セレンディピティ ダイアリー

映画とアートの感想、食のあれこれ、旅とおでかけ。お探しの記事は、上の検索窓か、カテゴリーの各INDEXをご利用ください。

オリエント急行殺人事件 (1974)/ローサのぬくもり 他

2018年01月20日 | 映画

DVDで見た旧作、3作品の感想です。

オリエント急行殺人事件 (Murder on the Orient Express) 1974

現在公開中のケネス・ブラナー版「オリエント急行殺人事件」を見た後に鑑賞しました。監督は「十二人の怒れる男」のシドニー・ルメットで、名作とよぶのにふさわしい作品でした。オープニングのアールデコ調クレジットからもうわくわく。発端となった事件について、新聞記事など交えリアルに手際よく紹介しています。

それに続くイスタンブール駅での物売りたちや山羊、食材、人々の喧騒から一気に旅の世界に引き込まれました。ポアロが乗客ひとりひとりを取り調べるところは2017年版とだいたい同じでしたが、クライマックスとなる推理の場面にしっかり時間が割かれ、犯人の正体と犯行の詳細、憎しみが胸に迫りました。

ローレン・バコール、アンソニー・パーキンス、ショーン・コネリーなど名作映画のスターたちが勢揃いし、見応えもたっぷり。ジャクリーン・ビセットの花のような美しさは、過去の悲劇をより浮彫にしていたように思いました。イングリット・バーグマンはスターのオーラを消し、意外性のあるチャレンジングな役どころです。

殺人事件ではありますが、動機に納得のいく犯罪であり、ポアロの大岡裁きもあって、ラストはハッピーエンディングを迎えます。軽やかなワルツが流れる中、シャンパンで乾杯し、旧交を温め合い、晴れやかな余韻が残りました。

ローサのぬくもり (Solas / Alone) 1999

数々の国際映画賞で高い評価を得た、スペインのヒューマンドラマです。

家族に暴力をふるう父親が嫌で家を飛び出し、都会で一人暮らしているマリア。しかし仕事は長続きせず、バーに入り浸り酒に溺れる毎日。母のようにだけはなりたくないと思っていたのに、結局つきあうのは父のように暴力をふるう男ばかり。そんなある時、父がマリアの街の病院に入院し、つき添う母がマリアのアパートにしばらく滞在することに。

母はマリアの荒んだ生活を心配し、料理や掃除と世話をやきますが、マリアはそんな母が疎ましい...。はじめはマリアのどん底ともいえる生活が見ていてつらく、暗い気持ちになりますが、母ローサがひょんなことから階下の老人と親しくことばを交わすようになってから、おもしろくなってきました。

老人は妻に先立たれ、愛犬だけが話し相手という孤独な生活。やもめ暮らしを見かね、ローサが心配して料理を作り、面倒を見るうちに2人の間に友情のような関係が生まれます。恋愛...とはちょっと違いますが、老人にとってローサは心安らげる存在、ローサにとっても紳士な老人はこれまでの人生になかったときめきを与えてくれたのではないでしょうか。

そしてローサとのつかのまの生活は、マリアの心にも氷が解けるような変化をもたらします。ラストはある意味シンデレラストーリーといえなくもなく、できすぎ...とも思いますが、ローサがマリアに残してくれた贈りものだったのかもしれませんね。

カサンドラ・クロス (The Cassandra Crossing) 1976

ジュネーヴの国際保健機構に侵入したゲリラのひとりが、アメリカ軍が極秘に研究していた細菌兵器の病原菌をつけたまま逃走。ストックホルム行きの大陸横断鉄道に乗り込みます。アメリカ軍大佐は乗客を隔離すべく、列車をポーランドの隔離施設に向かわせるよう指示。しかし真の目的は研究の証拠隠滅を図ることでした...。

オールスターキャストによる鉄道パニック&細菌パニック映画。保菌者と思いっきり接触しているのに感染しなかったり、感染した人がなんの治療もしないうちに自然治癒したり、つっこみどころはたくさんありますが^^; はらはらドキドキと楽しめました。オリエント急行~同様、鉄道旅行の気分が満喫できました。

ソフィア・ローレンの迫力ある美しさ。列車がポーランドに向かうことを知って(強制収容所を思い出し)パニックになるユダヤ人の男性。ヒッピー風の若い男女。大国アメリカの陰謀...など、時代を感じさせるあれこれが懐かしい。ラストは一応の解決を見せるものの、ぞわっと背筋が凍ります。

ジェリー・ゴールドスミスの憂いを秘めたテーマ曲も印象的。パニックの場面ではストラヴィンスキー風?でした。タイトルのカサンドラ・クロスはポーランドの隔離施設の手前に架かる橋の名前。モデルとなっているのはフランスにあるガラビ橋で、エッフェル塔のギュスターヴ・エッフェルが設計したそうです。


コメント (12)    この記事についてブログを書く
« 築地本願寺カフェ Tsumugi | トップ | 没後40年 熊谷守一 生きる... »
最新の画像もっと見る

12 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
☆ margot2005さま ☆ (セレンディピティ)
2018-01-22 08:17:11
margotさん☆
カサンドラ・クロスに反応してくださって
ありがとうございます。^^
margotさんは当時シアターでご覧になっているのですね~
いろいろ盛りだくさんで、はらはらドキドキ感もあっておもしろかったですね!
橋のシーンも大迫力でした♪
返信する
☆ ノルウェーまだ~むさま ☆ (セレンディピティ)
2018-01-22 08:12:48
まだ~むさん、おはようございます。
みなさんが旧作のオリエント急行を絶賛されるので
見てみたくなりました。
手堅い作りで、謎解きのおもしろさもあってよかったです。
名作のリメイクは、そのままでは新鮮味がないし
かといって奇を衒ってはじけすぎるのも原作ぶちこわしだし
難しいですね。
でも今のスターが演じる、ということに意味があるのかな
とも思います。
返信する
こちらにも〜 (margot2005)
2018-01-21 20:48:08
「カサンドラクロス」に反応してしまいました。
公開時シアターで見たのですが、40年も前の映画だったのですね?
今でも記憶に残るインパクトあるドラマでした。
何といっても橋のシーンは圧巻でした!
返信する
旧作は名作 (ノルウェーまだ~む)
2018-01-21 17:38:18
セレンさん☆
旧作のオリエント急行~をご覧になられたのですね!?
私は旧作も原作も未見未読ですが、雰囲気といいドラマ性から言っても旧作の方が良さそうですね。
近年様々な作品でリメイクやら続編やらが作られて、どれも映像的には過去作品にはない見事な部分があるけれど、結局それだけの事って思っちゃいますよね。
今でも名作と言われて残っている作品はその分素晴らしいってことなのでしょうか☆
返信する
☆ tomoさま ☆ (セレンディピティ)
2018-01-21 17:18:56
tomoさん、こんにちは。
先月、今公開中の「オリエント急行殺人事件」を見ましたが
私も原作も1974年の映画も見ていなかったのですよ。
それで、禁じ手とは思ったのですが、映画を見る前に
結末だけこっそりチェックしておいたのです。
登場人物が多いので、ストーリーを追えるかな?と心配だったので...。

その時の記事↓
http://blog.goo.ne.jp/serendpt3/e/db2d345870341eed31ee285a990cff11

この時は、意外と「正解でしたね」と言ってくださる方がいらっしゃいました。

2017年版もおもしろかったですよ。
ジョニー・デップはじめ、今人気の俳優さんが出演している
というのは魅力ですよね☆
返信する
Unknown (tomo)
2018-01-21 13:09:23
オリエント急行殺人事件、とても有名な小説ですが、本を読んだことがなくて内容を知らないでいます。
公開中の映画を、予備知識なしで見るべきか、1974版を見てから見るべきか、それとも原作を読んでから見るべきか悩んでおります。

もしかしたら新しいものを見るよりも、1974版を見た方が面白いのでは・・・?とセレンディピティさんの紹介と、みなさまのコメントを拝見して思いました。

返信する
☆ ごみつさま ☆ (セレンディピティ)
2018-01-20 17:59:10
ごみつさん、こんにちは。
オリエント急行、よかったです~☆
奇を衒わない手堅い作りですが、作品のもつエレガントな世界や
事件の全容がしっかりと伝わってきて引き込まれました。
「ナイル殺人事件」も見てみたいです☆

「カサンドラ・クロス」おもしろかったですよ。
オリエント急行と同じく、鉄道を舞台にした密室劇ですが
ヨーロッパが舞台というのがまた旅情をかきたてるのでしょうね。

ローサのぬくもり、ポスターの写真は内容とあまり合っていませんが^^;
ぎゅっと心をしめつけられる作品でした。
返信する
☆ マリンカさま ☆ (セレンディピティ)
2018-01-20 17:26:20
マリンカさん、こんにちは。
マリンカさんはお若いのに、古い映画をよくご存じですね!
オリエント急行、ゴージャスですてきでしたね。
登場人物が、実は...と次々正体がわかってくる場面は
まるでオセロのごとしでした。

カサンドラ・クロスもおもしろかったですね。
>最近の映画にはない謎のレトロな迫力
この映画の魅力はこれにつきますね。^^

ローサも堪能しました~ご紹介ありがとうございました。
>ローサ自身は幸せだったのか
う~ん、ローサもろくでもない夫に苦労してきたのでしょうが
それでも心配して病院につき添うくらいですから、
長年連れ添ってきたがゆえの愛情のような気持ちは
あったのでしょうか ...昔の女性ですね。
ローサにとっては、心配の種のマリアが
幸せになってくれたら、それで十分だったのかな?
それでもあの優しい男性は、ローサの人生に
ぽっと光を当ててくれましたね。
返信する
映画も時代とともに (ごみつ)
2018-01-20 17:11:46
こんにちは!

旧作の「オリエント急行」ご覧になったんですね!
エレガントな雰囲気が良いし、密室劇としての出来栄えも素晴らしくて、どうしても新作にちょっと不満を感じてしまうんですよね。

次回の「ナイル殺人事件」の旧作もなかなか面白いので予習で見ておくと良いかも!

「カサンドラ・クロス」は私、未見なんですよね~。面白そうなので今度是非見てみます。映画音楽もチェックですね!

「ローサのぬくもり」も良さそうですね。ポスター見て、ペネロペ・クルスかと思いましたが違うんですね。^^;
返信する
Unknown (マリンカ)
2018-01-20 16:31:29
まだ2017年度版は観ていませんが、オリエント急行の古い方は鑑賞しました
出ている俳優陣がとっても豪華で見ごたえがありましたね~!
前知識全くなく、犯人誰だろう~と観ていたら…最後びっくりしました(笑)


カサンドラ・クロスも面白いですね。
どちらも鉄道内での撮影ですが、最近の映画にはない謎のレトロな迫力がとてもやみつきになります


ローサのぬくもりは3度観返しましたが、3度泣きました(笑)
ローサがいたからこそあの繋がりができましたが…ローサ自身は幸せだったのか…

もし残念な旦那さんを捨てて優しい男性の方を取り、娘と孫と4人で幸せに暮らしました~
という道を選んだとしても、ローサの性格なら捨てた旦那さんの事をずっと気がかりに思うでしょうし、どっちの人生にしろ難しいな…と答えの出ないことをぐるぐる考えてしまいます
返信する
☆ ヌマンタさま ☆ (セレンディピティ)
2018-01-20 16:23:40
ヌマンタさん、こんにちは。
オリエント急行、新作も悪くはなかったのですが
旧作を見てしまうと、なぜわざわざリメイクを?と思ってしまいますね。

カサンドラ・クロスは、以前映画音楽の話をした時に
ヌマンタさんがご紹介くださったので、見てみました。
とってもおもしろかったです!
ジェリー・ゴールドスミスの音楽も、ハードボイルドな
大人のムードがあってよかったです☆
返信する
懐古趣味ではないけれど (ヌマンタ)
2018-01-20 15:55:03
やはり、ポアロは旧作の方が原作のイメージに合っていると思います。新作の熱演を否定する気はないのですが、原作ファンとしては、如何ともし難いですね。
「カサンドラ・クロス」の最後は、たしかにゾッとします。冷戦真っ最中ですから、実際に似たようなことはあったのでしょう。余談ですが、数ある映画音楽のなかでも、私はこの「カサンドラ・クロス」はお気に入りなんです。ジェリー・ゴールドスミスの傑作だと思っています。
返信する

コメントを投稿

映画」カテゴリの最新記事