背寒日誌

2019年7月12日より再開。日々感じたこと、観たこと、読んだことなどについて気ままに書いていきます。

「ウェストサイド物語」の思い出

2005年09月20日 20時52分58秒 | アメリカ映画
 映画監督のロバート・ワイズが亡くなった。91歳だった。ワイズと言えば、「ウェストサイド物語」と「サウンド・オブ・ミュージック」。どちらもミュージカル映画の記念碑的傑作で、最も多くの人々が見て感動した映画だった。もちろん私もその一人だった。「サウンド・オブ・ミュージック」は私が中学1年のとき封切られ、友達と一緒に横浜の映画館で見た。「ウェストサイド物語」は封切りのときではなく、高校2年の夏にリバイバル上映されたとき、日比谷の映画館で一人で見た。二本とも思い出深い映画だが、やはり私は「ウェストサイド」を初めて見たときの感動の大きさを今でも忘れない。
 もう36年も前のことだ。ちょうど青春の真っ只中で、見た時期も良かったと思う。この夏は「ウェストサイド」に振り回された夏だった。私は日比谷の映画館でこの映画を3度も見た。3度とも一人ぼっちで……。金のない高校生の頃、財布をはたいてこんなに入れ込んだ映画は他にない。レコードも買い、「トゥナイト」「マリア」「クール」「アメリカ」など、バーンスタインの名曲を繰り返し聴いた。なかでも「マリア」は心に滲み、英語の歌詞を覚えて自分でも歌っていた。物干し台に出て、月を見ながら歌っていたのだがら、狂っている。原作のシェイクスピアの戯曲「ロミオとジュリエット」も読んだ。そして、若い男女の純愛に憧れた。その頃、片思いだったが、私には同級生にものすごく好きな女の子がいた。実は夏休みで彼女に会えないさびしさを「ウェストサイド」でまぎらしていたのだ。オレも彼女とあんな恋がしてみたい。マリア役のナタリー・ウッドと、恋する彼女が一つに合わさった。彼女への私の思いは、マリアに恋焦がれるトニーの心境と重なった。
 映画「ウェストサイド物語」のすばらしさは、私の個人的思い入れは別として、その恋愛ストーリーにあるのではない。ミュージカルの醍醐味を大画面を使って思う存分に表現したことにある。もっと具体的に言えば、青春のエネルギーと熱気をあふれんばかりに伝え、賛美したことにある。監督ワイズの演出もすごいが、なんと言ってもジェローム・ロビンスの振り付けがすばらしかった。主演の二人はそこそこだが、共演者のリタ・モレノ、ジョージ・チャキリス、ラス・タンブリンの踊りは、迫力満点!画面から汗が飛んで来そうだった。とくにリタ・モレノが「アメリカ」を歌い踊るシーンは、熟れた女の臭いがむんむんして、その色気にノック・ダウンされた強烈な印象が残っている。