リコラたちは婚活法が終焉を迎えるとやりたい事を思う存分楽しむ生活をしていた。
ベルガたちは婚活法が終わった記念にリゾート地へと遊びに行っていたのである。
ジュリー「リコ、最近ショコラティエ教室を開いてるって聞いたけど本当なの?」
リコラ「うん、チョコの作り方は極めたから、今度はチョコの作らせ方を極めようと思って始めたの。ショコラティエの知り合いに教える場所を設けたいって話してたら喜んで貸してくれたの。」
アーサー「俺も今度行って良いか?」
リコラ「うん、良いよ。」
ルーシー「じゃああたしも行く。」
ジュリー「随分と気前の良い知り合いがいたのね。」
リコラ「知り合いがキルシュと知り合いだった事もあって、キルシュが教室用の建物を貸してくれる事になったの。」
アーサー「キルシュって妊娠した状態でワールドパティスリーカップの国内予選と本選に出場して優勝した子だろ。今回はたまたま自国での開催だったから良かったけど、外国での開催だったら反対されてただろうな。」
リコラ「重労働にあたる仕事はサポーターに任せてたから大丈夫だったの。今は無事にお兄ちゃんの子供を出産してるよ。」
アーサー「やっぱりベルの子供だったか。」
リコラ「元気な男の子だって、それから数日後にはバウムも男の子を出産したの。」
アーサー「叔母になったんだな。」
リコラ「お兄ちゃんと同じ事言わないでよ。アーサーだって義理の叔父でしょ。」
アーサー「まだ結婚してないだろ。」
ジュリー「まだって事はこれからするの?」
アーサー「するとしても事実婚だ。」
リコラ「私もそれが良い。」
ジュリー「うーん、やっぱり今の若い子に結婚は重すぎるのかなー。」
ロミー「法律婚でも事実婚でも同等の扱いだけど、余程の決意がなければしちゃいけないって思ってるんだろうな。統合してないだけで内容は一緒なんだけどな。」
リコラ「そうだったんだ。」
ジュリー「そうなの。基本的に一生を共にする決意をしている相手とは法律婚、気軽に会いたい時だけ会う場合は事実婚を選ぶという意味合いが強いんだけど、法律上はどっちも同じ扱いなの。」
ルーシー「ねえ、リコ。またオーブから結婚の催促をされてるんだけど、どうしよう。」
リコラ「えっ、まだ諦めてなかったの?」
ルーシー「うん。明日ウィトゲンシュタイン家のパーティに招待されちゃって、友達を1人まで同伴できるんだけど、一緒に来てくれない?」
リコラ「直談判しろって事?」
ルーシー「あたしの言う事には耳を貸さないから、ウィトゲンシュタイン家に縁のあるリコなら何とかできるんじゃないかなって思ったの。」
リコラ「となると公爵を説得する事になるね。」
ロミー「ルーシー、こんなに良い縁談はもうないと思うが、本当に良いんだな?」
ルーシー「当たり前でしょ。あたしは本気で愛し合える人じゃないと嫌なの。相手が男子でも女子でもその他でもそれは同じよ。」
リコラ「分かった。じゃあ明日一緒に行くよ。友人の頼みだからね。」
ルーシー「ありがとう。」
ジュリー「ルーシー、もし相手がしつこいようなら通報するのよ。」
ルーシー「分かってるよ。」
翌日にリコラとルーシーはウィトゲンシュタイン家のパーティ会場へ行き、
公爵を説得する事になるがオーブに先手を打たれてしまったのである。
オーブストトルテ「待ってたよ、僕の愛しのルーシー。友人も連れてきたんだね。」
ルーシー「あたしは公爵に直談判しに来たの。公爵に会わせて。」
オーブストトルテ「おいおい、そう照れなくても良いのに。」
高貴な男「リコちゃん久しぶりだね。」
リコラ「お久しぶりです。」
オーブストトルテ「知り合いなの?」
高貴な男「ああ、ベルとリコちゃんは私が仲良くしていた民族衣装専門店をやっていた友人の子供だ。君と会うのは初めてだね。私はプリンツレゲンテントルテ・フォン・ウィトゲンシュタイン。みんなからは公爵と呼ばれているよ。」
ルーシー「あたしはルーシー・モンターニャ・ファヴァレット。今日は公爵に言いたい事があって来たの。」
オーブストトルテ「ルーシー、父さんに対して無礼じゃないかい?」
プリンツレゲンテントルテ「まあまあ、良いじゃないか。彼女にも何か思う事があるのだろう。」
ルーシー「ずっと交際を断ってるのに息子さんがしつこいから、直談判しに来たの。」
プリンツレゲンテントルテ「えっ、そうなのか?確かロミーから息子の彼女を探しているなら、うちの娘を紹介すると聞いたのだが。」
リコラ「ロミーはルーシーに何も知らせないまま縁談を勧めていたんです。」
プリンツレゲンテントルテ「そうだったのか。しかし昨日オーブがルーシーのためにと言って婚約指輪を買っていたぞ。」
ルーシー「はあ?オーブ、一体どういう事なの?」
オーブストトルテ「よくぞ聞いてくれた。この婚約指輪はエウロパから取り寄せた特注品だ。」
ルーシー「そういう事を聞いてるんじゃないの。断ってるのに何でこんな事するのって聞いてるの。」
オーブストトルテ「そりゃー愛する君のファンだからさ。サプライズだよ。」
プリンツレゲンテントルテ「オーブ、確か彼女とつき合ってるって言ってなかったか?」
オーブストトルテ「だからこうして来てくれたんだよ。つき合う気がないなら最初から来ないでしょ。」
ルーシー「(あちゃー、こいつに交際の口実を与えてしまったわね。)」
オーブストトルテ「今日は婚約記念に一杯どう?」
ルーシー「遠慮しておくわ。あたしはお見合いを正式に断る意思を伝えるために来たの。勘違いしないでくれる?」
オーブストトルテ「ええっ、でも君は初めて会った時も僕に笑顔を振りまいてくれたじゃないか。」
リコラ「あのー、基本的にモデルは誰に対しても笑顔を振りまくものですよ。」
ルーシー「どうやら恋愛未経験のようね。」
プリンツレゲンテントルテ「オーブ、彼女にその気はないようだ。彼女の事は諦めなさい。」
オーブストトルテ「そんなー。」
ルーシー「今度からはちゃーんと相手の意思を確認する事ね。」
リコラ「オーブさんは婚活イベントの経験はあるんですか?」
プリンツレゲンテントルテ「それが婚活法があった時は、ずっと家でホームパーティをしていたんだ。外の婚活イベントへ行かせれば婚活女子たちによる奪い合いになると思ってね。それに配慮して行かせなかったんだ。」
ルーシー「スペックだけは申し分ないんだけどねー。」
リコラ「だから女子の気持ちに鈍感な上に勘違いまでしたんですね。」
ルーシー「ホームパーティって事はそこまで真面目な婚活イベントじゃないって事だから、身近な人たちだけでカップリングもせずに過ごしてきたから勘違い男になっちゃうのよ。」
オーブストトルテ「ひ、酷い。」
エステルハージトルタ「まあまあ、誰にでも失敗はあるのですからもうこの辺にしておきましょう。」
プリンツレゲンテントルテ「そうだリコちゃん。もし良ければオーブに婚活のコツを教えてやってくれないか?」
リコラ「それなら私よりも適任がいますから紹介しておきますね。」
プリンツレゲンテントルテ「それは助かる。」
ルーシー「なにぽかーんとしてんの?いつか君を超える女とカップリングしてみせるよ、くらい言ったらどうなの?」
オーブストトルテ「婚活はもううんざりだ。」
エステルハージトルタ「あっ、ちょっと。お待ちください。」
プリンツレゲンテントルテ「放っておけ。あいつは元々こういう事には向いてないのだから。」
エステルハージトルタ「はい、公爵様。」
リコラ「エステルさん、やっと元気出してくれたんですね。」
エステルハージトルタ「は、はい。私の事を心配してくださったのですか?」
リコラ「はい。婚活戦線を共に戦った戦友ですからね。」
エステルハージトルタ「ありがとうございます。あれは結局独裁官の采配ミスという事で、私の責任はかなり寛大なものになったんですよ。私は誰ともカップリングはできませんでした。お嬢様が無事にベルガさんと結ばれたので私は満足です。お嬢様の幸せが私の幸せですから。」
リコラ「もしかしてヘレンと結ばれたかったんですか?」
エステルハージトルタ「違うと言えば嘘になりますが、私にはお嬢様のパートナーという大役は恐れ多くもあります。」
リコラ「ヘレンとは昔からの仲なんですか?」
エステルハージトルタ「はい。元々私の家は貴族だったのですが、祖父の代で没落してからは貧しい生活を強いられるようになって、それで不遇の毎日を送ってきた私をお嬢様が救ってくださったのです。私は優雅で知的で慈悲深いお嬢様に心を奪われてしまったのです。」
リコラ「助けてくれた人を好きになるってよくある話ですけど、やっぱり惹かれちゃいますよね?」
エステルハージトルタ「はい。今後もお嬢様にご奉仕する所存です。それが私にできるお嬢様への貢献ですから。」
リコラ「確かメイド長になったんだよね?」
エステルハージトルタ「はい。以前メイド長をしていた者が防衛戦争に駆り出されたので、それで私が繰り上がりでメイド長になりました。お嬢様が推薦してくださったのです。」
リコラ「エステルさんも海軍中将ですよね?」
エステルハージトルタ「はい。必要があれば私も臨時で参戦するかもしれません。しかし私は采配の方はさっぱりなので、比較的平和な東海岸の防衛を担当しています。そこでメイド長の仕事が休みの時は、そこで実戦訓練を積み重ねるようにしています。」
リコラ「ヘクセンハウスが言ってたんですけど、あのダイヤモンドハーバーの大敗で王国軍のどこの部署も実戦訓練が必修化したんですよね。」
エステルハージトルタ「そうなんです。でも次は同じ手は食わない覚悟で挑みます。」
ルーシー「オーブ、一度あたしのお母さんに会わせたいんだけど良いかな?」
オーブストトルテ「ん?そうか、やっとその気になってくれたか。良いぞ、じゃあ今から行こうか?」
ルーシー「(やっぱこの人単純ね。)」
リコラ「(また誤解されそう。)」
リコラたちはパーティを抜け出して結婚相談所ノヴァーリスへと向かった。
そこでジュリーによって婚活男子としての資質を見極められる事となった。
ジュリー「リコにルーシーじゃない。ルーシー、もしかして婚活したくなったの。」
ルーシー「あたしじゃなくてこの人よ。」
ジュリー「あら、もしかして彼と仲良くなったの?」
オーブストトルテ「久しぶりだね。オーブストトルテだ。ルーシーが一度親に僕の事を・・・・むぐぐ。」
ルーシー「お母さん、この人にピッタリの人いない?」
ジュリー「そうね、まずはプロフィールカードを見せてもらおうかしら。あたしはジュリー・ファヴァレット。ここで婚活コンサルタントをやってるの。ルーシーはあたしの娘なの。よろしくね。」
オーブストトルテ「よ、よろしく。どうぞ。」
ジュリー「ふーん、さすがにウィトゲンシュタイン本家の人は違うわね。音楽プロデューサーで年収1000万メルヘンなのね。凄いじゃない。」
オーブストトルテ「音楽プロデューサー以外にも父さんの家業であるホテルの社長も任されてて、世界中にある自社の株を持ってるから実際はもっと多いよ。1億メルヘンくらいあるんじゃないかな。」
ジュリー「これだけ仕事があるとデートする暇もないんじゃない?」
オーブストトルテ「そこは問題ないよ。休暇が欲しい時は役員に代行を頼めるからね。」
ジュリー「じゃあ後は相手を決めるだけね。」
オーブストトルテ「何を言ってるんだい?ジュリーさんはルーシーに相応しいかを判断してたんじゃないのかい?」
ジュリー「えっ、婚活しに来たんじゃないの?」
ルーシー「えーと、ここは結婚相談所で、あんたの相手を見つける手助けをしようと思ったの。」
オーブストトルテ「そんな。僕はてっきりルーシーが親に僕を紹介してくれると思ったのに。」
ルーシー「だから今紹介したのよ。新しい恋を見つければ気も変わるでしょ。」
ジュリー「これは2人共とんでもない勘違いをしているようね。」
リコラ「こうも噛み合わないとはね。」
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ベルガたちは婚活法が終わった記念にリゾート地へと遊びに行っていたのである。
ジュリー「リコ、最近ショコラティエ教室を開いてるって聞いたけど本当なの?」
リコラ「うん、チョコの作り方は極めたから、今度はチョコの作らせ方を極めようと思って始めたの。ショコラティエの知り合いに教える場所を設けたいって話してたら喜んで貸してくれたの。」
アーサー「俺も今度行って良いか?」
リコラ「うん、良いよ。」
ルーシー「じゃああたしも行く。」
ジュリー「随分と気前の良い知り合いがいたのね。」
リコラ「知り合いがキルシュと知り合いだった事もあって、キルシュが教室用の建物を貸してくれる事になったの。」
アーサー「キルシュって妊娠した状態でワールドパティスリーカップの国内予選と本選に出場して優勝した子だろ。今回はたまたま自国での開催だったから良かったけど、外国での開催だったら反対されてただろうな。」
リコラ「重労働にあたる仕事はサポーターに任せてたから大丈夫だったの。今は無事にお兄ちゃんの子供を出産してるよ。」
アーサー「やっぱりベルの子供だったか。」
リコラ「元気な男の子だって、それから数日後にはバウムも男の子を出産したの。」
アーサー「叔母になったんだな。」
リコラ「お兄ちゃんと同じ事言わないでよ。アーサーだって義理の叔父でしょ。」
アーサー「まだ結婚してないだろ。」
ジュリー「まだって事はこれからするの?」
アーサー「するとしても事実婚だ。」
リコラ「私もそれが良い。」
ジュリー「うーん、やっぱり今の若い子に結婚は重すぎるのかなー。」
ロミー「法律婚でも事実婚でも同等の扱いだけど、余程の決意がなければしちゃいけないって思ってるんだろうな。統合してないだけで内容は一緒なんだけどな。」
リコラ「そうだったんだ。」
ジュリー「そうなの。基本的に一生を共にする決意をしている相手とは法律婚、気軽に会いたい時だけ会う場合は事実婚を選ぶという意味合いが強いんだけど、法律上はどっちも同じ扱いなの。」
ルーシー「ねえ、リコ。またオーブから結婚の催促をされてるんだけど、どうしよう。」
リコラ「えっ、まだ諦めてなかったの?」
ルーシー「うん。明日ウィトゲンシュタイン家のパーティに招待されちゃって、友達を1人まで同伴できるんだけど、一緒に来てくれない?」
リコラ「直談判しろって事?」
ルーシー「あたしの言う事には耳を貸さないから、ウィトゲンシュタイン家に縁のあるリコなら何とかできるんじゃないかなって思ったの。」
リコラ「となると公爵を説得する事になるね。」
ロミー「ルーシー、こんなに良い縁談はもうないと思うが、本当に良いんだな?」
ルーシー「当たり前でしょ。あたしは本気で愛し合える人じゃないと嫌なの。相手が男子でも女子でもその他でもそれは同じよ。」
リコラ「分かった。じゃあ明日一緒に行くよ。友人の頼みだからね。」
ルーシー「ありがとう。」
ジュリー「ルーシー、もし相手がしつこいようなら通報するのよ。」
ルーシー「分かってるよ。」
翌日にリコラとルーシーはウィトゲンシュタイン家のパーティ会場へ行き、
公爵を説得する事になるがオーブに先手を打たれてしまったのである。
オーブストトルテ「待ってたよ、僕の愛しのルーシー。友人も連れてきたんだね。」
ルーシー「あたしは公爵に直談判しに来たの。公爵に会わせて。」
オーブストトルテ「おいおい、そう照れなくても良いのに。」
高貴な男「リコちゃん久しぶりだね。」
リコラ「お久しぶりです。」
オーブストトルテ「知り合いなの?」
高貴な男「ああ、ベルとリコちゃんは私が仲良くしていた民族衣装専門店をやっていた友人の子供だ。君と会うのは初めてだね。私はプリンツレゲンテントルテ・フォン・ウィトゲンシュタイン。みんなからは公爵と呼ばれているよ。」
ルーシー「あたしはルーシー・モンターニャ・ファヴァレット。今日は公爵に言いたい事があって来たの。」
オーブストトルテ「ルーシー、父さんに対して無礼じゃないかい?」
プリンツレゲンテントルテ「まあまあ、良いじゃないか。彼女にも何か思う事があるのだろう。」
ルーシー「ずっと交際を断ってるのに息子さんがしつこいから、直談判しに来たの。」
プリンツレゲンテントルテ「えっ、そうなのか?確かロミーから息子の彼女を探しているなら、うちの娘を紹介すると聞いたのだが。」
リコラ「ロミーはルーシーに何も知らせないまま縁談を勧めていたんです。」
プリンツレゲンテントルテ「そうだったのか。しかし昨日オーブがルーシーのためにと言って婚約指輪を買っていたぞ。」
ルーシー「はあ?オーブ、一体どういう事なの?」
オーブストトルテ「よくぞ聞いてくれた。この婚約指輪はエウロパから取り寄せた特注品だ。」
ルーシー「そういう事を聞いてるんじゃないの。断ってるのに何でこんな事するのって聞いてるの。」
オーブストトルテ「そりゃー愛する君のファンだからさ。サプライズだよ。」
プリンツレゲンテントルテ「オーブ、確か彼女とつき合ってるって言ってなかったか?」
オーブストトルテ「だからこうして来てくれたんだよ。つき合う気がないなら最初から来ないでしょ。」
ルーシー「(あちゃー、こいつに交際の口実を与えてしまったわね。)」
オーブストトルテ「今日は婚約記念に一杯どう?」
ルーシー「遠慮しておくわ。あたしはお見合いを正式に断る意思を伝えるために来たの。勘違いしないでくれる?」
オーブストトルテ「ええっ、でも君は初めて会った時も僕に笑顔を振りまいてくれたじゃないか。」
リコラ「あのー、基本的にモデルは誰に対しても笑顔を振りまくものですよ。」
ルーシー「どうやら恋愛未経験のようね。」
プリンツレゲンテントルテ「オーブ、彼女にその気はないようだ。彼女の事は諦めなさい。」
オーブストトルテ「そんなー。」
ルーシー「今度からはちゃーんと相手の意思を確認する事ね。」
リコラ「オーブさんは婚活イベントの経験はあるんですか?」
プリンツレゲンテントルテ「それが婚活法があった時は、ずっと家でホームパーティをしていたんだ。外の婚活イベントへ行かせれば婚活女子たちによる奪い合いになると思ってね。それに配慮して行かせなかったんだ。」
ルーシー「スペックだけは申し分ないんだけどねー。」
リコラ「だから女子の気持ちに鈍感な上に勘違いまでしたんですね。」
ルーシー「ホームパーティって事はそこまで真面目な婚活イベントじゃないって事だから、身近な人たちだけでカップリングもせずに過ごしてきたから勘違い男になっちゃうのよ。」
オーブストトルテ「ひ、酷い。」
エステルハージトルタ「まあまあ、誰にでも失敗はあるのですからもうこの辺にしておきましょう。」
プリンツレゲンテントルテ「そうだリコちゃん。もし良ければオーブに婚活のコツを教えてやってくれないか?」
リコラ「それなら私よりも適任がいますから紹介しておきますね。」
プリンツレゲンテントルテ「それは助かる。」
ルーシー「なにぽかーんとしてんの?いつか君を超える女とカップリングしてみせるよ、くらい言ったらどうなの?」
オーブストトルテ「婚活はもううんざりだ。」
エステルハージトルタ「あっ、ちょっと。お待ちください。」
プリンツレゲンテントルテ「放っておけ。あいつは元々こういう事には向いてないのだから。」
エステルハージトルタ「はい、公爵様。」
リコラ「エステルさん、やっと元気出してくれたんですね。」
エステルハージトルタ「は、はい。私の事を心配してくださったのですか?」
リコラ「はい。婚活戦線を共に戦った戦友ですからね。」
エステルハージトルタ「ありがとうございます。あれは結局独裁官の采配ミスという事で、私の責任はかなり寛大なものになったんですよ。私は誰ともカップリングはできませんでした。お嬢様が無事にベルガさんと結ばれたので私は満足です。お嬢様の幸せが私の幸せですから。」
リコラ「もしかしてヘレンと結ばれたかったんですか?」
エステルハージトルタ「違うと言えば嘘になりますが、私にはお嬢様のパートナーという大役は恐れ多くもあります。」
リコラ「ヘレンとは昔からの仲なんですか?」
エステルハージトルタ「はい。元々私の家は貴族だったのですが、祖父の代で没落してからは貧しい生活を強いられるようになって、それで不遇の毎日を送ってきた私をお嬢様が救ってくださったのです。私は優雅で知的で慈悲深いお嬢様に心を奪われてしまったのです。」
リコラ「助けてくれた人を好きになるってよくある話ですけど、やっぱり惹かれちゃいますよね?」
エステルハージトルタ「はい。今後もお嬢様にご奉仕する所存です。それが私にできるお嬢様への貢献ですから。」
リコラ「確かメイド長になったんだよね?」
エステルハージトルタ「はい。以前メイド長をしていた者が防衛戦争に駆り出されたので、それで私が繰り上がりでメイド長になりました。お嬢様が推薦してくださったのです。」
リコラ「エステルさんも海軍中将ですよね?」
エステルハージトルタ「はい。必要があれば私も臨時で参戦するかもしれません。しかし私は采配の方はさっぱりなので、比較的平和な東海岸の防衛を担当しています。そこでメイド長の仕事が休みの時は、そこで実戦訓練を積み重ねるようにしています。」
リコラ「ヘクセンハウスが言ってたんですけど、あのダイヤモンドハーバーの大敗で王国軍のどこの部署も実戦訓練が必修化したんですよね。」
エステルハージトルタ「そうなんです。でも次は同じ手は食わない覚悟で挑みます。」
ルーシー「オーブ、一度あたしのお母さんに会わせたいんだけど良いかな?」
オーブストトルテ「ん?そうか、やっとその気になってくれたか。良いぞ、じゃあ今から行こうか?」
ルーシー「(やっぱこの人単純ね。)」
リコラ「(また誤解されそう。)」
リコラたちはパーティを抜け出して結婚相談所ノヴァーリスへと向かった。
そこでジュリーによって婚活男子としての資質を見極められる事となった。
ジュリー「リコにルーシーじゃない。ルーシー、もしかして婚活したくなったの。」
ルーシー「あたしじゃなくてこの人よ。」
ジュリー「あら、もしかして彼と仲良くなったの?」
オーブストトルテ「久しぶりだね。オーブストトルテだ。ルーシーが一度親に僕の事を・・・・むぐぐ。」
ルーシー「お母さん、この人にピッタリの人いない?」
ジュリー「そうね、まずはプロフィールカードを見せてもらおうかしら。あたしはジュリー・ファヴァレット。ここで婚活コンサルタントをやってるの。ルーシーはあたしの娘なの。よろしくね。」
オーブストトルテ「よ、よろしく。どうぞ。」
ジュリー「ふーん、さすがにウィトゲンシュタイン本家の人は違うわね。音楽プロデューサーで年収1000万メルヘンなのね。凄いじゃない。」
オーブストトルテ「音楽プロデューサー以外にも父さんの家業であるホテルの社長も任されてて、世界中にある自社の株を持ってるから実際はもっと多いよ。1億メルヘンくらいあるんじゃないかな。」
ジュリー「これだけ仕事があるとデートする暇もないんじゃない?」
オーブストトルテ「そこは問題ないよ。休暇が欲しい時は役員に代行を頼めるからね。」
ジュリー「じゃあ後は相手を決めるだけね。」
オーブストトルテ「何を言ってるんだい?ジュリーさんはルーシーに相応しいかを判断してたんじゃないのかい?」
ジュリー「えっ、婚活しに来たんじゃないの?」
ルーシー「えーと、ここは結婚相談所で、あんたの相手を見つける手助けをしようと思ったの。」
オーブストトルテ「そんな。僕はてっきりルーシーが親に僕を紹介してくれると思ったのに。」
ルーシー「だから今紹介したのよ。新しい恋を見つければ気も変わるでしょ。」
ジュリー「これは2人共とんでもない勘違いをしているようね。」
リコラ「こうも噛み合わないとはね。」
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