンチかも。」

アーサー「余裕がないなら俺が奢ろうか?」

リコラ「何言ってんの、アーサーは就職したばっかりでしょ?」

アーサー「そうだったな。」

プファンクーヘン「もしかして社長辞めたのか?」

アーサー「会社が倒産したんだ。俺の力不足でな。だから親父の紹介でしばらくは婚活法対策課の世話になる事になった。」

プファンクーヘン「そうだったのか。あそこは問題児の巣窟だから気をつけろよ。」

アーサー「先が思いやられる。手続きは親父がやってくれたけど、いつクビになる事やら。」

26ページ目終わり

三低女子の婚活事情 25ページ「変わる人生とアラフォーたちの恋」

2019年09月08日 | 三低女子の婚活事情
リコラはモードレッドからの仮交際から逃れる事ができたが、

嫌な予感を隠せず引っ越してきたセシルと話していたのである。

リコラ「仕事でもコンビなんですね。」

セシル「はい。ジパングにいた時は全然売れなかったんですけど、ここなら良い作品が作れそうなんです。生活費を気にせず作業に没頭できるってのが最高ですねー。」

リコラ「そうなんですよ。そのおかげでメルヘンランドは人口に占める芸術家と職人の割合が世界一なんですよ。」

セシル「リコさんは確かこの店で働いているんですよね?」

リコラ「はい。そうなんですよ。今日も朝早くからチョコレートの仕込みをしてたんですよ。」

カイル「ショコラティエって大変なのか?」

リコラ「力仕事ですからね。いつもはフルタイムで重い物を持ったり、チョコレートの品質管理をしながら作っていかないといけないので並の耐久じゃ務まらないんです。」

カイル「よくそんな大変な仕事ができるよなー。どうやったらそんなに続くんだ?」

リコラ「仕事以上に厄介な身内がいる事でしょうか。うちにはぶっ飛んだお兄ちゃんがいて、いつもあれの面倒を見るのに比べれば、ショコラティエの大変さはそこまで大した事ないって思えるんですよ。」

セシル「なんか分かる気がします。」

カイル「それはどういう意味かな?」

セシル「分かってるくせに。」

桜子「リコさん、参加者の注文の処理が追いつかないんで、手伝ってもらって良いですか?」

リコラ「うん、分かった。」

モンブラン「えっ・・・・嘘・・・・。」

リコラ「モンブランどうしたの?」

モンブラン「うちの部署にいる社員全員解雇だって。」

リコラ「えっ?じゃあ、マドレーヌたちって言ってたのは・・・・。」

モンブラン「他の社員の事だったみたい。ううっ、うっ、リコ、どうしよう。私、取り返しのつかない事しちゃったかも。同僚たちになんて詫びたら良いかぁー。ううっ、あああああん。」

リコラ「モンブラン。」

モンブラン「私帰る。みんなに詫びに行かないと。痛っ、ちょっと痛いじゃないの。」

カトルカール「申し訳ございません。お怪我はありませんか?」

モンブラン「う・・・・うん。私こそごめんね。」

カトルカール「いえいえ。泣いておられましたが、何かあったのですか?私でよろしければ相談に乗りますよ。」

モンブラン「リコ、話しちゃって良い?」

リコラ「うん、良いよ。というかもうばれてると思うし。」

モンブラン「実は・・・・というわけなの。」

カトルカール「なるほど、そういう事でしたか。もしかしてその男はモードレッドさんじゃないですか?」

モンブラン「何故それを?」

カトルカール「私は偶然にも、この前モードレッドさんとデートをしていたリコラさんからお話を聞いていたのです。恋愛には奥手のリコラさんがあのモードレッドさんとデートをしていたのが不自然に思いまして。」

モンブラン「そうだったんだ。」

リコラ「カトルカールさんは防衛戦争の時の参謀で、当時は唯一お兄ちゃんに協力的だった人なの。」

カトルカール「女王陛下のお気に召した方なら信用しないわけにはいかないでしょう。」

リコラ「女王陛下とは話したんですか?」

カトルカール「ええ、お元気そうで何よりです。」

メルヘンランド女王「モンブランよ、何故泣いておるのだ?」

モンブラン「ちょっと嫌な目に遭っちゃったの。私の人生で最大の危機かも。」

リコラ「そう落ち込まないで。私がモードレッドに交渉してくる。」

モンブラン「駄目。私は自分の仕事を失うよりも、友達が酷い目に遭う方が嫌なの。」

リコラ「それは私も同じだよ。」

モンブラン「もう手遅れだよ。とっくにうちの部署は解散命令で解体されてるだろうし、明日にはクビって言われると思う。」

リコラ「ちょっと待ってて。」

モンブラン「リコ、待って・・・・行っちゃった。」

メルヘンランド女王「一体どうしたのだ?」

カトルカール「リコラさんたちに問題が起きておりまして、対応に追われているところです。この問題はこちらで解決しますので、女王陛下はご心配なく。」

モンブラン「どうしてそこまで私たちの事を気にかけてくれるの?」

カトルカール「困った時はお互い様ですから。あなたもリコラさんのために自ら会社を辞める事を決断したのでは?」

モンブラン「うん、リコは大事な友達だから。」

カトルカール「私にとってもリコラさんは大事なお客様ですから。」

モンブラン「そういえば婚活パーティなのに、全然婚活パーティらしい事してないね。」

カトルカール「そういえばそうですね。」

モンブラン「私は今は仕事ないけど、友人と一緒に事業を立ち上げようと思ってるの。私はパターンメーカーで、友人が作ったデザイン画を元に型紙を作ってるの。」

カトルカール「という事はアパレル業者ですね。私も自分が着る服には人一倍気を遣っていますから、服を作っておられる方には一度話をお聞きしたいと思っていたところなんですよ。色々とご教授いただけたら幸いです。」

モンブラン「服の事なら任せといて。そういえば自己紹介が遅れたね。私はモンブラン・ユリウス。ギルドカフェの常連なの。」

カトルカール「私はカトルカール・ブルターニュと申します。以後、お見知りおきを。普段はロイヤルファミリーレストランであるシュペッサルトの管理者と店長とソムリエを担当しております。非常時には陸軍大将も務めておりまして、国境の警備を任される事もあります。」

モンブラン「シュペッサルトって女王陛下の居住地じゃん。すごーい。」

カトルカール「今はこのギルドカフェに住まわれていて、全くお戻りにならないのですがね。もしよろしければ、一度シュペッサルトへお越しください。」

モンブラン「うん、そうさせてもらう。まずはどうにかして事業を成功させないと。」

その頃リコラはモードレッドに文句を言いに行っていたが、

モードレッドは終始強気の姿勢を隠さずにいたのである。

リコラ「何故関係のない人まで巻き込んだんですか?」

モードレッド「全部君が選んだんじゃないか。俺に恥をかかせるからこんな事になるんだぞ。」

リコラ「私が気に入らないなら私だけに仕返しをすれば良いでしょう。何故関係のない人まで巻き込むんですか?」

モードレッド「それが君が最も恐れている事態だからだ。自分のせいで他の人が悲惨な目に遭うのが耐えられない性格なのは知っていた。ベルガは社会不適合者だからこのやり方はまず通じない。だが君は違うだろ?」

リコラ「この仕打ちであなたが私を好きでない事は良く分かりました。」

モードレッド「何言ってんだよ。好きで好きでたまらないから一緒にいられる方法を模索してるんじゃないか。」

リコラ「本当に好きならこんな事はしないはずです。あなたは自分を押しつけているだけで、相手を思いやる気持ちが全く感じられません。だからあなたは愛されなかったんですよ。」

モードレッド「もう一度だけチャンスをやる。俺と交際を続けてくれるなら、この店には手を出さないでおいてやる。」

リコラ「何も学習してませんね。私はあなたとつき合う気はありません。」

モードレッド「ギルドカフェだけじゃ足りないか。そういえばあのアーサーとかいう奴、父親が婚活法対策課にいるんだってなー。俺がその気になれば課の1つや2つ簡単に潰せるんだぞ。あいつの他の家族もいつ無職になるか分からないぞ。ん?」

リコラ「ううっ、うっ、どうして・・・・そんな酷い事ができるんですか?」

モードレッド「おいおい、何だよそれ。俺が悪いみたいじゃん。わけ分かんねえ・・・・ぐはっ。」

リコラ「アーサー。」

モードレッド「いったー、てめえ自分が何したか分かってんのか?ああん?」

アーサー「分かってるよ。少なくとも今のお前は殴られて当然だって事くらいはな。」

モードレッド「司会者さんよぉ、こいつ俺に暴力を振るってきたんだぜ。とっとと退場させろよ。お前、何胸ぐら掴んでんだこらぁ。」

アーサー「今度リコを泣かせたらただじゃおかない。お前こそとっとと帰れ。ここは人々がゆったりと過ごす空間だ。お前みたいな奴が来ていい場所じゃないんだ。二度とリコに近づくな。」

ジュリー「アーサー、もう止めなさい。モードレッド、あなたを退場処分にします。今すぐ出て行きなさい。」

モードレッド「ちょっ、何で俺だけなんだよ?こいつだって暴力を振るったんだぞ。」

ジュリー「あなたもリコに対して何度も言葉の暴力を振るったでしょ?何ならあなたのお父さんを呼び出して議論でもする?そうなったらあなた確実に負けるわよ。」

モードレッド「ちっ、どいつもこいつも邪魔ばっかしやがって。覚えてろよ。」

モンブラン「リコ、大丈夫?」

リコラ「うん。ごめんね、心配かけて。」

モンブラン「リコが無事で良かったー。」

ジュリー「私の監督不行き届きね。モードレッドが参加するのが分かった時点でマークするべきだったわ。」

リコラ「仕方ないよ。ジュリーは婚活パーティが初めての人にずっと教えてたんだから。」

カトルカール「モンブランさん、少しよろしいですか?」

モンブラン「うん、良いけど。」

カトルカール「あなたは大変友人想いなのですね。感心しました。」

モンブラン「そんなの当たり前だよ。」

カトルカール「その当たり前な事が1番難しいのです。」

モンブラン「カトルカールさんにとっては難しい事なんですか?」

カトルカール「正直に言いますと、私が婚活イベントで見てきた方々の中には、自分の利益のためにライバルになりえる人を蹴落とす人が度々いたのです。私もその被害に遭った事がありまして、謂れのない噂を流されて出し抜かれた事があったのです。」

モンブラン「酷い。そんな事されたらやる気なくすんじゃないの?」

カトルカール「ええ。初めての婚活で、婚活をする方々の実態を知った時、私はカップリングを諦めておりました。」

モンブラン「ジュリーが言ってたんだけど、特に問題のない人は婚活する前に勝手に他の人に捕まるから、婚活をしている時点でその人は問題児と考えて良いって言ってたよ。」

カトルカール「なるほど、問題児としての要素を抱えているから相手がいないというわけですね。言われてみれば筋の通った言い分だと思います。私自身人前では緊張しますし、仕事以外では自分から人に話しかける事もありませんから。」

モンブラン「えっ、意外。カトルカールさんは結構冷静な人だと思ってた。」

カトルカール「そうでもありませんよ。あなたのように素敵なお方とご一緒するだけで、お恥ずかしい事に緊張してしまうのです。」

モンブラン「もう、口がうまいんだからー。」

カトルカール「私は元々人とのコミュニケーションは誰よりも苦手だったのです。しかし不思議な事に、ワインの話ならいくらでも話せてしまうのです。それで気づいたら女王陛下御用達のソムリエになっておりました。」

モンブラン「そうだったんだ。女王陛下とはいつ会ったの?」

カトルカール「私がまだ陸軍大佐だった頃、色んなワインを知ろうと世界中を回って戻ってきた頃に、ソムリエとして働ける場所はないかと思って職を探していたところ、このギルドカフェのクエストが目に入って、シュペッサルトの管理人兼店長募集中と書かれておりまして、必要資格にソムリエかバーテンダーの国家資格求むと書かれていたのです。」

モンブラン「それでソムリエの国家資格を取ったんだ。」

カトルカール「いえ、ソムリエの国家資格は元々取っていたのですが、資格持ちの人は高い給料で雇わないといけないと法律で決まっているので、資格持ちは資格がない人よりも就職がしにくいんですよ。」

モンブラン「確かに資格がある人を雇うと、人件費が高くつくから雇われにくいよね。」

カトルカール「はい。そのシュペッサルトが女王陛下の実家である事を知るのに時間はかかりませんでした。」

モンブラン「その時女王陛下はいたの?」

カトルカール「いえ、その時にはもうギルドカフェにお住まいでしたが、たまにお戻りになられる事もありますよ。」

25ページ目終わり

三低女子の婚活事情 24ページ「身を切る仲間たちの葛藤」

2019年09月01日 | 三低女子の婚活事情
リコラは会社が倒産して窮地に立たされたアーサーと共に、

飲みに行っていたがリコラの酒の勢いで秘密がばれてしまった。

リコラ「2人共、ありがとう。」

マドレーヌ「良いの良いの。ちょうどあの会社とはおさらばしたかったんだし。」

アーサー「本当にそれで良いのか?」

モンブラン「もっちろん。アーサーは起業家経験あるんだから、色々教えてよね。」

アーサー「分かったよ。」

クラップフェン「なあ、あれどう思う?」

シュトゥルーデル「嘘だろうな。リコを助けるために咄嗟の勢いで言ったんだ。マドレーヌは嘘を吐く時、目線を相手の目から逸らす癖があるってベルが言ってたんだ。」

クラップフェン「へー、そういう事ねぇー。」

シュトゥルーデル「俺は乙女心とかあんまり分からねえからな。だからベルにマドレーヌの情報を聞いてたんだ。一応俺の彼女だからな。俺たちの祖先はライスの工場を爆破しまくった工作員で、俺はジパングをしばきまくった戦闘爆撃機のパイロットだ。それを知ってもなお、物怖じせずに俺とつき合ってくれたのは彼女が初めてなんだ。」

クラップフェン「じゃあ、俺はそろそろ帰るわ。勘定頼むよ。」

シュトゥルーデル「はいよ。ここに指を置いてくれ。」

天真爛漫な男「ほら見てよ。あれが指紋認証システムだよ。」

天真爛漫じゃない男「あっ、ほんとだ。すげえな。」

クラップフェン「んー、全然見ない顔だなー。移民か?」

シュトゥルーデル「おいおい、客に絡むんじゃねえ。さっさと帰れ。」

クラップフェン「へいへい。じゃあな。」

シュトゥルーデル「やれやれ。何か用か?」

天真爛漫な男「飲みに来ました。」

天真爛漫じゃない男「客が来たってのに挨拶もなしかよ。」

シュトゥルーデル「メルヘンランド人の99%はコミュ障だ。それ故メルヘンランドの生活習慣は基本的にコミュニケーションをしない前提の仕組みなんだ。だからこの国にはあいさつにあたる言葉がないんだ。もしかしてジパングからの客か?」

天真爛漫な男「はい。厳密に言うと僕らはメルヘンランド人でもありますし、同時にジパング人でもあるんです。僕はセシル・パトリック・アユカワです。」

天真爛漫じゃない男「俺はカイル・セドリック・アユカワ。父さんがジパング人で母さんがメルヘンランド人だ。セシルは俺の弟だ。」

シュトゥルーデル「俺はシュトゥルーデル・ハンス・ハルトマン。普段はここで店長をやってる。」

カイル「シュトゥルーデルってあのメルヘンの魔王か?」

シュトゥルーデル「そんな大層なもんじゃないさ。分をわきまえない侵略者にお帰りいただく努力をしただけだ。」

モンブラン「もしかしてメルヘンランド初めてなの?」

セシル「はい。僕らは元々ジパングに住んでたんですけど、防衛戦争の影響で居場所がなくなっちゃったんですよ。それで本格的に迫害を受ける前に引っ越す事になったんですよ。」

リコラたちは自己紹介を終えた後一緒に飲み始め、

セシルとカイルの深刻な状況を知る事になった。

リコラ「そんな事があったんだ。」

アーサー「ジパング系メルヘンランド人ってだけでかなり割を食ってるみたいだな。」

カイル「俺たちは何も悪い事してないってのに、何でこんな目に遭わないといけないんだか。」

モンブラン「つまり防衛戦争が一旦終わった後、ジパングの職場でいじめを受けるようになって2人共ここに引っ越してきたわけね。」

セシル「はい。父がすでに防衛戦争で戦死していた事もあって、祖父母の誘いで母の故郷であるアウグストへ引っ越してくる事になったんです。そしたら今度はメルヘンランド人からも侵略者は帰れと言われて、やけ酒を飲みに来たわけです。」

アーサー「どっちに行っても敵扱いか。確かにそれは辛いな。俺も昨日会社が潰れたばっかりなんだ。一緒に飲もうぜ。」

セシル「はい。アーサーさんは優しいですね。」

リコラ「なんか傷の舐め合いになっちゃってるね。」

カイル「あんたらは俺たちの事を敵だと思わないのか?」

リコラ「私たちが敵対しているのはあくまで黒杉内閣であってジパング人じゃありませんし、大半の人はそんな事を気にも留めてないので安心して良いですよ。昔からジパング系の人もいますからね。」

カイル「良識ある人がいて助かったよ。」

シュトゥルーデル「父親は自衛隊員だったのか?」

カイル「ああ。父さんは帝国自衛隊の海上部隊にいた。父さんは帝国自衛隊の正規空母である、ブルードラゴン、スカイドラゴンを率いる司令長官だったんだ。最初は優勢だったけど1機の戦闘爆撃機が急に夜襲してきて、あっという間に2隻とも大破炎上して沈没した。父さんは他の乗員たちと運命を共にした。この事実はしばらく伏せられていて、俺たちがそれを知ったのは第4次防衛戦争が終わってからだった。」

セシル「黒杉内閣は大勢の犠牲者を出して大敗した事をずっと伏せていて、今でも負けを認めてないんです。」

リコラ「戦闘爆撃機・・・・もしかしてその2隻を沈めたのって。」

シュトゥルーデル「俺だ。」

他全員「ええっ。」

シュトゥルーデル「今だから言える事だが、俺たちはジパングの情報を傍受していた。そこでメルヘンランド諸島の島に停泊していた正規空母2隻を夜襲した。他の連中に黙って1人で出撃したから、後でめっちゃ怒られたけどな。」

カイル「どうりで海上部隊が出撃を読めなかったわけだ。大元の敗因はそれか。」

シュトゥルーデル「目の前に仇がいるってのに冷静だな。」

カイル「思うところはあるさ。でも恨みは持ってない。1番悪いのはメルヘンランド侵略に固執しすぎた黒杉内閣だ。この国の豊かさが相当羨ましかったんだろうと思う。」

セシル「父は僕らが食べていけるように帝国自衛隊で働いていました。でもここの人たちからしたら父は侵略者です。正直、父の働きを誇って良いのかどうか、分からないんです。」

シュトゥルーデル「俺は誇って良いと思うぞ。」

セシル「えっ。」

シュトゥルーデル「敵であれ味方であれ、戦いが終われば全員戦場を共にした戦友だ。それにお前の親父さんは卑怯な攻め方は全くしてこなかったしな。」

カイル「あんたにそう言われると、何だか複雑だな。」

リコラ「じゃあ私はそろそろ帰るね。お兄ちゃんが心配だから。」

アーサー「そうだな。じゃあ俺も帰るか。勘定頼む。」

シュトゥルーデル「はいよ。ここに指を置いてくれ。」

カイル「指を機械に置くだけで決済できるってすげえよなー。」

セシル「確かみんな自分の指紋を銀行に登録してて、指紋と口座をリンクさせる事ですぐに決済できるんだよ。僕らも入国した時に口座と指紋を登録させられたもんね。」

カイル「もう現金は廃止されたから紙幣じゃ買い物もできないしな。」

セシル「そうだね。でもここなら快適に暮らせそうだね。」

マドレーヌ「どうしよう。あたしつい勢いで辞めるって言っちゃったよー。」

モンブラン「さり気なく私まで巻き込んでたよね?」

マドレーヌ「あはは、ごめんね。でもリコの事を思うと居ても立っても居られなくなって。でもファンタスティックに不満があったのは本当だよ。仕事が大変な割に給料安いし。」

モンブラン「しょうがない。せっかく乗りかかった舟だから、私もつき合ってあげる。」

リコラたちはそれぞれの家に帰り数日が過ぎたが、

予定通りに婚活イベントがギルドカフェで開催された。

リコラ「もしマドレーヌたちが本当に会社を辞めるなら、これで弱みはなくなるけど、本当にこれで良いのかな?」

アーサー「本当に辞める予定があるなら良いんじゃないか?」

モンブラン「あっ、リコ。私たちもう会社辞めるから、安心してモードレッドとの交際を断ってね。」

リコラ「う、うん。マドレーヌは?」

モンブラン「マドレーヌならシュトゥルーデルとデートしに行ったよ。私はまだカップリングしてないからここに来たけどね。今日はなかなか良い男が集まってるじゃない。ベルはどこにいるの?」

リコラ「お兄ちゃんは出かけてるよ。でも本当に良いの?」

モンブラン「良いの良いの。人助けだと思ってやってるわけだし、私もいつか自分で事業を始めたいって思ってたし、その予定が少し早まったってだけだから。」

リコラ「やっぱりマドレーヌが咄嗟に言ったんだね。」

モードレッド「やあ、リコちゃん。ここが君の店だって知ってたから、ここの婚活パーティに参加すれば君と会えると思ったんだ。」

アーサー「一体リコに何の用だ?」

モードレッド「俺は彼女と話してるんだけどなー。」

モンブラン「残念だけど、リコはもうあなたとの茶番につき合う事はないと思うよ。」

モードレッド「何だと?」

モンブラン「今すぐリコから手を引いてもらうよ。」

モードレッド「良いのかなー?そんな事言って?俺は君がいる会社の筆頭株主だ。社長をつつけば簡単に君ごとき簡単にクビにできるんだぞ。」

モンブラン「クビにしたいならすれば良いじゃん。」

モードレッド「ほー、随分強気じゃないか。じゃあマドレーヌたちもクビにしちゃうけど、それでも良いんだな?」

モンブラン「別に良いよ。もうあんたなんて怖くないんだから。今週分の婚活イベント消化してるならもう帰れば。」

モードレッド「ちっ、俺の邪魔をしたらどうなるか思い知らせてやるよ。」

リコラ「行っちゃったね。でもここから離れる気はないみたいだから、婚活イベントは消化してないって事だね。」

モンブラン「ざまあみなさい。リコに手を出したら許さないんだから。リコ、もしまたあいつが近づいてきたら私を呼んでね。私が懲らしめてあげるから。」

リコラ「うん、ありがとう。(あれっ?さっきマドレーヌたちって言わなかったっけ?モンブラン以外で彼女だけならたちって言うのはおかしいと思うけど。)」

アーサー「良かったな。これでやっとモードレッドから解放されたってもんだ。」

リコラ「代償は大きかったけどね。」

アーサー「マドレーヌたちの事は気の毒だが、リコが助かって本当に良かった。」

リコラ「アーサー・・・・心配かけたね。」

アーサー「思えばこの前リコと一緒に飲みに行った時が1番楽しかったな。」

リコラ「私もだよ。今まで何度か誰かとデートをする事になったけど、アーサーと一緒に飲みに行った時が1番落ち着いたかも。」

アーサー「結果的には飲みに行って正解だったな。あいつらが自分から辞めるって言い出した時、これでリコが助かるって安心してしまった自分がいるんだ。」

リコラ「そうだったんだ。私だけじゃなかったんだね。」

アーサー「リコもなのか?」

リコラ「うん、全く安心しなかったって言えば嘘になるけど、彼女たちが満足ならそれで良いって思っちゃってた。」

アーサー「あのさ・・・・今度・・・・。」

セシル「リコさん、僕と話してもらっても良いですか?」

リコラ「はい、構いませんよ。アーサー、また後でね。」

アーサー「ああ、後でな。」

セシル「今日からここの近くに兄と一緒に引っ越してきたんです。」

リコラ「そうだったんですね。」

セシル「はい。元々はアウグストにある祖父母の家にいたんですけど、ベーシックインカムが正式に貰える事になったので、2人で事業を始めようかなと思って引っ越してきたんです。2LDKで家賃無料なんですよ。」

リコラ「事業を始める場合は年間の純利益が10万メルヘンを超えると家賃が発生するので気をつけてください。企業の場合は企業に対して家賃が発生しますから。」

セシル「メルヘンランドの家賃って変わってるんですね。」

リコラ「そうですね。基本的に無職でも生きていける事を前提としている国なので、一定以上の利益を上げている人と企業以外からは家賃を取っちゃいけないって法律で決まってるんですよ。」

セシル「本当に住みやすい国なんですね。もうジパングには戻れそうにないです。」

リコラ「セシルさんはどんな仕事を始めようと思ったんですか?」

セシル「僕は漫画家で兄は小説家なんです。兄の小説を僕が漫画化してたんですよ。」

リコラ「仕事でもコンビなんですね。」

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