社会不適合者エスティのブログ

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三低男子の婚活事情 10ページ「偽装から生まれた恋する乙女」

2018年03月25日 | 三低男子の婚活事情
ベルガは無事に芙弓を救った後合コンをする事になり、

ランダムマッチによる組み合わせで自宅合コンをしたのである。

京子「実はあたし、黒杉財閥と結婚させられそうなの。」

ベルガ「えっ、マジで?」

京子「うん。そこで、ベルを見込んで頼みたい事があるの。」

ベルガ「黒杉財閥との結婚を阻止してほしいって事だな。今度はナニワの令嬢に手を出してきたか。」

ヘクセンハウス元帥「ベル、何で京子さんが令嬢だって分かるんだ?豪華そうなバッグなら桜子さんも持ってただろ?」

ベルガ「桜子の場合、バッグも服も靴もブランド品だが、服の着方が不慣れで財布は労働者階級の二つ折り。取り出していたクレジットカードは一般カードだ。つまりあの服装は彼女や親の所得ではまず買えない。あれは3人のキープ君に1種類ずつ買ってもらった物だ。京子は座り方にもコーヒーの飲み方にも茶道の癖が出ていた。茶道はナニワ共和国の上流階級で最も定石な習い事だ。」

ヘクセンハウス元帥「確かに両手で丁寧に飲んでたな。」

メルヘンランド女王「見事な推理である。」

京子「ベル、このお子さんと王冠をかぶった人は誰?」

ヘクセンハウス元帥「私は子供じゃないぞ。一応ベルより年上だからな。私はヘクセンハウスだ。」

メルヘンランド女王「妾はメルヘンランド女王である。」

京子「はあ・・・・話は戻るけど、私の父は京野財閥の社長で、黒杉財閥に政略結婚を催促されてるの。それで一人娘の私が黒杉政吾と婚約させられちゃったの。しかも近い内に結婚式を挙げるって親が言いだしたから、それでずっと困ってたの。」

ベルガ「なるほど。京子はどうして黒杉政吾と結婚したくないの?」

京子「だって将棋の駒みたいに使われてるみたいで嫌なんだもん。ジパングに嫁いだら専業主婦を余儀なくされるだろうし、一流の和食料理人を究める時間も無くなるだろうし、今は結婚したくないのよ。」

メルヘンランド女王「将棋とは一体何なのだ?」

ヘクセンハウス元帥「将棋とはジパングの対戦型ボードゲームの1つで、メルヘンランドでいうところのチェスのようなものです。」

メルヘンランド女王「なるほどな。一度やってみたいぞ。」

ベルガ「その縁談が破談になれば、京野財閥も立場が悪くなるだろう。この前株式会社春野が子会社を全て失っただろ。あれは黒杉財閥の逆鱗に触れたからだ。奴らを敵に回す覚悟はあるか?」

京子「あるに決まってるでしょ。だからね。あたしとつきあってよ。」

ベルガ「えっ・・・・つきあうって事は、つまりデートに行くって事?」

京子「それもあるけど、しばらくの間あたしの彼氏になってよ。さすがに彼氏がいるとなれば、うちの親も諦めざるを得ないだろうし。もちろん偽装交際はお父さんには内緒だよ。」

ベルガ「嫌だよそんなの。」

京子「じゃあこの小切手あげるから、それでどう?」

ベルガ「分かった。じゃあ今度京子の家に行くよ。(まあ、これなら良いや。)」

京子「うん。お父さんが明日の朝帰ってくるから明日来てよ。じゃあ、あたしは帰るわね。(ちょろいわね。)」

そう言うと京子はギルドカフェを後にしてナニワへと、

帰っていったが当のベルガは大喜びしていたのである。

ベルガ「よっしゃー、この依頼が終わったら美味いもん食いに行こうぜ。」

メルヘンランド女王「一体どうしたのだ?」

ベルガ「値段の書いてない小切手をくれたんだよ。」

ヘクセンハウス元帥「つまり言い値で依頼をするって事か。やったじゃないか。」

ベルガ「相手は財閥令嬢だからね。彼女にとってはそれほど重要な依頼だという事だよ。」

リコラ「書き忘れだと思ってた。」

ベルガ「彼女たちとはメアド交換を済ませたから、待ち合わせ場所は明日には届くと思うよ。」

翌日ベルガたちはナニワ共和国ミヤコシティへと来たのである。

京子の家は昔ながらのジパング仕様の和製の家だったのである。

ベルガ「ジパングから独立した国なだけあって、昔のジパングと同じ建物が多いね。」

ヘクセンハウス元帥「そうだな。」

京子「ベル、何でヘクセンハウスまでいるの?」

ベルガ「一応僕、メルヘンランドの元老院議員だし、色々あって護衛してもらう事になったんだ。」

ヘクセンハウス元帥「よろしくな。」

京子「別に良いけど。それよりお父さんが早く彼氏と会わせろって言うから、会って話してほしいの。」

ベルガ「何を話せばいいの?」

京子「あたしの彼氏だって事をアピールするだけよ。」

京子の父「君が京子の彼氏か。」

ベルガ「う、うん。僕はベルガ・オーガスト・ロートリンゲン。メルヘンランドでバリスタをやってる。こっちは僕の護衛のヘクセンハウス。もしかして美夜子の親父か?」

京子の父「はい。私が京野財閥の社長、京野京次郎です。京子がずっとお世話になっているようですが、君には京子と別れてもらいます。」

京子「お父さんっ。会うなりいきなりそれはないでしょ。」

京次郎「京子、私たちに遊んでいる時間はないんだよ。そんな女子みたいな男よりも黒杉政吾君はとても良い男だぞ。ネオトーキョー大学の理系第三学部に首席で合格した上に、高身長で黒杉財閥の役員もやっている三高男子なんだぞ。」

京子「政吾君ってそんなに頭良い人なんだ。」

ベルガ「イカサマだよ。僕はあいつと同じ中学だったから分かるけど、あいつのテストの成績はいつも振るわなかった。事前に大学側の人間を買収して、入試の回答を手に入れてそれを覚えていたんだ。これなら馬鹿でも受かる。買収は黒杉財閥の18番だ。あの父親にしてあの息子だな。」

京次郎「そういう君はどうなんですか?身長は京子よりも低い上に、学歴も中学校追放処分と聞きました。失礼ですが、年収の方は大丈夫なんでしょうか?」

ベルガ「200万くらいだよ。」

京次郎「話になりませんね。我々と縁を結ぶなら、せめてグループ企業の御曹司クラスの者でないと。」

ベルガ「こちとらあんたとは違ってずっと不況の渦中にいたからね。それでも変わらない稼ぎを維持してこれたんだ。不況に負けない頑丈さにおいては黒杉財閥を凌駕する自信があるよ。あんたみたいに家族を顧みないでライス合衆国まで仕事へ行く事もそうそうないし。」

京次郎「京子、私の事を喋ったのか?」

京子「いや、全く。」

京次郎「何故私がライスから帰ってきた事が分かったのですか?」

ベルガ「この部屋に移動する途中で見たブリティア語の教科書だ。波打ってはいたが色あせていない。使ったのは最近だからブリティア語圏へ行く予定があった。ビジネスバッグにほこりがないから旅行ではなく仕事だ。昨日京子が明日の朝あんたが帰ってくると言っていた。日帰りでなくブリティア語圏との距離を考えれば遠出。ブリティア語圏で今日の朝ここに着く便は、ライスからナニワへの便だけだ。」

京次郎「だから何だというのですか?」

ベルガ「少しは京子の気持ちも考えろよ。あんたは京子の事を何も分かってない。自分にとっての最善が京子にとっても最善だと思い込んでる。でもそうじゃない。親の敷いたレールが子供に合わない事もあるんだ。かつての僕がそうだったように。」

京次郎「・・・・詳しく聞かせてもらえますか?」

ベルガ「僕の実家は民族衣装専門店だった。僕が裁縫が得意だった事もあって、親から民族衣装製造技能士になるように言われたけど、僕はバリスタになりたかった。でも親に反対され、喧嘩になった矢先に店をジパングに潰され、親は仲直りする前に死んでしまった。皮肉な事に、僕はそれで押さえつける人がいなくなってバリスタになれた。まだあの世で反対してるのかなって後悔した事もあった。でもこれだけは言える。親の意見に流されてたら、もっと後悔してたと思う。京子にはそんな辛い思いをしてほしくないんだよ。」

京子「・・・・ベル。」

ベルガ「人に決められる人生なんて送ってたら、肝心な時に自分で判断できない人間になっちゃうよ。」

京次郎「・・・・少し考えさせてください。京子はどう思ってるんだ。」

京子「あたしは・・・・一流の和食料理人を目指したい。それまで結婚は考えたくないし、結婚するなら好きだと思える人が良いの。」

京次郎「そうか。分かった。政吾君にはそう伝えておく。」

ベルガ「黒杉にはもう伝わってるよ。そっちの部屋にいるんだろ?」

政吾「いつから気づいてたんだい?」

ベルガ「玄関に入った時からだ。京子の親父とは明らかに一致しないサイズのエナメル靴。脱いでから隅に寄せているあたり、素養のある上流階級の人間だ。その手の人間で京子の結婚式が迫っているこの時期にここへ来そうなのはお前くらいだ。」

ヘクセンハウス元帥「お前こいつが近くにいるのを知っててイカサマとか言ってたのかよ。」

ベルガ「僕が京子や京子の親父に言っていた台詞は、黒杉への台詞でもある。」

政吾「全く、君の推理には中学時代からうんざりさせられるよ。僕を贔屓にしていた担任がキャバクラに行った事を見破って退職させたり、僕を立てるための八百長運動会を教育委員会に報告したり、昔から君は僕にとって邪魔でしかないよ。」

ベルガ「僕は正しいと思った事をしてきただけだ。そんなせこい真似してもいずれボロが出るだけだぞ。」

ヘクセンハウス元帥「(ベルはその時には、もう変な事に拘る習性があったのか。)」

京子「あんたってほんと呆れるほど善人タイプの変人よね。普通の人なら仕返しを恐れて見逃すところなのに。」

ベルガ「茶番につき合わされる方の身にもなってほしいものだよ。」

京次郎「政吾君、あなたには悪いですが、京子を嫁に出す相手としてあなたは不適切なようです。むしろベルガさんのように、京子の事を第一に考えてくれる人の方が安心できます。」

政吾「はい。今度は誰にも頼らず、自分の力だけで京子さんに振り向いてもらいますよ。父には僕の方から断ったと伝えておきます。こう言えば父も手出しはしないでしょう。では僕はこれで。」

ベルガ「お前にしては気持ち悪いくらい律儀だな。なんか変なもんでも食ったか?」

政吾「気が変わっただけだ。嫁候補たちが君を好きになった理由が少し分かった気がするよ。正直、僕は君のような社会性のない人間は嫌いだ。」

ベルガ「奇遇だな。僕もお前が嫌いだ。」

政吾「その減らず口がいつまで持つかな。君は最低な人間にして最悪の変人だ。」

ベルガ「僕からも言わせてもらうと、僕はずっとお前の一族を恨んでいた。でも最近気づいたんだ。お前も、お前の親父も、時代に翻弄された被害者だとな。だから今は恨んじゃいないよ。むしろ哀れみすら持ってる。」

政吾「言ってくれるな。まあ、僕も最近は親父の強引なやり方に疑問を持つようになった。」

ベルガ「気づくのがおせえんだよ。」

政吾「うるせえ。皮肉な話だが、僕はお前のおかげでようやく親元から独立できたんだ。お前が言ってた通り、僕も親父の言いなりにはならない。じゃあな。」

ベルガ「やれやれ、何を考えてるんだか。」

京次郎「ベルガさん、話し合って決めた結果です。京子の事、よろしくお願いします。」

ベルガ「京次郎さん、悪いんだけど、僕は京子と黒杉政吾の結婚を阻止するための偽装交際につきあってただけで、目的を達成した時点で交際は終わってるんだよね。」

京次郎「えっ・・・・京子、それは本当なのか?」

京子「黙っててごめん。こうでもしないと結婚させられそうだったから。」

京次郎「そうか。京子に親身になってくれていただけに残念だ。」

ベルガ「京子、僕は君の親父に偽装交際を内緒にするという約束を守れなかったから、依頼料はいらないよ。やっぱ自分に嘘は吐けないや。」

京子「ベル・・・・ありがとう。つき合えないのは残念だけど、じゃあね。」

こうしてベルガたちはギルドカフェへと戻り、

リコラたちにこの事情を報告したのである。

ヘクセンハウス元帥「お前がへまをしたせいで骨折り損のくたびれ儲けだ。約束を破ったのはわざとだな?」

ベルガ「うん。悪いね。依頼料貰えなかったから、食べに行く話はなしだ。」

リコラ「まあ、それなら仕方ないね。」

10ページ目終わり

三低男子の婚活事情 9ページ「控えめに言って壊滅的」

2018年03月18日 | 三低男子の婚活事情
芙弓を無事にメルヘンランドへと連れてくる事に成功したベルガは、

ヘクセンハウスの兄である、シュトゥルーデルと会ったのである。

シュトゥルーデル元帥「お前もな。」

ベルガ「僕はベルガ・オーガスト・ロートリンゲン。さっきはサンクス。おかげで助かったよ。」

シュトゥルーデル元帥「仕事だからな。いつも弟が世話になってるようだな。俺はシュトゥルーデル。王国空軍元帥だ。」

ベルガ「それよりも、厄介な事になった。帝国自衛隊の戦艦が2隻も轟沈した事で、さっきジパングから抗議が来た。一応砲台を向けてきたから正当防衛だって言ったけど、これでジパングとの仲は更に悪化した。おかげで予約してた、ジパングとの合同婚活パーティは全部中止だ。他の婚活パーティは全部予約埋まってたんだよね。」

ヘクセンハウス元帥「仕方がなかったとはいえ、来週の婚活イベントはどうするんだ?」

ベルガ「今週中にこの問題に決着をつけてから、お見合いでも行くか。」

シュトゥルーデル元帥「確かツンドラとナニワでも婚活イベントがあった気がするぜ。」

ベルガ「そうなの?じゃあ行ってみようかな。それと助けてもらっておいて悪いんだけど、シュトゥルーデルはしばらく自宅謹慎処分だろうな。」

シュトゥルーデル元帥「マジかよ。まあ、自宅謹慎なら別に構わん。」

ベルガ「ジパングは恐らくシュトゥルーデルに罰を要求してくるだろう。だから奴らには、爆撃したパイロットには然るべき罰を与えたと伝えておく。自宅謹慎処分でも罰は罰だからね。嘘は吐いてないだろ?」

ヘクセンハウス元帥「あははははは。確かにそうだな。」

シュトゥルーデル元帥「それで円満に解決できるなら、俺は構わないぜ。」

芙弓「最初は社会性のない人だと思ってたけど、本当は良い人なんだね。」

リコラ「お兄ちゃん、変人ですけど妙に優しいところがあるんですよ。」

メルヘンランド女王「妾はベルの家とは10代ほど前からつきあいがあるが、全員社会性の欠けた善人であった。」

芙弓「10代ほど前って・・・・女王陛下って何歳なんですか?」

メルヘンランド女王「妾にも分からぬ。もう1万年は生きておるがな。」

芙弓「1万年・・・・長生きですね。」

リコラ「女王陛下は不老不死の魔法で不老不死になったと言われています。メルヘンランド王国は、遥か昔に魔法使いの一族が建国した国なんです。だから魔法使いが目立たない今では正体を隠して生きているんです。」

芙弓「へえ、そうなんだ。」

ベルガは由実から依頼の報酬を貰って芙弓はしばらくの間、

ほとぼりが冷めるまで由実と一緒に暮らす事になったのである。

そして期限が迫った婚活イベントの日にベルガに突如、

合コンの話がナニワ共和国から舞い込んできたのである。

リコラ「お兄ちゃん、ナニワから合コンの誘いだって。」

ベルガ「どれどれ。メルヘンランド人の男子3人とナニワ人女子3人のランダムマッチ合コンか。ていうか誰が僕をマッチングさせたの?」

ヘクセンハウス元帥「ベルが登録させられている婚活サイト、世界共通婚活組合だぜ。その週の全ての婚活パーティの枠が埋まると、登録者が自動的にお見合いか合コンにランダムでマッチングされる事になってるぜ。」

ベルガ「そういえばどこの婚活パーティも満席だね。ジパングとの衝突で婚活パーティの枠自体が減っちゃったっていうのもあるけど。」

メルヘンランド女王「またしても巻き込まれ体質が災いしたか。」

ベルガ「場所は・・・・メルヘンランド王国ハロウハーツ州アウグストのギルドカフェってここじゃねえか。」

リコラ「じゃあ今日は出かけなくて良いんだ。そういえばお兄ちゃんの婚活イベントを生で見るの初めてかも。」

ヘクセンハウス元帥「リコ、合コン中は厨房に引きこもった方が良いぞ。」

リコラ「えっ、でも注文があったら客席まで運ばないといけないから。」

ヘクセンハウス元帥「武運を祈る。」

破天荒な男「おっ、ベルじゃん。久しぶり。今日ここで合コンだろ?他のメンバーも連れて来たぜ。」

ベルガ「アントン。お前も婚活難民だったか。」

アントン「お前こそ、相変わらず社会不適合者やってんなー。でも良いカフェだな。」

ベルガ「まあね。」

可愛い男「ベル、久しぶりだね。」

ベルガ「マリユス、久しぶり。じゃあ君たちはここに座ってね。」

女子3人「はーい。」

アントン「じゃあ、まずは俺から自己紹介だな。俺はアントン・バルテリンク。卸売業をやってんだ。よろしく。」

マリユス「僕はマリユス・ブーリエンヌといいます。コーヒー豆の焙煎をやっています。よろしくお願いします。」

ベルガ「僕はベルガ・オーガスト・ロートリンゲン。メルヘンランドのバリスタだ。ベルと呼んでくれ。」

京子「あたしは京野京子。普段は和食料理店で働いてるの。京子って呼んで。よろしくね。」

あずみ「うちは安住あずみです。会社員やってるんや。あずみって呼んでな。よろしくー。」

桜子「私は咲良桜子です。アルバイトやってます。桜子って呼んでください。よろしくでーす。」

京子「さっき久しぶりって言ってたけど、3人は知り合いなの?」

アントン「ああ。俺がコーヒー農家から仕入れたコーヒー豆をマリユスに売って、マリユスが焙煎したコーヒー豆をベルのカフェが仕入れるっていう持ちつ持たれつな関係さ。」

ベルガ「最近は仕入れ値が張って困ってるんだけどね。またガリアン共和国にごっそり持っていかれたな。」

アントン「えっ、何で知ってんの?」

ベルガ「僕がマリユスから仕入れた時に値上がりした時期と、ガリアンがバリスタの全国大会を開催した時期が同じだから。」

桜子「すごーい。ベルガさんって、まるで探偵みたいですね。」

マリユス「この前会った時も、焙煎機が壊れた事を一目で見抜かれたんですよね。」

ベルガ「うちは元々普通のカフェだったんだけど、周りがみんな僕に相談とか依頼とかするようになっちゃってさ。他の人にも手伝ってもらおうと思ってクエスト制度を始めたんだ。それで気がついた時にはギルドカフェになってたんだよね。」

あずみ「そういえば、掲示板にクエストの張り紙がされとるね。人探しで1000メルヘン。害獣駆除で2000メルヘン。色々あるねー。」

ベルガ「良かったらあずみも依頼するといいよ。上司からの嫌がらせを止めさせてほしいというクエストなら100メルヘンから受けつけるよ。」

あずみ「ええっ、何で分かったん?」

ベルガ「あずみは標準的に顔を右に向ける癖がある。君から見て左側に、生理的に受けつけない何かが定期的にいたからだ。職業から考えれば左側に席がある上司だろう。美容に気を遣っており、喫煙者でもないがコートからタバコの臭いがする。上司との恒常的な接待につき合わされているからだ。結論、あずみはタバコ臭い上司から嫌がらせを受けている。」

あずみ「はい・・・・そうです。」

京子「ベル、推理は見事だけど、女子たちの前でそういう指摘はどうかと思うよ。」

ベルガ「えっ、どういう事?」

リコラ「お兄ちゃん、今のはデリカシーに欠けてると思うよ。あずみさん、兄が無礼な事をして申し訳ありません。兄は昔っからこうなんです。空気が読めないというか、周りに合わせられないというか。自分の言動に対する相手の気持ちを想像できないんです。」

あずみ「ええねん。むしろうちの方が気を遣わせてたみたいやし。」

ベルガ「なんかごめん。(またやってしまった。)」

あずみ「気にせんでええよ。でも香水までつけたのによく分かったね。」

ベルガ「僕は職業柄、嗅覚と味覚が鋭いからね。」

アントン「ベルは世界一のバリスタだもんな。リコちゃんだっけ、リコちゃんも一緒に話そうぜ。」

リコラ「あの、私は店の仕事があるので。」

アントン「良いじゃんちょっとくらい。ベル、リコちゃんにもコーヒー淹れてくれ。俺の奢りでな。」

ベルガ「ちょっと待っててね。エスプレッソにしとくね。」

アントン「おう。ほら、こっちこっち。」

リコラ「えっ・・・・ちょ。」

ヘクセンハウス元帥「(だから厨房に引きこもっとけって言ったのに。リコはスレンダー美人な上に、豊満なおっぱいもあるから、男がめっちゃ寄ってくるんだよな。参加している婚活女子よりも店員の方が条件が良いのはよくある話なんだよな。)」

リコラ「(ヘクセンハウスが言ってたのってこういう事だったんだ。)」

マリユス「そういえば、リコラさんはどうしてショコラティエを始めたんですか?」

リコラ「元々チョコは作る側じゃなく食べる側だったんですけど、私と兄が学生だった時、バレンタインデーの時に兄だけ、クラスの男子で唯一チョコを貰えなかったんです。空気が読めないところもあって、クラスメイト共通の敵になってたからなんです。そこで私が手作りチョコを始めて作って渡したら凄く喜んでくれたんです。あの時の喜びを忘れられなくて、ショコラティエを始めたんです。」

マリユス「完全に怪我の功名ですね。」

京子「そうだったんだ。なんか可愛い。」

リコラ「いえ、そんな事はありません。」

あずみ「あなたたちって、兄妹とは思えないほど違ってるよね。」

リコラ「はい。いつも巻き込まれ体質の兄に翻弄されてます。コーヒーに料理にスイーツに裁縫にピアノといった、手先の細かい仕事は誰よりも得意なんですけど、いかんせん社会性が壊滅的なので、接客はいつも私がしているんです。私は人見知りなので、本当は厨房に引きこもりたいんですけどね。なかなかそうはいかないんですよ。」

ヘクセンハウス元帥「(いかん。リコが完全にベルの代弁者になってる。)」

アントン「俺は新人の時、もう少しで安いコーヒー豆を高値で買わされそうになった時に、ベルの指摘を受けて助けてもらってから、ベルの店に行くようになったんだよなー。」

マリユス「僕も焙煎したコーヒー豆の種類を全部言い当てられて、それでベルガさんと取引するようになったんですよ。」

桜子「ベルガさん、起業家には向いてそうですけど、ジパングだったらまず就職できないタイプですね。」

アントン「メルヘンランドじゃ、就職する奴の方が珍しいぜ。資金がある人はそのまま起業するけど、基本的には親の事業を継ぐか、アルバイトから始めて、資金が貯まるまでにやりたい仕事を決めて起業する方が主流だぜ。」

桜子「へー、そうなんですねー。」

マリユス「メルヘンランドは起業する職人タイプの人間が多いんですけど、ジパングは基本就職ですもんね。」

ベルガ「桜子は就活と婚活の両方をやってるから大変だよね。ジパングだと両活って言うんだっけ?」

桜子「はいそうです。もしかして、また推理で当てたんですか?」

ベルガ「うん。でも、言わないでおくよ。」

桜子「私は別に大丈夫ですよ。」

ベルガ「種を明かしちゃうと、何だそんな事かとがっかりするだけだよ。」

桜子「構いません。言っちゃってください。」

ベルガ「髪の毛の先に染め残しの茶髪が残っている。就活を始めてから慌てて黒に染め直したからだ。リクルートスーツにビジネスバッグを持っていて、親指と人差し指に黒い鉛筆汚れが残っている。筆記試験を済ませてからここに来たからだ。手のしぐさからして高校生。つまり君は就活中だ。」

桜子「なーんだ、そんな事でしたか。」

ベルガ「ちくしょう。」

京子「何でセンター試験じゃないの?」

ベルガ「受験シーズンはもう過ぎてるから除外した。」

リコラ「これが兄の18番、偶然妄想トリックです。」

あずみ「トリックにしては当たりすぎてるけどね。」

こうしてベルガたちの合コンはお開きとなった。

合コンかお見合いの後は証拠写真を婚活サイトに送り、

カップリングの有無まで報告しなければならない。

ベルガ「ふう、やっと終わった。」

リコラ「合コンが終わるまでアントンたちと喋ってたから疲れちゃったよ。」

ベルガ「おっぱいばっかり見られてたね。」

リコラ「凄く恥ずかしかったんだよ。」

京子「ベル、ちょっといいかな?」

ベルガ「どうしたの?」

京子「実はあたし、黒杉財閥と結婚させられそうなの。」

9ページ目終わり

三低男子の婚活事情 8ページ「隠された思惑と決死の脱出」

2018年03月11日 | 三低男子の婚活事情
ベルガたちは婚活法が始まって以来の異変に気づき、

ヘクセンハウスと共にジパングへと向かったのだが。

ベルガ「ベッドの床が冷たくなってる。」

ヘクセンハウス元帥「そうか、だから遠くに行ったわけだな。それで、芙弓の居場所は分かったのか?」

ベルガ「今いる場所までは分からないが、恐らく無事だろう。芙弓は由実さんと同居していた。芙弓は左利きの女に誘導されてツンドラ公国へ避難している。その先は分からない。」

ヘクセンハウス元帥「玄関と部屋を見ただけでよくそこまで分かるな。」

ベルガ「部屋は荒れていないが、隅にほこりがある。掃除は大雑把な性格の姉に任せていたから、ほこりを取り切れていない。窓は閉まっていて脱出した形跡はない。出た時は玄関からだ。さっき玄関を見たが、どの靴も整列していた。争った形跡もなく部屋が保全されているという事は、警察はまだここには来ていない。ジャンパーが1つなくなっている。寒い場所へ出かけたからだ。ジパング警察の監視が緩い場所は、ナニワ共和国とツンドラ公国だ。この季節でジャンパーを着ていく必要があるのは、ツンドラ公国。」

ヘクセンハウス元帥「左利きの女というのは?」

ベルガ「玄関の手前側に靴を脱いだ形跡があった。僅かに残った砂の輪郭から靴幅22センチのフラットシューズと予測。このタイプの靴を履いているのは基本的に女だ。そして机の上に置いてある2つのコップの内の1つが、相手から見て机の左側に置かれている。左手で飲んだからだ。芙弓は右利きだから確実に別の誰かがいた証拠だ。恐らく今も芙弓と一緒だろう。」

ヘクセンハウス元帥「じゃあ次の目的地はツンドラだな。」

ベルガ「だがツンドラのどこにいるかまでは分からない。スーツケースも1人分ないから遠くへ泊りがけだろう。」

ヘクセンハウス元帥「それならフォレノワール巡査部長にメールを送ろう。あいつはツンドラに詳しいからな。昨日ジパングに出入りした人を調査してもらうんだ。」

ベルガ「その手があったか。」

ヘクセンハウス元帥のメール「久しぶり。突然で悪いんだが、ツンドラからジパングに出入りした人の捜査をお願いするぜ。」

フォレノワール巡査部長のメール「えっ・・・・でもそれじゃ、他の仕事を後回しにする事になるのですが。」

ヘクセンハウス元帥のメール「これは緊急を要する任務だ。それに、この仕事をやったらベルに好きになってもらえるかもしれないぜ。」

フォレノワール巡査部長のメール「やりますっ。やらせてくださいっ。分かり次第報告します。」

ヘクセンハウス元帥「(やっぱこいつ、ちょろいわ。)」

ベルガ「メールは済んだか?じゃあツンドラまでいくぞ。」

こうしてベルガたちはツンドラ公国へと行く事になった。

そしてツンドラ公国の首都、ワシーリーに着いたのである。

ベルガ「芙弓にメールを送ってみたけど全く返信が来ない。電源を切らざるを得ない状況にあるか、電波の届かない場所にいるかのどちらかだ。」

ヘクセンハウス元帥「唯一の手掛かりはフォレノワール巡査部長がくれたこの国境にある防犯ビデオのデータだ。だが昨日ツンドラからジパングに出入りした人はかなり多いぞ。」

ベルガ「さっき一通り見たが、芙弓の姿が見えない。だが芙弓と一緒にいる女は分かった。恐らくこのショートヘアーの女だ。」

ヘクセンハウス元帥「何故分かる?」

ベルガ「芙弓の家で見つけた靴の輪郭と同じフラットシューズを履いている。スーツケースを左手で持っており、南出口から出てきて検問を通過した後右へ曲がったところで姿を消している。電波の届かない場所と仮定するなら行先はノースシービレッジだ。まずはここへ行ってこの人に会おう。芙弓の事も分かるかも。」

ヘクセンハウス元帥「昨日1日分の防犯ビデオの中からよく探し出せたよな。」

ベルガ「観察と記憶は得意だからね。」

ヘクセンハウス元帥「でも芙弓の姿は見えなかったんだろ?」

ベルガ「ああ。芙弓はこの人と一緒に行ったんじゃない。この人に合意の下で運び出されたんだ。芙弓はこのスーツケースの中にいたんだ。スーツケースの中なら、携帯にも触れないし、誰にもばれずに移動できる。」

ヘクセンハウス元帥「人間がスーツケースの中に入れるとは思えないが。」

ベルガ「この前の料理好き限定編で芙弓が昔バレエ部だった事を知った。芙弓はバレエ部で培った柔軟な体を活かし、体をコンパクトに折りたたんでスーツケースの中に入ったんだ。そしてこの女に運んでもらった。」

ヘクセンハウス元帥「ジパングの警察に捕まらないようにするためか?」

ベルガ「それもあるだろうけど、他に目的があるはずだ。まあ、それは会ってみれば分かるさ。」

ベルガたちはノースシービレッジへと向かい、

そこの民家で芙弓とあっさり再会したのである。

ベルガ「やっぱりここにいたか。」

芙弓「えっ、ベル。ヘクセンハウスさんもどうしてここに?」

ベルガ「由実さんが芙弓の事を心配してたよ。だから芙弓を探して欲しいって依頼されたんだ。」

芙弓「そうだったんだ。でも何で場所が分かったの?」

ベルガ「雪の上をスーツケースで引きずった跡とフラットシューズの足跡からこの家だと思った。」

カッコ良い女性「あなたたちは一体誰なんですか?まさか芙弓を捕まえに来たんですか?」

ベルガ「それはないよ。僕はベルガ・オーガスト・ロートリンゲン。メルヘンランドのバリスタだ。こっちは相棒のヘクセンハウスだ。それより、何でわざわざ彼女をスーツケースにまで入れてここへ連れてきたんだ?訳を聞かせてくれ。」

カッコ良い女性「何故それを?・・・・あなたに話す事など何もありません。あなたたちを警察に通報します。」

芙弓「止めてっ。ベルはお姉ちゃんの命の恩人なの。この人たちは味方だから大丈夫だよ、アナ。」

カッコ良い女性「えっ、そうなの?」

芙弓「うん、ベルがいるって事は、安心して良いって事だから。」

カッコ良い女性「由実さんの命の恩人とは知らず、申し訳ありませんでした。私はアナスタシア・ボルトキエヴィッチと申します。アナと呼んでください。ツンドラ公国で働いている者です。芙弓は学生時代にバレエ部の交流会で知り合った友人です。」

ベルガ「なるほど。これで事の真相が掴めた。芙弓は同窓会で一緒にいたアナと一緒に、一度家に戻ってスーツケースに自分を入れてもらい、この場所まで運んでもらった。今もジパングに追われているからピリピリしていたんだろう?」

アナスタシア「はい。全てベルガさんの言う通りです。」

ベルガ「由実さんから芙弓と最後に連絡した時のメールの内容を教えてもらった。今日は旧友と飲みに行くから夜まで帰れないって言ってたから同窓会だと思った。そしてそのメールを最後に連絡が途絶えたから、不審に思った由実さんが僕に相談しに来たってわけさ。飛行機で行った場合はスーツケースの中身がばれてしまうから、比較的検閲の緩い陸路で行った。だからここに辿り着くのに時間がかかった。」

芙弓「ずっとスーツケースの中にいたから、当分狭い場所はごめんかな。」

アナスタシア「実はツンドラにもジパング警察が入ってきていているんです。ジパングは婚活法違反者の身内を捕らえて、人質にするつもりです。そしておびき出したところを捕まえる魂胆でしょう。」

ベルガ「何でアナがその情報を知っているんだ?」

アナスタシア「えっ、風の噂ですけど。」

ベルガ「君が一般人ならその情報を知っているはずがないんだ。ジパングが婚活法違反者の身内を人質にする事を今の段階で知っているのは、ジパング政府の要人と一部の調査機関だけだ。君はツンドラのスパイだな?」

芙弓「えっ、スパイ。」

ヘクセンハウス元帥「ベル、どういう事だ?」

アナスタシア「何を根拠に言っているんですか?」

ベルガ「アナ、君の本当の目的が分かった。アナは婚活法違反者の身内のサンプルを連れてくるようツンドラ政府に言われ、彼女の証言を盾に国を挙げて婚活法に抗議するつもりなんだろう?」

アナスタシア「えっ、どうしてそれを?」

ベルガ「ツンドラは以前から婚活法の脱退を訴えていた。ジパングの圧力に対抗するため、ジパングがツンドラ公国民を含む婚活法違反者を騙し討ちにしたところで、黒杉内閣の残虐性を国際社会に訴えるつもりだろう。」

アナスタシア「・・・・はい。私はツンドラ政府からジパングの情報を掴んでくるように言われ、諜報をしていたのです。諜報を進めている内に、芙弓が、まだ発表されていない婚活法違反者向けの追加条例に引っかかっている事を知り、早い内から会って話そうと思っていたんです。芙弓、ずっと隠していてごめんなさい。あなたを騙すつもりはなかったの。」

芙弓「謝らなくていいよ。だって私を助けるために動いてくれたんだから。それより、その件をベルも知っているって事は、ベルもただ者じゃないんでしょ?」

ベルガ「ばれてるなら隠す必要もないね。僕はメルヘンランドの元老院議員だ。情報は自分で気づいたんだけどね。」

アナスタシア「元老院議員でしたか。ではヘクセンハウスさんも。」

ヘクセンハウス元帥「私は王国陸軍の元帥だ。もっとも今は軍を動かす機会すらないけどな。」

ベルガ「それで、当分は彼女をここに泊めておくのか?」

アナスタシア「そうしたいのですが、もしジパングにばれてしまった場合は、強制送還もあり得ます。」

ヘクセンハウス元帥「スーツケース入りの荷物として来たなら、当然正式な手続きを踏んでいないから、なおさら強制送還の危険性があるな。」

ベルガ「今強制送還されれば、間違いなく婚活法違反で逮捕されるな。分かった。王国海軍のプファンクーヘンに連絡しよう。一度ワシーリーに戻ってそこに駆逐艦を派遣してもらおう。ヘクセンハウス、海軍に連絡してくれ。」

ヘクセンハウス元帥「分かったぜ。」

ベルガ「アナ、ツンドラ政府に王国海軍の渡航許可を取ってくれ。」

アナスタシア「はい。分かりました。」

ベルガ「芙弓、悪いけどまたスーツケースに入ってくれ。駆逐艦に乗るまでの辛抱だ。」

芙弓「はあ・・・・仕方ないか。」

そしてベルガたちはワシーリーに戻り、そこから駆逐艦に乗った。

アナスタシアとはそこで別れる事になり、ジパングの領海まで行ったのである。

ベルガ「あれは、ジパングの帝国自衛隊の戦艦部隊。どうしてここに・・・・。」

艦長「そこの駆逐艦部隊、止まりなさい。ここの通過許可は取っていないはずだ。止まらなければ撃破する。」

ヘクセンハウス元帥「まずいぞ。このまま止まれば私たちは逮捕され、芙弓はガス室行きだぞ。」

芙弓「でも止まらなかったら沈められるんでしょ。しかも2隻もいるよ。」

プファンクーヘン元帥「どうやらさっき通過した時に気づかれたらしい。(もうそろそろあいつが来ても良い頃だが。)」

艦長「止まる気はないようだ。構わん、あの駆逐艦を沈めろ。ん?ぐわあああああぁぁぁぁぁ。」

帝国自衛隊の戦艦部隊が一斉に砲台を駆逐艦へ向けた時、

それを咎めるかのように全ての戦艦が爆撃され轟沈したのである。

ベルガ「今だっ、全速前進だ。」

ヘクセンハウス元帥「あれは王国空軍の戦闘爆撃機だ。もしかして兄貴か。」

ベルガ「えっ、まさかヘクセンハウスの言っていた兄か?」

ヘクセンハウス元帥「ああ、恐らく私の兄、シュトゥルーデルだ。」

プファンクーヘン元帥「全く、来るのがおせえよ。でも助かったよ。」

芙弓「ベル、ありがとう。」

ベルガ「べっ、別に芙弓のためなんかじゃないんだからねっ。」

無事にメルヘンランドのオーギュスト港に着いたベルガたちは、

ギルドカフェで待っていたシュトゥルーデルと会ったのである。

ベルガ「ふう、やっと帰ってきた。あっ、もしかして君がシュトゥルーデルか?」

シュトゥルーデル元帥「そうだ。プファンクーヘンの奴が駆逐艦4隻だけでジパングの領海を通過したもんだから、帰りが遅かったら援軍に来てくれと言われて来てみれば、案の定ジパングの戦艦部隊に足止めされてたから、スクラップにしてやった。」

ヘクセンハウス元帥「兄貴は相変わらずだな。」

シュトゥルーデル元帥「お前もな。」

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三低男子の婚活事情 7ページ「姉妹たちのエスケープ大作戦」

2018年03月04日 | 三低男子の婚活事情
ベルガたちは無事に事件を解決し、明歩を救う事に成功し、

ギルドカフェに戻ったが、そこには芙弓たちがいたのである。

ベルガ「えっ、どういう事?」

由実「初めまして、冬美由実です。夜分遅くにすみません。実は私、今年で40歳を迎えるんです。それまでに結婚を決めないと、婚活法によって強制収容所へ送られてしまうんです。婚活パーティでは全く相手にされず、お見合いも全てお断りされてしまって、政府からは結婚の催促まで。それでもう迷惑になるのを承知であなたにお願いする事になったのです。確か婚活女子たちを助けて回っているとか。」

ベルガ「婚活法が始まってから、婚活女子たちから依頼が来るようになったんだよね。利益は以前より出たけど正直複雑だよ。クエストが多いという事は、困った人が増えたという事だからね。」

芙弓「それで私の勧めで、ベルに相談しに行こうと思ってメルヘンランドへ行ったら、ジパング警察に職務質問されて、お姉ちゃんの年齢を知るや否や逃亡を疑われて捕まりそうになったんだけど、この人たちに助けてもらったの。」

ベルガ「そうだったのか。」

ヘクセンハウス元帥「それで、ベルにお見合いをしてほしい理由は何だ?」

芙弓「お姉ちゃん、婚活イベントに行こうとしても、年齢制限でどこからも断られるようになって、お姉ちゃんを好きになりそうな年齢層の人は、もう結婚を決めているか、強制収容所へ送られてるかで、今週中にお見合いする相手を決めないと、お姉ちゃんも危ないの。」

由実「ただ、これでも延命処置に過ぎません。やはり偽装婚をするしかないのでしょうけど。」

ベルガ「偽装婚?」

由実「婚活法から逃れるために、無作為に選んだ相手と結婚して、養子を持つ事を言います。私はもう子供を産める体ではないので、偽装婚を考えているのですが、なかなかお相手が見つからなくて。」

ベルガ「まあ、お見合いくらいなら別に良いよ。それよりも、引き渡しの件だな。これで国家社会主義帝国労働者党も、今頃はメルヘンランドが逃亡の手助けをしている事を嗅ぎつけてるだろうな。」

ザッハトルテ中佐「僕が出しゃばったばっかりに。ベル、ごめんね。」

ベルガ「君は1人の命を救った。むしろファインプレーだ。カトルカールもよくやってくれた。由実さんは人道上の理由により、しばらくはメルヘンランドが保護する。ジパングに返す際にも、奴らが手出しできないように釘を打っておこう。」

カトルカール大将「お役に立てて何よりです。」

由実「ベルガさん、ありがとうございます。」

ベルガ「良いんだ。由実さん、お見合いは今度の日曜日で良いかな?それなら僕も婚活イベントに行かずに済むし。」

由実「はい。それで構いません。」

それから芙弓はすぐにジパングに帰る事となり、

あっという間に日曜日を迎えたのである。

ベルガ「お見合いとは言っても、プロフィールカードを交換してじっくり語るだけだよね。」

由実「はい。ただ・・・・カップリングの方は無理ですよね?」

ベルガ「うん。そうだね。でもメルヘンランドが保護している人たちの中には、偽装婚を望む人たちもいるから、偽装婚してしばらくしてからジパングに返す事にするよ。じゃあこの中から選んで。」

由実「何故全員女性なんですか?」

ベルガ「だって由実さん、同性愛者でしょ?」

由実「えっ・・・・いつからそれを?」

ベルガ「数日前にギルドカフェで会った時からだよ。婚活を必死でやっている割には、女子との会話が圧倒的に多く、男子との会話量があまりにも少なすぎる。あの時の君も、リコ、女王陛下、キルシュトルテ、バウムクーヘンとばかり話していた。それに数日前の服も今日の服も、男子ウケより女子ウケを想定したデザイン。しかし男子とは普通に話せていた事から男性恐怖症ではない。そうだろ?」

由実「はい。でもそれだけじゃ、特定はできないと思いますが。」

ベルガ「美人なのに結婚できない高齢女子は、高望みのしすぎか、性格に癖のある人か、同性愛者のどれかだが、由実さんは偽装婚を考えている事から高望みをするタイプではない。性格にも特別悪い癖があるわけでもない。つまり同性愛者。」

由実「芙弓から人を見ただけで人生が分かる人がいると聞いていましたが、あなたの事だったのですね。そうです。私は女子しか好きになれないんです。ベルガさんとのお見合いをお願いしたのもそのためです。」

ベルガ「僕、男なんだけど。」

由実「えっ、そうなんですか?すみません。」

ベルガ「良いんだ。女子と間違われるのはいつもの事だから。この前の芙弓との会話から察するに、芙弓は由実さんの事は何も知らないね?」

由実「はい。家族にも内緒にしてきたんですけど、話す勇気がなくて。」

ベルガ「メルヘンランド王国では、同性婚も重婚も事実婚も認められてるから、女子同士で偽装婚してからジパングに戻ったらどう?」

由実「そうですね。ベルガさん、今日はありがとうございました。」

ベルガ「何かあったらまた連絡してね。」

由実「はい。分かりました。」

こうしてベルガと由実のお見合いは終わった。

しかしベルガの脳裏には嫌な予感しかなかった。

ベルガ「というわけで、しばらくは由実さんもアウグストで過ごす事になったんだよ。」

ヘクセンハウス元帥「そうか。でもまさか、お前の人生で最初のお見合い相手が女子の同性愛者とはな。そりゃカップリングできないわけだ。」

ベルガ「ちくしょう。ていうかそもそも僕の一回り年上だし、人生観合わなさそうだもん。」

リコラ「お兄ちゃん、ザッハトルテが来てるよ。」

メルヘンランド女王「このごろずっと外が騒がしいぞ。一体どうしたというのだ?」

ベルガ「メールで見たけど、黒杉政次がメルヘンランドへ訪問してくるみたいだよ。騒ぎはそのせいかも。」

ザッハトルテ中佐「そうなんだよ。噂によれば数日前の騒動で婚活法に干渉して、本来強制収容所へ行くはずの人たちが、アウグストで保護されている事がばれて、本人が直々に話し合いをしたいそうなんだ。」

ベルガ「僕が行くよ。確か来るのは明日だよね?」

ザッハトルテ中佐「うん。気をつけてね。また戦争にならないと良いけど。」

そして翌日になり、ジパング帝国の総理大臣である黒杉政次が、

アウグストの元老院会議室までやってきて、ベルガと対面した。

政次「君がベルガ・オーガスト・ロートリンゲンか。この前、私を脅してきた挙句、息子の婚約者候補まで奪ったのは君だね。調べてみたが、メルヘンランド王国の元老院議員をしているそうじゃないか。」

ベルガ「前置きはいい。ここに来たって事は何か用があるんだろ?婚活法対象者の引き渡しとか。」

政次「察しが良いな。ならば話が早い。婚活法の違反者と、期限切れの子供製造機たちを返してもらおうか。」

ベルガ「断る。殺されるのが目に見えてるってのに、返すわけがないだろ。」

政次「平和条約に違反する事になるぞ。」

ベルガ「人道上、何の問題もない。ていうかお前が勝手に婚活法を平和条約に入れたせいだろうが。」

政次「だが法案はメルヘンランドも承認済みだ。平和条約は国際条約の1つ。国際条約は条約加盟国共通の法律として実行しなければならない。破れば他の国を全て敵に回す事になるぞ。」

ベルガ「それでも良い。既にナニワ共和国もツンドラ公国も婚活法の一部を拒否している。」

政次「また帝国自衛隊をここへ送ろうか?国を滅ぼしてから力ずくで返してもらう方法もあるんだぞ。」

ベルガ「それはできないはずだ。この前の防衛戦争だけで数回は侵攻したのに、大勢死者を出して全く成果なしだった。いくらお前でも、国会の承認を得る事は困難を極めるはずだ。帝国自衛隊も、連敗し続けてる相手をまた攻め込みたいとは思わないだろうし。」

政次「いずれにせよ、婚活法を守らないようなら、ただでは済まないと思え。(なるほど。まだ青二才だと思っていたが、この程度のはったりはお見通しか。)」

ベルガ「他人の事より、自分の心配をしたらどうだ?」

政次「どういう意味だ?」

ベルガ「息子には家出され、妻には実家に帰られてるだろ?婚活法の創設者が家族と不仲なのはさすがにまずいと思うけどね。」

政次「・・・・まさか側近を買収したのか?」

ベルガ「そんな余裕が僕にあるわけないだろ。髭の剃り残しがある。指摘してくれる家族がいない証拠だ。ネクタイのがさつな着用も、普段は妻にネクタイを着用してもらっているが、今日もいないために自分で着用したからだ。僕が最後に黒杉政吾に会った時、あいつは不動産屋から出てきた。家を探しているからだ。大方僕が指示したメールを見て息子を問い詰め、昔の悪行に激怒して追い出したんだろ?」

政次「君は・・・・まるで魔法使いだな。」

ベルガ「そんな大層なもんじゃないさ。一応メルヘンランドには魔法使いがいるけど僕はそうじゃない。魔法兵器がある限りメルヘンランドを侵略するのは不可能と思え。」

政次「君のせいで妻も子供も家を出るハメになった。私は息子が元同級生の自殺に関わっていた事を知り、息子を追い出した。妻は息子の追い出しに反対したが、私が反対を押し切ったために、妻も実家に帰ってしまった。この借りはきっちり返さないとな。」

ベルガ「それはこっちの台詞だ。昔、黒杉内閣率いる帝国自衛隊が一時的にメルヘンランドの一部を占領した時、そこにあった民族衣装専門店が潰れて、そこに黒杉財閥のオフィスビルが建った事は覚えてるか?」

政次「民族衣装専門店ねぇ。あー、確か、領土を併合した時に、ジパング領になったのにまだメルヘンランドの民族衣装を販売しているのが目障りだったから、強引に買収して潰した事がある。そうか、君はそこの息子か。」

ベルガ「やっと思い出したか。僕の親は店を潰された後、僕をメルヘンランドへ逃がして捕まった。釈放後に食い繋ごうとしたが、生活保護を断られてそのまま餓死した。再び領土を取り返した時にはもう手遅れだった。」

政次「まるで私が殺したかのような言い草だな。まあいい、今回のところは見逃してやるが、今度また私の邪魔をするようなら、地獄を見る事になるぞ。警告はしたからな。」

2人きりの会談が終わると黒杉政次はジパングへと帰国した。

ベルガは嫌な予感を感じつつギルドカフェへと戻っていった。

ベルガ「黒杉政次の家族関係の分断には成功した。だが奴も余力を隠し持っている。油断は禁物だ。(何か重大な事を見落としている気がする。このもやもやは一体何だ。)」

ヘクセンハウス元帥「婚活法違反者を各地で保護している事がニュースになって、婚活法違反者の取り締まりが強化される事になったらしい。」

ベルガ「あの男も必死だな。出生率はむしろ下がってるってのに。」

ヘクセンハウス元帥「そういえば、婚活法違反者の家族とかってどうなるんだろうな。」

ベルガ「そりゃ黒杉政次の事だから、婚活法違反者の関係者にも制裁を下すに・・・・しまった。芙弓は今ジパングにいる。芙弓が危ないっ。」

ヘクセンハウス元帥「お前ずっと前から嫌な予感がするって言ってたよな?まさかこの事なんじゃ。」

ベルガ「ああ、何も起こらないと良いけどな。」

由実「ベルガさん、大変なんです。芙弓が今、ジパングの警察に追われているみたいなんです。ベルガさん、どうか妹を助けてください。お願いします。」

ヘクセンハウス元帥「うん、知ってた。」

ベルガ「何でいつもこんな事に・・・・分かった。行くぞ、ヘクセンハウス。」

ヘクセンハウス元帥「ああ、じゃあ私たちは行ってくるぜ。」

リコラ「お兄ちゃん、最近ずっと出かけてばかりだけど、仕方ないね。」

ベルガ「リコ、悪いけどまた留守番頼むわ。女王陛下は庭の草むしりしてて。」

メルヘンランド女王「分かったぞ。」

由実「(えっ・・・・女王陛下の扱い。)」

そしてベルガたちはすぐさまジパングへと向かったのである。

芙弓の家に行ったが誰もおらず、鍵が開いていたのである。

ベルガ「芙弓がいない。厄介だな。出かけてからかなり時間が経ってる。」

ヘクセンハウス元帥「何故分かる?」

ベルガ「ベッドの床が冷たくなってる。」

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