JI3GAB/blog

ラジオに関する話題を中心につらつらと

デジタル受信機の歪み特性

2007-11-24 02:00:47 | ソフトウェアラジオ
SDR-14などのようなデジタル受信機の場合には、従来のアナログ受信機とは異なるIMD特性を示すという議論が以前からありました。アマチュアの世界ではたとえばSM5BSZ氏がQEXの記事や自身のWebページで早くからその問題を取り上げていました。

今月(12月号)のCQ誌でJA1RPK川名さんがダイレクトRFサンプリング方式の受信機であるSDR-IQのレビューの中で、歪みについて簡単に触れられていて、そこでも「入力を上げても歪みはあまり増えない」という趣旨の記述をされています。

そこで、私もSDR-14のIMD特性を簡単に調べてみました。測定方法は、3次IMDを測定する一般的なやりかたと同様のものです。今回は2信号として、10.14MHzと10.15MHzをコンバイナで合成したものを入力し、10.13MHzに現れるIMDのレベルを測定しました。その結果をグラフで示します。




グラフの横軸は入力レベル、縦軸は出力レベルで各軸の単位はdBmです。
黒いラインは1信号を入力した場合のレスポンスです。SDR-14のデフォルトの設定(アナログゲイン最大、DDCのゲインも最大)で、このとき感度はMDS=-134dBm@500HzBW 程度、飽和レベルは約-30dBmです(MDSはMinimal Discernible Signalの略で、ノイズフロアと同じ電力)。ただし、この設定ではADCより先にDDC(Digital Down Converter AD6620)の方が先にオーバーフローするようです。

赤いラインが観測された3次歪みのレベルです。単純にSDR-14のFFT画面に現れる信号のレベルをプロットしています。2信号の上側と下側では若干値は違いますが、傾向は同じです。今回は下側の10.13MHzの信号のレベルを用いてプロットしました。
私の測定には数dB程度以上の誤差が含まれていると思われます。それでも傾向は良くわかると思いますが。

これを見ると、歪みのレベルがいわゆる3次の法則から大きくずれていることがわかります。かなり低い2信号入力からIMDが見えてきますが、そこから入力と同じくらいの増加分で歪み成分が増えていき、ある程度まで行くと変動しながらもそれほど増加しないという結果になりました。点線はもし、歪みが3次則に従ったとした場合の歪みのレベルの推測値です。

もし、MDSと同じレベルの歪みが観測された時点での2信号の入力レベルと、MDSとの差をダイナミックレンジとすると-90 - (-135) = 45dBとなってしまいます。これが通常のアナログ受信機の3rd IMDダイナミックレンジとされる値で、実際2005年のQST誌のプロダクトレビューでもSDR-14は34dBと悲惨な(?)値になっています。これは実際に使ってみた感覚とは大きく異なります。

また、さらに別の信号をアンテナからの入力と加算することで、デジタル受信機の歪み特性を大きく改善可能なことが知られています。ディザと呼ばれる方法です。今回これについても簡単な実験をしてみましたのでエントリをあらためて報告したいと思います。

なお、今回の実験は特に新しいものではなく、SM5BSZ氏が昨年のQEXに投稿した記事(SM5BSZ, "IMD in Digital Receivers", QEX Nov/Dec 2006.)の簡単な追試になっています(この記事の元になった内容が"Dynamic range observations for the SDR-14 a VHF sampling radio receiver"と思われる)。
また同様の測定結果をG4JNT氏が"SDR-IQ Linearity Tests" として報告しています。
コメント (2)
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ET2007

2007-11-20 22:55:11 | ソフトウェアラジオ
先週、水曜から金曜までパシフィコ横浜で組込み機器関連の展示会であるembedded Technology 2007が開催されていました。私は金曜日の午前中に出かけたのですが、その中のCQ出版のブースでミニ講演会が行われてまして、それがお目当ての一つです。というのも、デザインウェーブマガジン7月号で、「付録基板を使ったソフトウェアラジオ」を執筆されたJA2SVZ林さんが、その内容について話をされるということだったからです。林さんが製作されたのは、61.44MHzでRFをダイレクトにサンプリングし、付録FPGA基板でデジタルダウンコンバージョンを行いベースバンドの信号に変換するというものです。今月のCQ誌でレビュー記事があったRFSpaceのSDR-IQなどと同様の構成ということになります。

実際の講演の内容は、もちろん記事の内容を簡潔に説明されたものだったのですが、最初の方で、ソフトウェアラジオの構成の種類や、現在のデバイスを用いた場合の性能限界の推定の話がありました。発表では、CQ誌付録にもなったアナログのミキサ+サウンドカードに比べて、ダイレクトサンプリングの方が少し良い性能が得られるというお話でしたが、それなりに良いサウンドカード(ADC)を使えばもう少し縮まりますし、異なる方式でほとんど同じような性能が得られるというのは面白いなと感じました。

後は、実際に製作された受信機でデジタルデータとして録音されたDRM放送やHFボルメットなどを再生しての受信音の披露などがあって講演は終了しました。終了後、いくつか質問させていただいたり、デジタル受信機の歪み特性の話など興味深い話題について情報交換することができました。できれば、私も実際に作って追試してみたいと思っています(付録基板付きのDWM誌は一応買ってあります)。
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ピラニア鋸

2007-11-20 22:41:24 | その他
しばらく前に、OCXOの載ったジャンクの基板(測定器の一部と思われる)を入手しました。基板は全体としてはかなり大きいもので、当初は半田を吸い取ってOCXOだけを抜き取るつもりでしたが、スルーホールの基板にしっかり半田付けされたモジュールは、なかなか簡単には取り外すことができず、それはあきらめました。そのかわりに基板をカットしてしまおうと思ったら今度は金鋸が見当たりません。それで、新たに購入しようと思ったわけですが、少し検索していると「ピラニア鋸」という商品があって、ガラエポ基板も楽に切れるということが、あるページに書かれていました(URLは失念してしまいました)。

しばらく放ったままになっていたのですが、先週末にたまたま東急ハンズに寄ったので工具売り場にいったところ、「ピラニア鋸」がありました。しかもお値段1,438円と安かったので早速買ってきて試してみました。確かにそんなに苦労せず30cmほどの幅の基板をカットすることが出来ました。私はもともと不器用なので思った通りに真っ直ぐにとは行きませんでしたが Hi。

OCXOに電源を接続したところ、一応発振しているようですし、時間が経つとモジュールが暖かくなってきて周波数も安定して来るようで、もう少し基板をカットした上で、バッファ等つけてそれなりのケースに入れて活用したいと思っています。

P.S. 「ピラニア鋸」という商品名のものはいくつかあるようです。私の買ったものは多分一番安い部類ではないかと思いますが、今回の用途には十分でした。
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