ベルガたちはザッハの店の騒動を解決して借金まで返済した。
その後フォレノワール巡査部長がギルドカフェへとやってきたが。
アドルフ「そうだよ。悪いか?」
ベルガ「悪くはないさ。」
フォレノワール巡査部長「私はまだあなたを許したわけじゃありません。あなたがフィガロから聞いたという武器流出の情報を元に捜査をしているだけなのですからね。」
ヘクセンハウス元帥「嘘じゃないだろうな?」
アドルフ「嘘じゃねえよ。警察ばかりか元老院すら気づいてないのはびっくりだよ。」
ベルガ「あながち嘘とも言い切れないと思うぞ。黒杉財閥が帝国自衛隊を早い段階で立て直せたのは武器流出の可能性も否定はできないからな。メルヘンランドの武器を密輸して立て直したというならあの状況にも説明がつく。」
アドルフ「お前、俺の事を疑わないのか?」
ベルガ「僕は自分の価値観にさえ疑いの姿勢を持っている。だから他人の言う事はなおさら疑うさ。でも君が嘘を吐いているとはとても思えないんだ。じゃなきゃ彼女への罪滅ぼしにならないからな。」
アドルフ「変わってんなー。」
ベルガ「お互い様だ。」
ヘクセンハウス元帥「ていうか何で強盗なんて考えたんだ?」
アドルフ「それは・・・・。」
ベルガ「貧困かつ激務の状況から脱出を図りたかったんだろう。警察は僕らが思ってる以上に忙しい上に給料も安いからな。リターンが少ないんじゃ強盗もしたくなるわな。」
アドルフ「俺はずっと貧困生活を強いられてきたんだよ。ベーシックインカムのおかげで何とかなったけど、それでも俺が受けてきた仕打ちは酷としか言いようがなかった。それなのにペンタメローネは楽しそうに高級なお菓子を作ってるのが気に入らなかったんだよ。警察だって成績が悪くていつクビになってもおかしくなかった。だから失う物は何もなかったんだよ。」
フォレノワール巡査部長「あなたねえ。」
リコラ「メルヘンランドは公務員であってもクビがありますからね。」
ベルガ「どこの職人だって最初から楽しく物作りをしている人なんていないよ。誰だって最初は躓くしスフレだって物凄い苦労を重ねてあの技を習得したんだ。彼女の手の平を見たか?」
アドルフ「見てねえよ。」
ベルガ「僕が見たスフレの手は、女子の手とは思えないほどボロボロだったぞ。何度も悔しい思いをして技術を積み重ねてきた証拠だ。無難に生きてる奴なんていないぞ。それとノワールが何故仕事ができるのに出世できないか知ってるか?」
アドルフ「そんなの上司が手柄を横取りしてるからに決まってんだろ。」
ベルガ「お前は何も見てないな。ノワールは自分の手柄を成績の悪い人に譲る事で部下のクビを防いでたんだ。だからずっと巡査部長止まりだったんだ。彼女はあんたが警察としての教訓が身につくまでずっと待っててくれたんだぞ。」
アドルフ「・・・・悪い事しちまったな。」
フォレノワール巡査部長「分かれば良いんですよ。それに出世なんてしたら現場に出られなくなりますから。」
メルヘンランド女王「済んだ事は悔やんでも仕方あるまい。これからどうするかだ。」
アドルフ「女王陛下。」
メルヘンランド女王「アドルフよ、成すべき事を成すのだ。世のため、人のためにな。」
アドルフ「かしこまりました、女王陛下。」
それから数日が経過し、ベルガはキルシュを連れて、
ネズミーランドへ来園し、楽しんでいたのである。
キルシュトルテ大佐「ベルがネズミーランドに誘ってくれるなんて珍しいねー。」
ベルガ「誘ってないけど。この前事件解決に協力してくれた借りを返しただけだよ。」
キルシュトルテ大佐「そんなの気にしなくて良いのにー。私とダーリンの仲でしょ?」
ベルガ「まるで恋人だな。」
キルシュトルテ大佐「私はずっと恋人だと思ってるよ。ベルは恋愛に対して他人事すぎるよー。」
ヘクセンハウス元帥「ところでさっきからいるその子は誰なんだ?」
キルシュトルテ大佐「この子はタルトレット。私の妹で異母姉妹なの。」
タルトレット「タルトレット・バルト。よろしくね。私の事はタルトって呼んでね。」
ベルガ「僕はベルガ・オーガスト・ロートリンゲン。こっちは相棒のヘクセンハウスだ。僕の事はベルと呼んでくれ。タルトはキルシュに誘われて来たの?」
タルトレット「うん、お姉ちゃんって会う度にベルの話ばっかりするんだよ。」
キルシュトルテ大佐「そりゃそうだよ。私のダーリンだもん。」
タルトレット「だからお姉ちゃんの彼氏がどんな人か1度見ておこうと思ったの。」
ベルガ「なるほどね。君たちの父親は2人の妻と結婚してそれぞれキルシュとタルトを生んだ。だが妻同士の仲が悪いせいで別居する事になり、キルシュは父親と最初の妻に引き取られ、タルトは2番目の妻に引き取られた。タルトは養育費を貰ってはいるが必要最低限の額だ。しかもいじめを受けて引きこもりになった。だからキルシュは君を外へ連れ出そうと思って誘ったんじゃないかな。」
いつもではなく会う度にと言っていた。 →同居しておらず妻同士が別居している。
キルシュとは名字が異なっている。 →タルトは2番目の妻の子として育った。
タルトの靴は中流家庭仕様の商品。 →必要最低限の養育費を貰っている。
常に卑屈な表情で外に慣れていない。 →いじめが原因で引きこもりになった。
タルトレット「お姉ちゃん、私の事話したの?」
キルシュトルテ大佐「話してないよ。これが私のダーリンなの。人を見ただけで人生が分かっちゃう。」
タルトレット「それって怖くない?」
キルシュトルテ大佐「別に怖くないよ。ベルは人の心までは分からないから。それに相手の過去を知ったところで、人を脅すような事はしないから大丈夫だよ。」
タルトレット「信頼してるんだね。」
ベルガ「僕が分かるのは生活習慣と癖と趣味くらいだけどね。」
ヘクセンハウス元帥「それだけでも十分なんだよなー。」
真由「あっ、ベルガさん。僕の事覚えてますか?」
ベルガ「うん、真由ちゃんだっけ。」
真由「はい。今日は休みなので久々に遊びに来てたんですよ。」
ベルガ「真由ちゃんに貰ったチケットで遊びに来たよ。ていうか普段ここで働いてるのに休みの日もここなんだね。」
真由「何でここが僕の職場だって分かったんですか?」
ベルガ「楽しみで来ているがパンフレットを持っていない。地図がなくても道が分かるからだ。つまり君はここに通いづめのネズミー通だ。ネズミー通で平日にも休日にも気軽に来れる場所はここしかない。以前の婚活イベントで職業はテーマパークスタッフだと言っていた。結論、君はここのスタッフだ。」
真由「凄い、僕がネズミー通なのを見抜かれたのは初めてですよ。」
ベルガ「僕もネズミー映画とかよく見るよ。誰かとカップリングしたの?」
真由「はい。初めてできた彼女ですから、大事にしたいです。この人たちは?」
ベルガ「こいつは相棒のヘクセンハウスで、彼女がキルシュトルテで、そっちがタルトレット。」
真由「ベルガさんにも恋人いたんですね。ネズミーランドはデートには最適の場所ですから、楽しんで行ってくださいね。」
3人「はーい。」
真由「あの、ベルガさん。実は相談したい事があるんですけど、後で時間を頂いても良いですか?」
ベルガ「うん、それなら解散してからで良いかな?」
真由「はい。じゃあメールで時間と場所を伝えておきますね。」
ベルガ「分かった。」
タルトレット「この前動画でベルの活躍見てたよ。あんなに奇抜なコーヒー初めて見たなー。」
ベルガ「シグネチャービバレッジの事かな?」
タルトレット「うん、私はあの動画を見て将来はバリスタになりたいって思ったの。でもお母さんからは大学に行ってほしいって言われてるの。勉強は全くできないわけじゃないけど、正直学校には行きたくないし学歴が高いと給料も上がるとは言っても、やりたい事もできない人生なんて送りたくないの。」
ベルガ「なるほど、君は国境私立の学校に通っていたが、赤毛である事を理由にいじめられて引きこもりになったわけだね。」
タルトレット「えっ、何で国境私立の学校だって分かったの?」
ベルガ「タルトにいじめられる原因があるとすれば外見だ。今時赤毛である事を理由にいじめたり、地毛証明書を出させているのはジパングの学校くらいだ。他の同級生がほとんど黒髪なら自動的に目立つからね。どうしても大学へ行ってほしいなら転校させてほしいと親に言ってみると良いよ。メルヘンランドの学校ならしょうもない理由でいじめは発生しないし、自由時間も多いから学校へ行きながら好きな事に没頭できるよ。」
タルトレット「メルヘンランドの学校に転校すれば解決なんだね。分かった。ベルに相談して良かった。」
ベルガ「べっ、別にタルトのためなんかじゃないんだからねっ。」
真由「タルトさんは高校生なんですか?」
タルトレット「うん、私はまだ15歳だけど高校3年生だよ。メルヘンランドには飛び級があるからね。」
ベルガ「ジパングの色が強い学校じゃ自由時間なんてほとんどないし、将来役に立たないテスト勉強ばっかりやらされるから、やりたい事があってもなかなかできないし、何かやろうとしても変に公平意識が強いせいで足の引っ張り合いになっちゃうんだよねー。あんな蟻地獄みたいな所に居座るくらいなら逃げるのが一番だよ。」
ヘクセンハウス元帥「ベルは学校アレルギーだもんな。」
キルシュトルテ大佐「タルトがそんな事を悩んでたなんて知らなかったなー。あたしは小さい時からパティシエになりたかったし、ハッキングも得意だったから10歳の時に飛び級で小学校を卒業してフェアリーテイルと王国空軍情報科に入ったけど、タルトも自由になりたかったんだね。」
タルトレット「うん、私はお姉ちゃんみたいに裕福じゃないから夢なんて持っちゃいけないって思ってた。でもそんな事ないんだよね?」
ベルガ「もちろんだよ。何もしなくても良いしやりたい事があるなら没頭すれば良いし逃げたい時は逃げて良い。人は生まれに関係なく等しく自由であるべきだ。」
タルトレット「ベル・・・・ありがとう。何でお姉ちゃんがベルを好きなのかが分かった。ベル、婚活法が終わったら私ともつき合ってほしい。結婚促進制度を廃止してからつき合うのも変だけど。」
ベルガ「とは言ってもまだ15歳だし、婚活法が終わった時点でまだ君が僕の事を好きでいてくれたら考えるよ。」
タルトレット「うん、約束だからねっ。こんなに面白い人をお姉ちゃんだけが独占するなんてもったいないよ。」
真由「そういえば婚活法を廃止するまでは、誰ともつき合わないって言ってましたね。」
ベルガ「今結婚しても、一緒にいられる時間がないからね。」
それからベルガたちは時間も現実も忘れてネズミーランドの、
アトラクションを回りあっという間に時間が過ぎていった。
その後ベルガたちはネズミーランド閉園後に真由の家に行き。
キルシュとタルトとはひとまず解散する事になった。
ベルガ「それで相談というのは?」
真由「実は親の意向でお見合いをさせられる事になったんですけど、彼女ができたって言っても聞く耳を全く持たないんですよ。」
ベルガ「なるほど、それでそのお見合いを避ける方法を教えてほしいという事か?」
真由「お見合い自体はもう決まってるので中止にはできませんけど、僕としては相手のプライドを傷つけずに穏便にお断りしたいんです。でもお見合いという事は、相手は僕に彼女がいないと思っているという事なんですよ。」
ヘクセンハウス元帥「その場で真由ちゃんに彼女がいる事がばれたら一巻の終わりだな。」
真由「そうなんですよ。しかも相手があの黒杉財閥令嬢の、黒井政子さんなんですよ。」
ベルガ「黒井政子だと。」
ヘクセンハウス元帥「知ってるのか?」
ベルガ「黒井政子は黒杉政次の姪にあたり、黒杉政次の姉である黒井政美の娘だ。別名、鋼鉄の女。黒杉グループの専務で、あの女に目をつけられたら人だろうが企業だろうが次の日には潰されるという噂だ。」
ヘクセンハウス元帥「あの財閥にまだ家族がいたのかよ。」
29ページ目終わり
その後フォレノワール巡査部長がギルドカフェへとやってきたが。
アドルフ「そうだよ。悪いか?」
ベルガ「悪くはないさ。」
フォレノワール巡査部長「私はまだあなたを許したわけじゃありません。あなたがフィガロから聞いたという武器流出の情報を元に捜査をしているだけなのですからね。」
ヘクセンハウス元帥「嘘じゃないだろうな?」
アドルフ「嘘じゃねえよ。警察ばかりか元老院すら気づいてないのはびっくりだよ。」
ベルガ「あながち嘘とも言い切れないと思うぞ。黒杉財閥が帝国自衛隊を早い段階で立て直せたのは武器流出の可能性も否定はできないからな。メルヘンランドの武器を密輸して立て直したというならあの状況にも説明がつく。」
アドルフ「お前、俺の事を疑わないのか?」
ベルガ「僕は自分の価値観にさえ疑いの姿勢を持っている。だから他人の言う事はなおさら疑うさ。でも君が嘘を吐いているとはとても思えないんだ。じゃなきゃ彼女への罪滅ぼしにならないからな。」
アドルフ「変わってんなー。」
ベルガ「お互い様だ。」
ヘクセンハウス元帥「ていうか何で強盗なんて考えたんだ?」
アドルフ「それは・・・・。」
ベルガ「貧困かつ激務の状況から脱出を図りたかったんだろう。警察は僕らが思ってる以上に忙しい上に給料も安いからな。リターンが少ないんじゃ強盗もしたくなるわな。」
アドルフ「俺はずっと貧困生活を強いられてきたんだよ。ベーシックインカムのおかげで何とかなったけど、それでも俺が受けてきた仕打ちは酷としか言いようがなかった。それなのにペンタメローネは楽しそうに高級なお菓子を作ってるのが気に入らなかったんだよ。警察だって成績が悪くていつクビになってもおかしくなかった。だから失う物は何もなかったんだよ。」
フォレノワール巡査部長「あなたねえ。」
リコラ「メルヘンランドは公務員であってもクビがありますからね。」
ベルガ「どこの職人だって最初から楽しく物作りをしている人なんていないよ。誰だって最初は躓くしスフレだって物凄い苦労を重ねてあの技を習得したんだ。彼女の手の平を見たか?」
アドルフ「見てねえよ。」
ベルガ「僕が見たスフレの手は、女子の手とは思えないほどボロボロだったぞ。何度も悔しい思いをして技術を積み重ねてきた証拠だ。無難に生きてる奴なんていないぞ。それとノワールが何故仕事ができるのに出世できないか知ってるか?」
アドルフ「そんなの上司が手柄を横取りしてるからに決まってんだろ。」
ベルガ「お前は何も見てないな。ノワールは自分の手柄を成績の悪い人に譲る事で部下のクビを防いでたんだ。だからずっと巡査部長止まりだったんだ。彼女はあんたが警察としての教訓が身につくまでずっと待っててくれたんだぞ。」
アドルフ「・・・・悪い事しちまったな。」
フォレノワール巡査部長「分かれば良いんですよ。それに出世なんてしたら現場に出られなくなりますから。」
メルヘンランド女王「済んだ事は悔やんでも仕方あるまい。これからどうするかだ。」
アドルフ「女王陛下。」
メルヘンランド女王「アドルフよ、成すべき事を成すのだ。世のため、人のためにな。」
アドルフ「かしこまりました、女王陛下。」
それから数日が経過し、ベルガはキルシュを連れて、
ネズミーランドへ来園し、楽しんでいたのである。
キルシュトルテ大佐「ベルがネズミーランドに誘ってくれるなんて珍しいねー。」
ベルガ「誘ってないけど。この前事件解決に協力してくれた借りを返しただけだよ。」
キルシュトルテ大佐「そんなの気にしなくて良いのにー。私とダーリンの仲でしょ?」
ベルガ「まるで恋人だな。」
キルシュトルテ大佐「私はずっと恋人だと思ってるよ。ベルは恋愛に対して他人事すぎるよー。」
ヘクセンハウス元帥「ところでさっきからいるその子は誰なんだ?」
キルシュトルテ大佐「この子はタルトレット。私の妹で異母姉妹なの。」
タルトレット「タルトレット・バルト。よろしくね。私の事はタルトって呼んでね。」
ベルガ「僕はベルガ・オーガスト・ロートリンゲン。こっちは相棒のヘクセンハウスだ。僕の事はベルと呼んでくれ。タルトはキルシュに誘われて来たの?」
タルトレット「うん、お姉ちゃんって会う度にベルの話ばっかりするんだよ。」
キルシュトルテ大佐「そりゃそうだよ。私のダーリンだもん。」
タルトレット「だからお姉ちゃんの彼氏がどんな人か1度見ておこうと思ったの。」
ベルガ「なるほどね。君たちの父親は2人の妻と結婚してそれぞれキルシュとタルトを生んだ。だが妻同士の仲が悪いせいで別居する事になり、キルシュは父親と最初の妻に引き取られ、タルトは2番目の妻に引き取られた。タルトは養育費を貰ってはいるが必要最低限の額だ。しかもいじめを受けて引きこもりになった。だからキルシュは君を外へ連れ出そうと思って誘ったんじゃないかな。」
いつもではなく会う度にと言っていた。 →同居しておらず妻同士が別居している。
キルシュとは名字が異なっている。 →タルトは2番目の妻の子として育った。
タルトの靴は中流家庭仕様の商品。 →必要最低限の養育費を貰っている。
常に卑屈な表情で外に慣れていない。 →いじめが原因で引きこもりになった。
タルトレット「お姉ちゃん、私の事話したの?」
キルシュトルテ大佐「話してないよ。これが私のダーリンなの。人を見ただけで人生が分かっちゃう。」
タルトレット「それって怖くない?」
キルシュトルテ大佐「別に怖くないよ。ベルは人の心までは分からないから。それに相手の過去を知ったところで、人を脅すような事はしないから大丈夫だよ。」
タルトレット「信頼してるんだね。」
ベルガ「僕が分かるのは生活習慣と癖と趣味くらいだけどね。」
ヘクセンハウス元帥「それだけでも十分なんだよなー。」
真由「あっ、ベルガさん。僕の事覚えてますか?」
ベルガ「うん、真由ちゃんだっけ。」
真由「はい。今日は休みなので久々に遊びに来てたんですよ。」
ベルガ「真由ちゃんに貰ったチケットで遊びに来たよ。ていうか普段ここで働いてるのに休みの日もここなんだね。」
真由「何でここが僕の職場だって分かったんですか?」
ベルガ「楽しみで来ているがパンフレットを持っていない。地図がなくても道が分かるからだ。つまり君はここに通いづめのネズミー通だ。ネズミー通で平日にも休日にも気軽に来れる場所はここしかない。以前の婚活イベントで職業はテーマパークスタッフだと言っていた。結論、君はここのスタッフだ。」
真由「凄い、僕がネズミー通なのを見抜かれたのは初めてですよ。」
ベルガ「僕もネズミー映画とかよく見るよ。誰かとカップリングしたの?」
真由「はい。初めてできた彼女ですから、大事にしたいです。この人たちは?」
ベルガ「こいつは相棒のヘクセンハウスで、彼女がキルシュトルテで、そっちがタルトレット。」
真由「ベルガさんにも恋人いたんですね。ネズミーランドはデートには最適の場所ですから、楽しんで行ってくださいね。」
3人「はーい。」
真由「あの、ベルガさん。実は相談したい事があるんですけど、後で時間を頂いても良いですか?」
ベルガ「うん、それなら解散してからで良いかな?」
真由「はい。じゃあメールで時間と場所を伝えておきますね。」
ベルガ「分かった。」
タルトレット「この前動画でベルの活躍見てたよ。あんなに奇抜なコーヒー初めて見たなー。」
ベルガ「シグネチャービバレッジの事かな?」
タルトレット「うん、私はあの動画を見て将来はバリスタになりたいって思ったの。でもお母さんからは大学に行ってほしいって言われてるの。勉強は全くできないわけじゃないけど、正直学校には行きたくないし学歴が高いと給料も上がるとは言っても、やりたい事もできない人生なんて送りたくないの。」
ベルガ「なるほど、君は国境私立の学校に通っていたが、赤毛である事を理由にいじめられて引きこもりになったわけだね。」
タルトレット「えっ、何で国境私立の学校だって分かったの?」
ベルガ「タルトにいじめられる原因があるとすれば外見だ。今時赤毛である事を理由にいじめたり、地毛証明書を出させているのはジパングの学校くらいだ。他の同級生がほとんど黒髪なら自動的に目立つからね。どうしても大学へ行ってほしいなら転校させてほしいと親に言ってみると良いよ。メルヘンランドの学校ならしょうもない理由でいじめは発生しないし、自由時間も多いから学校へ行きながら好きな事に没頭できるよ。」
タルトレット「メルヘンランドの学校に転校すれば解決なんだね。分かった。ベルに相談して良かった。」
ベルガ「べっ、別にタルトのためなんかじゃないんだからねっ。」
真由「タルトさんは高校生なんですか?」
タルトレット「うん、私はまだ15歳だけど高校3年生だよ。メルヘンランドには飛び級があるからね。」
ベルガ「ジパングの色が強い学校じゃ自由時間なんてほとんどないし、将来役に立たないテスト勉強ばっかりやらされるから、やりたい事があってもなかなかできないし、何かやろうとしても変に公平意識が強いせいで足の引っ張り合いになっちゃうんだよねー。あんな蟻地獄みたいな所に居座るくらいなら逃げるのが一番だよ。」
ヘクセンハウス元帥「ベルは学校アレルギーだもんな。」
キルシュトルテ大佐「タルトがそんな事を悩んでたなんて知らなかったなー。あたしは小さい時からパティシエになりたかったし、ハッキングも得意だったから10歳の時に飛び級で小学校を卒業してフェアリーテイルと王国空軍情報科に入ったけど、タルトも自由になりたかったんだね。」
タルトレット「うん、私はお姉ちゃんみたいに裕福じゃないから夢なんて持っちゃいけないって思ってた。でもそんな事ないんだよね?」
ベルガ「もちろんだよ。何もしなくても良いしやりたい事があるなら没頭すれば良いし逃げたい時は逃げて良い。人は生まれに関係なく等しく自由であるべきだ。」
タルトレット「ベル・・・・ありがとう。何でお姉ちゃんがベルを好きなのかが分かった。ベル、婚活法が終わったら私ともつき合ってほしい。結婚促進制度を廃止してからつき合うのも変だけど。」
ベルガ「とは言ってもまだ15歳だし、婚活法が終わった時点でまだ君が僕の事を好きでいてくれたら考えるよ。」
タルトレット「うん、約束だからねっ。こんなに面白い人をお姉ちゃんだけが独占するなんてもったいないよ。」
真由「そういえば婚活法を廃止するまでは、誰ともつき合わないって言ってましたね。」
ベルガ「今結婚しても、一緒にいられる時間がないからね。」
それからベルガたちは時間も現実も忘れてネズミーランドの、
アトラクションを回りあっという間に時間が過ぎていった。
その後ベルガたちはネズミーランド閉園後に真由の家に行き。
キルシュとタルトとはひとまず解散する事になった。
ベルガ「それで相談というのは?」
真由「実は親の意向でお見合いをさせられる事になったんですけど、彼女ができたって言っても聞く耳を全く持たないんですよ。」
ベルガ「なるほど、それでそのお見合いを避ける方法を教えてほしいという事か?」
真由「お見合い自体はもう決まってるので中止にはできませんけど、僕としては相手のプライドを傷つけずに穏便にお断りしたいんです。でもお見合いという事は、相手は僕に彼女がいないと思っているという事なんですよ。」
ヘクセンハウス元帥「その場で真由ちゃんに彼女がいる事がばれたら一巻の終わりだな。」
真由「そうなんですよ。しかも相手があの黒杉財閥令嬢の、黒井政子さんなんですよ。」
ベルガ「黒井政子だと。」
ヘクセンハウス元帥「知ってるのか?」
ベルガ「黒井政子は黒杉政次の姪にあたり、黒杉政次の姉である黒井政美の娘だ。別名、鋼鉄の女。黒杉グループの専務で、あの女に目をつけられたら人だろうが企業だろうが次の日には潰されるという噂だ。」
ヘクセンハウス元帥「あの財閥にまだ家族がいたのかよ。」
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