SDR-14などのようなデジタル受信機の場合には、従来のアナログ受信機とは異なるIMD特性を示すという議論が以前からありました。アマチュアの世界ではたとえばSM5BSZ氏がQEXの記事や自身のWebページで早くからその問題を取り上げていました。
今月(12月号)のCQ誌でJA1RPK川名さんがダイレクトRFサンプリング方式の受信機であるSDR-IQのレビューの中で、歪みについて簡単に触れられていて、そこでも「入力を上げても歪みはあまり増えない」という趣旨の記述をされています。
そこで、私もSDR-14のIMD特性を簡単に調べてみました。測定方法は、3次IMDを測定する一般的なやりかたと同様のものです。今回は2信号として、10.14MHzと10.15MHzをコンバイナで合成したものを入力し、10.13MHzに現れるIMDのレベルを測定しました。その結果をグラフで示します。
グラフの横軸は入力レベル、縦軸は出力レベルで各軸の単位はdBmです。
黒いラインは1信号を入力した場合のレスポンスです。SDR-14のデフォルトの設定(アナログゲイン最大、DDCのゲインも最大)で、このとき感度はMDS=-134dBm@500HzBW 程度、飽和レベルは約-30dBmです(MDSはMinimal Discernible Signalの略で、ノイズフロアと同じ電力)。ただし、この設定ではADCより先にDDC(Digital Down Converter AD6620)の方が先にオーバーフローするようです。
赤いラインが観測された3次歪みのレベルです。単純にSDR-14のFFT画面に現れる信号のレベルをプロットしています。2信号の上側と下側では若干値は違いますが、傾向は同じです。今回は下側の10.13MHzの信号のレベルを用いてプロットしました。
私の測定には数dB程度以上の誤差が含まれていると思われます。それでも傾向は良くわかると思いますが。
これを見ると、歪みのレベルがいわゆる3次の法則から大きくずれていることがわかります。かなり低い2信号入力からIMDが見えてきますが、そこから入力と同じくらいの増加分で歪み成分が増えていき、ある程度まで行くと変動しながらもそれほど増加しないという結果になりました。点線はもし、歪みが3次則に従ったとした場合の歪みのレベルの推測値です。
もし、MDSと同じレベルの歪みが観測された時点での2信号の入力レベルと、MDSとの差をダイナミックレンジとすると-90 - (-135) = 45dBとなってしまいます。これが通常のアナログ受信機の3rd IMDダイナミックレンジとされる値で、実際2005年のQST誌のプロダクトレビューでもSDR-14は34dBと悲惨な(?)値になっています。これは実際に使ってみた感覚とは大きく異なります。
また、さらに別の信号をアンテナからの入力と加算することで、デジタル受信機の歪み特性を大きく改善可能なことが知られています。ディザと呼ばれる方法です。今回これについても簡単な実験をしてみましたのでエントリをあらためて報告したいと思います。
なお、今回の実験は特に新しいものではなく、SM5BSZ氏が昨年のQEXに投稿した記事(SM5BSZ, "IMD in Digital Receivers", QEX Nov/Dec 2006.)の簡単な追試になっています(この記事の元になった内容が"Dynamic range observations for the SDR-14 a VHF sampling radio receiver"と思われる)。
また同様の測定結果をG4JNT氏が"SDR-IQ Linearity Tests" として報告しています。
今月(12月号)のCQ誌でJA1RPK川名さんがダイレクトRFサンプリング方式の受信機であるSDR-IQのレビューの中で、歪みについて簡単に触れられていて、そこでも「入力を上げても歪みはあまり増えない」という趣旨の記述をされています。
そこで、私もSDR-14のIMD特性を簡単に調べてみました。測定方法は、3次IMDを測定する一般的なやりかたと同様のものです。今回は2信号として、10.14MHzと10.15MHzをコンバイナで合成したものを入力し、10.13MHzに現れるIMDのレベルを測定しました。その結果をグラフで示します。
グラフの横軸は入力レベル、縦軸は出力レベルで各軸の単位はdBmです。
黒いラインは1信号を入力した場合のレスポンスです。SDR-14のデフォルトの設定(アナログゲイン最大、DDCのゲインも最大)で、このとき感度はMDS=-134dBm@500HzBW 程度、飽和レベルは約-30dBmです(MDSはMinimal Discernible Signalの略で、ノイズフロアと同じ電力)。ただし、この設定ではADCより先にDDC(Digital Down Converter AD6620)の方が先にオーバーフローするようです。
赤いラインが観測された3次歪みのレベルです。単純にSDR-14のFFT画面に現れる信号のレベルをプロットしています。2信号の上側と下側では若干値は違いますが、傾向は同じです。今回は下側の10.13MHzの信号のレベルを用いてプロットしました。
私の測定には数dB程度以上の誤差が含まれていると思われます。それでも傾向は良くわかると思いますが。
これを見ると、歪みのレベルがいわゆる3次の法則から大きくずれていることがわかります。かなり低い2信号入力からIMDが見えてきますが、そこから入力と同じくらいの増加分で歪み成分が増えていき、ある程度まで行くと変動しながらもそれほど増加しないという結果になりました。点線はもし、歪みが3次則に従ったとした場合の歪みのレベルの推測値です。
もし、MDSと同じレベルの歪みが観測された時点での2信号の入力レベルと、MDSとの差をダイナミックレンジとすると-90 - (-135) = 45dBとなってしまいます。これが通常のアナログ受信機の3rd IMDダイナミックレンジとされる値で、実際2005年のQST誌のプロダクトレビューでもSDR-14は34dBと悲惨な(?)値になっています。これは実際に使ってみた感覚とは大きく異なります。
また、さらに別の信号をアンテナからの入力と加算することで、デジタル受信機の歪み特性を大きく改善可能なことが知られています。ディザと呼ばれる方法です。今回これについても簡単な実験をしてみましたのでエントリをあらためて報告したいと思います。
なお、今回の実験は特に新しいものではなく、SM5BSZ氏が昨年のQEXに投稿した記事(SM5BSZ, "IMD in Digital Receivers", QEX Nov/Dec 2006.)の簡単な追試になっています(この記事の元になった内容が"Dynamic range observations for the SDR-14 a VHF sampling radio receiver"と思われる)。
また同様の測定結果をG4JNT氏が"SDR-IQ Linearity Tests" として報告しています。