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チャーリング・クロス街84番地

2023年08月25日 | 映画

アンソニー・ホプキンスと、アン・バンクロフトの心温まるヒューマンドラマです。

チャーリング・クロス街84番地 (84 Charing Cross Road) 1986

ここのところ、アンソニー・ホプキンスがマイブームとなっていたので、NETFLIXで偶然見つけた本作にアンテナがピピッと反応。期待通りにすてきな作品でした。「日の名残り」(The Remains of the Day) を彷彿とさせる、ホプキンスの英国紳士の魅力を堪能しました。

ロンドンの古書店に勤めるフランク (ホプキンス) と、ニューヨークに住む作家で、希少本の収集を趣味とするヘレーヌ (アン・バンクロフト) との往復書簡が、本作の主たるストーリーとなっています。ヘレーヌのマニアックなリクエストに

これまたプロフェッショナルな立場から適切なアドバイスを行い、彼女の希望にぴったり合う書籍を探し出し、小包を発送するフランク。二人が送り合う手紙の、知的で流麗な文章のやりとりに魅了され、うっとりと酔いしれました。

今は海外との仕事のやりとりもメールがほとんどで、カジュアルで実務的な文章がふつうとなっているので、二人が交わす格調高い文章に、はっとさせられました。手紙や注文した書籍が郵便で届くのを待つ、その時間さえもが贅沢に感じられました。

それから、ニューヨークとロンドン、それぞれの街の風景や文化の違いが、うまく描き分けられているところも楽しかった。ロンドンの重厚な街並み。マンハッタンの高層アパートメントからの眺めや、タクシーのクラクション、BGMのガーシュインっぽい音楽など。

舞台は戦後、1950年代頃でしょうか。同じ戦勝国でありながら、戦争による経済的損失を引きずっているイギリスと、物質的に豊かなアメリカ。物不足に困っているフランクたち古書店員たちに、ヘレーヌは缶詰やハムなど、ホリデイ用のごちそうを送ります。

まったく会ったことがなくても、文章のやりとりで相手の人となりは通じあうもの。それはメール時代の今でも同じではないでしょうか。私も自分の経験からそのことを実感していますが、本作を見て言葉の持つ力に改めて気づかされました。

いつしかヘレーヌからの手紙を心待ちにしているフランク。それはヘレーヌの手紙を読むフランクの表情から伝わってきました。二人は互いに惹かれ合いながらも、一度も愛のことばをささやくことなく、20年以上一度も会うことがなかった。

フランクは妻ノーラ(ジュディ・デンチ)を深く愛していましたが、ノーラの心の中は決して平穏ではなかったかもしれません。良識ある大人のひそかなロマンスが、本作を尊いものにしています。

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