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JI3GAB/blog

ラジオに関する話題を中心につらつらと

今年もよろしくお願いします

2006-01-19 02:22:02 | ラジオ(その他)
しばらく更新していませんでしたが、今年もよろしくお願いします。
あまりまとまった話はまだ無いのですが、近況報告など。暮れにおかしくなってしまったアンテナ(サガ電子CM144W7)は、結局コネクタの断線で、もう7年くらい使っているので年明けにケーブルごと交換しました。なぜかときどきSWRが高くなったりしますが、だいたいは大丈夫のようなのでしばらく様子を見ながら使うつもりです。
それから、念願の96kHz/24bitサンプリングのサウンドカードを購入しました。SDR-1000の現在の推奨カードでもあり、アマチュアでソフトウェアラジオをやっている人達がよく使っているM-AudioのDELTA-44というものです。SoftRock40とRockyなどとの組合せで、7MHzのアマチュアバンドのほとんどがカバーできるようになったのは良いのですが、どうも電源ハムを拾っているようで、スペアナ表示の中心のところでまた山が見えるようになってしまいました。ベリンガーのMIC100をつないだマイクからの信号のキャプチャのときは問題ないのですが、SDR-1000やSoftRock40を接続するとハムが乗るようでまだ原因はつかめていません。気になる性能(ソフトウェアラジオで使う場合のダイナミックレンジ等)は定量的に評価できていないのですが、音楽を聴くと、前のカードよりかなり良くなったような気がします(2枚挿しできないので印象だけですがHi)。
あいかわらずときどき自作のDSPプログラムでつくったSSBでオンエアしています。基本は5年くらい前につくったプログラムと同じなのですが、簡単なGUIをくっつけたり、運用しながらフィルタの帯域を変更できるようにして、ローカル局からレポートを頂きながら少しずついじっています。そのうち整理して公開したいと思っています。PowerSDRやRockyのような高度なものではなく、本当に基本的なことしかできませんが。ちなみに、以前のプログラムは、java版はまだ動くと思いますが、Windows用のC++版は、私の今の環境では、ときどきサウンドカードとのデータのやりとりができなくなってしまうようです。その部分は今では、以前に少し触れたportaudioライブラリに変更していますが、それも少し問題があって...という話はまた別のエントリで。
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アンテナをチェック

2005-12-04 07:27:08 | ラジオ(その他)
最近ちょっとばかり本業が忙しくてなかなか無線関係のことが進みません。一つ前に書いたSDR-1000にパワーアンプを接続した結果は、パワーは出たんですが、ローカルからのレポートだと音の立ち上がりがが不自然に押さえ込まれているような音だとのことで、少し原因を調べてみたのですが、よくわからず、そのうちに全くパワーが出なくなってしまったので、PA自体を壊してしまったかと思ったのですが、それは大丈夫だったようです。たいした作業ではなかったのですが、何か配線を間違っているのかも知れません。
とりあえずSDR-1000でのオンエアはまたもやペンディングで、いつものFT747改でときどきローカル局とQSOするくらいになっています。金曜の夜に話していたら途中でパワーメータの反射の針がいつもより多く振れるような気がしたので、昨日久しぶりにアンテナ(サガ電子のモービルホイップ)の接続部分などをクリーニングしてみました。夕方だったので結構寒かったです。で、結果はたいして変わらず、SWRはボトムで1.5くらい、14/21とも常用の周波数より少しずれてしまっているようです。でも調整までやり直している気力がなかったのできのうはそこまでで諦めてしまいました。
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Audix CD-11 + Behringer MIC100

2005-11-04 01:28:37 | ラジオ(その他)
実はもう一月ほど前になるのですが、マイクとマイクプリアンプを購入しました。
夏頃からFT-747+自作DSPプログラムでときどきオンエアしていたのですが、どうも芳しいレポートをいただけなかったのと、自分でモニターしてみてもいま一つだったので、どこが悪いのか色々考えていました。ソフトウェアの方をいじってイコライザを入れたり、PSN用のフィルタの設計を変えたりしてみたのですが、なかなか改善できませんでした。
今までマイクはR21という安いダイナミックマイクで、サウンドカード内蔵のマイクプリアンプをONにして使っていたのですが、この辺を変更すると良くなってれくるかなという期待のもとに、ここはひとつマイクを替えてみるかと物色をはじめました。

良い音にこだわっている方はたくさんいらっしゃるようで、JA1BBPさんJI1ANIさんのブログなどはよく読ませていただいています。その中でAudixというメーカのマイクが紹介されていて、特にCD-11というダイナミックマイクが特性的になかなかよさそうです。しかも安い Hi。それと、サウンドカード内蔵のプリアンプの代わりに一度外付けのマイクプリアンプを使ってみたいという思いがあり、同じくJI1ANIさんのブログで以前紹介されていたベリンガーのMIC200の姉妹機MIC100に目をつけました。
CD-11とMIC100をサウンドハウスで注文したところ、次の日には商品が届きました。早い!
早速セットアップしてモニターしてみると、確かに前よりはかなりいい感じです。パッと聞いたところでは低域の出方がいい感じ。問題の高域は、以前よりすっきりしたかなとは思うものの、あまり自信が持てません。
ここのところなかなかオンエアする機会がなかったのですが、今日14MHzで「ワンツースリー」とやっていると、夏に何度か相手をしていただいた局にコールされました。マイクを変えたことを伝えると、「前よりいいですね。DSPで音を作っているメリットがわかるようになりました。そのマイク、なかなかいいですね。」とのレポートをいただきました! 途中で以前のR21にも代えてみましたが、やはりCD-11の方がいいとのことです。当たり前ですけどマイクの影響は大きいのですね。しばらくはこの機材で、ソフトウェアの方をまたいじりたいと思っています。
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ハムフェア

2005-08-21 02:42:26 | ラジオ(その他)
昨年に続きハムフェアに行ってきました。以前からの友人たちや、最近よく交信していただいている方との会話が中心で、それは楽しい時間だったのですが、一方各ブースをゆくり見る時間はありませんでした。メーカのブースでは八重洲の参考出品?のFT-2000やICOMのIC-7000にちょっと惹かれましたが、FT-2000の方はFTDX9000の基本構成を踏襲した実戦機(MarkVの後継)といったところでしょうか。発表時期は未定で来年の今ごろ出せたらいいですねというようなお話でした。
AORのブースで思いがけない話をきくことができました。同社のAR7030というHF受信機はハムの世界ではともかくBCL/SWLのあいだでは高い評価を得ている機械で、私も結構気に入って使っています。一方で2000年頃からJT-2000という次世代の受信機を開発しているという話があったのですが、一向に出てくる気配がありませんでした。で、今回もあまり期待せず「JT-2000っていうのはどうなったんですか?」という質問をしてみたところ、「開発は続けています。7030も部品の確保などが厳しくなりつつあるので、デジタル処理を採用した、7030の後継機として出せればと考えています。」というような返事が返ってきました。一時期はどちらかと言えばプロ用、軍用をターゲットとしたものになるという情報もあったのですが、7030の後継ということはそうではなく、我々アマチュアもターゲットとした受信機となりそうで楽しみです。
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Samson R21S

2005-08-02 01:22:29 | ラジオ(その他)
現在使っているマイクはSamsonのR21Sというダイナミックマイクです。昨年横浜の楽器店にマイクを見に行ったときに、「この値段としては非常に良い音質」みたいな札がついていたのがこれでした。ケーブルとケース付きで2000円くらいと確かに安いので、これならダメでもそれほど痛くないかと思って買ってきたものです。早速PCに接続して自分の声を録音し、聞いてみましたが悪くありません。と言っても他のマイクをほとんど知らないので比較のしようも無いのですが、手持ちのオーディオテクニカの会議用のエレクトレットコンデンサマイクと比べるとフラットで情報量が多いような気がします。ただ、出力レベルはテクニカのマイクより低いようで、サウンドカードの20dBのアンプをonにしてちょうどいいというところです(このアンプを入れるとノイズが出るのが問題なのですが)。
自作のプログラムで変調し、FT-747で送信したものを聞くと、R21の方は先にも書いたようにちょっと低域が勝ち気味、テクニカのマイクは低域がやせて細い感じになってしまいます。イコライザを通したりフィルタの帯域を見直すなどしてもうちょっと高域の抜けの良い音にしたいと考えています。
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パワー計が故障

2005-07-09 16:08:05 | ラジオ(その他)
5年くらい前に買ったMFJの949Eというアンテナチューナを使っています。2系統のアンテナ切替えとチューナ、ダミーロード、クロスメータのSWR計があってそこそこ便利に使っています。ここのところワッチはしても電波を出すことがなかったのですが、ひさしぶりにFT-747+サウンドカードで遊んでみようと思って送信してみたら、747のパワーメータは景気良く振れるのに、MFJの方は少ししか振れません。多分MFJの方が壊れたのだろうと思って中を開けてみました。目視では特に異常は無し。メータ回路の基板をはずすかなと思ったのですが、基板から生えている1mm径のスズメッキ線がロータリースイッチ等にしっかり半田付けされていて結構面倒そうです。ちょうど秋葉に行く機会があったのでDIAMONDのコンパクトなクロスメータを買ってしまいました。それをつないでみると、やっぱりちゃんとパワーは出ているようで、MFJの方も反射波の方はそれなりにちゃんと振れているようです。時間ができたら、なんとか基板をはずさずに修理できないものか、試してみるつもりです。
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QST Product Review FTDX9000D

2005-07-04 23:25:26 | ラジオ(その他)
QST8月号にFTDX-9000Dのレビューが出たようです。私も中身をざっと見てみました(ARRLメンバーであればPDFファイルを読むことができます)。

お約束のラボテストの数字を見て感じたのは、

1. MDSがプリアンプoffで-122dBm@500HzBWとあまり良くない。
2. 20kHz間隔の3rd IMDダイナミックレンジは100dB弱、IP3=+25dBm前後で1000MPと同程度。
3. 5kHz間隔の3rd IMDダイナミックレンジは95dBと非常に良い。
4. μ同調を入れたときに14MHzではダイナミックレンジの数値が若干良くなっているのに対し3.5MHzでは逆に少し悪くなっている。
5. 50MHzのダイナミックレンジがVRFを入れた時の方が少し悪くなっている。

あたりです。

感度については通常の短波帯の使用では十分だろうとは思うのですが、NF=25dBですからかなり抑え目の感じです。なおプリアンプonの場合はMDS=-134dBm(14MHz)となっています。また、μ同調を入れたときは5~10dB程度感度が下がります。

ルーフィングフィルタに3kHzを用意しただけのことはあって、5kHz間隔でのダイナミックレンジの数値は非常に良くなっています。μ同調は3.5MHzでこそ効くような気がするのですが、何故か数値が悪化しているのが不思議です。また、50MHzでVRFを入れた時の結果もよくわかりません。50MHzでこの間隔だとフィルタとしての効果はそれほどなくて、目的信号も妨害信号も同程度に減衰するだけだとは思うのですがDRの数値が悪くなるというのは解せません。

レビューの後半では、4人の各分野の専門家(コンテスト、デジタルモード、6m)による実際の使用レポートが掲載されています。K1ZZによるWPX CWのレポートでは1000MPと比較していますが、残念ながら(?)このコンテストではそれほど厳しい場面に遭遇しなかったのでそれほど大きな違いは感じられなかったそうです。また、CWの受信信号の立上りでDSPに起因すると思われるクリックがあり問題だったということです。ヤエスはすでにこれに対する解決方法を見出しているそうですが。

W3IZによるNew England QSO PartyとARIコンテストでの使用レポートでも1000MPと比較しています。どちらもCQ WWやARRL DXほど混雑したコンテストではなかったが、強力な信号に近付いて運用しても性能が落ちることがなく、ルーフィングフィルタなどの効果をチェックすることが出来たということです。また、1000MPでは、少しはっきりないような弱いEUの信号が、9000Dではよりシャープに聞こえ、コピーし易かったと報告しています。

K7BVによる6mでのレポートは、ARRL June VHFコンテストでの使用感が述べられていますが、「素晴らしい性能を示した」というようなことで、それほど詳しいことは書かれていません。

WB8IMYによるデジタルモードのレポートは…まだちゃんと読んでません。
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ダイナミックレンジはどれだけ必要か?(その2)

2005-03-29 00:51:14 | ラジオ(その他)
先に紹介したQEXの記事に対して、2つ後の号(2002 September/October)のLetter to the Editor欄にドイツの読者DK8PD(Werner Hallenbach氏)からの投稿がありました。彼も1995年に同じ問題(実際に必要なダイナミックレンジはどのくらいか?)に答えるために調査を行ない、CQ-DL誌に発表したというのです。ただし、測定のやりかたはG3RZPのものとは異なっています。
彼はアンテナ(7MHz用逆V)からの信号を6~8MHZのBPF(彼いわく、当時のアマチュア用高級機はこの程度のフィルタが使われていることが多かった)を通した後、バンド全体の信号をA/Dコンバータを使ってコンピュータに取り込み、30日間にわたって記録しました。必要なダイナミックレンジの計算には、次のようなワーストケースを仮定して行ないます。つまり、測定された、バンド全体の電力と同じ強さを持つ信号が二つ存在して、それらによる相互変調歪みが目的受信周波数に現れるとしたときに、必要なダイナミックレンジはどれだけか、ということのようです。
測定結果のデータを平均化し、一日のあいだのパワーレベルの変化を示すグラフに書き直してみると、パワーのピークは、18:00UTCで-15dBmの値(日によっては-10dBmに達する日もあったそうであるが)でした。イギリスとドイツの時差1時間を考慮すれば、これはChadwics氏のデータと一致しています。
ノイズフロアについては、同じように連続してはかることはできなかったのですが、何度か測定したところ、その値はCW(400Hz)帯域で-105dBmから-115dBmの間であった(G3RZPのデータは帯域幅3kHzであったことに注意)ということです。これらのデータから彼は必要なダイナミックレンジは約100dBであると結論づけています。

さらに彼は当時QRPのリグを作っていたので、受信機の消費電力を減らす目的で、フロントエンドにかなり狭いフィルタを入れて、ダイナミックレンジに対する要求を軽減することができるかどうかについても調べたそうです。帯域幅70kHzで挿入損失が12dBのフィルタを製作し、上と全く同じ条件で測定したところ、そのフィルタでも近接する放送バンドの信号を完全に排除することはできなかったが、受信機のフロントエンドに対する要求は20dB程度緩和され、ダイナミックレンジは85dB程度で十分であることがわかったということです。


彼のCQ-DL誌での発表記事

1. W. Hallenbach, Belastung von 40m BandEmpfagern durch
BC-Stationen, cq-DL 1997, p 870.
[ The burden on 40-m-band receivers from BC stations.]

2. A. Heinrich, Bessere 40m-Vorselektion am Beispiel von TS-930S und
TS-140S, cq- DL 1993, p 540 and literature cited therein.
[ Better 40-m pre-selection by example of the TS-930S and TS-140S ]

タイトルの英訳はQEXの編集によるもの。
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WPX PH TEST

2005-03-28 21:57:51 | ラジオ(その他)
今回は、学生時代の先輩が0エリアにつくったシャックにお邪魔し、短時間ではありましたが10数年ぶりにまともな設備でオペレートすることができました。先日のARRL PHのときに自宅のホイップでワッチしていて、ハイバンドがあまりコンディションが良くない印象があったので今回はどうかと思ったのですが、土曜日の夕方はハイバンドでEU方面がオープンしていて、21MHzでCQを出すとそれなりに呼ばれて楽しかったです。14はもちろん28もEUが聞こえていましたが、28は21ほどのオープンではないのか、それほど多くの局とできず、また14は結構強く聞こえている局を呼んでも応答のないことがあって、このバンドではもう一つこちらのパンチ力も足りないのかなと感じました。

いずれにしろ、ひさしぶりに学生時代のメンバーで無線を楽しむことができて楽しかったです。先輩と奥様に感謝。

そう、今度機会があったらあそこにSDR-1000を持っていって試してみたいものです。
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ダイナミックレンジはどれだけ必要か?

2005-03-24 01:19:20 | ラジオ(その他)
受信機の性能の指標としてよくダイナミックレンジという言葉が使われ、この受信機はあの受信機よりダイナミックレンジが広くて云々ということが言われたりするわけですが、では実際のところどのくらいダイナミックレンジがあればいいのかということはあまりよくわかっているわけでもなさそうです。ここで考えているダイナミックレンジとは、いわゆる3次相互変調歪みに関するダイナミックレンジ(IMD-DR Intermodulation-free Dynamic Range)のことです。これは、MDS(Minimum Discernible Signal = noise floor)と同じ強さの3次相互変調歪みを発生させる妨害信号のレベルと、MDSのレベルの電力の比で示されます。

これに関して3年ほど前のQEX誌に面白い記事がありました。

How much Dynamic range do we need?
G3RZP Peter Chadwick
QEX May/June 2002 pp.36

テストベンチで測定されるILDRは、同じレベルの2つの強力な信号を受信機に入力し、測定します。ところが、実際の受信環境では、多くの信号が存在するので、それらの組合せによる相互変調歪みの数も多くなるので、実際に受信しているバンド内にどれだけのレベルの信号がどのくらいの数存在するかを考慮しないと必要なダイナミックレンジは求めることができません。(ここでバンドと言っているのはだいたいRF段のBPFの帯域と考えて下さい)。

筆者は、次のような考えのもとに実際に必要なダイナミックレンジを求めようとしています。それは、

1. 感度は、MDSが実際のバンドのノイズレベルの10dB下であれば十分である。
つまりそこを必要なダイナミックレンジの下限とする

2. バンド内のもっとも強力な信号レベルを調べ、そのレベルの信号2つによって
生じる相互変調歪みが、実際のノイズレベルより10dB下であるような
ダイナミックレンジを受信機が持つとして、

3. そのような強力な信号が「非常に多くなければ」、その数は問題ではない。
つまり1,2から決まるダイナミックレンジで十分である。

というものです。

次にそれでは、どのくらいの数ならば「非常に多くない」のかが問題になるのですが、それに関しては次のような仮定というか想定をしています。

1. IM出力の数(この数は、相互変調を生み出す信号の数をnとすると0.5n(n-1)になる。
2. 1で求まるIMの数に測定帯域(IFの帯域です)の2倍を乗じたものが、測定を行なうバンドの帯域の10%より小さい、

というものです。これに従うと、(えーと途中面倒なので省きますが)測定対象のバンド幅が2MHzで、測定帯域幅が3kHzだとすると、0.5n(n-1) * 3 * 2 <2000 * 0.1が条件となり、これを解くとn <= 8ならOKということになります。 なぜこれが妥当な仮定と考えられるのか私にはいまひとつわかっていません(ここが一番大事なところのような気がするのですが、誰かわかる人がいたら教えて下さい!!)。だた、そのあとの実際の測定結果を見ると、実際の「強い信号」の数はかなり少ないので、問題はないのかなとは思うのですが。

以上の仮定のもとに、実際に各アマチュアバンドのノイズレベルと、そのバンド近辺に存在する強力な信号のレベルをある期間にわたって調査し、必要なダイナミックレンジを推定しようとするわけです。

彼の測定場所であるヨーロッパは強力な放送局が多く、もっとも厳しい環境だと言われています。また、彼のロケーションは郊外にありノイズレベルは比較的低いので、ダイナミックレンジという観点からは都会の局より高い性能が要求されることになります。

ノイズレベルの測定にはFT-102と校正されたSGとATTを、バンド内の信号の観測にはスペアナ(HP 141T)を使用し、アンテナは30mバンド以下ではダイポール等、20mバンド以上は4-5エレのモノバンド八木を使用しています。アンテナの高さは18mです。

予備調査で各バンドを調べた結果、(予想通り?)7MHz帯がもっとも厳しい条件であることがわかったそうです。そこで次に、7MHz帯で何日にもわたって測定を繰り返しました。その結果が以下の通りです。強力な信号の数は、強度を10dBごとに区切ってその範囲に入るものを数えています。たとえば「-10dBmから-20dBmの間の信号は3つ」などです。また、筆者はこの10dBごとの範囲のことを「ビン(bin)」と呼んでいます。

その7MHzでの結果は表1の通り。信号の数を調べる周波数帯は7MHzの+-1MHzの間です。時刻はUTC、イギリスですから現地時間と考えれば良いのでしょう。たとえば0200UTCでは、7MHzバンドのノイズレベルが-99dBmであり、7MHz+-1MHzの中に、-10~-20dBmのビンの中には信号が1つ、-20dBm~-30dBmのビンには12個、-30dBm~-40dBmのビンには12個あった
ということになります。

ちなみにS9 = 40dBuEMF = -73dBmとすると、-10dBmとはS9+63dBmです。

----------------------------------------------------------
Table1 (QEX誌より転載)
UTC	Noise		Level Number of Signals
	(dBm)	-10 to -20dBm	-20 to -30dBm	-30 to -40dBm

0200	-99 		1 		12 		12
0615	-105		0		1		4
1445    -105		0		1		1
1500    -108		0		2		2
1545    -106		0		0		2
1645    -97		1		3		16
1715    -91		5		5		20
1745    -98		2		3		23
1815    -99		2		8		23
1945    -97		1		4		18
2000    -97		3		13		5
2045    -91		2		6		27
2050    -94		2		12		23
2145    -106		0		6		25
2200    -97		1		3		23
2230    -99		1		12		10
2255    -101		2		5		7
----------------------------------------------------------


次にこの結果をもとに必要なダイナミックレンジ等を計算します。
たとえば0200UTCでは、最大強度のビンは-10dBm~-20dBmのビンである
わけですが、この範囲の信号はすべて-15dBmということに丸めます。
また、0200にはこの強度の信号は1つしか存在しないのですが、なるべく
ワーストケースを考えるため、1つしかなくても2つ存在するとして
生じる3次歪みを計算します。

一方ノイズレベルは-99dBmですから、必要な感度はその10dB下の-109dBmとなります。
3kHz帯域でNF(noise figure)に換算すると、-109 - (-140) = 31(dB)です。
必要なダイナミックレンジは-15 - (-109) = 94dBとなります。
この二つから外挿することによってIP3が計算できます。
IP3 = MDS + 3/2 IMDDR = -109 + 3/2 * 94 = +32dBm です。

より強力な信号が多くなる夕方1715UTCの場合についても最大のビンは
-10dBm~-20dBmでその中に5個の信号があります。
しかし、これは先の仮定によれば「非常に多い」には達していない(n <= 8)ので、
-15dBmの2つの信号が生じる3次歪みをもとに計算して良いことになります。
ですから、必要なダイナミックレンジは-15 - (-101) = 86dBです。
IP3は-101 + 3/2 * 86 = +28dBmとなります。
こうやって各時刻の受信状況における必要な感度、IP3、ダイナミックレンジは
下の表のようになります。

----------------------------------------------------------
Table 2  IP3, Noise Figure and ILDR Requirements for 7 MHz (QEX誌より転載)

      Noise      NF(dB)    IP3 (dBm)     Dynamic Range
UTC   Level(dBm) Required  Required      Required (dB)

0200    -99	  31	      +32	     94
0615    -105	  25	      +20	     90
1445    -105	  25	      +20	     90
1500    -108	  22	      +21.5	     93
1545    -106	  24	      +5.5	     82
1645    -97	  33	      +36	     95
1715    -91	  39	      +28	     86
1745    -98	  32	      +31.5	     93
1815    -99	  31	      +32	     94
1945    -97	  33	      +31	     92
2000    -97	  33	      +31	     92
2045    -91	  39	      +28	     86
2050    -94	  36	      +29	     89
2145    -106	  24	      +20.5	     91
2200    -97	  33	      +31	     92
2230    -99	  31	      +32	     94
2255    -101	  29	      +33	     96
----------------------------------------------------------


この結果から、ダイナミックレンジは100dBあれば十分であるという結論が得られます。
ということは、いわゆる実戦機、高級機と呼ばれているリグではだいたいダイナミックレンジは足りているということになります。ただし、ダイナミックレンジのスタートポイント(下端=MDS)は、そのときどきのノイズレベルに応じてATTを入れ、シフトさせてやらなければいけません。ATTを入れると、ダイナミックレンジはそのままで、ATTの減衰量の分だけ感度は下がり、逆にIP3が高くなります(よく見かけるダイナミックレンジを示すあのグラフがそのまま右側に移動するイメージです)。
つまり、リグの感度は十分に高いので、ATTを入れてやることによって、バンドのノイズレベルより十分高い感度を維持しながら、強入力特性を上げてやれば、範囲(レンジ)としては100dBで十分足りているよということを言っているわけです。
逆に言うと、ダイナミックレンジにあまり余裕のないリグを使っているときは、なるべくこまめにATTの量を調節して、最適な状態に持っていくことが重要だということになります。

最初の仮定のところをちゃんと理解できていないのに紹介するのもどうかと思ったのですが、こういう実際のデータを取った例というのはあまり見たことがなく、非常に興味深い記事だと思ったので紹介してみました。

また、この記事ではこれまで紹介した3次混変調歪みによるダイナミックレンジに加えて、フェーズノイズに起因するダイナミックレンジについても考察していて、そちらの方が厳しい場合があるということも書いているようなのですが、その辺はまたのちほど。

なお、私の解釈に間違い等ありましたら是非ご指摘ください。
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