背寒日誌

2019年7月12日より再開。日々感じたこと、観たこと、読んだことなどについて気ままに書いていきます。

カトリーヌ・ドゥヌーヴ

2005年09月18日 18時13分39秒 | フランス映画
 「8人の女たち」という映画にカトリーヌ・ドゥヌーヴが出ていることは知っている。しかし、どうも見る気がしない。還暦を過ぎふっくらと肥えてしまった彼女を広告記事でちらっと見て、幻滅を感じたからだ。見てはいけない醜い姿を見てしまった、なんて言ったら、今も現役で活躍しているドゥヌーヴに失礼かもしれない。が、私にとってこの冷たくて妖艶な女優は70年代半ばまでなのだ。できれば引退してもらいたいとずっと願ってきた。だから「終電車」も「インドシナ」もあえて見ていない。
 事故死した実姉の女優フランソワーズ・ドルレアックは、開花する前に消えてしまった。が、「ロシュフォールの恋人たち」の妹はその後まさに大輪の華となり、10年間以上活躍し続けた。これでいいのではないか。お姉さんの分までもう女優の仕事は果たしたと思うのだ。マストロヤンニとの大恋愛後、彼女は退くべきだった。あとは余生を楽しめばいい。これがファンとしての気持ちだった。
 ドゥヌーヴが主演している昔の映画で私がいちばん好きな作品は「昼顔」である。監督のブニュエルがこのころ3本たて続けにドゥヌーヴ主演の映画を作ったが、そのうちの最初の1本だ。富裕な貴婦人が昼間だけ娼婦を勤めるというストリーで、ドゥヌーヴの気品と魔性が最大限に発揮されている。こんな映画はアメリカでは作れない。貴族社会の伝統のあるにヨーロッパならでは映画だといえる。そして、あの頃のドゥヌーヴでなければ、こんな役はできない。とくに凄いのは、サドの若い男に滅茶苦茶にされ、逆にえもいわれぬ愉悦を感じる場面。そこに漂うエロティシズム。この時、彼女は何歳だったのか。脂の乗り切った*20代後半だったと思う。
「シェルブールの雨傘」から「うず潮」までのドゥヌーヴは輝いていた。そのイメージをいつまでも大切にしまっておきたい。そう思うのは私だけではあるまい。
 (*調べてみたところ、「昼顔」のドゥヌーヴはなんと24歳だった!!)