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セイピースプロジェクトのブログ

【普天間問題】マスメディアの責任を問う

2010年05月30日 | ニュース紹介
 28日、日米共同声明と閣議決定により、普天間飛行場移設問題は結局「辺野古」に戻ってきました。その決定は沖縄県民に対する裏切りであり、この間の議論は何だったのかと思わざるを得ません。鳩山首相が「沖縄を傷つけてしまった」と「謝罪」をしたとしても何の意味もないでしょう。

 結局「県内」そして「辺野古」に戻ってきてしまった責任はどこにあるのでしょうか。鳩山首相、そして政府にあることはもちろん、沖縄の世論に応えることのできなかった本土の世論にもその一端があると思います。本土の一NGOとして、この状況を変えられていない事実を受け止めなければならないと思います。しかしその上で、マスメディアの論調を批判しておかなければなりません。

 とりわけ、ある一つの記事を取り上げなければなりません。それは、朝日新聞の5月5日付朝刊に掲載された主筆・船橋洋一氏の手による「拝啓 鳩山由紀夫首相」という記事です。これこそ、「県内」「辺野古」ありきの読むに堪えない記事だからです。

 タイトルにあるように、この記事は鳩山首相に向けた手紙で、首相を「叱咤激励」するものなのでしょう。米政府高官の言葉を引き合いに出しながら、「そのうちの一人は、タフ・ラブ、つまりは愛の鞭が必要だと言いました。民主党政権を子供のうちにしつけておかないとそのうち、ぐれてしまうと懸念しているようです。日本の民主主義の未成熟と戦略的思考の未発達を言い立てられているようで、何かマッカーサーのあの「日本人は12歳の少年」発言まで想起してしまいました」とあります。船橋氏は米国に代わって民主党を教育しようとしているのでしょうか。

 そして、船橋氏は今回の普天間問題の本質は「日本の政治と東アジア戦略環境の激変の中で、日米同盟の新たな将来像そのものが描けないことにあるのではないか、と感じます」と言います。「新たな将来像」とは何か。彼が展開するのは結局、お決まりの抑止論です。

 まず彼は「アジア太平洋の国々」「米政府高官」を持ち出して、中国の台頭への疑念と日米同盟への懸念を示しています。そして日米安保条約の意義を語ります。「在日米軍基地は、日本を守るだけではなく、極東における平和と安全のためのものでもある」のだと。さらにまた、この間の中国海軍の軍拡や北朝鮮の体制危機を持ち出して、「朝鮮半島の安定と軟着陸のカギは、中国の対応と日米同盟の抑止力でしょう」「中国を開かれた国際主義的な世界秩序に組み込むため、アジア太平洋においては盤石の日米同盟が不可欠なのです」と言います。

 何が「新しい将来像」でしょうか。何が「開かれた国際主義的な世界秩序」でしょうか。船橋氏が語る「抑止論」は、相互の根深い不信感に基づいた軍拡のスパイラルを生み出すだけです。「普天間飛行場問題をいまのようにこじれたままにしておくと、中国とのよりよい共存の戦略構想を描けないまま、中国脅威論が独り歩きする危険があります」と言いますが、中国脅威論を煽り立てているのは船橋氏自身でしょう。

 やっと沖縄の話が出てきますが、抑止力の維持のためには、日米同盟を使うには、「沖縄が欠かせない」「沖縄と力を合わせなければならない」。これまで通り捨石になってくれということです。

 最後に、「あれから、14年がたちます。戦略環境の変化に即した戦略的覚悟が求められる時です。あの時と同様、孤独な決断になるでしょう。ぜひ、大きな決断をしていただきたいと心から念じております」。本当にその通りになってしまいました。

 この文章に一貫しているのは、米国の主張を借りながら展開されていること、そしてそれを疑うこともないということであり、端的に言って「米国の言いなりになりなさい」ということです。そして、沖縄県民の立場などは一切考えず、言い古された感さえある「抑止論」を振りかざし、沖縄に基地を押し付けようとする姿勢です。

 私たちはこのような主張を許してはいけないと思います。しかし、このような主張ができること自体、私たち消費者としての市民がその程度だと思われているからではないでしょうか。いくら船橋氏個人が上記のような思想の持ち主だったとしても、それを許さない空気があればこのような記事は書けないはずです。

 私たちセイピースプロジェクトは、沖縄に基地が押し付けられている状況、そのことによって支えられている日米安保体制そのものを問い直す世論をつくり、本当の意味で平和や安全な日本、そしてアジアを創っていくために、「沖縄キャンペーン」を展開していきます。

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