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ディザによる歪みの改善

2007-12-04 23:21:09 | ソフトウェアラジオ
先のエントリで、ディザ信号の付加によるデジタル受信機の歪み特性の改善について触れました。一応簡単な実験は行っていたので、それについてすぐに書こうと思っていたのですが、自分自身がディザの効果についてうまく説明できずにいました。要するにその原理をきちんと理解していないことがあらためて分かってしまったわけですが、ここに記録として実験結果を紹介しておきたいと思います。

ADコンバータは非線形性を持つため、出力に歪みが現れます。シングルトーンを入力した場合でも、さまざまなスプリアスが観測されます。また今回のように2信号を入れた場合には、3次歪み5次歪みをはじめとして、やはりスプリアスが現れます。これらのスプリアスの主因はADコンバータのDNL(Differential nonliniarity)と呼ばれる非線形性であると言われています。

これらのスプリアスは、FFT画面上に線が立つことからもわかるように、ADの出力するコードが(本来入力には存在しない周波数の)何らかの周期性を持ってしまうことから生じると考えられます。そこで、入力にランダムノイズなどを加算してやることで入力信号に揺さぶりをかけ、周期性を薄めてしまおうというのがディザの基本的な考え方だと理解しています(ここは違っていたら是非教えてでください)。

ノイズを加えるともちろんノイズフロアは上がってしまいますが、ナイキスト帯域に一様に分布するノイズは、最終的には目的信号のS/Nに大きな影響を与えません。また、ディザ信号はランダムノイズでなくても構わないので、目的周波数から離れたところだけにエネルギーを持つような信号を用いることもできます。

さて、ちょっと冷や汗ものの前振りのあとで今回の実験結果を示します。前回のエントリの実験と同じときにディザ信号を加えたときのものです。ディザ信号は今回はQEXの記事にならって7.22MHzの正弦波にFM変調をかけたものを加えました。2信号のレベルが-50dBmのときに、ディザを加えるとどのように歪みのレベルが変化するかを表にしました。
入力: -50dBm (10.14MHzと10.15MHz)
ディザ: 7.22MHz 1kHz FM変調波 (100kHz deviation)
3次IMD: 10.13MHz

ディザのレベル    IMD
--------------------------
 -50dBm         -100dBm
 -45dBm         -112dBm
 -40dBm         -135dBm (== noise floor)
 -35dBm         -120dBm
 -30dBm         -120dBm

このように、ディザのレベルが-50dBmを超えたあたりから3次歪が減りはじめ、-40dBmになるとIMDはノイズフロアと同じになってしまいます。そのあとはまたIMDの欄の数値が上がっていますが、これは全体のノイズフロアが上がってしまったもので、原因はまだよくわかっていません。

よくわからないのは、かなり高いレベルのディザを加えないと効果が現れない点です。今回は-50dBmの2トーンの例を示しましたが、2トーンのレベルを上げるとディザの方もレベルをあげないと3次歪みを大きく軽減させることはできませんでした。QEXの実験でもADの飽和レベルの9dB下という高いレベルのディザを与えています。

ディザについてはまだ勉強、考察が必要ですが、とりあえず報告まで。
また、周波数とレベル若干違うのですが、以下に実際のSDR-14のスクリーンショットをつけておきます。2信号の周波数は10MHzと10.003MHzでレベルは約-60dBmです。ディザの信号は上記と同様のものです。


ディザ無し



ディザ -50dBm



ディザ -40dBm


コメント (4)
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