NO65 常任理事ならびに関係各位へ
守山高校事件、長岡キャンパス訴訟問題にみられる異常な学園運営を正常化するめには学園理事会の改組が必要である。
2016年10月25日 元立命館総長理事長室室長・ジャーナリスト 鈴木元
目次
(1) 総長そして担当副総長も知らされていなかった守山高校事件
(2)なぜ「附属校問題は森島専務の管轄事項」になっているのか
(3)各セクションの思い付きで学園が混乱している間に、長田豊臣理事長、森島朋三専務は来年の理事改選に向かって、一層自分たちに都合の良い理事会体制の確立を図ろうとしている。
(4)学園正常化の焦点は理事会体制の改組・刷新
(1)総長そして担当副総長も知らされていなかった守山高校事件
マスコミ報道によると立命館守山高校の教員が、生徒に対して不適切な行為をおこなったが、学園側による調査・処分が曖昧なまま5月に依願退職した。その直後に警察に逮捕され、さらに副校長の親に対するメールが公になり全国的に批判が広がった。
立命館の大半の教職員は、この事件をマスコミ報道を通じて知った。事件の内容について私はここで触れるつもりはない。それよりも情報公開、全学構成員自治を謳ってきた立命館において、こうした事件が理事会から教授会や職員の業務会議を通じて知らされず、教職員がマスコミを通じてしか知ることができないという異常さである。
ましてや今回の事件は担当の副総長そして教学の最高責任者である総長もマスコミが報じるまで知らされていなかったとの信憑性の高い情報が学内に流布していることである。
マスコミが報じた以降の常任理事会において、守山高校の担当副校長が当事者の教員を処分ではなく依願退職することで認めていたことに対して、人事担当の志磨慶子総務担当常務や中等教育担当の川崎昭治常務などが問いただされ、常任理事会の下に調査検討委員会が設置された。
しかし中等教育現場の事件で教員の身分にかかわるほどの問題を、森島朋三専務理事が事前に相談に乗っていないことなどありえないということは、関係者の間では周知の事実である。にもかかわらずそのことが不問にされていることも異常である。
吉田美喜夫総長は教学の最高責任者として附属学校校長の任命権は持っている。しかし中等教育担当常務などの人事権は事実上、森島朋三専務理事が掌握しており、附属校に関しては些細なことまで彼の了解が無ければ動けないことになっている。森島朋三専務は立命館中高等学校の長岡キャンパスを大阪成蹊学園から土地購入(38穏円)、鹿島建設への校舎建設工事(110億円)の支払いのいずれにおいても常任理事会に諮らず長田豊臣理事長の決済で行った。そして本シリーズのNO63ならびにNO64で明らかにしたように立命館中高等学校の長岡キャンパスの「土壌汚染」問題とかかわっての大阪成蹊学園を相手にした訴訟(大阪地裁民事部、事件番号 平成28年(ワ)4898 損害賠償請求11億2千万円)も、吉田総長には事実上事後報告とされていたようである。これは学園運営の在り方としては異常である。どこにも選出基盤の無い森島朋三専務理事が全学構成員の選挙で選ばれた教学の最高責任者である吉田美喜夫総長を差し置いて、勝手な行動をしていることを糾すと同時に、そのようにふるまえる現行の仕組みを是正しなくてはならない。
なお大阪成蹊学園を相手とした訴訟は夏季休暇中の8月に第二回口頭弁論が開催されているが、常任理事会に報告も、それに対する対応も示されていない。教職員組合(大学も附属校も)は、いまだに理事会に対して情報公開を求めて追及していないが奮起を期待したい。
(2)なぜ「附属校問題は森島専務の管轄事項」になっているのか
立命館の付属校が立命館中高等学校1校であった時、烏丸北大路から深草への移転が課題となり、合わせて男女共学へ改革された。その時、土地校購入問題や住民対策などについて当時の川本八郎専務が対応した。宇治学園との合併後、中等教育担当常務が設置された。学園の支配権を掌握しようとした川本八郎専務は中等教育担当常務を副総長所轄ではなく、専務所轄の下に置いた。そのため常務理事会(当初は常任理事会運営員会)開催前に副総長のもとで教学系、専務理事のもとで総務系の担当常務や部長クラスの会議が開催されていたが、中等教育担当常務は川本八郎専務理事が招集する会議に呼ばれるようになった。森島朋三はこれを見ていた。私が責任者であった企画部において森島朋三は次長として小学校開設準備室の事務責任者をしていたが、川本八郎専務に逐次報告し了解を取り進めていた。長田豊臣理事長が誕生し森島朋三が専務理事に就任した時、川本八郎理事長と同様に中等教育分野を自分の所轄の下に置いた。今回問題になっている守山の副校長人事も彼が行ったものである。その彼が今回の事件の対応は川崎昭治中等教育担当常務や志磨慶子総務担当常務までの問題で自分はあずかり知らないという態度をとることは、「権限は行使するが、責任は取らない」という彼のいつものやり方である。こういう異常な学園(理事会)運営を改めない限り、立命館は何時まで経っても、森島朋三専務等の学園私物化そして無責任で杜撰な学園運営に振り回され続けるだろう。今回の問題でも常務会や常任理事に速やかに報告され、集団的検討を行っていれば、もう少しましな対応になっていただろう。
自分がかかわった副校長の責任問題の回避、中等教育分野は自分の領域という思い上がりが、近代的集団的組織運営を逸脱し、処分判断が客観化されず、同じような不適切行為でも極端に軽かったり、重かったりするような事態を生み出すことになっている。
(3)各セクションの思い付きで学園が混乱している間に、長田豊臣理事長、森島朋三専務は来年の理事改選に向かって、一層自分たちに都合の良い理事会体制の確立を図ろうとしている。
2010年、長田豊臣理事長、森島朋三常務(当時)は、一時金カットや慰労金支給基準倍加などでの自らの責任を覆い隠そうと、それまでどこでも議論されていなかったサッポロビール大阪茨木工場跡地を購入し大阪茨木キャンパス を開設する(400億円を越える事業)を言い出した。それに対して5学部長理事(法・産社・国関・経済・理工)が反対していたにもかかわらず、学外理事の数に依拠して強行し、学園に混乱をもたらした。財政的にも経営・政策科学部と言う収入増につながらない既存学部の新キャンパス移転、そして何よりも維持管理経費だけで新たに30億円が必要になり、学園の財政的展望を提起できなくなった。
それ以降、思い付きのように総合心理学部、AIUとの共同学位学部(国際関係学部やAPUの位置づけが不明確なまま、財政的にも厳しい「グローバル教養学部構想」)、食科学部、教職大学院などを打ち出してきた。いずれもそれだけを取り出してその意義を主張することは誰にでもできる。問題は18歳人口激減期に向かおうとする今の時期、そして大学の国際的競争が深まる今日において、教育と研究の質の向上が最大の焦点となっている時に、膨大な設置経費を必要とする新学部を次々と設置することの是非である。どうしても新しい分野の教学組織が必要であれば、既存の教学分野で時代に即応しない教学組織の改組・改変などによって対応すべきものだろう。
そして問題は、学年歴(14週・100分授業)問題でもそうであるが、全学的に現行の制度が桎梏となって全学からその改組が要望されたものではなく、教学部が言い出し「ここまで準備を進めたものを、いまさらやめられないので、実行してほしい」と全学に迫り混乱を引き起こしていることである。食科学部、そしてAIUとの共同学位学部、教職大学院もそうである。提案している当事者以外から賛成や応援の言動は出てこなかった。それどころか様々な意見が繰り返して出され「継続審議」「継続審議」の議論がされてきて、「ここまで具体化がされたのだから認めて欲しい」というやり方の繰り返しである。
先日承認された教職大学院についても長田豊臣理事長や森島朋三専務はどうしても必要な大学院などとは考えていない。それを認めることによって推進してきた人々を自分達の側に取り込めるという判断だけである。先日、公務研究科の廃止が「定員が確保されなくなった」ことを根拠によって決定された。本来、教職大学院設置にあたっては、将来に至る定員確保の見通しを考慮に入れなければならなかった。それどころか定員が確保できても年間で約6000万円の持ち出しになることが明らかになっている。にもかかわらず経営責任を負うものとして、慎重な判断・言動を取るべき長田豊臣理事長や森島朋三専務は積極的な言動を行わず、認めてきた。要するに教学的検討どころか、経営にも責任を負わず学園の財政に困難をもたらすことが分かっていても、自分たちの地位の維持に役立つかどうかだけを考えて行動している。
長田理事長は「色々と私に対して批判的なことを言っていても、皆、自分のやりたいことをやるために、私にたなびいてきている」と周辺に語っている。このような隙を与えてはならないだろう。
(4)学園正常化の焦点は理事会体制の改組・刷新
長田豊臣理事長ならびに森島朋三専務の最大の関心毎は、来年に迫っている理事改選において、いかにして自分たちの学園支配をより安定的なものするしか眼中にない。そして実際、彼らは「役員のあり方検討委員会」を開催し、学部長理事の縮小、「任命制理事」の増加を巧妙に進めようとしている。これにたいして学園の正常化を願う人々は総長選挙規程の改定を求めて闘ったように、理事会体制の刷新そのものを自らの課題として闘う世論の喚起が大切だろう。
私は2005年の一時金カット以来の学園の混乱をみて、その克服の大きな障害が理事会体制にあると判断し、2012年に出版した拙著『立命館の再生を願って』(風涛社)で詳細に記述した。おそらく私立大学の理事会体制に本格的なメスに入れた最初の著作と推察される。立命館の学園運営に疑問を持たれている方は是非、読んでいただきたい。
この間の事態からの当面の焦点は
① 学内において選挙で選ばれた理事を理事総数の過半数以上にする。
先に記したように400穏円を超える大阪茨木キャンパス開設にあたって学内から強い反対意見が出されていたにもかかわらず、長田豊臣理事長や森島朋三総務担当常務(当時)は学外理事の数を頼りに強行した。現在立命館の理事数は41名であるが学内で選挙によって選ばれている理事は、総長+立命館大学の学部長13名だけとなっている。このいびつな構造を改めなければならない。そのためにはAPUの学長や学部長も立命館大学で行われているようにAPUにおいて選挙によって選ばれるようにすること。学外理事を含めて、増えすぎている「任命制理事」の数を削減する。
かつて私が総長理事長室室長として長田豊臣理事長と意見加交換していた時、彼はアメリカ史専攻の人間らしく「アメリカの大統領選挙は、制度的には様々な問題があるが、誤りのある施策を行えば、次の大統領選挙で敗れる。この点だけでも選挙で選ばれない人間が長になるのは良くない」と言っていた。今まさに立命館の理事長や専務はそのような状態にある。長田豊臣は総長の時は、総長選挙で選ばれ理事となっていた。しかし理事長になった時は川口清史前総長が総長推薦枠を使って理事会に推薦し理事に就任したのであってどこにも選出基盤の無い理事である。森島朋三専務も同様である。
② 総長理事長制へ移行させる
どこにも選出基盤の無い現行の理事長や専務理事が、過半数を超える「任命制理事」に依拠して学内意見と異なる方針を押し付け学園が混乱させられてきた。長田豊臣が理事会において理事長に選出された時、13名の学部長理事の内、彼に投票したものは2名のみで11名の学部長理事は反対した。このような人物が学内意見を無視して学外理事などに依拠して学園運営を行えていることが問題なのである。
今日、全ての国立・公立法人においては教学の最高責任者である総長(学長)が理事長を兼務し、理事長(総長)が推薦する副理事長や専務理事が総長(理事長)を支える仕組みとしている。そして関東の主要私学も総長理事長制を採用している。研究・教育を行うことを使命(目的)である大学においては当然のことである。立命館においても総長・理事長制に改組する必要がある。同時に、この間、気づかれないように改悪されていた「副総長は総長が理事長と協議の上、理事会に推薦する」(実際の運用としては、理事長が認めない限り提案できないか、理事会で否決されている)「理事長の経理決済は1億円以上、上限無し」という規定は、「副総長は総長が理事会に推薦する」「理事長の経理決済規程は1億円以上、2億円以下とする」などに改定しなければならない。
③ 高すぎる理事長や専務の報酬は教育機関らしく節度あるものとし、同一規模の学園なみ
に引き下げる
今年の春闘において初めて明らかにされたが、立命館の理事長や専務理事の手当は明らかに高すぎる。教職員に対しては「社会的水準」という言葉を使いながらも、同一規模の私学に対して年俸で明らかに低賃金を押し付けている。それでいて自分たちの役員報酬については、明らかに特段高い報酬を受け取っている(理事長2036万円、専務理事1846万円)。
私立学校は教育・研究を目的とし、学費を主とした財源とする非営利法人である。その学園の理事長や専務理事は高い道義性を持った節度あるふるまいで学園運営に務めなければならない。それが教職員には低賃金を得しつけ、学生(父母)には他大学に比して高い学費を押し付けておきながら自分たちは特段高い年収を受け取っていることは認められない。
これは長田豊臣理事長ならびに森島朋三専務による学園の私物化であり、両名の特権意識を助長し、その地位に固執する事態を生み出している。学園運営の正常化を図るためには、この問題についても改革する必要がある。そのためには学部長などの役職手当についても他大学水準に合わせる必要があるし、その手当を退職金に連動させるやり方についても是正する必要がある。
④ 専務理事を含めて職員系列の理事は部次長・課長などの職制会議において推挙された複
数者を一つの判断基準として、総長(理事長)の責任で理事会に推薦するなどへの改組も検討する必要がある。
なお学園の正常化・民主化を求める有志の人々によって作られている「オールRits」の機関紙「オールRits通信」が再開されたが、その12号において、理事会体制の改組についての提案が出された。そうした状況も踏まえ、このシリーズ(インターネットで スズキ ゲンさんのブログ と検索してください)でも、今後、改めて理事会体制について詳しく触れたものを掲載することにする。
鈴木元。立命館総長理事長室室長、大阪初芝学園副理事長、中国(上海)の同済大学アジア太平洋研究センター顧問教授、私大連盟アドミニストレーター養成講座アドバイザリー、JICA中国人材育成事業アドバイザリーなどを歴任。
現在、日本ペンクラブ会員、日本ジャーナリスト会議会員、かもがわ出版取締役、国際環境整備機構理事長。京都高齢者大学校幹事。
著書、『立命館の再生を願って』『続 立命館の再生を願って』(ともに風涛社)『大学の国際協力』(文理管閣)『像とともに未来を守れ』(かもがわ出版)等多数。
最新刊として、全共闘ならびに「解同」と対峙した側からの最初の包括的大学紛争史である『もう一つの大学紛争』(かもがわ出版)がある。
守山高校事件、長岡キャンパス訴訟問題にみられる異常な学園運営を正常化するめには学園理事会の改組が必要である。
2016年10月25日 元立命館総長理事長室室長・ジャーナリスト 鈴木元
目次
(1) 総長そして担当副総長も知らされていなかった守山高校事件
(2)なぜ「附属校問題は森島専務の管轄事項」になっているのか
(3)各セクションの思い付きで学園が混乱している間に、長田豊臣理事長、森島朋三専務は来年の理事改選に向かって、一層自分たちに都合の良い理事会体制の確立を図ろうとしている。
(4)学園正常化の焦点は理事会体制の改組・刷新
(1)総長そして担当副総長も知らされていなかった守山高校事件
マスコミ報道によると立命館守山高校の教員が、生徒に対して不適切な行為をおこなったが、学園側による調査・処分が曖昧なまま5月に依願退職した。その直後に警察に逮捕され、さらに副校長の親に対するメールが公になり全国的に批判が広がった。
立命館の大半の教職員は、この事件をマスコミ報道を通じて知った。事件の内容について私はここで触れるつもりはない。それよりも情報公開、全学構成員自治を謳ってきた立命館において、こうした事件が理事会から教授会や職員の業務会議を通じて知らされず、教職員がマスコミを通じてしか知ることができないという異常さである。
ましてや今回の事件は担当の副総長そして教学の最高責任者である総長もマスコミが報じるまで知らされていなかったとの信憑性の高い情報が学内に流布していることである。
マスコミが報じた以降の常任理事会において、守山高校の担当副校長が当事者の教員を処分ではなく依願退職することで認めていたことに対して、人事担当の志磨慶子総務担当常務や中等教育担当の川崎昭治常務などが問いただされ、常任理事会の下に調査検討委員会が設置された。
しかし中等教育現場の事件で教員の身分にかかわるほどの問題を、森島朋三専務理事が事前に相談に乗っていないことなどありえないということは、関係者の間では周知の事実である。にもかかわらずそのことが不問にされていることも異常である。
吉田美喜夫総長は教学の最高責任者として附属学校校長の任命権は持っている。しかし中等教育担当常務などの人事権は事実上、森島朋三専務理事が掌握しており、附属校に関しては些細なことまで彼の了解が無ければ動けないことになっている。森島朋三専務は立命館中高等学校の長岡キャンパスを大阪成蹊学園から土地購入(38穏円)、鹿島建設への校舎建設工事(110億円)の支払いのいずれにおいても常任理事会に諮らず長田豊臣理事長の決済で行った。そして本シリーズのNO63ならびにNO64で明らかにしたように立命館中高等学校の長岡キャンパスの「土壌汚染」問題とかかわっての大阪成蹊学園を相手にした訴訟(大阪地裁民事部、事件番号 平成28年(ワ)4898 損害賠償請求11億2千万円)も、吉田総長には事実上事後報告とされていたようである。これは学園運営の在り方としては異常である。どこにも選出基盤の無い森島朋三専務理事が全学構成員の選挙で選ばれた教学の最高責任者である吉田美喜夫総長を差し置いて、勝手な行動をしていることを糾すと同時に、そのようにふるまえる現行の仕組みを是正しなくてはならない。
なお大阪成蹊学園を相手とした訴訟は夏季休暇中の8月に第二回口頭弁論が開催されているが、常任理事会に報告も、それに対する対応も示されていない。教職員組合(大学も附属校も)は、いまだに理事会に対して情報公開を求めて追及していないが奮起を期待したい。
(2)なぜ「附属校問題は森島専務の管轄事項」になっているのか
立命館の付属校が立命館中高等学校1校であった時、烏丸北大路から深草への移転が課題となり、合わせて男女共学へ改革された。その時、土地校購入問題や住民対策などについて当時の川本八郎専務が対応した。宇治学園との合併後、中等教育担当常務が設置された。学園の支配権を掌握しようとした川本八郎専務は中等教育担当常務を副総長所轄ではなく、専務所轄の下に置いた。そのため常務理事会(当初は常任理事会運営員会)開催前に副総長のもとで教学系、専務理事のもとで総務系の担当常務や部長クラスの会議が開催されていたが、中等教育担当常務は川本八郎専務理事が招集する会議に呼ばれるようになった。森島朋三はこれを見ていた。私が責任者であった企画部において森島朋三は次長として小学校開設準備室の事務責任者をしていたが、川本八郎専務に逐次報告し了解を取り進めていた。長田豊臣理事長が誕生し森島朋三が専務理事に就任した時、川本八郎理事長と同様に中等教育分野を自分の所轄の下に置いた。今回問題になっている守山の副校長人事も彼が行ったものである。その彼が今回の事件の対応は川崎昭治中等教育担当常務や志磨慶子総務担当常務までの問題で自分はあずかり知らないという態度をとることは、「権限は行使するが、責任は取らない」という彼のいつものやり方である。こういう異常な学園(理事会)運営を改めない限り、立命館は何時まで経っても、森島朋三専務等の学園私物化そして無責任で杜撰な学園運営に振り回され続けるだろう。今回の問題でも常務会や常任理事に速やかに報告され、集団的検討を行っていれば、もう少しましな対応になっていただろう。
自分がかかわった副校長の責任問題の回避、中等教育分野は自分の領域という思い上がりが、近代的集団的組織運営を逸脱し、処分判断が客観化されず、同じような不適切行為でも極端に軽かったり、重かったりするような事態を生み出すことになっている。
(3)各セクションの思い付きで学園が混乱している間に、長田豊臣理事長、森島朋三専務は来年の理事改選に向かって、一層自分たちに都合の良い理事会体制の確立を図ろうとしている。
2010年、長田豊臣理事長、森島朋三常務(当時)は、一時金カットや慰労金支給基準倍加などでの自らの責任を覆い隠そうと、それまでどこでも議論されていなかったサッポロビール大阪茨木工場跡地を購入し大阪茨木キャンパス を開設する(400億円を越える事業)を言い出した。それに対して5学部長理事(法・産社・国関・経済・理工)が反対していたにもかかわらず、学外理事の数に依拠して強行し、学園に混乱をもたらした。財政的にも経営・政策科学部と言う収入増につながらない既存学部の新キャンパス移転、そして何よりも維持管理経費だけで新たに30億円が必要になり、学園の財政的展望を提起できなくなった。
それ以降、思い付きのように総合心理学部、AIUとの共同学位学部(国際関係学部やAPUの位置づけが不明確なまま、財政的にも厳しい「グローバル教養学部構想」)、食科学部、教職大学院などを打ち出してきた。いずれもそれだけを取り出してその意義を主張することは誰にでもできる。問題は18歳人口激減期に向かおうとする今の時期、そして大学の国際的競争が深まる今日において、教育と研究の質の向上が最大の焦点となっている時に、膨大な設置経費を必要とする新学部を次々と設置することの是非である。どうしても新しい分野の教学組織が必要であれば、既存の教学分野で時代に即応しない教学組織の改組・改変などによって対応すべきものだろう。
そして問題は、学年歴(14週・100分授業)問題でもそうであるが、全学的に現行の制度が桎梏となって全学からその改組が要望されたものではなく、教学部が言い出し「ここまで準備を進めたものを、いまさらやめられないので、実行してほしい」と全学に迫り混乱を引き起こしていることである。食科学部、そしてAIUとの共同学位学部、教職大学院もそうである。提案している当事者以外から賛成や応援の言動は出てこなかった。それどころか様々な意見が繰り返して出され「継続審議」「継続審議」の議論がされてきて、「ここまで具体化がされたのだから認めて欲しい」というやり方の繰り返しである。
先日承認された教職大学院についても長田豊臣理事長や森島朋三専務はどうしても必要な大学院などとは考えていない。それを認めることによって推進してきた人々を自分達の側に取り込めるという判断だけである。先日、公務研究科の廃止が「定員が確保されなくなった」ことを根拠によって決定された。本来、教職大学院設置にあたっては、将来に至る定員確保の見通しを考慮に入れなければならなかった。それどころか定員が確保できても年間で約6000万円の持ち出しになることが明らかになっている。にもかかわらず経営責任を負うものとして、慎重な判断・言動を取るべき長田豊臣理事長や森島朋三専務は積極的な言動を行わず、認めてきた。要するに教学的検討どころか、経営にも責任を負わず学園の財政に困難をもたらすことが分かっていても、自分たちの地位の維持に役立つかどうかだけを考えて行動している。
長田理事長は「色々と私に対して批判的なことを言っていても、皆、自分のやりたいことをやるために、私にたなびいてきている」と周辺に語っている。このような隙を与えてはならないだろう。
(4)学園正常化の焦点は理事会体制の改組・刷新
長田豊臣理事長ならびに森島朋三専務の最大の関心毎は、来年に迫っている理事改選において、いかにして自分たちの学園支配をより安定的なものするしか眼中にない。そして実際、彼らは「役員のあり方検討委員会」を開催し、学部長理事の縮小、「任命制理事」の増加を巧妙に進めようとしている。これにたいして学園の正常化を願う人々は総長選挙規程の改定を求めて闘ったように、理事会体制の刷新そのものを自らの課題として闘う世論の喚起が大切だろう。
私は2005年の一時金カット以来の学園の混乱をみて、その克服の大きな障害が理事会体制にあると判断し、2012年に出版した拙著『立命館の再生を願って』(風涛社)で詳細に記述した。おそらく私立大学の理事会体制に本格的なメスに入れた最初の著作と推察される。立命館の学園運営に疑問を持たれている方は是非、読んでいただきたい。
この間の事態からの当面の焦点は
① 学内において選挙で選ばれた理事を理事総数の過半数以上にする。
先に記したように400穏円を超える大阪茨木キャンパス開設にあたって学内から強い反対意見が出されていたにもかかわらず、長田豊臣理事長や森島朋三総務担当常務(当時)は学外理事の数を頼りに強行した。現在立命館の理事数は41名であるが学内で選挙によって選ばれている理事は、総長+立命館大学の学部長13名だけとなっている。このいびつな構造を改めなければならない。そのためにはAPUの学長や学部長も立命館大学で行われているようにAPUにおいて選挙によって選ばれるようにすること。学外理事を含めて、増えすぎている「任命制理事」の数を削減する。
かつて私が総長理事長室室長として長田豊臣理事長と意見加交換していた時、彼はアメリカ史専攻の人間らしく「アメリカの大統領選挙は、制度的には様々な問題があるが、誤りのある施策を行えば、次の大統領選挙で敗れる。この点だけでも選挙で選ばれない人間が長になるのは良くない」と言っていた。今まさに立命館の理事長や専務はそのような状態にある。長田豊臣は総長の時は、総長選挙で選ばれ理事となっていた。しかし理事長になった時は川口清史前総長が総長推薦枠を使って理事会に推薦し理事に就任したのであってどこにも選出基盤の無い理事である。森島朋三専務も同様である。
② 総長理事長制へ移行させる
どこにも選出基盤の無い現行の理事長や専務理事が、過半数を超える「任命制理事」に依拠して学内意見と異なる方針を押し付け学園が混乱させられてきた。長田豊臣が理事会において理事長に選出された時、13名の学部長理事の内、彼に投票したものは2名のみで11名の学部長理事は反対した。このような人物が学内意見を無視して学外理事などに依拠して学園運営を行えていることが問題なのである。
今日、全ての国立・公立法人においては教学の最高責任者である総長(学長)が理事長を兼務し、理事長(総長)が推薦する副理事長や専務理事が総長(理事長)を支える仕組みとしている。そして関東の主要私学も総長理事長制を採用している。研究・教育を行うことを使命(目的)である大学においては当然のことである。立命館においても総長・理事長制に改組する必要がある。同時に、この間、気づかれないように改悪されていた「副総長は総長が理事長と協議の上、理事会に推薦する」(実際の運用としては、理事長が認めない限り提案できないか、理事会で否決されている)「理事長の経理決済は1億円以上、上限無し」という規定は、「副総長は総長が理事会に推薦する」「理事長の経理決済規程は1億円以上、2億円以下とする」などに改定しなければならない。
③ 高すぎる理事長や専務の報酬は教育機関らしく節度あるものとし、同一規模の学園なみ
に引き下げる
今年の春闘において初めて明らかにされたが、立命館の理事長や専務理事の手当は明らかに高すぎる。教職員に対しては「社会的水準」という言葉を使いながらも、同一規模の私学に対して年俸で明らかに低賃金を押し付けている。それでいて自分たちの役員報酬については、明らかに特段高い報酬を受け取っている(理事長2036万円、専務理事1846万円)。
私立学校は教育・研究を目的とし、学費を主とした財源とする非営利法人である。その学園の理事長や専務理事は高い道義性を持った節度あるふるまいで学園運営に務めなければならない。それが教職員には低賃金を得しつけ、学生(父母)には他大学に比して高い学費を押し付けておきながら自分たちは特段高い年収を受け取っていることは認められない。
これは長田豊臣理事長ならびに森島朋三専務による学園の私物化であり、両名の特権意識を助長し、その地位に固執する事態を生み出している。学園運営の正常化を図るためには、この問題についても改革する必要がある。そのためには学部長などの役職手当についても他大学水準に合わせる必要があるし、その手当を退職金に連動させるやり方についても是正する必要がある。
④ 専務理事を含めて職員系列の理事は部次長・課長などの職制会議において推挙された複
数者を一つの判断基準として、総長(理事長)の責任で理事会に推薦するなどへの改組も検討する必要がある。
なお学園の正常化・民主化を求める有志の人々によって作られている「オールRits」の機関紙「オールRits通信」が再開されたが、その12号において、理事会体制の改組についての提案が出された。そうした状況も踏まえ、このシリーズ(インターネットで スズキ ゲンさんのブログ と検索してください)でも、今後、改めて理事会体制について詳しく触れたものを掲載することにする。
鈴木元。立命館総長理事長室室長、大阪初芝学園副理事長、中国(上海)の同済大学アジア太平洋研究センター顧問教授、私大連盟アドミニストレーター養成講座アドバイザリー、JICA中国人材育成事業アドバイザリーなどを歴任。
現在、日本ペンクラブ会員、日本ジャーナリスト会議会員、かもがわ出版取締役、国際環境整備機構理事長。京都高齢者大学校幹事。
著書、『立命館の再生を願って』『続 立命館の再生を願って』(ともに風涛社)『大学の国際協力』(文理管閣)『像とともに未来を守れ』(かもがわ出版)等多数。
最新刊として、全共闘ならびに「解同」と対峙した側からの最初の包括的大学紛争史である『もう一つの大学紛争』(かもがわ出版)がある。