上海帰りのリルです。

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「役割語」としての終助詞「わ」

2009-03-12 17:30:00 | From 東京
 NHK放送文化研究所春の研究発表&ワークショップを聞いてきました。
 http://www.nhk.or.jp/bunken/symposium2009/0311-0312.html#0312am

 いくつかのプログラムのうち私が聞いたのは、

「放送での敬語に視聴者はいま何を求めているか」と

「テレビにおける『役割語』がどう使われているのか~オリンピック・スポーツ放送を中心に~」です。

 『役割語』のほうのパネリストには、『ヴァーチャル日本語 役割語の謎』の著者の金水 敏(きんすい さとし)さんと夏目 房之介さんがいらっしゃるので、面白そうだなーと思って、申し込みました。

 私が長いこと参加しているあゆひの会でも、最近「わ」とか「ぞ」とかの話で一部(主にサカモト先生とマダムTと私)で盛り上がってるし。

 サブタイトルの「“オリンピック・スポーツ放送を中心に”って何?」って思ったら、外国人選手が何か言ってる画面に出る字幕スーパーのことでした。
 
まず、舞台上に用意されたスクリーンには、北京オリンピックでの活躍が記憶に新しいウサイン・ボルト選手が、

自分を指差して、「I am NO.1!」と言っている映像が出ました。

その下に「オレがナンバー1だ!」と字幕が出ていました。

「私はナンバー1です。」ではなく。

 次に、金水先生から、役割語とは何かという説明がありました。

 たとえば「そうじゃ。わしが知っておる。」というのを聞いたら(リル的には富田耕生さんの声で聞きたい。)、「博士がしゃべってるんだな。」と思うでしょ?そういうふうに特定の人物像が思い浮かぶ言葉づかいのことです。

 上記の「オレがナンバー1だ!」は、役割語を使っていると見ていいでしょう。

 その他にも、いろいろスポーツ選手の発言の下に出る字幕の例を見ました。その選手の性格、持っている雰囲気、発言している場面で、字幕の言葉づかいが違っていて、面白かったです。

 ただ、聞いていて、このワークショップの進行の順序がちょっとね…って思いました。

 まず、初めに現実にスポーツをしている選手達の生の発言につけた字幕(役割語満載!)を見せちゃって。

 そのあとに金水先生が「サイボーグ009」を例に9人のキャラクターと役割語使用のお話、

 その役割語の持つ働き、イメージ、ステレオタイプの話が面白かったのよ…もうちょっと聞きたかったなー。

 夏目さんからは、役割語は、マンガ・アニメ以前からあったという発言もあって…たとえば『ララミー牧場』の吹き替えで、ジュフという登場人物は江戸弁を使っていて、それがうけたとか…私は、その番組を知らないので残念(^^;でも、あの頃の吹き替えは、面白かったんだろうなー。

 ね!役割語っていうのは、マンガ・アニメ・外画の吹き替えなど、フィクションの中で使用されるものだったのよ。

 だから、そのフィクションの中の言葉「役割語」を生身のスポーツ選手の話す言葉につける字幕に使用するのはどうなの?って順番で話を進めればわかりやすかったのにね。順序が逆だったんじゃないかなー・・・?(最後に海外ドラマの字幕&日本語吹き替えの映像の発表があって、それとスポーツ中継の字幕が一緒に語られるのって、ちょっと…って、私は思ったの。)

 まあ、タイトルが「テレビにおける・・・」だから、しかたないけど。

 パネリストの報道局チーフプロデューサーの荻野太朗さんは、日本選手のライバル選手の発言に「気分がいい」の字幕を使ったときは、「やりすぎかな、と思った。」とのこと。でも、冒頭の場面で「私はナンバー1です。」と出すのは、場面にそぐわないと。…うん。確かに。…番組作りの現場では、いつも、悩みながら、言葉を選んでいるそうです。(※夏目さんから、昔のテレビは「私はナンバー1です」式の字幕が出ていたとのこと。今度、そのへんのお話をお聞きしたい。時代の証言者としての。)

 あら、だらだら書いちゃったけど、私が注目したのは、「わ」よ、終助詞「わ」!!

 なんと、スポーツ放送では、「○○の女王okan」と呼ばれる人の発言は、

字幕で、「~~わ。」とされることが多いんですって。

例)「記録を出す秘訣なんてない。」<エレーナ・イシンバエワ選手

「いいスタートがきれた。誰もついてこないんですもの。」<フローレンス・ジョイナー選手

 終助詞「わ」は、女性語だけれど、「やわらげ」の効果より、「強気な態度」を表す効果があるんですね~。

 「わ」は、本来、フォーマルな場で使うべき終助詞ではないけれど、女王は、マイクを向けられたときでさえ、「わ」を使ったカジュアルな言葉で話すことを許された存在…もちろん、ほんとうは日本語をしゃべっているわけではないから、そういうイメージなわけです。…と、金水先生のお話から、リルなりに解釈いたしました。

 矢崎屋さんが先日エッグのカウンターで言ってた、モモレンジャーの「いいわね。いくわよ。」…短い中に「わ」がふたつもあるはずですよ!彼女は、女王どころじゃなく、強いんだから。

 そして、むりやり話をつなげると、私が劇団ステージドアで演じるダイアンは、生意気な性格で、「わ」を使って話します。

 今回、泣かせどころの歌の歌詞は、

「私は、生きなければならないんだわ。

 生きてゆくわ。」

 リルが歌えば、強気が、かわいいわ wink きっと。


 ※夏目さんのブログにワークショップについての記事があります。
 >http://blogs.itmedia.co.jp/natsume/2009/03/post-247d.html