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フジコ・ヘミングさんに捧げる

2024年05月09日 | 日々のこと

60代後半で奇跡のピアニストとして見出され、その後世界各地で演奏活動を続けてこられたフジコ・ヘミングさんが、2024年4月21日に92年の生涯を閉じ、永眠されました。5月2日フジコさんの公式ホームページで発表されました。


私のフジコさんとの出会いについては、以前ブログに書いているので再掲いたします。

フジコさんが1999年にNHKのドキュメンタリー番組で紹介され、一夜にして有名になった時、私はアメリカにいてしばらくその熱気を知りませんでした。ところがその後、フジコさんがニューヨークのカーネギーホールでリサイタルを開くことになり、聴きに行く機会を得たのです。

フジコさんのコンサートは、それまでに聴いたどのピアニストとも違っていました。まずクラシックのコンサートにはめずらしく、プログラムがありません。一曲ずつ、客席の方を向いて曲名を告げ、弾き始めるところは音楽ライブといった感じ。そして客の反応を見て、次の曲を決めていらっしゃるような印象を受けました。

独特の重ね着ファッション。佇まいにただならぬ迫力があり、圧倒されました。演奏も個性的で、曲に自分を近づけるのではなく、曲を自分の世界にぐいっと引き寄せるようなパワーを感じました。

以上 過去記事「フジコ・ヘミングの時間」より

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そして 5月6日Eテレで、フジコさんを追悼して、フジコさんが脚光を浴びるきっかけとなった1999年放映のドキュメンタリー番組「フジコ~あるピアニストの軌跡~」が再放送され、25年目にしてようやく見ることができました。

下北沢の演劇のお稽古場を改装したというご自宅での日常。ヨーロッパ調のアンティーク家具やインテリア、猫ちゃんたちがごろりと寝転がるお部屋、フリルやレース、ご自身の刺繍を加えたお洋服など、どれもフジコさんのぶれない生き方が感じられ

自分の好きなもの、似合うもの、誰とも違う世界を持ったすごい方だなーと改めて感動しました。これまでの苦難の道を悲観することなく、不運や誰かを恨むことなく、淡々と語るその姿に、ほんとうに強い方だなーと感嘆せずにはいられませんでした。

そして、リストやショパン、ベートーベンなど、ピアノの演奏もすばらしかった。フジコさんのピアノには魂の叫びのようなすごみを感じます。今は天国でピアノを弾いていらっしゃるでしょうか。ご冥福をお祈りいたします。

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