社会不適合者エスティのブログ

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三低男子の婚活事情 29ページ「束の間のテーマパーク」

2018年08月26日 | 三低男子の婚活事情
ベルガたちはザッハの店の騒動を解決して借金まで返済した。

その後フォレノワール巡査部長がギルドカフェへとやってきたが。

アドルフ「そうだよ。悪いか?」

ベルガ「悪くはないさ。」

フォレノワール巡査部長「私はまだあなたを許したわけじゃありません。あなたがフィガロから聞いたという武器流出の情報を元に捜査をしているだけなのですからね。」

ヘクセンハウス元帥「嘘じゃないだろうな?」

アドルフ「嘘じゃねえよ。警察ばかりか元老院すら気づいてないのはびっくりだよ。」

ベルガ「あながち嘘とも言い切れないと思うぞ。黒杉財閥が帝国自衛隊を早い段階で立て直せたのは武器流出の可能性も否定はできないからな。メルヘンランドの武器を密輸して立て直したというならあの状況にも説明がつく。」

アドルフ「お前、俺の事を疑わないのか?」

ベルガ「僕は自分の価値観にさえ疑いの姿勢を持っている。だから他人の言う事はなおさら疑うさ。でも君が嘘を吐いているとはとても思えないんだ。じゃなきゃ彼女への罪滅ぼしにならないからな。」

アドルフ「変わってんなー。」

ベルガ「お互い様だ。」

ヘクセンハウス元帥「ていうか何で強盗なんて考えたんだ?」

アドルフ「それは・・・・。」

ベルガ「貧困かつ激務の状況から脱出を図りたかったんだろう。警察は僕らが思ってる以上に忙しい上に給料も安いからな。リターンが少ないんじゃ強盗もしたくなるわな。」

アドルフ「俺はずっと貧困生活を強いられてきたんだよ。ベーシックインカムのおかげで何とかなったけど、それでも俺が受けてきた仕打ちは酷としか言いようがなかった。それなのにペンタメローネは楽しそうに高級なお菓子を作ってるのが気に入らなかったんだよ。警察だって成績が悪くていつクビになってもおかしくなかった。だから失う物は何もなかったんだよ。」

フォレノワール巡査部長「あなたねえ。」

リコラ「メルヘンランドは公務員であってもクビがありますからね。」

ベルガ「どこの職人だって最初から楽しく物作りをしている人なんていないよ。誰だって最初は躓くしスフレだって物凄い苦労を重ねてあの技を習得したんだ。彼女の手の平を見たか?」

アドルフ「見てねえよ。」

ベルガ「僕が見たスフレの手は、女子の手とは思えないほどボロボロだったぞ。何度も悔しい思いをして技術を積み重ねてきた証拠だ。無難に生きてる奴なんていないぞ。それとノワールが何故仕事ができるのに出世できないか知ってるか?」

アドルフ「そんなの上司が手柄を横取りしてるからに決まってんだろ。」

ベルガ「お前は何も見てないな。ノワールは自分の手柄を成績の悪い人に譲る事で部下のクビを防いでたんだ。だからずっと巡査部長止まりだったんだ。彼女はあんたが警察としての教訓が身につくまでずっと待っててくれたんだぞ。」

アドルフ「・・・・悪い事しちまったな。」

フォレノワール巡査部長「分かれば良いんですよ。それに出世なんてしたら現場に出られなくなりますから。」

メルヘンランド女王「済んだ事は悔やんでも仕方あるまい。これからどうするかだ。」

アドルフ「女王陛下。」

メルヘンランド女王「アドルフよ、成すべき事を成すのだ。世のため、人のためにな。」

アドルフ「かしこまりました、女王陛下。」

それから数日が経過し、ベルガはキルシュを連れて、

ネズミーランドへ来園し、楽しんでいたのである。

キルシュトルテ大佐「ベルがネズミーランドに誘ってくれるなんて珍しいねー。」

ベルガ「誘ってないけど。この前事件解決に協力してくれた借りを返しただけだよ。」

キルシュトルテ大佐「そんなの気にしなくて良いのにー。私とダーリンの仲でしょ?」

ベルガ「まるで恋人だな。」

キルシュトルテ大佐「私はずっと恋人だと思ってるよ。ベルは恋愛に対して他人事すぎるよー。」

ヘクセンハウス元帥「ところでさっきからいるその子は誰なんだ?」

キルシュトルテ大佐「この子はタルトレット。私の妹で異母姉妹なの。」

タルトレット「タルトレット・バルト。よろしくね。私の事はタルトって呼んでね。」

ベルガ「僕はベルガ・オーガスト・ロートリンゲン。こっちは相棒のヘクセンハウスだ。僕の事はベルと呼んでくれ。タルトはキルシュに誘われて来たの?」

タルトレット「うん、お姉ちゃんって会う度にベルの話ばっかりするんだよ。」

キルシュトルテ大佐「そりゃそうだよ。私のダーリンだもん。」

タルトレット「だからお姉ちゃんの彼氏がどんな人か1度見ておこうと思ったの。」

ベルガ「なるほどね。君たちの父親は2人の妻と結婚してそれぞれキルシュとタルトを生んだ。だが妻同士の仲が悪いせいで別居する事になり、キルシュは父親と最初の妻に引き取られ、タルトは2番目の妻に引き取られた。タルトは養育費を貰ってはいるが必要最低限の額だ。しかもいじめを受けて引きこもりになった。だからキルシュは君を外へ連れ出そうと思って誘ったんじゃないかな。」

いつもではなく会う度にと言っていた。 →同居しておらず妻同士が別居している。

キルシュとは名字が異なっている。   →タルトは2番目の妻の子として育った。

タルトの靴は中流家庭仕様の商品。   →必要最低限の養育費を貰っている。

常に卑屈な表情で外に慣れていない。  →いじめが原因で引きこもりになった。

タルトレット「お姉ちゃん、私の事話したの?」

キルシュトルテ大佐「話してないよ。これが私のダーリンなの。人を見ただけで人生が分かっちゃう。」

タルトレット「それって怖くない?」

キルシュトルテ大佐「別に怖くないよ。ベルは人の心までは分からないから。それに相手の過去を知ったところで、人を脅すような事はしないから大丈夫だよ。」

タルトレット「信頼してるんだね。」

ベルガ「僕が分かるのは生活習慣と癖と趣味くらいだけどね。」

ヘクセンハウス元帥「それだけでも十分なんだよなー。」

真由「あっ、ベルガさん。僕の事覚えてますか?」

ベルガ「うん、真由ちゃんだっけ。」

真由「はい。今日は休みなので久々に遊びに来てたんですよ。」

ベルガ「真由ちゃんに貰ったチケットで遊びに来たよ。ていうか普段ここで働いてるのに休みの日もここなんだね。」

真由「何でここが僕の職場だって分かったんですか?」

ベルガ「楽しみで来ているがパンフレットを持っていない。地図がなくても道が分かるからだ。つまり君はここに通いづめのネズミー通だ。ネズミー通で平日にも休日にも気軽に来れる場所はここしかない。以前の婚活イベントで職業はテーマパークスタッフだと言っていた。結論、君はここのスタッフだ。」

真由「凄い、僕がネズミー通なのを見抜かれたのは初めてですよ。」

ベルガ「僕もネズミー映画とかよく見るよ。誰かとカップリングしたの?」

真由「はい。初めてできた彼女ですから、大事にしたいです。この人たちは?」

ベルガ「こいつは相棒のヘクセンハウスで、彼女がキルシュトルテで、そっちがタルトレット。」

真由「ベルガさんにも恋人いたんですね。ネズミーランドはデートには最適の場所ですから、楽しんで行ってくださいね。」

3人「はーい。」

真由「あの、ベルガさん。実は相談したい事があるんですけど、後で時間を頂いても良いですか?」

ベルガ「うん、それなら解散してからで良いかな?」

真由「はい。じゃあメールで時間と場所を伝えておきますね。」

ベルガ「分かった。」

タルトレット「この前動画でベルの活躍見てたよ。あんなに奇抜なコーヒー初めて見たなー。」

ベルガ「シグネチャービバレッジの事かな?」

タルトレット「うん、私はあの動画を見て将来はバリスタになりたいって思ったの。でもお母さんからは大学に行ってほしいって言われてるの。勉強は全くできないわけじゃないけど、正直学校には行きたくないし学歴が高いと給料も上がるとは言っても、やりたい事もできない人生なんて送りたくないの。」

ベルガ「なるほど、君は国境私立の学校に通っていたが、赤毛である事を理由にいじめられて引きこもりになったわけだね。」

タルトレット「えっ、何で国境私立の学校だって分かったの?」

ベルガ「タルトにいじめられる原因があるとすれば外見だ。今時赤毛である事を理由にいじめたり、地毛証明書を出させているのはジパングの学校くらいだ。他の同級生がほとんど黒髪なら自動的に目立つからね。どうしても大学へ行ってほしいなら転校させてほしいと親に言ってみると良いよ。メルヘンランドの学校ならしょうもない理由でいじめは発生しないし、自由時間も多いから学校へ行きながら好きな事に没頭できるよ。」

タルトレット「メルヘンランドの学校に転校すれば解決なんだね。分かった。ベルに相談して良かった。」

ベルガ「べっ、別にタルトのためなんかじゃないんだからねっ。」

真由「タルトさんは高校生なんですか?」

タルトレット「うん、私はまだ15歳だけど高校3年生だよ。メルヘンランドには飛び級があるからね。」

ベルガ「ジパングの色が強い学校じゃ自由時間なんてほとんどないし、将来役に立たないテスト勉強ばっかりやらされるから、やりたい事があってもなかなかできないし、何かやろうとしても変に公平意識が強いせいで足の引っ張り合いになっちゃうんだよねー。あんな蟻地獄みたいな所に居座るくらいなら逃げるのが一番だよ。」

ヘクセンハウス元帥「ベルは学校アレルギーだもんな。」

キルシュトルテ大佐「タルトがそんな事を悩んでたなんて知らなかったなー。あたしは小さい時からパティシエになりたかったし、ハッキングも得意だったから10歳の時に飛び級で小学校を卒業してフェアリーテイルと王国空軍情報科に入ったけど、タルトも自由になりたかったんだね。」

タルトレット「うん、私はお姉ちゃんみたいに裕福じゃないから夢なんて持っちゃいけないって思ってた。でもそんな事ないんだよね?」

ベルガ「もちろんだよ。何もしなくても良いしやりたい事があるなら没頭すれば良いし逃げたい時は逃げて良い。人は生まれに関係なく等しく自由であるべきだ。」

タルトレット「ベル・・・・ありがとう。何でお姉ちゃんがベルを好きなのかが分かった。ベル、婚活法が終わったら私ともつき合ってほしい。結婚促進制度を廃止してからつき合うのも変だけど。」

ベルガ「とは言ってもまだ15歳だし、婚活法が終わった時点でまだ君が僕の事を好きでいてくれたら考えるよ。」

タルトレット「うん、約束だからねっ。こんなに面白い人をお姉ちゃんだけが独占するなんてもったいないよ。」

真由「そういえば婚活法を廃止するまでは、誰ともつき合わないって言ってましたね。」

ベルガ「今結婚しても、一緒にいられる時間がないからね。」

それからベルガたちは時間も現実も忘れてネズミーランドの、

アトラクションを回りあっという間に時間が過ぎていった。

その後ベルガたちはネズミーランド閉園後に真由の家に行き。

キルシュとタルトとはひとまず解散する事になった。

ベルガ「それで相談というのは?」

真由「実は親の意向でお見合いをさせられる事になったんですけど、彼女ができたって言っても聞く耳を全く持たないんですよ。」

ベルガ「なるほど、それでそのお見合いを避ける方法を教えてほしいという事か?」

真由「お見合い自体はもう決まってるので中止にはできませんけど、僕としては相手のプライドを傷つけずに穏便にお断りしたいんです。でもお見合いという事は、相手は僕に彼女がいないと思っているという事なんですよ。」

ヘクセンハウス元帥「その場で真由ちゃんに彼女がいる事がばれたら一巻の終わりだな。」

真由「そうなんですよ。しかも相手があの黒杉財閥令嬢の、黒井政子さんなんですよ。」

ベルガ「黒井政子だと。」

ヘクセンハウス元帥「知ってるのか?」

ベルガ「黒井政子は黒杉政次の姪にあたり、黒杉政次の姉である黒井政美の娘だ。別名、鋼鉄の女。黒杉グループの専務で、あの女に目をつけられたら人だろうが企業だろうが次の日には潰されるという噂だ。」

ヘクセンハウス元帥「あの財閥にまだ家族がいたのかよ。」

29ページ目終わり

三低男子の婚活事情 28ページ「罪深きジェラシーと悪意ある投資」

2018年08月19日 | 三低男子の婚活事情
ベルガたちは裁縫がきっかけでザッハの店を盛り返す事に成功するが、

そこにゼノが現れて黒杉財閥による資金援助が明らかとなったのである。

ベルガ「ただの嫌味じゃない。あれは最終警告だ。」

ザッハトルテ中佐「最終警告だったら何で僕をかばったりしたの?取引に応じていればベルの店は無事で済んだのに。」

ベルガ「何言ってんだよ。ザッハの無事よりも大事な店なんて、僕は持ってないよ。」

ザッハトルテ中佐「ベル・・・・んんっ・・・・ちゅっちゅっ。」

ベルガ「んっ、ちゅっ。」

アンナトルテ「ちょっと、何してんの?」

ヘクセンハウス元帥「おいこら、キスをしながら胸を揉みしだくな。」

ベルガ「あはは、ザッハって意外とおっぱい大きいんだね。」

ザッハトルテ中佐「男が寄って来なくて済むから、ずっと小さく見せてたんだよ。それに僕はカッコ良いヒーローみたいな女子を目指してるのに、胸が大きかったら変でしょ?」

アンナトルテ「それ嫌味?」

ザッハトルテ中佐「嫌味じゃないよ。勝手に大きくなっていく胸が本当に嫌だったんだよ。」

ベルガ「あれっ、フランツさんは?」

ヘクセンハウス元帥「フランツさんなら、ゼノが来る前に部屋に戻ったぞ。」

アンナトルテ「ずっと裁縫ばっかりやってたもんね。」

ベルガ「(それよりも奴らの本当の狙いまでは分からず仕舞いだ。嫌な予感がする。)ザッハ、何かあったらすぐに伝えてね。」

ザッハトルテ中佐「うん、じゃあね。」

ベルガはギルドカフェに戻り一息ついたが翌日になると、

彼の嫌な予感が的中してザッハの店にクレームが殺到した。

ベルガ「ザッハ、その話は本当か?」

ザッハトルテ中佐「うん、メルヘンファームの牛乳がない事に対してクレームを言ってくる客が出てきて。」

ベルガ「その噂が広まって客が来なくなったと?」

ザッハトルテ中佐「うん、僕がメルヘンファームの牛乳を使っていない事を客に伝えるのをすっかり忘れてて、それでこうなっちゃったんだ。」

男性クレーマー「おい、俺たちは一流のグラシエがメルヘンファームの牛乳を使ったアイスを作ってるのを期待して来てたんだぞ。これじゃ詐欺じゃねえか。料金返せよ。」

ザッハトルテ中佐「メルヘンファームの牛乳は今売り切れてて買えなかったんだ。でもその分値段は下げたよ。」

女性クレーマー「そんなアイスを売っておいて服まで要求するなんて、馬鹿げた店ね。」

ザッハトルテ中佐「服は制服にかかる経費を浮かせるために始めただけなんだよ。無理にとは言ってないよ。」

男性クレーマー「聞いたぞ。メルヘンファームの牛乳を買えなかったから、代わりに劣化した牛乳を使ってるとな。どうりでいつもと違う味がしたわけだぜ。」

ザッハトルテ中佐「そんな事してないよ。劣化した牛乳なんて職人の恥だよ。僕はそんな事絶対してない。」

女性クレーマー「じゃあどこの牛乳を使ってるの?」

ザッハトルテ中佐「ガリアンのドルボー牛乳だけど、ここの牛乳もそれなりに高級品だよ。」

男性クレーマー「嘘を吐くなっ。そんなのどうにでも偽造できるだろうが。」

ザッハトルテ中佐「そんなっ、僕、そんな事・・・・やってないよ。」

ベルガ「その情報は誰から聞いたんだ?」

男性クレーマー「知らねえよ。掲示板に書いてあったんだよ。アレッサンドリアのアイスは劣化した牛乳を使ったから値段が安くなって、元を取るために服を客に提供させるサービスを始めたってな。」

ベルガ「どこのサイトだ?」

男性クレーマー「ここだよ。メルヘンランドの落ちこぼれグラシエを語るスレに書いてあるだろ?どうせ店が潰れそうだから、こんな卑怯な事を始めたんだろ?ちょっ、何だよ。」

ヘクセンハウス元帥「おい、なに胸ぐら掴んでんだ。止めろって。」

ベルガ「彼女はそんな事をする奴じゃない。ザッハは誰よりも正義感が強くて不正を嫌う性分なんだ。もし彼女の言い分が本当だったら、彼女に謝罪しろ。」

男性クレーマー「何だよどいつもこいつも、二度と来るかこんな店。」

女性クレーマー「そうよそうよ。」

ベルガ「帰っちゃったか。これ以上騒動が大きくなる前に犯人を捜さないとな。」

ザッハトルテ中佐「ベル・・・・どうしよう。」

ベルガ「ザッハはアンナとフランツさんと通常営業に戻るんだ。僕は犯人を捜す。キルシュに頼んでこの掲示板を作った奴を特定してもらおう。大方見当はついているけどな。」

ヘクセンハウス元帥「まさかゼノか?」

ベルガ「いや、ゼノはザッハの過去を知らない。ザッハが落ちこぼれていた時を知っている人は限られている。」

ヘクセンハウス元帥「じゃあ、ベルの元同級生の中に犯人がいるってのか?」

ベルガ「正解。犯人はザッハの才能に嫉妬し彼女の店を潰す事で得をする人物で、なおかつゼノの会社を儲けさせる事で利益を上げられて、メルヘンランドの事情にも詳しい人物だ。」

ヘクセンハウス元帥「という事は?」

ベルガ「ああ、あいつに間違いない。まだ護衛をする体力は残ってるか?」

ヘクセンハウス元帥「もちろんだぜ。」

ベルガ「キルシュからメールが来た。流石は空軍のエースハッカーだ。仕事が早いな。ご丁寧に犯人の現在地まで特定してくれたよ。」

ヘクセンハウス元帥「またキルシュの世話になっちゃったな。」

ベルガ「今度ネズミーランドにでも連れて行ってやるか。裁縫好き限定編で出会ったテーマパークスタッフの人にチケット貰っちゃったし。」

ヘクセンハウス元帥「それで、今からどこに行くんだ?」

ベルガ「ジパングだ。この掲示板が消される前に犯人と話をつける。」

ベルガたちはジパングのネオトーキョーシティへと向かい、

マンションの前へまで行って犯人の帰りを待っていたのである。

ベルガ「ようやく帰宅か。」

政吾「何故君がここにいるんだい?」

ベルガ「話がある。ちょっとつき合ってもらうよ。」

政吾「僕は忙しいんだ。君とつき合ってる暇はないんだよ。」

ベルガ「わざわざ会社のパソコンからアイスクリームショップの悪口なんか書いて恥ずかしくないのかよ?」

政吾「ど、どういう事かな?」

ヘクセンハウス元帥「分かりやすい反応だな。」

ベルガ「お前がザッハの店を潰す事でデザートホールディングスに儲けさせ、その甘い蜜を吸うのが目的なのは分かっている。お前は黒住の騒動が起きた後、黒杉財閥の社長に就任して事態の収拾を任される事になった。そこでメルヘンランドで勢力を伸ばしているジパングの企業に投資を始める事になった。お前は職人たちを失業に追いやった後、ジパングの企業で雇ってメルヘンランドの市場を飲み込もうとしたんだ。」

政吾「仮にそうだとして、証拠はあるのかい?」

ベルガ「デザートホールディングスは大手ではあるが、最高級の牛乳を独占できるほどの資産はない。つまり誰かが投資したんだ。そこで黒杉財閥の投資先を調べたら、メルヘンランドを拠点にしているジパングの企業全般に多額の投資をしている事が分かった。彼らは投資を受けてから最高級の牛乳を独占し、王国内の職人たちを失業させる事に成功した。こうなるように指示したのはお前だな?」

政吾「さあね。彼らが勝手に判断したのかも。」

ベルガ「今警察がデザートホールディングスを取り調べしている。ゼノ・コンスタンティノポリスが全部お前の仕業だって吐いてくれたよ。」

政吾「なにっ、ゼノが。」

ベルガ「掲示板だって悪口を書いた奴のアドレスとお前の会社にあるパソコンを照合すれば、それが確実な証拠になる。昔家庭科の時間でザッハの作ったアイスが最も評価されたのがよほど気に入らなかったようだな。掲示板に書いてあったんだ。家庭科の時間にザッハが不味いアイスを作っていたという嘘の書き込みがな。つまりあれを書いたのはあの時間にザッハと同じ場所に居合わせて、彼女のアイスを床にぶちまけたお前しか考えられないんだよ。」

政吾「君は相変わらず空気が読めない男だね。」

ベルガ「あいにくだが僕はジパング人じゃないんでね。」

政吾「また僕を脅すつもりかい?」

ベルガ「この情報を全国中にばらまいたとしても、すぐに検閲の対象になるだけだし、こっちとしても大ごとにはしたくない。ザッハの店に賠償金として10万メルヘンを支払えば、デザートホールディングスへの関与と掲示板の消去を見逃してやる。」

政吾「随分と安い賠償金だね。そのくらいのはした金ならいくらでも払ってやるよ。」

ベルガ「じゃあ僕の口座にカード払いしてくれ。僕の口座を経由すれば足はつかないだろ?」

政吾「分かった。でも僕の邪魔をするのはこれっきりにしてくれよ。こっちは君のせいで色々と大変なんだからね。」

ベルガ「知った事か。どうせ他の幹部たちと後継者争いでもしてるんだろ?もう二度と僕の仲間に手を出すな。」

政吾「減らず口をたたけるのも今の内だ。じゃあ僕はこれで。」

ベルガはすぐに帰国してウィトゲンシュタイン家へと行き、

ザッハも連れて彼女の店の借金を全て返済したのである。

ベルガ「10万メルヘンをウィトゲンシュタイン家の法人口座に振り込んどいたから、これでザッハの店の借金はちゃらにしてくれ。」

ヘレントルテ准尉「ええ、確かに受け取ったわ。ザッハ、もう借金は返さなくて結構よ。」

ザッハトルテ中佐「う、うん。ベル、本当に良いの?」

ベルガ「ああ、気にするな。僕と君の仲だろ?」

ザッハトルテ中佐「うん、ありがとう。あの後掲示板も消えて店も何とか評判を取り戻したよ。ベルが言った通りに輸入先を明示するようになってからは、あの悪評が嘘のように消えたんだよ。」

ヘレントルテ准尉「でもこんな大金よく集めたわね。何か闇ルートでも使ったのかしら。」

ベルガ「黒杉財閥と交渉して賠償金として10万メルヘン払ってもらったんだよ。奴らがザッハの店を潰そうとしていたから、証拠を掴んだ上でぶんどってやった。金額が多すぎても今度は奴らから恐喝で訴えられそうだし、だから借金と同じ額だけ貰ったんだ。奴らにとっては大した事のない金額だからな。」

ヘクセンハウス元帥「ザッハの店の危機を救っただけじゃなく、借金まで全部返すとはな。」

ザッハトルテ中佐「ベルには感謝してもしきれないよ。大好きっ。」

ベルガ「ちょっと、当たってるってば。残るはデザートホールディングスだな。」

ヘクセンハウス元帥「あいつらは警察の取り調べを受けてるんじゃないのか?」

ベルガ「あれは嘘だ。白状したとでも言わないと正直に認めないだろうからな。」

ヘクセンハウス元帥「お前が敵じゃなくて良かったぜ。」

ヘレントルテ准尉「デザートホールディングスなら、今独占禁止法の疑いで捜査を受けてるわ。」

3人「えっ、マジで?」

ヘレントルテ准尉「全く聞いてなかったのね。」

ベルガ「つまり僕の言い分はあながち嘘とも言い切れないってわけだ。」

その後デザートホールディングスのノアとゼノは独占禁止法により逮捕され、

雇われていた職人たちが次々と独立を果たして元通りになったのである。

ベルガ「フォレノワール、よくやってくれたな。」

フォレノワール巡査部長「当然です。それといい加減ノワールって呼んでください。」

ベルガ「分かったよ。ノワールはそこにいるアドルフと兵器流出の調査をしていた。でも2人だけじゃ分からない事があるから僕に相談しに来たんだろ?」

フォレノワール巡査部長「それを今説明するところだったんですけど。」

ヘクセンハウス元帥「おいおい、何でアドルフがノワールとギルドカフェに来てるんだ?捕まったはずだろ?」

ベルガ「司法取引だよ。罪を軽減する代わりに兵器流出の調査に協力してたんだろ?」

アドルフ「ああ、そうだ。俺の緻密な計画を見破れるくらいだからな。そこでお前を頼る事にしたってわけさ。」

フォレノワール巡査部長「アドルフ、犯罪を美化するのは止めなさい。」

アドルフ「はいはい、分かったよ。」

ベルガ「今はクビになったが例外的にノワールの協力をしているのは彼女に対する罪の意識があるからだろ?ノワールの好きなラベンダーの香水を使ってるくらいだからな。」

アドルフ「そうだよ。悪いか?」

28ページ目終わり

三低男子の婚活事情 27ページ「グラシエたちの氷河期」

2018年08月12日 | 三低男子の婚活事情
ベルガは裁縫好き限定編でザッハと再会するも倒産寸前の、

彼女の店を立て直すために奮闘する事になったのである。

フランツ「これでも昔はアイスと制服をよく作ってたからな。」

ベルガ「そう、じゃあ任せたよ。」

サバサバした女性「ねえ、客全然来てないけど今日って休みなの?」

ザッハトルテ中佐「アンナ、帰ってきてたんだ。ベル、紹介するね。彼女はアンナトルテ・デメル。僕のいとこでここのスタッフなんだ。」

アンナトルテ「ベルガさんでしょ?いつも動画見てたよ。アンナって呼んでね。」

ベルガ「うん、僕の事はベルと呼んでくれ。こっちは相棒のヘクセンハウス。何も知らずに長期休暇でサワイキから帰ってきたところ悪いんだけど、店の再興計画を手伝ってほしい。それと今夢中になっている男の事は諦めた方がいいぞ。」

アンナトルテ「えっ・・・・お姉ちゃん、あたしの事を話したの?」

ザッハトルテ中佐「いやいや、僕も初めて知ったよ。」

ヘクセンハウス元帥「どういう事だよ?」

ベルガ「見れば分かるさ。君は長期休暇でサワイキまで旅行して、そこで出会った男に誘われて指輪を買わされた。寝泊まりはホテルでしばらく遊んでいたが、男に夢中になったまま帰ってきた。違うか?」

ザッハの店の事情を知らない。        →長期休暇で店におらず知らされていなかった。

軽装で日焼けしているが健康的である。    →人気の旅行先であるサワイキ諸島へ旅行していた。

若年だが指輪をつけてメールを気にしている。 →滞在先に男がおり夢中になっている。

繊細な糸くずがシャツのしわについている。  →ホテルのベッドで寝泊まりしていた。

アンナトルテ「違わないけど、諦めろってどういう事?」

ベルガ「君が今夢中になっている男は詐欺師だ。君を騙して財産を取ろうとしている。そのイミテーションは彼が経営する宝石店で買ったんだろ?それこそが奴の手口だ。」

アンナトルテ「イミテーションって、これ偽物なの?」

ベルガ「そうだ。今すぐそいつに、これを調べたらイミテーションだったんだけど、何でこんな物を買わせたの?とメールをして返信がなかったら絶縁しろ。」

フランツ「おいおい、何で偽物って言えるんだ?」

ベルガ「僕は民族衣装を作る時に宝石を使う事もある。だから宝石とイミテーションの違いくらい分かるんだよ。」

アンナトルテ「分かった。そうしてみる。」

ヘクセンハウス元帥「なるほどな、ベルが心配になるわけだ。アンナは相手の言う事を素直に受け入れてしまう性格のようだ。」

ザッハトルテ中佐「アンナは箱入り娘として育てられた事もあって純粋無垢だからね。」

アンナトルテ「それじゃまるであたしが騙されやすいみたいじゃん。」

ヘクセンハウス元帥「実際騙されてるんだよなー。見た目からしてかなり若そうだし、小学生くらいか?」

アンナトルテ「あたし今17歳なんだけど。」

ヘクセンハウス元帥「17歳っ。」

ベルガ「そんな事より、ザッハの店がピンチだから手伝ってほしい。ウィトゲンシュタイン家から通告が来て、今月中に今月分の借金を返すか10万メルヘンを一括で返さないと、土地と店を売らないといけなくなった。」

アンナトルテ「えっ、お姉ちゃん、何でそんな大事な事を言ってくれなったの?」

ザッハトルテ中佐「せっかくの長期休暇を邪魔したくなかったんだよ。それにアンナは経営なんて詳しくないだろ?」

アンナトルテ「あたしの事なんか気にしなくていいのに。それで、あたしはどうすれば良いの?」

ベルガ「ザッハはアイスの製造と新メニューの開発担当。フランツさんは制服の製造といらない服の引き取り担当。アンナは店の宣伝と販売だ。僕はヘクセンハウスと共に材料の買い出しだ。今日は準備が整ってないから営業は無理だけど、明日には営業を再開するぞ。」

ザッハトルテ中佐「買い出しなら生産者から直接買ってるから指定した牧場に行ってよ。場所はこのメルヘンファームっていうところだよ。」

ベルガ「うん、じゃあ行ってくる。」

ベルガたちは指定された牧場へと向かいメルヘンファームへ着いたが、

既に今月分の出荷予定表が埋まっていたために買えず家に帰ったのである。

ベルガ「いつも買っているはずの牛乳が売り切れか。ウィトゲンシュタイン家からの通告といい、アレッサンドリアからのスタッフ引き抜きといい、牛乳の売り切れといい、まるで地域ぐるみでザッハの店を潰そうとしているようだ。」

ヘクセンハウス元帥「やはりデザートホールディングスの仕業か。」

ベルガ「だろうな。不本意だが他の牧場に発注しておいた。メルヘンファームの牛乳は最高級品だ。人気があるとはいえそう簡単に買い占められる代物じゃないぞ。このままじゃまずいな。」

キルシュトルテ大佐「ダーリン、聞いてよ。私この前もデザートホールディングスの人事の人からうちで働かないかって言われたの。でも私は今の店の方が好きだから断ったの。」

バウムクーヘン准将「キルシュもですか?私の所にも来ましたよ。」

ベルガ「そうかっ、そういう事か。」

リコラ「お兄ちゃん、何か分かったの?」

ベルガ「デザートホールディングスは全国中の職人を雇って自社のシェア率を上げようとしているんだ。だから職人の国家資格者が所属する店を乗っとる策を考えたがことごとく失敗。そこで国家資格者が属する店を潰す強行策に出たんだ。」

メルヘンランド女王「そういえば、リコにもデザートホールディングスからの誘いがあったぞ。」

リコラ「私は断ったけどね。」

ベルガ「誘いを断った人の店は今頃ブラックリストに載せられて、最悪潰されるかも。ザッハの店はスタッフの引き抜きに成功した事で客足を減らす事が出来たが、ザッハは誘いを断ったためにあの仕打ちを受けていたんだ。これなら、全ての事実に対して説明がつく。一応警察にも独占禁止法の疑いがあると報告しておいたよ。」

ヘクセンハウス元帥「デザートホールディングスはジパングの会社だよな?だったら黒杉財閥の陰謀かもな。」

ベルガ「ありえなくはないが、金融支配を広げるために奴らがデザートホールディングスに投資をして、その見返りにメルヘンランドの最高級品を買い占めて職人を枯渇させようとしているなら、早めに対策を取った方がよさそうだ。」

数日が経過しベルガたちはザッハの店を手伝っており、

奇抜なアイデアで予想以上に繁盛していたのである。

フランツ「今日も客が次々と押し寄せていて驚いたな。服を提供してもらってアイスを増やすか割り引きにするかを選ばせる楽しみを提供する事で、服の材料を買わなくても服がたくさん手に入った。」

ベルガ「これで服に対して経費を払わずに済んだし、裁縫に使ってもまだ服が余っていたら手作りの服を売ってアイスコーンに変えれば経費を抑えられる。あとは季節を問わず食べたくなるものにアイスインクレープを作ってみた。これなら年中手軽に作って食べられるし、アイスを乗せる事でアイスカップも節約できる。」

ザッハトルテ中佐「少ない予算でここまで盛り返すなんて、やっぱりベルって凄い。」

ベルガ「経営のコツは経費を減らして利益を最大化する事だ。」

アンナトルテ「どうやってこんなの思いついたの?」

ベルガ「裁縫好き限定編の会場で大量に余った服を見て、どうにか活用できないかと思ってこれを思いついたんだ。幸いにもこれからどんどん暑くなるから、客足もかなり増えると思う。悪いけど当分給料は我慢してくれ。早く借金を返したいだろ?」

ザッハトルテ中佐「そうだね。生活ならベーシックインカムで補えるし、無職者処分法に触れない程度の報酬にとどめておくよ。」

フランツ「大した男だ。娘のためにここまでしてくれるとは。ザッハ、良い彼氏を持ったな。」

ベルガ「えっ、彼氏?」

ザッハトルテ中佐「父さん、まだ承認してもらってないよ。僕はその気だけど、なかなか振り向いてもらえないんだよ。」

ベルガ「ザッハ、僕なんかで良いの?」

ザッハトルテ中佐「僕は最初から本気だよ。ベル、僕はベルが好きだ。婚活法が終わったら、僕ともつき合ってほしい。」

ベルガ「ザッハ・・・・僕もザッハが好きだよ。」

ザッハトルテ中佐「ベル・・・・嬉しい。」

アンナトルテ「お姉ちゃんばっかりずるい。あたしともつき合ってほしい。」

ザッハトルテ中佐「男がいたんじゃないの?」

アンナトルテ「ベルが言った通りにメールしたら返信来なかったし、本当に詐欺師だったみたい。あたしはずっとアレッサンドリアのために尽くしてくれているあんたを見て、あたしもベルとつき合いたくなったの。」

フランツ「そうか、アンナもベルとつき合いたくなったか。妹家族には私から言っておこう。ベル、ザッハと一緒にアンナともつき合ってはくれないか?」

ヘクセンハウス元帥「ちょっと待て、アンナはまだ17歳の子供だぞ。」

ベルガ「メルヘンランドじゃ10歳から同意年齢だし労働もできるし自分で判断できる年齢だ。じゃあこうしよう。アンナ、婚活法が終わった時にまだ僕の事を好きでいてくれたら、その時は僕もアンナとの交際を真剣に考える事にする。」

アンナトルテ「うん、あたしずっと待ってるよ。」

ベルガ「僕はもう帰るね。何かあったらまた連絡して。」

ザッハトルテ中佐「うん、ありがとう。じゃあこれ、今回の報酬ね。」

ゼノ「やはりあなたの仕業でしたか。ベルガ・オーガスト・ロートリンゲン。」

ベルガ「ゼノ・コンスタンティノポリス、何でここに?」

ゼノ「あなたがずっと前から私の邪魔をしている事は分かっていましたよ。実はこの前カレンさんの店から帰った後、しばらくウィリアムさんの服に仕掛けた盗聴器で全て聞かせてもらいましたよ。まさかあなたに結婚を阻止されるとは思いもしませんでしたよ。」

ベルガ「どうりで早急に動いてたわけだ。」

ゼノ「ここは1つ取引をしませんか?私の計画に干渉しない代わりに、ギルドカフェに多額の寄付をしましょう。」

ベルガ「あくまで経営者なんだな。」

ゼノ「ええ、今ここであなたに邪魔をされるわけにはいかないのですよ。」

ベルガ「断ると言ったら?」

ゼノ「その時はあなたの店の近くに大型のカフェを建てて、あなたの店から常連客を奪うまでですよ。」

ベルガ「それは楽しみだ。あんたがどれほどのあがきを見せるのかが見ものだ。」

ザッハトルテ中佐「何で僕の店を潰そうとしたの?」

ゼノ「あなたがこの店を継いでから、明らかに我々のアイスクリーム店の売り上げが下がったんですよ。そこで我が社は一度あなたを誘ったはずですが、あなたはそれを無下に断りました。グラシエの国家資格を持っているあなたなら借金を肩代わりした上で高収入を約束しましたのに。」

ザッハトルテ中佐「そんなの嫌だよ。この店は、ばあちゃんが遺してくれた大事な店なんだ。」

ゼノ「どのような店もいずれ衰退期が来るものです。あなたの場合は今が潮時なのです。たとえあなたの代で終わらなかったとしても、次の代で終わるかもしれませんよ。」

ザッハトルテ中佐「それを決めるのは少なくともあんたじゃない。自分の運命は自分で決める。」

ゼノ「そんな減らず口がたたけるのも今の内ですよ。それともう1つ良い事を教えておきましょう。あなた方がここの店を諦めるまでは、メルヘンファームの牛乳は買えないようにしておきますからそのつもりで。」

ベルガ「どうせ黒杉財閥の差し金で動いてるんだろ?あんたのアイスクリーム店はメルヘンファームで取れた牛乳が使われていた。以前系列の店で食べた時にはなかった味だ。デザートチェーン店の全てで高級な牛乳を普及させる余裕がなかったからだ。あんたは黒杉財閥に投資された金でメルヘンファームの牛乳を値上げした上で独占した。違うか?」

ゼノ「以前盗聴で聞かせてもらった時と変わらない鋭い洞察力ですね。やはりあなたは早急に潰しておくべきでした。後々あなたのカフェも潰させていただきます。ではごきげんよう。」

ザッハトルテ中佐「何だよあいつ。そんな事を言うためにわざわざ来たのかよ。嫌味な奴。」

ベルガ「ただの嫌味じゃない。あれは最終警告だ。」

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三低男子の婚活事情 26ページ「裁縫とアイスと制服のカオス」

2018年08月05日 | 三低男子の婚活事情
ベルガたちはブリティアまで裁縫好き限定編の婚活イベントに参加し、

ザッハは実家のアイスクリームショップの心配をしていたのである。

ザッハトルテ中佐「ベル・・・・また頼る事になっちゃったね。」

ベルガ「困った時はお互い様だろ。それにしても婚活法は仕事がピンチな人には全く優しくないな。」

桃子「それはあたしも思うわ。婚活イベント中に患者が死んでしまった事があって、この法律早くなくならないかなって思ったわ。」

真由「僕も婚活法には賛成できないですよ。異性関係は得意ではないので。」

紫苑「私も外に出るのは好きではないので、できれば婚活法は廃止してほしいです。」

ベルガ「そうか、婚活法によって色んな弊害が出てるんだな。僕はメルヘンランドへ戻ったら、まずは婚活法廃止の必要性を訴える事にするよ。黒杉財閥の力が一時的に弱まっているこの時を狙わない手はない。」

ザッハトルテ中佐「ベルはずっと婚活法の廃止を訴えてきたんでしょ?」

ベルガ「うん、今は無職者処分法の廃止も同時に訴えてるけど、ジパングにえこひいきする輩のせいで全く通らないんだ。」

ザッハトルテ中佐「それは問題だね。」

ベルガ「でもみんなの意見を聞いて、婚活法の欠陥を確認できて良かったよ。」

ベルガたちは婚活イベントが終わるとみんなとメアド交換を済ませ、

メルヘンランドへと戻ってきたがザッハの実家の店は閉まっていた。

ザッハトルテ中佐「そんな、何でこんな事に。」

ベルガ「まだ次の決済までは時間があるはずだぞ。」

ヘクセンハウス元帥「とりあえず中に入って事情を聞くか。」

ザッハトルテ中佐「そうだね。入って。」

店長「ザッハ、おかえり。悪いけど店は今週中に閉める事になったんだ。お前も早く就活を始めろ。俺はもう無理だがグラシエの国家資格を持っているお前なら、どこかしら就職先はあるだろう。」

ザッハトルテ中佐「そんなの嫌だよ。僕はずっとこの店で頑張ってきたのに。そんなのってないよ。」

ベルガ「君の親父か?」

ザッハトルテ中佐「うん、僕の父さんでここのスタッフをしているフランツ・クラウディウスだよ。」

フランツ「厳密には、していただけどな。」

ベルガ「僕はベルガ・オーガスト・ロートリンゲン。こっちは相棒のヘクセンハウスだ。僕はザッハの友人で元同級生だったんだ。良ければ事情を説明してくれないか?」

フランツ「昨日ウィトゲンシュタイン家の使用人から通告が届いて。借金を返せないなら今週中に店を閉めてくれと言われたんだ。ここはウィトゲンシュタイン家から買った土地で、この店も昔のウィトゲンシュタイン家からの借金で作った。でもここから少し離れた場所に大きなアイスクリームショップができてからは、うちのスタッフたちが次々と引き抜かれて必然的に売り上げが落ちてしまったんだ。」

ヘクセンハウス元帥「昔のメルヘンランドであれば、失業してもベーシックインカムでやり過ごしてまた事業を始められるが、婚活法と無職者処分法が普及したせいでそれができなくなったのは痛いな。」

ベルガ「借金はいくらなんだ?」

フランツ「借りた当時は20万メルヘンだ。半分は返したが今の売り上げじゃとても返しきれない。だから土地と店を売却する事になった。」

ザッハトルテ中佐「そんな状態なのに何でもっと早く言ってくれなったんだよ?」

フランツ「お前に心配をかけたくなかったんだ。誰よりもこの店が好きだったお前にこんな話はし辛かった。」

ザッハトルテ中佐「ううっ、こんなの嫌だよぉ。」

ヘクセンハウス元帥「これは一度ウィトゲンシュタイン家に相談した方が良いな。」

ベルガ「そうだな。ザッハ、この店を畳むのはまだ早いぞ。存続が決まったら営業を再開してくれよ。ザッハがこの店を守ると言うなら、僕はザッハを守る。」

ザッハトルテ中佐「ベル・・・・僕にできる事があったら何でも言ってね。」

ベルガ「うん、でも今は僕に任せてくれ。」

ベルガたちはウィトゲンシュタイン家へと向かい、

ドボシュとヘレンと議論を交わしていたのである。

ベルガ「これは明らかにジパングの失政による弊害だ。早々に処理しないと国家の職人たちが衰退していくのは時間の問題だ。今こうしている間にも世界のあちこちで婚活法と無職者処分法の被害者が後を絶たないんだ。みんな本当に困ってるんだよ。何とかしてくれないか?」

ドボシュトルタ「そうは言っても少子高齢化とニートの増加を防ぐために、婚活法と無職者処分法を望む勢力も少なくない。元老院は廃止賛成派が多いものの、政治でも戦争でも実績のあるボルゴがジパングを贔屓にしている以上はどうしようもない。」

ベルガ「そんなー。」

ヘレントルテ准尉「ザッハの店については今月まで待つようにお父様に言っておくわ。でも彼らが今月分の借金を返済しなければ容赦なく差し押さえするわよ。残りの借金である10万メルヘンを一括返済するというなら話は別だけど。」

ベルガ「分かった。」

ヘクセンハウス元帥「お前なー、10万メルヘンはそう簡単に用意できる額じゃないぞ。メルヘンランドの平均年収の5倍だぞ。」

ベルガ「僕の店が何故ずっと潰れずに済んでるか知ってるか?」

ヘクセンハウス元帥「余計な人間関係を感じずに済むからだろ。」

ベルガ「そういう事だ。食券制度だから喋らなくても商売が成立する分お互いに気楽だし、こんなカフェは他の店にはないだろ?」

ヘクセンハウス元帥「そうだな。でもザッハの店はどうするんだ?」

ベルガ「まずはザッハの店からスタッフを引き抜いた店に行くぞ。それから店の再興計画を考える。」

ヘクセンハウス元帥「おい、ちょっと待てよ。失礼するぜ。」

ヘレントルテ准尉「ふふっ、仲間のために一心不乱に行動するところ、相変わらずね。」

ドボシュトルタ「全く、社会性が壊滅的な子供だったのに、彼は何故あそこまで他人のために一生懸命になれるのかな?」

ヘレントルテ准尉「分からないの?本来の彼は善人そのもの。普通の人なら他人がどうなろうと知ったこっちゃないと考えるところを助けたいって思える人なのよ。だから彼は自分が困った時にも周りから躊躇なく助けてもらえるし、彼の事を放っておけなくなるのよ。」

ドボシュトルタ「ヘレンもベルの事を放っておけなくなったんだね。」

ヘレントルテ准尉「ええ、だから責任は取ってもらうわ。」

ドボシュトルタ「私も執政官である以上は責任を果たさないとな。今度ボルゴと話し合ってみるよ。」

ベルガたちは大きなアイスクリームショップを訪問し、

色々調べた上でザッハの店へと戻ってきたのである。

ザッハトルテ中佐「何か分かったの?」

ベルガ「ああ、あの店にはかつてのスタッフもいた。この店のやり方をそっくりそのままコピーした上で、ショッピングモール内に設置する事で付加価値を上げてこの店から客を奪った。」

ザッハトルテ中佐「元々うちの店、アレッサンドリアは僕のばあちゃんが独立した時に始めた店で、グラシエの国家資格を持っていた事もあって評判が良かった。母さんもグラシエの国家資格を持っていたけど、ずっと前に病気で死んじゃったんだ。それからは僕がアレッサンドリアの店長を継いだんだけど経営とかやった事なくて、あっという間に赤字になっちゃったんだ。」

ベルガ「それで毎月の借金を返せなくなって、ウィトゲンシュタイン家から通告が来たと。」

フランツ「そうだ。ザッハが後を継いだ直後は俺や他のスタッフが幅を利かせていたが、スタッフの引き抜きが始まってからは経営が一気に傾いてしまったんだ。」

ベルガ「謎は全て解けた。」

ヘクセンハウス元帥「マジかよ。聞かせてくれ。」

ベルガ「アレッサンドリアを潰しにかかってるのはデザートホールディングスだ。」

ザッハトルテ中佐「デザートホールディングスって、確かフェアリーテイルを買収しようとしていた企業だよね?」

ベルガ「そうだ。奴らは国中のスイーツ業界を独占しようとしている。パティシエ路線は一旦諦めてグラシエ路線に切り替えたんだ。ザッハのようにグラシエの国家資格を持っている人は珍しい。それ故奴らにとっては客寄せをする上で邪魔でしかないから、そいつらの店を根こそぎ断つ事で自分たちの会社に就職するように誘導しているんだ。資格を持った人が就職すれば店の質も上がるからね。」

フランツ「俺は奴らに誘導されてたというのか?」

ベルガ「ああ。そもそもザッハの祖母がこの店を始めた時、ウィトゲンシュタイン家から借金をしないといけなかったのは就職よりも先にグラシエの国家資格を取ってしまったからだ。資格を持つ者を雇う場合は賃金が跳ね上がるから誰も雇いたがらない。そして当時のメルヘンランドは人材の流出を防ぐのが方針であったために、資格を持った人は外国での就職を禁止されていた。だからどこにも就職ができず、ベーシックインカムだけでは起業が困難であるために借金せざるを得なかったんだ。」

ザッハトルテ中佐「だからうち借金あったんだ。」

フランツ「妻がこの店を継いだ頃から店は衰退の兆候を見せていた。だから妻は借金を返すために無理をしていたんだ。俺がもっと早く気づいていれば、こんな事にはならなかった。」

ザッハトルテ中佐「僕のせいだ。僕がもっとしっかりしていれば・・・・経営の才能があれば。」

ベルガ「元はと言えば僕がデザートホールディングスの計画を阻止して、路線を切り替えさせたのが原因だ。ザッハ、僕に店の経営を立て直す手伝いをさせてくれ。もちろん依頼料はいらないよ。」

ザッハトルテ中佐「依頼料は払わせてよ。僕もこのままアレッサンドリアを潰したくない。だからベルにお願いするよ。」

ヘクセンハウス元帥「お前そんな事言って大丈夫かよ。大体ギルドカフェはどうするんだよ?」

ベルガ「これもギルドカフェの依頼の内だ。それに僕が他の事をしていても良いように人を雇ったんだから心配ないさ。」

ザッハトルテ中佐「でもどうするの?他のスタッフはみんなデザートホールディングスに行っちゃったのに。」

ベルガ「この宣伝チラシはかなり昔のものだな?」

ザッハトルテ中佐「うん、おばあちゃんがよくこれで近所まで宣伝に行ってたんだ。」

ベルガ「アレッサンドリアがザッハの母親の代から衰退し始めたのは宣伝をしなくなったからだ。ザッハの祖母の代で飽和したリピーターを維持する方針に変えたためだろう。ザッハが婚活イベントで店の宣伝をしていたのは原点回帰のためだろ?」

宣伝チラシが昔の仕様のまま。 →祖母の代までは宣伝していた。

母の代になってから衰退した。 →母が病弱であるため宣伝を廃止。

ザッハトルテ中佐「よくそこまで分かるね。」

ベルガ「かつての僕もそうだったからね。カフェにクエストで報酬を貰えるシステムなんてどこの店もやってなかったから、それでリピーターの固定化に成功したんだ。」

ザッハトルテ中佐「つまり他の店と差別化を図ればリピーターを取り戻せるって事?」

ベルガ「そういう事だ。珍しいものはそれだけで希少価値がある。あとは需要を増やすだけだ。」

ザッハトルテ中佐「アイス以外に何か別の要素を加えれば良いのかな?」

ベルガ「そういう事だ。」

ザッハトルテ中佐「うちはアイスクリームショップだから夏場以外はあんまり客が来ないんだよねー。だから冬場とかでも客が来てくれるものを作れば良いのかな?」

ベルガ「ザッハはファッションデザイナーもやっているだけあって服に経費をかけすぎだ。だから服は客に提供してもらえば良いんだよ。いらない服を提供してくれた客にはアイスを割り引きするかアイスの数を増やすかを選べるサービスを提供するのはどう?」

ザッハトルテ中佐「それ良いね。」

ベルガ「そしてこの店に合った制服をたくさん作って、余りが出たらオークションに出すんだ。好評になればこの制服を着たいがために全国中からグラシエが殺到するかも。」

ザッハトルテ中佐「うん、分かった。早速やってみるよ。」

ベルガ「僕も手伝うよ。」

フランツ「いや、私にやらせてくれ。」

ベルガ「できるの?」

フランツ「これでも昔はアイスと制服をよく作ってたからな。」

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