清運寺だより

ようこそいらっしゃいました。甲府市にある日蓮宗寺院の住職のブログです。日々の出来事、感想、行事などをご紹介します。

愛之助と外郎売

2010-12-01 16:52:47 | クラシック

市川海老蔵降板による代役として外郎売を演じた愛之助さん。

観たかったですね。

市川宗家のお家芸である外郎売、海老蔵さんの出演を望まれた方も多かったことと思いますが、市川家以外の人が外郎売を演じるのは珍しいこと、そういう意味ではとてもレアな公演になったことと思います。

歴史に残る公演を生で見られた人はラッキーですね。

外郎売に関しては現団十郎さんと現海老蔵さんが新之助時代に演じるのを見たことがあります。

現団十郎さんは滑舌が悪くもごもごして聞きとれない感じで、海老蔵さんの方はまだ若くて芸がこなれていないようでしたが滑舌が良いので団十郎さんよりはまだ聞きやすかったという印象があります。

一般的に市川家のお家芸である歌舞伎十八番は市川家の人間しか演じられないと思われているようですが、今回の代役で市川家の人間でなくても誰でも支障なく演じられるんだということが露呈してしまいました。

公演目前での代役、それをものともせずにやり遂げた愛之助さんの外郎売と市川宗家の外郎売、どちらが優れているのか見比べられないのが残念です。

代役を務めた片岡愛之助さんは元々は梨園の御曹司ではなく、一般の家庭から片岡一門の弟子となり、その後片岡秀太郎さんの養子となって片岡家の一員になった方です。

そのため、梨園の御曹司なら3,4歳からはじめさせられる様々な稽古も途中からはじめることになったハンデを乗り越えた苦労人です。

このような方が生まれたときから宗家のトップと決まっている人に代わって舞台に立つというのは歌舞伎よりも歌舞伎的な痛快さがあります。

今まで宗家の座に安穏としていた市川家、芸の上では代々の団十郎とだけ比較をされていましたが、これからはそうはいかなくなるでしょう。

今回の降板では海老蔵さんの素行の悪さとか、宗家としての品格が問われることになりますが、演目を変更せずに(公演がまじか過ぎて演目の変更ができなかったのかもしれませんが)代役を立てたことによって市川宗家の存在価値自体が問われる結果となってしまった気がします。

梨園でなければ良い役に就けないという今の制度自体が変わっていくきっかけになるかもしれません。

梨園の御曹司だから芝居がうまいとは限りませんから、観客としては本当に良い芝居をする人を観たいものです。

芸とは本来そういうものでしょう。

それから、片岡愛之助さん、現在の芸風は片岡仁左衛門さんをリスペクトしているらしく相当仁左衛門さんに似ています。

仁左衛門ファンとしてはその芸風の跡継ぎとして期待しますが、ビジュアルも背丈も仁左衛門さんとは違いますから愛之助さんならではの芸風も開拓してほしいものです。

 

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3 コメント

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はじめまして。 (ぺこきち)
2010-12-13 10:56:08
偶然、こちらのブログを拝見しました。
ぶしつけにコメントをつけて、すみません。

内容を拝見して、胸がスッといたしまして、書かずにおれませんでした。

私は、ごく平凡な会社員ですが、1年がんばった自分を慰労する意味で、今年の南座のチケットは早くから押さえておりました。
今回、思いがけず愛之助さんの外郎売を拝見でき、ラッキーでした。
顔見世の舞台での突然の大役、それでも全身から嬉しさを爆発させた愛之助さんは、よく通る声で、見事につとめておられました。
私の記憶が確かなら、海老蔵さんの舞台ドタキャンで愛之助さんがつとめられたのは、これで2回目。2007年、やはり歌舞伎十八番の「鳴神」でした。あの時も愛之助さんの舞台の凄さに観客は熱くなったと聞いています。
それでも愛之助さんは、歌舞伎座さよなら公演期間中、一度も、端役さえつけてもらえずです。
もともと上方の役者全体が軽く扱かわれている感じがしましたが、それに加え、戸籍からきちんと養子になったとはいえ、本当の血縁ではないと、こうなんだな、と悔しい思いがします。
海老蔵さんの舞台復帰も、来年五月と決まっているようです。
結局は、何も変わらないんじゃないかと思います。もし、愛之助さんが、どんどん活躍できるような体制に変ることができたら、歌舞伎は大いに活気づくんじゃないかと思います。
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京都での幸せ (ひろりん)
2010-12-13 17:28:13
偶然、こちらのブログを拝見しました。
ぶしつけにコメントをつけて、すみません。
内容を拝見して、胸がスッといたしまして、書かずにおれませんでした。・・・・すみません、べこきちさんのコメントをそのまま使わせていただきました。
ご住職の言われるとおり、そして「べこきち」さんのコメントが全くその通りです。愛之助丈は本当に良かったです。荒事は成田屋・・・の通念を変えてくれる好演でした。上手二階の席から観ておりましたが、仁左衛門丈が愛之助さんに「入った」ようにさえ思えました。この「外郎売り」から始まる夜の部は、吉右衛門丈・仁左衛門丈・玉三郎さんみなさん好演・力演で、海老蔵の代役を努めた愛之助丈を見守っているのかな・・・とさえ思いました。特に、坂田籐十郎・中村扇雀親子共演の「河庄」は圧巻で、関西歌舞伎の力量を改めて見せてくれました。
終演が夜11時近くだったのですが、心地よい鴨川の夜風にあたりながら、ホテルに戻りました。東京から新幹線+ホテル代が高額でしたが、自覚がなく自己管理ができていない海老蔵の抜けた穴をみんなで盛り上げた素晴らしい南座でした。
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愛之助さんの好演 (seiunzi)
2010-12-13 18:36:36
ぺこきち様、ひろりん様

コメントありがとうございます。
南座の熱気が伝わってくるようです。
海老蔵さんの事件は歌舞伎界にとっては不祥事でしたが、その穴を埋めるべく奮闘した役者さんたちの好演によってかえって盛り上がった感もありますし、連日の海老蔵さん関係の報道で新たに歌舞伎に興味を持った方もいらっしゃるようです。災い転じて福となす 。これを機会に歌舞伎界のさらなる発展・改革を期待しましょう。
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