3つの大学で長年にわたって教授を務めた著者が、大学工学部の実情を軽快な語り口で綴る、人気シリーズからの3冊です。
数学者の藤原正彦さんのエッセイが好きで一時期よく読んでいましたが、最近ひょんなことからこのシリーズを知って3冊続けて読んだので、まとめて記録しておきます。
著者は筑波大学、東京工業大学、中央大学と3つの大学で学生を指導し、研究生活を送った工学部の先生です。
ヒラノ教授とありますが、ご自身の体験を綴ったエッセイで、シリーズはなんと20冊くらい続いていますが、リタイアされて全てのしがらみから解放されてから書かれたせいか、実名も数多く、リアルな内容がが刺激的です。^^;
いわゆる業界ものですが、こういうお仕事話は好きなので楽しみながら興味深く読めました。3つの大学での体験が書かれていますが、特に長く勤められた (表紙にもなっている) 東工大でのエピソードが中心となっています。
研究資金の話や、人事や組織に関する話など、国立大学と民間企業とはかなり事情が異なりますが、特に法人化されてからは省庁からの厳しいチェックが入り、本業である研究だけに没頭できない苦労が伝わってきました。
ヒラノ教授は私より少し上の世代ですが、私自身、理系の環境で育ってきて、日本の高度経済成長時代を肌で感じ、それを支える日本のものづくりの技術に誇りを持ってきたので、最終章のヒラノ教授のエンジニア賛歌に共感し、胸が熱くなりました。
シリーズ第2作目。物騒なタイトルにまさか内部告発?とどきどきして読み進めれば、どちらかというと今となってはもう時効となっているご本人の未遂?事件の数々、カラ出張やセクハラ疑惑、留学生賄賂未遂など、ユーモアを交えながら告白しています。
今は研究者の不正ができないよう、内部のチェックが厳しくなっているので、古きよき時代のお茶目な犯罪といったところですが、大学に限らずですが、不正は本人が望まなくとも、巻き込まれてしまうことがあるので恐ろしい。
衝撃を受けたのは、某大の人事抗争。大学は国の進むべき道を導く側面もあるので、私利私欲によって方向が曲げられることはいかがなものかと考えさせられました。当初の理念が守られていたら、日本にシリコンバレーが?できていたかもしれません。
シリーズ3冊目。読み終わってから、あれ?4人も秘書が登場したっけと思いましたが、最初の六本木秘書と、2番目のミセスKの2人のインパクトが強すぎました。^^;
特にミセスKは、ヒラノ教授が最後に中央大学を退官されるまで27年支えられた方であり、この本はヒラノ教授がミセスKに捧げる感謝状と理解しました。
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これでしばらくヒラノ教授シリーズを読むのはお休みにしますが「工学部ヒラノ教授のアメリカ武者修行」はいずれ読もうと思います。タイトルが、藤原正彦さんの「若き数学者のアメリカ」と小澤征爾 さんの「ボクの音楽武者修行」を想起させ、楽しみにしています。
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