JH3YKV's Amateur Radio Newsでも紹介されたように、SDR-14を販売中のRFSpace社から新しいソフトウェア受信機
SDR-IQの計画が発表されました。予定価格は$449(ケース無し)とSDR-14に比べてかなり安く、サイズも10cm x 10cm程度とコンパクトです。
中身としてどういう風にSDR-14と違うのかいま一つわからなかったのですが、
ブロックダイアグラムやSDR-14のMLでのポストを見ていて少しわかってきたことをメモしておきます。
まず、67MspsでRFを直接サンプリングして、続いてAD6620よるデジタルダウンコンバージョンによりベースバンドのデータ列(I/Q)に変換してUSBでPCに送り、PC側でスペアナ、復調処理を行うという、基本的な方式は同じです。
SDR-14との相違点は
1. 190kHzまでのバンド幅しかスペクトラム表示が出来ない
2. ハーモニックサンプリング等用のダイレクト入力端子が無い
3. A/DコンバータがAD6644からAD9245に変更
4. アナログのアンプがGALI-51x2? からAD8370に変更
5. 30MHzのLPFに加えて5MHz,15MHzのHPF/LPFが受信周波数に応じて切り替えられて入る
6. スペック上の最低受信周波数が100kHzから100Hzに下がった
あたりでしょうか。
1.の190kHzまでしか表示できなくなったのは、FIFOのバッファが省略されたためです。元々SDR-14はUSB1.1だったので、190kHz程度までの幅のデータしかPCに送ることができません。その上で、30MHzまでのスペクトラム表示をするために、FIFOのバッファを設けて速いサンプリングスピードのデータも一旦そこに溜めてからPCに送ることで対応していました。もちろんFIFOバッファを利用するときは全部のデータが送られるわけではありませんから、その場合には復調処理はできません(
SDR-14のブロック図参照)。
SDR-IQではそのバッファが無くなったので、スペクトラム表示においても190kHz幅までとなってしまったわけです。しかし、今回USBは2.0だと謳っているので転送能力自体はSDR-14のときより上げられるはずなのに、なぜか190kHzBWまでとなっています。これについてMLで、放送バンドのDXを目的としている人から、もっと広い範囲、たとえば中波バンド全部とかを(リアルタイムに復調できなくても)データとしてPCのHDDに記録できるようにして欲しいというリクエストが出ているので、もしかすると変更される可能性はあるかも知れません。
3,4については消費電力を抑え、USBのバスパワーで動作可能なようにするためだそうです。そのためにSDR-14よりは若干性能が落ちるが、それでも十分な性能を確保しているとのことです。また、アンプのデバイスを変更したことで、SDR-14ではADCとの結合に必要だったトランスが不要になったことで6.のように最低受信可能周波数が下がったようです。
5.のHPF/LPFの組み合わせは、どうしてこういう周波数で区切るのか私には良くわかりません。ラジオとして考えると普通のオクターブかサブオクターブのBPF構成の方が良いように思いますが、そういうものでも無いのかコストダウンのためなのか。
いづれにしてもかなり安い価格でRF直接サンプリング方式の受信機が入手できるようになるわけで、最終的にどういう風な形で出てくるか楽しみです。