リコラはアーサーとデートをしていたがそこで様々な助言や妨害をもらい、
一緒に過ごしているうちにお互いに相手への思いが強くなっていくが。
アーサー「恋人じゃないよ。俺には勿体ないくらいだ。」
アントン「でもリコちゃんが離れて行った時、一瞬寂しそうな表情だったぞ。」
アーサー「気のせいだろ。」
アントン「じゃあ俺がリコちゃんとつき合っても良いか?」
アーサー「駄目だ。あっ、いや・・・・すまない。」
アントン「やっぱり好きなんだな。」
アーサー「・・・・ああ、そうだよ。」
アントン「分かるぜ。俺もリコちゃん大好きだからな。あの色白で透き通ったピチピチの肌。豊満で形の良いバスト。絶妙なカーブを描いているくびれたウエスト。周囲の目を惹くほどに引き締まったヒップ。棒のように細長くしなやかな脚。モデルか女優になってたら間違いなく今より稼げてたのになー。」
アーサー「リコは何度かモデルのスカウトに声をかけられた事があるらしいけど、自分がやりたい事を貫くために全部断ったそうだ。」
アントン「リコちゃんはベルにとっての精神安定剤みたいなもんだ。リコちゃんが稼ぐために出稼ぎなんてしに行ったら、ベルは間違いなく常連と揉めるようになるだろうな。」
アーサー「どうりでリコが変な男に無理やりつき合わされた時に、相手の家を放火しに行こうとしてたわけだ。」
アントン「そんな過激な事してたのか?」
アーサー「ああ。ヘクセンハウスと女王陛下が全力で阻止したから事なきを得たけど、放っておいたらどうなっていたか。」
アントン「重度のシスコンだな。」
アーサー「俺もそう思う。」
アントン「相変わらずベルはベルやってんだな。」
アーサー「ついにベルが動詞になったか。」
アントン「あいつが羨ましいよ。情緒不安定だけど行動的で腕も立つし、色んな女子とフィアンセになってるともっぱらの噂だ。」
アーサー「元々恋愛には控えめなはずだったのに、どうしてそうなったんだか。」
その頃リコラとマリユスはアレッサンドリアでアイスを選びながら、
時間を忘れて今までの婚活の話やベルガの話をしていたのである。
リコラ「ピンポイントでお兄ちゃんとアントンとランダムマッチしてましたよね?」
マリユス「はい。まさかランダムに選ばれた3人がいずれも知り合いになるとは思いませんでしたよ。あの、アーサーさんとは友達なんですよね?」
リコラ「はい、そうですけど。」
マリユス「今はつき合ってる相手はいますか?」
リコラ「いえ、いません。」
マリユス「じゃあ・・・・その、僕とつき合ってみませんか?」
リコラ「えっ、マリユスさんとですか?」
マリユス「はい。僕はベルの友人ですし、友人の妹さんで元から交流もあるリコラさんとなら、うちの親も安心すると思います。無理にとは言いませんが、どうでしょうか?」
リコラ「今の段階では無理だと思います。」
マリユス「つき合ってる相手がいないのに無理という事は、好きな相手がいるからですか?」
リコラ「気になる人はいるんです。でも好きかどうかまでは自分でも分からないんです。こんなの今までなかった気持ちですから。」
マリユス「やっぱアーサーさんには勝てないんですね。」
リコラ「あの・・・・別にアーサーの事を言っているわけじゃ。」
マリユス「隠さなくても良いんですよ。家族以外であそこまで誰かと打ち解けているリコラさんを見たのは初めてでしたから。」
リコラ「アーサーは私が変な人につきまとわれた時に、自分の会社を投げ出してまで私を助けてくれたんです。その時からずっとアーサーの事が頭から離れなくなったんです。」
マリユス「惚れましたね?」
リコラ「・・・・。」
マリユス「あれだけ他人に無関心だったリコラさんを振り向かせるなんて、凄く良い人なんでしょうね。普通は他人のために自分の会社を投げ出すなんてしませんから。」
リコラ「でも同時に私のために大事なものを投げ出してるアーサーに対する罪悪感もあるんです。誰かのために尽くす恋愛ってもっと楽しいものだと思ってたんですけど、アーサーが私のために犠牲を払うのがとても辛いんです。アーサーは気にするなって言ってましたけど、私に言わせれば気にしない方が難しいですよ。恋愛って一体なんなんでしょうね?」
マリユス「あなたが今感じているものがそれですよ。あなたがアーサーさんを好きだからこそ感じる気持ちなんですよ。どうでもいいって思ってたら辛さなんて感じませんからね。」
リコラ「好きだからこそ辛さを感じるんですか?」
マリユス「そうですね。どうでもいい人から振られても何も感じませんけど、好きな人に振られたら辛いっていうのと同じですよ。」
リコラ「確かに。何だか少し気分が晴れました。ありがとうございます。」
マリユス「いえいえ、僕も誰かと恋愛したいんですけど、なかなか。」
リコラ「結構皮肉な話ですけど、婚活法がなかったらここまで誰かを思ったり、誰かとつき合ったりなんてしなかったと思います。普段は引きこもりのショコラティエですから。」
マリユス「僕も普段は引きこもって焙煎ばかりしているので、リコさんとここまで話す機会なかったと思います。振られましたけど。」
リコラ「そうですか。」
マリユス「でも諦めたってわけじゃないですよ。もしアーサーさんがリコさんを粗末に扱うようでしたら、その時は僕との交際も考えてくださいね。リコさんへの気持ちなら僕も負けてませんから。」
リコラ「気持ちは嬉しいのですが、その時は来ないと思います。私は重度のブラコンなので、お兄ちゃんみたいな人じゃないと好きになれないと思います。」
マリユス「ふふっ、それは残念です。」
ザッハトルテ「あのさー、さっきからずっと雑談ばっかりなんだけど。来たんならさっさと選んでくれない?」
マリユス「あー、ごめんなさい。オレンジシャーベットとジパングティーください。」
リコラ「ストロベリーチョコとミントソーダちょうだい。」
ザッハトルテ「やっと注文入った。じゃあここに指を置いてね。とけないうちに食べてね。」
リコラ「うん、お兄ちゃんが世話になったね。」
ザッハトルテ「世話になったのは僕の方だよ。ベルがいなかったら店が潰れてた可能性があるから、ベルには感謝してもしきれないよ。この前ベルの家に泊まった時以来だね。」
リコラ「そうだね。お兄ちゃんの部屋から喘ぎ声が聞こえてたから分かってたよ。」
ザッハトルテ「ちっ、違う。ご、誤解だから。」
リコラ「じゃあそういう事にしとく。じゃあね。」
マリユス「知り合いなんですか?」
リコラ「はい。お兄ちゃんのフィアンセです。」
マリユス「結婚はしないって言ってたのに、彼女はたくさんいますよね。」
リコラ「制度に縛られたくないって言うのがお兄ちゃんのモットーですから。」
マリユス「リコラさんも制度には縛られたくない方ですか?」
リコラ「縛られるのは好みませんけど、恋愛してから結婚の方が性に合ってると思います。」
マリユス「そこはベルとは違うところですね。ベルは勢いのまま突っ走るとこがありますけど、リコさんは慎重というか冷静というか、順序を踏んで進むタイプですね。」
リコラ「そうなんですかね。アーサー、買ってきたよ。」
アーサー「ああ、ありがとう。いくらだった?」
リコラ「私の奢りだから気にしないで。就職したばっかりでしょ?」
アーサー「分かったよ。」
アントン「就職したばっかりって事は会社が潰れたのか?」
アーサー「ああ。さっきも言ったけど、元々は菓子製造業の経営者だ。俺の経営ミスで倒産した後、親父のコネで婚活法対策課に就職したんだ。来週から親父の仕事を手伝う事になってるけど、お金が貯まったらまた起業するつもりだ。」
アントン「婚活法対策課って、俺たちが普段世話になってる場所だよな?」
マリユス「うん、何度か婚活法対策課主催の婚活パーティに参加したよね。ただ運営のまとまりが悪いというか、何度もグダグダになってるから正直合コンとかで良い気がする。」
リコラ「本当に問題児しかいないんだね。」
アーサー「ギルドカフェでの婚活イベントでも途中から指揮の乱れがあったからな。あのまとまりの悪さを何とかしないと。」
アントン「あっ、もうこんな時間かよ。そろそろ行かないとやばいぞ。」
アーサー「何かあるのか?」
マリユス「実は今日合コンの日で、僕らは今日中に婚活イベントに参加しないと、ジパング警察に連れていかれちゃうんですよ。じゃあ僕らはもう行きますね。」
リコラ「うん、じゃあね。」
アーサー「課題が1つ見つかったな。」
リコラ「課題って。」
アーサー「まずは婚活法対策課で頑張ってみるよ。」
リコラ「あのさ、私も婚活法対策課に行って良いかな?」
アーサー「見学ぐらいなら別に良いんじゃないか。親父には俺から言っておくよ。」
リコラ「うん、分かった。」
リコラはアーサー遊び回った後で夕食を終えるとギルドカフェに戻り、
いつも通りベルガにデートの様子を全て見抜かれていたのである。
ベルガ「アーサーとデート中に色んな人に絡まれたみたいだね。ランチにパンを食べた後、暴漢に襲われたが誰かに助けられた。そしてアイスクリームショップに通って夕食を済ませて帰ってきたんだね。」
リコラ「光学迷彩型追跡カメラ使ってたの?」
ベルガ「そんなの使わなくても分かるよ。服にパンくずが付いているが、時間が経っているから昼間食べたものだ。」
リコラ「暴漢は何で分かったの?」
ベルガ「膝に土が付いている。誰かが倒れたところに駆け寄って膝をついたからだ。袖がしわくちゃになっている。誰かに掴まれて引っ張られたからだ。アーサーの性格からしてそんな乱暴な事はしないから、複数いる暴漢の1人にアーサーが殴られて倒れ、そこに駆け寄って膝をついた時に腕を掴まれて引っ張られたが、誰かに助けられて難を逃れた。」
リコラ「アイスクリームは?」
ベルガ「ミントソーダの香りがする。それを売っているのはザッハの店だけだ。そこから最も近いベーカリーはプファンの店だからパンはそこで食べたんだろ?」
リコラ「さすがは偶然妄想トリックだね。」
ベルガ「酷いなー、証拠に基づいた事実を言っただけなのに。アーサーとはかなり仲良くなったみたいだね。酷い目に遭っていながら帰ってきてからもずっと笑顔だし、もしかして好きなのか?」
リコラ「お兄ちゃんはもう少しデリカシーを勉強した方が良いと思うよ。」
ベルガ「やっぱり好きなのか。僕は別に反対しないよ。アーサーならリコと相性ピッタリだと思うし。」
リコラ「お兄ちゃんは何も分かってないよ。」
ベルガ「えっ?」
リコラ「もういい、お風呂入って寝るから。」
ベルガ「う、うん。一体何があったのやら。」
メルヘンランド女王「何やら悩んでおるようだな。」
ベルガ「女王陛下、リコが何を考えているか全く分からないんだ。」
メルヘンランド女王「乙女心は複雑故、全く見当もつかぬ事もあろう。結論を急ぐ必要はないのだ。ここはもう少し冷静に待つ事が大事であると思うぞ。リコは今悩んでおるのだ。自分がどうあるべきかをな。」
ベルガ「自分がどうあるべきかなんて考える必要ないと思うけどね。もっと自由に楽しく生きれば良いのに。」
メルヘンランド女王「誰もがベルのように確かな目標を持ち、自由に生きたいと思っておるわけではないのだ。リコのように誰かの下で拘束されながら働き、平穏な生活がしたいだけの者もおるのだ。」
ベルガ「それってつまんなくない?」
メルヘンランド女王「自由に楽しさを追い求めるだけが人生ではなかろう。自由だと申すなら、何も考えずに拘束されて生きる事もまた自由なのだ。それが分からぬそなたではあるまい。」
ベルガ「乙女心が複雑だという事は良く分かったよ。じゃあおやすみ。」
メルヘンランド女王「リコよ、ベルに察してもらうのは至難の業だぞ。」
リコラ「そうみたいですね。」
メルヘンランド女王「リコはどうしたいのだ?」
リコラ「私にも・・・・分かりません。」
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一緒に過ごしているうちにお互いに相手への思いが強くなっていくが。
アーサー「恋人じゃないよ。俺には勿体ないくらいだ。」
アントン「でもリコちゃんが離れて行った時、一瞬寂しそうな表情だったぞ。」
アーサー「気のせいだろ。」
アントン「じゃあ俺がリコちゃんとつき合っても良いか?」
アーサー「駄目だ。あっ、いや・・・・すまない。」
アントン「やっぱり好きなんだな。」
アーサー「・・・・ああ、そうだよ。」
アントン「分かるぜ。俺もリコちゃん大好きだからな。あの色白で透き通ったピチピチの肌。豊満で形の良いバスト。絶妙なカーブを描いているくびれたウエスト。周囲の目を惹くほどに引き締まったヒップ。棒のように細長くしなやかな脚。モデルか女優になってたら間違いなく今より稼げてたのになー。」
アーサー「リコは何度かモデルのスカウトに声をかけられた事があるらしいけど、自分がやりたい事を貫くために全部断ったそうだ。」
アントン「リコちゃんはベルにとっての精神安定剤みたいなもんだ。リコちゃんが稼ぐために出稼ぎなんてしに行ったら、ベルは間違いなく常連と揉めるようになるだろうな。」
アーサー「どうりでリコが変な男に無理やりつき合わされた時に、相手の家を放火しに行こうとしてたわけだ。」
アントン「そんな過激な事してたのか?」
アーサー「ああ。ヘクセンハウスと女王陛下が全力で阻止したから事なきを得たけど、放っておいたらどうなっていたか。」
アントン「重度のシスコンだな。」
アーサー「俺もそう思う。」
アントン「相変わらずベルはベルやってんだな。」
アーサー「ついにベルが動詞になったか。」
アントン「あいつが羨ましいよ。情緒不安定だけど行動的で腕も立つし、色んな女子とフィアンセになってるともっぱらの噂だ。」
アーサー「元々恋愛には控えめなはずだったのに、どうしてそうなったんだか。」
その頃リコラとマリユスはアレッサンドリアでアイスを選びながら、
時間を忘れて今までの婚活の話やベルガの話をしていたのである。
リコラ「ピンポイントでお兄ちゃんとアントンとランダムマッチしてましたよね?」
マリユス「はい。まさかランダムに選ばれた3人がいずれも知り合いになるとは思いませんでしたよ。あの、アーサーさんとは友達なんですよね?」
リコラ「はい、そうですけど。」
マリユス「今はつき合ってる相手はいますか?」
リコラ「いえ、いません。」
マリユス「じゃあ・・・・その、僕とつき合ってみませんか?」
リコラ「えっ、マリユスさんとですか?」
マリユス「はい。僕はベルの友人ですし、友人の妹さんで元から交流もあるリコラさんとなら、うちの親も安心すると思います。無理にとは言いませんが、どうでしょうか?」
リコラ「今の段階では無理だと思います。」
マリユス「つき合ってる相手がいないのに無理という事は、好きな相手がいるからですか?」
リコラ「気になる人はいるんです。でも好きかどうかまでは自分でも分からないんです。こんなの今までなかった気持ちですから。」
マリユス「やっぱアーサーさんには勝てないんですね。」
リコラ「あの・・・・別にアーサーの事を言っているわけじゃ。」
マリユス「隠さなくても良いんですよ。家族以外であそこまで誰かと打ち解けているリコラさんを見たのは初めてでしたから。」
リコラ「アーサーは私が変な人につきまとわれた時に、自分の会社を投げ出してまで私を助けてくれたんです。その時からずっとアーサーの事が頭から離れなくなったんです。」
マリユス「惚れましたね?」
リコラ「・・・・。」
マリユス「あれだけ他人に無関心だったリコラさんを振り向かせるなんて、凄く良い人なんでしょうね。普通は他人のために自分の会社を投げ出すなんてしませんから。」
リコラ「でも同時に私のために大事なものを投げ出してるアーサーに対する罪悪感もあるんです。誰かのために尽くす恋愛ってもっと楽しいものだと思ってたんですけど、アーサーが私のために犠牲を払うのがとても辛いんです。アーサーは気にするなって言ってましたけど、私に言わせれば気にしない方が難しいですよ。恋愛って一体なんなんでしょうね?」
マリユス「あなたが今感じているものがそれですよ。あなたがアーサーさんを好きだからこそ感じる気持ちなんですよ。どうでもいいって思ってたら辛さなんて感じませんからね。」
リコラ「好きだからこそ辛さを感じるんですか?」
マリユス「そうですね。どうでもいい人から振られても何も感じませんけど、好きな人に振られたら辛いっていうのと同じですよ。」
リコラ「確かに。何だか少し気分が晴れました。ありがとうございます。」
マリユス「いえいえ、僕も誰かと恋愛したいんですけど、なかなか。」
リコラ「結構皮肉な話ですけど、婚活法がなかったらここまで誰かを思ったり、誰かとつき合ったりなんてしなかったと思います。普段は引きこもりのショコラティエですから。」
マリユス「僕も普段は引きこもって焙煎ばかりしているので、リコさんとここまで話す機会なかったと思います。振られましたけど。」
リコラ「そうですか。」
マリユス「でも諦めたってわけじゃないですよ。もしアーサーさんがリコさんを粗末に扱うようでしたら、その時は僕との交際も考えてくださいね。リコさんへの気持ちなら僕も負けてませんから。」
リコラ「気持ちは嬉しいのですが、その時は来ないと思います。私は重度のブラコンなので、お兄ちゃんみたいな人じゃないと好きになれないと思います。」
マリユス「ふふっ、それは残念です。」
ザッハトルテ「あのさー、さっきからずっと雑談ばっかりなんだけど。来たんならさっさと選んでくれない?」
マリユス「あー、ごめんなさい。オレンジシャーベットとジパングティーください。」
リコラ「ストロベリーチョコとミントソーダちょうだい。」
ザッハトルテ「やっと注文入った。じゃあここに指を置いてね。とけないうちに食べてね。」
リコラ「うん、お兄ちゃんが世話になったね。」
ザッハトルテ「世話になったのは僕の方だよ。ベルがいなかったら店が潰れてた可能性があるから、ベルには感謝してもしきれないよ。この前ベルの家に泊まった時以来だね。」
リコラ「そうだね。お兄ちゃんの部屋から喘ぎ声が聞こえてたから分かってたよ。」
ザッハトルテ「ちっ、違う。ご、誤解だから。」
リコラ「じゃあそういう事にしとく。じゃあね。」
マリユス「知り合いなんですか?」
リコラ「はい。お兄ちゃんのフィアンセです。」
マリユス「結婚はしないって言ってたのに、彼女はたくさんいますよね。」
リコラ「制度に縛られたくないって言うのがお兄ちゃんのモットーですから。」
マリユス「リコラさんも制度には縛られたくない方ですか?」
リコラ「縛られるのは好みませんけど、恋愛してから結婚の方が性に合ってると思います。」
マリユス「そこはベルとは違うところですね。ベルは勢いのまま突っ走るとこがありますけど、リコさんは慎重というか冷静というか、順序を踏んで進むタイプですね。」
リコラ「そうなんですかね。アーサー、買ってきたよ。」
アーサー「ああ、ありがとう。いくらだった?」
リコラ「私の奢りだから気にしないで。就職したばっかりでしょ?」
アーサー「分かったよ。」
アントン「就職したばっかりって事は会社が潰れたのか?」
アーサー「ああ。さっきも言ったけど、元々は菓子製造業の経営者だ。俺の経営ミスで倒産した後、親父のコネで婚活法対策課に就職したんだ。来週から親父の仕事を手伝う事になってるけど、お金が貯まったらまた起業するつもりだ。」
アントン「婚活法対策課って、俺たちが普段世話になってる場所だよな?」
マリユス「うん、何度か婚活法対策課主催の婚活パーティに参加したよね。ただ運営のまとまりが悪いというか、何度もグダグダになってるから正直合コンとかで良い気がする。」
リコラ「本当に問題児しかいないんだね。」
アーサー「ギルドカフェでの婚活イベントでも途中から指揮の乱れがあったからな。あのまとまりの悪さを何とかしないと。」
アントン「あっ、もうこんな時間かよ。そろそろ行かないとやばいぞ。」
アーサー「何かあるのか?」
マリユス「実は今日合コンの日で、僕らは今日中に婚活イベントに参加しないと、ジパング警察に連れていかれちゃうんですよ。じゃあ僕らはもう行きますね。」
リコラ「うん、じゃあね。」
アーサー「課題が1つ見つかったな。」
リコラ「課題って。」
アーサー「まずは婚活法対策課で頑張ってみるよ。」
リコラ「あのさ、私も婚活法対策課に行って良いかな?」
アーサー「見学ぐらいなら別に良いんじゃないか。親父には俺から言っておくよ。」
リコラ「うん、分かった。」
リコラはアーサー遊び回った後で夕食を終えるとギルドカフェに戻り、
いつも通りベルガにデートの様子を全て見抜かれていたのである。
ベルガ「アーサーとデート中に色んな人に絡まれたみたいだね。ランチにパンを食べた後、暴漢に襲われたが誰かに助けられた。そしてアイスクリームショップに通って夕食を済ませて帰ってきたんだね。」
リコラ「光学迷彩型追跡カメラ使ってたの?」
ベルガ「そんなの使わなくても分かるよ。服にパンくずが付いているが、時間が経っているから昼間食べたものだ。」
リコラ「暴漢は何で分かったの?」
ベルガ「膝に土が付いている。誰かが倒れたところに駆け寄って膝をついたからだ。袖がしわくちゃになっている。誰かに掴まれて引っ張られたからだ。アーサーの性格からしてそんな乱暴な事はしないから、複数いる暴漢の1人にアーサーが殴られて倒れ、そこに駆け寄って膝をついた時に腕を掴まれて引っ張られたが、誰かに助けられて難を逃れた。」
リコラ「アイスクリームは?」
ベルガ「ミントソーダの香りがする。それを売っているのはザッハの店だけだ。そこから最も近いベーカリーはプファンの店だからパンはそこで食べたんだろ?」
リコラ「さすがは偶然妄想トリックだね。」
ベルガ「酷いなー、証拠に基づいた事実を言っただけなのに。アーサーとはかなり仲良くなったみたいだね。酷い目に遭っていながら帰ってきてからもずっと笑顔だし、もしかして好きなのか?」
リコラ「お兄ちゃんはもう少しデリカシーを勉強した方が良いと思うよ。」
ベルガ「やっぱり好きなのか。僕は別に反対しないよ。アーサーならリコと相性ピッタリだと思うし。」
リコラ「お兄ちゃんは何も分かってないよ。」
ベルガ「えっ?」
リコラ「もういい、お風呂入って寝るから。」
ベルガ「う、うん。一体何があったのやら。」
メルヘンランド女王「何やら悩んでおるようだな。」
ベルガ「女王陛下、リコが何を考えているか全く分からないんだ。」
メルヘンランド女王「乙女心は複雑故、全く見当もつかぬ事もあろう。結論を急ぐ必要はないのだ。ここはもう少し冷静に待つ事が大事であると思うぞ。リコは今悩んでおるのだ。自分がどうあるべきかをな。」
ベルガ「自分がどうあるべきかなんて考える必要ないと思うけどね。もっと自由に楽しく生きれば良いのに。」
メルヘンランド女王「誰もがベルのように確かな目標を持ち、自由に生きたいと思っておるわけではないのだ。リコのように誰かの下で拘束されながら働き、平穏な生活がしたいだけの者もおるのだ。」
ベルガ「それってつまんなくない?」
メルヘンランド女王「自由に楽しさを追い求めるだけが人生ではなかろう。自由だと申すなら、何も考えずに拘束されて生きる事もまた自由なのだ。それが分からぬそなたではあるまい。」
ベルガ「乙女心が複雑だという事は良く分かったよ。じゃあおやすみ。」
メルヘンランド女王「リコよ、ベルに察してもらうのは至難の業だぞ。」
リコラ「そうみたいですね。」
メルヘンランド女王「リコはどうしたいのだ?」
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