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天才作家の妻 40年目の真実

2019年02月08日 | 映画

名優グレン・クローズがノーベル文学賞受賞作家の妻を演じる、サスペンスフルなヒューマンドラマです。

天才作家の妻 40年目の真実 (The Wife)

夫ジョゼフ(ジョナサン・プライス)がノーベル文学賞を授与されることになり、妻のジョーン(グレン・クローズ)と息子デヴィッドも同行し、授賞式が行われるストックホルムへと向かいます。セレモニーを前にジョゼフとジョーンはお祝いムードに包まれますが、2人には長年抱えてきたある秘密がありました...。

グレン・クローズの演技がとにかくすごいと聞いて、楽しみにしていた作品です。ジョゼフとジョーンが長年抱えてきたある秘密というのは、序盤でまもなく明らかになりますが、実はジョゼフがこれまで発表してきた作品は、すべてジョーンが書いていたというもの。

才能があり、若き日に作家を夢見ていたジョーンですが、女性の名では売れないという当時の状況もあり、ひょんなことからジョゼフのゴーストライターとして作品を発表し続けていたのです。

同じような設定の作品に、ティム・バートン監督の「ビッグアイズ」という、実話をもとにした映画がありました。本作は実話ではありませんが、妻が長年抱えてきた葛藤や怨念、心の叫びがひしひしと伝わってきて、同じ女性として考えさせられる深いドラマとなっていました。

本作は、夫がノーベル賞を受賞することになったことに嫉妬して「ほんとうは私が書いたのよ!!」と言い出した身勝手な女の話では決してないのです。彼女の積年の思いをくみ取ると、よくもまあ、ここまで連れ添ってきたと思いますが、時代背景もあるし、この夫婦にしかわからない機微もあるのでしょう。

そもそもジョゼフがジョーンの指導教授で、知り合った時に既に妻子がいたという時点で、この男がいかに信用できないかわかりそうなものですが、どうしてジョーンはジョゼフを好きになったのかな? ダメな男ほど愛おしいということでしょうか。しかも今も夫をかいがいしく世話し、浮気を黙認しているなんて。

ジョーンにとっては、自分の作品を発表するのにふさわしい”器”を見つけたということでしょうか。ふつうは人の書いたものを自分の作品だと発表するなんて、恥ずかしくてできないもの。ジョーンには、ジョゼフの軽薄さが必要だったのかもしれません。

ノーベル賞受賞者たちが集まっている時、ジョゼフはきっとむなしさをひしひしと感じていたでしょうね。世界の天才が集まっている時に、自分だけが偽物だという真実。思えば彼がこれまで味わってきた劣等感が、彼をジョーンへの裏切り行為へと掻き立てたのかもしれません。

2人の分業はこれまでうまくいってたのでしょう。でもそれも互いが互いを尊重しあってこそ。ジョゼフは”内助の功”なんて陳腐なことばでジョーンを語るべきではなかった。しかも「彼女は書けない」だなんて...これはジョーンはブチ切れて当然でしょう。

グレン・クローズの凄みのある演技は圧倒的でした。ジョーンは、誰にも自分が書いたとは一言も言っていません。それどころか、ジョゼフの伝記を書こうとしているジャーナリストには「彼の名誉を傷つけたら承知しないわよ」とさえ言っています。でも目ははっきりと真実を物語っていた...。大人のドラマを堪能しました。


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6 コメント

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Unknown (marimoheko)
2019-02-08 17:17:22
セレンさん、こんにちは~!
アプリなしでスマホからコメントを書くと名前が変えられないのですが、マリンカです😅

「ビッグアイズ」とっても楽しかったのですが
こちらの映画も同じような題材を取り扱っているんですね~!
是非観たいです。
昔はこういうことが多くて、女性が生み出したものだと知られていない作品もひょっとしたら世の中にたくさんあるのかな…


「地下鉄道」とっても良い小説に出会えました✨
セレンさんありがとうございます😄
こうなったらドラマの方も観たいですね~。
ミラン・クンデラ作品、まだ2作目ですが外れがないのでは?!て思う程面白くて今後別作品も楽しみです😍💕
「存在の耐えられない軽さ」私ももう1度読みたいのと、
映画のレンタル取り扱って貰えないか期待です😆
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☆ マリンカさま ☆ (セレンディピティ)
2019-02-08 23:05:07
マリンカさん、こんにちは。
お名前拝見してすぐにマリンカさんとわかったので大丈夫ですよ。(^_-)-☆
スマホからの見た目が変わりましたが、コメント欄もそんなことになってるのですね??

ビッグアイズはちょっとコミカルなところもありましたが
こちらはシリアスなドラマでした。
でもとってもおもしろかったですよ☆
私も映画を見た後に気になってちょっとググってみたのですが
古くはブロンテ姉妹が男性名で作品を出版していた他
最近ではハリーポッターのJ・K・ローリングが性別が特定できないようにアルファベットにしたのだとか...
↓こちらのサイトを参照しました。
http://www.tokyobookgirl.com/entry/2017/07/02/120000

地下鉄道、マリンカさんも楽しまれたようでうれしいです。
クンデラの作品も楽しみ☆
古い映画はなかなか難しいのかな... 取り扱ってもらえるといいですね。

キッチネッテ、マリンカさんお気に入りのすてきなカフェですね☆
コーヒーゼリーすごくおいしそう。
カントリーテイストのインテリアも好みです☆
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興味深い (ノルウェーまだ~む)
2019-02-09 00:10:07
セレンさん☆
実は「ビッグアイズ」も未見なのですが、こちらの作品も気になっていた作品です。
自分の生み出した作品が評価されてノーベル賞まで取るところまでいくと、感情的に嬉しいのか悔しいのか良く判らなくなりますね。
夫はある意味ずっと劣等感に苛まされていたのかもしれないです。
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☆ ノルウェーまだ~むさま ☆ (セレンディピティ)
2019-02-09 10:10:49
まだ~むさん、こんにちは。
ビッグアイズは女性画家の話でこれもおもしろかったですが
天才作家~は重厚なドラマに魅せられました。
ジェーンはノーベル賞を受賞してもちろんうれしかったと思いますが
本作ではそれ以上に、長年にわたって積もり積もった
夫婦間の齟齬を描いた作品と受け止めました。
ある意味怖い話です。
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こんばんは (margot2005)
2019-03-05 22:08:55
”内助の功”どころではないですよねジョーンのしたことは...。
あの情けない夫と恋をした彼女の気持ちは理解できませんが、まぁそれは男と女の関係ですから理解を超えるものがあったのでしょうね?
グレン・クローズは静かなキャラでしたが、奥にすごく強いものを秘めている感じがナイスでした。
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☆ margot2005さま ☆ (セレンディピティ)
2019-03-06 08:51:06
margotさん、こんにちは。
以前から、ノーベル賞受賞者の”内助の功”という言い方に違和感を覚えていたので
今回は特にそれが刺さりました。
最初はもちろん愛情もあったのでしょうが
いつしか互いが互いを必要とすることを愛情と錯覚していたのかも?
グレン・クローズ、内面がめらめらと燃えていましたねー!
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