社会不適合者エスティのブログ

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三低女子の婚活事情 44ページ「勝ち取った平穏とそれぞれの夢」

2020年02月09日 | 三低女子の婚活事情
アーサーは祝勝会を楽しんでいたが婚活法対策課が近いうちに解体される事を知り、

リコラたちの助力を得て婚活法対策課の延命処置という最後の仕事を画策していた。

ジュリー「だからみんなで食べる時、ベルだけ端っこの方にいたのね。」

ベルガ「だって姿勢とか食べ方とかを指摘されるの苦痛なんだもん。」

朱音「確かに言われてみれば主人という呼び名も、一人よりもみんなで食べた方が美味しいという価値観も決めつけな気がしてきたなー。ナニワはジパングほどじゃないけど、まだまだジパングだった時の影響が大きいからね。」

ジュリー「ベルって本質的に結婚に向いてないのに、たくさんの人と事実婚の約束してるよね?」

ベルガ「下手に一緒に住むよりも、必要な時だけ会う方が長続きすると思うからね。」

アーサー「デートとかするの大変じゃないか?」

ベルガ「デートなんてたまにで良いんだよ。一緒に過ごしてるだけでもデートしてるようなもんだし。頻繁に一緒に居たらそれが当たり前になって、一緒にいる事のありがたみが分からなくなっちゃうよ。」

ジュリー「夫婦って距離が短すぎて相手の事が見えなくなっちゃう事もあるんだよねー。だからその意見には長期的には賛成かな。」

アーサー「俺は一度に大勢の女の面倒を見るのは向かないな。」

リコラ「それはお兄ちゃんが特殊なだけだから。」

ロミー「重婚の国とは言っても、大半の人は5人くらいまでだからな。」

ベルガ「そんな事より、どうすれば婚活法対策課は延命できるのかな?」

リンツァートルテ「行政が無期限延長を認めたらずっと残るよ。」

リコラ「婚活イベントなら今まで居場所がなかった彼らもこなしてたくらいだから、社会に居場所が必要な人たちの就職支援と婚活イベントを兼ねた部署にすれば残るんじゃないかな?」

アーサー「俺もそう思ってたところだ。」

ベルガ「署名を集めて役所に提出すれば良いんじゃないかな。婚活法違反者たちなら喜んで協力してくれると思うよ。」

ジュリー「あたしもクライアントに片っ端から当たってみる。」

ルーシー「あたしもモデル仲間を当たってみる。」

ロミー「じゃあ署名を集めたら俺が提出しに行くよ。」

ルーシー「そういえば次の婚活イベントはどうするの?」

ジュリー「今は確か非常事態宣言がされてるから、ジパング警察もジパングの企業も撤退する事になったわ。だから婚活イベントに出なくても捕まる事はないよ。」

リコラ「やっと仕事に専念できる。」

ベルガ「いつもより気合入ってるね。」

リコラ「昨日まで婚活ばっかりさせられてたからね。しかも裁判まであったから今の内にしっかりやっとかないと腕が鈍っちゃう。でもずっとショコラティエとは違う事ばかりしてたから、改めてこの仕事が好きなんだって事が分かった。私決めた。ショコラティエの素晴らしさを後世に残す仕事がしたい。チョコの作り方は極めたから、今度はチョコの作らせ方を極める事にする。」

メルヘンランド女王「やりたい事が決まったようだな。」

リコラ「女王陛下。」

メルヘンランド女王「目標に向かって歩むも人生、目標なく気ままに過ごすも人生。悔いのない方を選ぶのだ。」

ジュリー「仰る通りです。働くも遊ぶも自分で選ぶべきですからね。リコもようやく自分で選べるようになったって事ですね。」

リコラ「言われてみれば、いつの間にか自分の道は自分で選ぶようになってた。」

ヘクセンハウス「ベルの影響だな。あいつと一緒にいると、周囲に流されるのが何故か嫌になるんだ。」

ルーシー「ベルは何でも自分で判断するところがあるから、それでリコも自分で選ぶようになったんじゃない。」

リコラ「でもこの前までは大事な事を全部他人に決めてもらってた気がする。」

ルーシー「アーサーと色々あったからじゃない?ずっとアーサーと苦労を共にするようになってから以前よりも責任感に磨きがかかってるし、人は守るものができると強くなるって言うじゃない。逆境がリコを強くしたのよ。」

リコラ「そうなのかな。」

ジュリー「ええ、アーサーには勿体ないくらい良い子になったわ。」

リコラ「反対はしないんだね。」

ジュリー「反対なんてしないに決まってるじゃない。」

ロミー「リコはジュリーが育てた婚活女子の中で最も人気のある女子だ。むしろこっちがアーサーとの交際をお願いしたいくらいだ。それを反対するなんて、自分の育て方が間違ってたって宣言するに等しいからな。」

アーサー「あのなー、そう急かさないでくれよ。」

ルーシー「あたしもアーサーとなら安心かな。(あたしともつき合ってほしかったけど、リコが選んだ道だから仕方ないか。)」

ジュリー「そういう事だから、つき合うと決めた時は安心してつき合うと良いわ。」

リコラ「気持ちは嬉しいけど、まずは婚活法対策課の延命が先だよ。」

リコラたちは何日もかけて署名を集めロミーが市役所に提出した。

しばらくしてからリコラはアーサーとデートに出かけていたのである。

リコラ「お兄ちゃんが田舎の方に行けば知り合いに邪魔されずに済むって言ってたけど、本当に知り合いもいないから落ち着くね。」

アーサー「そうだな。西はジパングが度々攻め込んできてたから建物が崩壊してる場所もあったけど、東の方はかなり安全だったから崩れてる建物とか全然なかったな。」

リコラ「言われてみればそうだね。誰にも邪魔されないドライブデートなんて考えたね。」

アーサー「この前は首都圏を歩いてデートしてたからな。だから田舎を車で回りながらデートすれば問題ないって思ったんだ。しかも車だったら広範囲で色んな所を回れるしな。」

リコラ「それにしてもこの車って凄いよね。全自動で色んな所をコンピューターがガイドしてくれるし、こんな最新式の球型モデルで全方向が見渡せる車なんてよく借りれたね。」

アーサー「リンツはボルゴ派の有力者であるマロリー家と権力争いをしていた。あの裁判でマロリー家の権威が失墜したおかげで、富裕税を導入されずに済んだらしい。この車はそのお礼にくれたんだ。普通に買ったら50万メルヘンはするらしい。」

リコラ「50万メルヘンって高級車じゃん。ん?」

アーサー「どうした?」

リコラ「この車売ったらすぐに起業資金貯まるんじゃない?」

アーサー「そうかっ、その手があったか。確かリンツは気に入らなかったら売っても構わないって言ってたけどそういう事だったのか。全然気づかなかった。」

リコラ「直接お金渡しちゃうと賄賂になっちゃうから、彼女なりの配慮だと思うよ。」

アーサー「報酬にしては多すぎる気がするけどな。」

リコラ「それだけ相手が手強かったって事だよ。」

アーサー「こんなつもりはなかったけど、そういう事ならありがたく使わせてもらおうかな。もう一度やり直す機会を与えられた気がする。一区切りしたら婚活法対策課に辞表のメールを出すよ。」

リコラ「やっと卒業できるんだね。」

アーサー「そうだな。今思うと、この1年間は俺がリコと一緒になるための試練だったのかもしれないな。」

リコラ「恥ずかしいよ。」

アーサー「俺はちっとも恥ずかしくないぞ。」

リコラ「何で?」

アーサー「俺には勿体ないくらいの女子が好きって言ってくれたんだから、むしろ誇らしいくらいだ。」

リコラ「・・・・あのさ、本当に私で良いの?」

アーサー「何だよ急に?」

リコラ「私はお兄ちゃんみたいに強くないし、肝心な時にアーサーの足を引っ張っちゃうし、私と頻繁に会わなかったらアーサーはずっと嫌な目にも遭わずに会社をやってたんだろうなって思った事もあるの。それでも良いのかなって。」

アーサー「良いに決まってるだろ。リコがいなかったら、俺は誰も愛する事なく人生を終えてただろうし、俺が会社を始めたのだって俺がリコをかばったのがきっかけだからな。」

リコラ「私が中等部を退学した後、今度は私をかばったアーサーがいじめられたんだよね。」

アーサー「ああ。それであいつらを見返してやろうと思って、必死に勉強して飛び級したんだ。おかげであのメルヘンランド大学を卒業できたし、やりたい事を見つける事もできた。」

リコラ「だから2年も飛び級したんだね。」

アーサー「そういう事だ。リコは全然迷惑なんかじゃない。むしろ俺の人生において色んなところで原動力になってる。あの時出会ってなかったら俺は流されて生きてたかもしれない。」

リコラ「私と再会した事も後悔してない?」

アーサー「してないよ。あのままお互いに気づかなかったら、リコはモードレッドに連れて行かれてただろうし、リコが歩むはずだった最悪の運命を変えたと思えば安いもんだ。」

リコラ「あとは私の気持ちだけなんだね。」

アーサー「そういう事。今すぐ返事をくれなんて野暮な事は言わない。じっくり考えて決める事だ。」

リコラ「その間ずっと待っててくれるの?」

アーサー「そうだな。今はリコ以外には全く興味ないし、当分は起業のやり直しの事を考えないとな。」

リコラ「少し考えさせてほしい。こんなに誰かの事を考えるのは初めてだから。」

アーサー「分かった。」

リコラ「私がどっちを選んでも、アーサーは私の大事な人だから。それだけは変わらないよ。」

アーサー「俺だってリコはかけがえのない存在だ。それにギルドカフェは凄く居心地の良い店だから、ずっとあの店の常連で居続けるよ。常連なら恋人でも友人でも自然な形で会えるからな。」

リコラ「アーサーが常連なら大歓迎だよ。」

アーサー「そういえばベルは俺の事で何か言ってなかったか?」

リコラ「特に大した事は言ってなかったよ。一応反対しないのって聞いたけど、反対している時点で保護者としての教育を間違えたって認めたのと同じだって言ってたの。」

アーサー「ベルらしい答えだな。」

リコラ「分かるの?」

アーサー「正しい育て方をしていれば、保護者が反対するような悪い奴を好きになる事はまずないって事だ。そういう奴を好きになった時点で教育失敗って事なんだろうな。」

リコラ「良くも悪くも似た者同士が惹かれ合うんだね。私もアーサーと似てるところあるのかな?」

アーサー「あるんじゃないか。仕事に誇りを持ってるとか。」

リコラ「誰でも何かしら誇りを持ってると思うよ。お兄ちゃんなんて誇りを持たない事に誇りを持ってるし。」

アーサー「ふふっ、何だよそれ?」

リコラ「他にも逃げるなとか言う奴は逃げる事から逃げてるとか、信念がない人はいない。信念がないように見える人も信念を持たないという信念を持っているとか。」

アーサー「言葉遊びが好きなんだな。」

リコラ「普段から他人の愚行とか矛盾に対して皮肉の利いた言葉を容赦なく浴びせたりしてるくらいだからね。この前だっていじめがない事で有名な学校の噂に対して、もしそれが本当ならその学校には生徒が1人もいないんだろうって言ってたんだよ。」

アーサー「あははははは。確かに生徒がいなかったらいじめ起きないもんな。」

リコラ「そうそう。お兄ちゃんはそれもあって他人からは嫌われがちだけど、私はそんなお兄ちゃんがとても気に入ってるの。」

アーサー「俺も結構好きだけどな、そういうタイプ。」

リコラ「アーサーも気に入ってるんだね。」

アーサー「最初は不真面目な奴って思ってたけど、自分に一切妥協しないし身内には激甘なところとか見てると憎めないんだよなー。」

リコラ「アーサーも気づいてたんだね。」

アーサー「ベルを好きになれる奴じゃないと無理なんて言うから、無意識のうちにあいつを観察してたんだ。」

リコラ「何故かいつもお兄ちゃんの話になっちゃうね。」

アーサー「無理もないだろ。リコはずっとベルと一緒に過ごしてきたんだし、言わば価値観の基になった人だろ。」

リコラ「うん。私はずっとお兄ちゃんを見てきたから目標のない人はカッコ悪いなんて思ってたけど、目標がなくても別に良いって事を女王陛下が教えてくれたの。」

アーサー「目標がないのが悪いっていうのはベルが言ったのか?」

リコラ「口では言ってないけど、背中がそう語ってたんだよね。」

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