今日は山梨県民第九演奏会です。
本当は今年も合唱団の一員として出演するはずだったのですが、体調が思わしくなく、本番前日のリハーサル、本番当日朝からの練習、ゲネプロ等ハードスケジュールをこなした後に、具合が悪くなって仕事に差し支えてもいけないので、残念ながら今回の演奏会には不参加とし、演奏を聞きに行くだけにしました。
今年の演目はワーグナー楽劇「トリスタンとイゾルデ」より”前奏曲と愛の死”、ベートーベン交響曲第9番合唱付き。
指揮者はヨーロッパで活躍中の若手指揮者(確か33歳だったかな)でバレンシア州立歌劇場管弦楽団のコントラバス奏者でもある中田延亮さん、ゲストコンサートマスターはN響の山口裕之さん、ソリストは昨年と同様のメンバーでソプラノの日比野幸さん、メゾソプラノの田村由希絵さん、テノールの大槻孝志さん、バリトンの河野克典さんです。
第一部は「トリスタンとイゾルデ」の前奏曲と愛の死。
冒頭の弱音がもっと強調されていれば、メリハリがきいてよかったのにとも思いましたが、大好きな曲を久々に聞けて満足しました。
それと愛の死の最後はだんだん音が小さくなって音が消えた後もその余韻を大切にするために、よくオペラなどでは開演前に音が消えるまで拍手はしないようにとアナウンスされることもあるのですが、今回はそのようなアナウンスもないのに、誰一人としてフライング拍手をする人がいなくてびっくりしました。
よくわかっている観客ばかりだったのか、それとも音が消えても姿勢を崩さなかった指揮者の力なのか。
第二部はいよいよ第九。
オーケストラと合唱団の合同練習の時も感じたのですが、今回の演奏は重厚でもなく、流麗でもなく、颯爽としてさわやかな演奏だったように思います。
最近聞いたパーボヤルヴィの第九も颯爽としていて何か共通したものを感じます。
これが今流行りの演奏スタイルなのでしょうか。
毎年合唱に参加して、はたして会場の後ろまでちゃんと声が届いているのかとか、客席から見るととどんなふうに聞こえるのか、チケット1500円を払って聞く価値があるのかと気になっていたのですが、図らずも今回それを確認することができました。
いつも注意されていた発音、特に子音の発音をはっきりと、と言われていましたが、客席からはかなりはっきり聞き取れました。
また、オーケストラとの合同練習のときにオーケストラの音にかき消されて合唱の声がほとんどきこえなかったので、これでは客席まで届かないのではと心配しましたがそんなこともなくちゃんと聞こえていました。
自分が歌っている時は欠点ばかりが気になりましたが、客席で聞くとそれほど気にならないのも新しい発見でした。
思っていたよりもずっと良かったように思います。
これならチケット代を払う価値があるんじゃないでしょうか。
技術的には細かいところでいろいろ修正すべき点があるのはしかたがないこととして、今回気がついたのはオーケストラと合唱のアンサンブルと音楽としてどう表現するかということです。
アンサンブルについてはオーケストラと合唱がそれぞれちょっとばらばらな感じがしました。
オーケストラと合唱の合同練習が少ないせいでしょうか。
お互いの音を聞きあうという感覚を持った方がよさそうです。
また、最後のコーダの部分でオーケストラが盛り上がっているのに合唱団が割と冷静に淡々と歌っていて歓喜が感じられません。
技術的なことに気を取られてばかりいないで、もっと歌詞の意味を考えて喜びを表現できるように歌うことが大切だと感じました。
自分で歌っている時には気が付きませんが、客観的に聞いてみてよくわかりました。
今回の反省を踏まえて来年は新たな気持ちで合唱に望めそうです。
それから、ちょっとしたハプニングも。
第九の第四楽章、いわゆる歓喜の歌として有名なフロイデで始まる部分で、私は合唱の方に気を取られていて瞬間を見逃したのですが、バタンという物音で舞台の中央を見ると、指揮者の正面の弦楽器奏者(たぶんビオラ)が何かを拾い上げていました。
弓でも落としたのかなと思って見ると指揮棒でした。
その弦楽器奏者は指揮棒を指揮台に置いて演奏を再開。
指揮者もほどなくその指揮棒を持って何もなかったように指揮を続けます。
指揮棒がすっぽ抜けたのか、指揮台にぶつけたのかはわかりませんが歓きわまってのことでしょう。
一番歓喜していたのは指揮者だったのかもしれません。
指揮者が指揮棒を飛ばすのを見たのは初めてです。
そういえば、数年前、東京でN響の定期公演中に結構大きな地震が起こり、それに驚いた指揮者のアシュケナージが指揮棒を手に突き刺してしまい、そのあとの楽章だったか、楽曲だったかを指揮者なしで演奏したという事件がありました。
ちょうど同じ時刻に甲府でロリンマゼール率いるトスカニーニフィルの公演があり、私も会場にいましたが、こちらでも結構地震の揺れがありました。
しかし、ロリンマゼールは全く動じず、奏者の面々もイタリア系の人が多かったせいか地震に驚くこともなく演奏が続けられました。
(この時の演目はベートーベンの交響曲第3番「英雄」でした。)
特にちょうど演奏していなかったコントラバスの奏者たちはおもしろがって周りを見回していたくらいです。
いろいろなハプニング、これも生演奏ならではのお楽しみかもしれません。
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もうピアノは演奏していないんでしょうか。