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セイピースプロジェクトのブログ

朝鮮学校「高校無償化」除外が不当な理由

2010年03月19日 | ニュース紹介
 朝鮮学校「高校無償化」除外は、今年2月「友愛」を掲げる鳩山新政権のもとで大きな衝撃とともに新聞各紙をにぎわせた問題です。法案の国会審議(3月16日衆議院通過)を目前に、中井拉致問題担当相のたった一声から、川端文部科学相を含む文科省政務三役が朝鮮学校を除外する方向で最終調整に入ったと報道されたことは記憶に新しいでしょう(2月26日)。
 もともと、「高校無償化」制度においては、政権発足当初より各種学校である外国人学校についても範囲に含まれており、文科省の概算要求でも朝鮮学校などの外国人学校を含めて試算されていました。
 では、なぜいまこのタイミングで政府内でもほとんど議論されることなく朝鮮学校が排除されようとしているのでしょうか。



 そもそも除外理由が全く朝鮮学校の現状をふまえていません。まず、「教育内容が確認しがたい」といわれますが、朝鮮学校が地方自治体からの各種学校認可や助成金手続の際にカリキュラムをきちんと提出しているという明白な事実を無視した議論にすぎないでしょう。また、日本のほとんどの大学が朝鮮高級学校卒業生の受験資格を認めているように、朝鮮高級学校は学校教育法第一条の定める日本の高等学校と同様の教育課程をもつことが事実上証明されています。



 朝鮮学校は、戦後直後に在日コリアンが自分達の民族の言葉と文化を取り戻すために、極貧生活のなか自主的に設立され、地域コミュニティの基盤となっていきました。現在でも国籍や思想・信条の地位外を問わず、日本の学校では保障できない民族の言葉と文化を学ぶ機会が子どもたちに提供されています(2008年現在、朝鮮籍の子女や46%、韓国国籍の子女53%、日本国籍やその他の子女が1%)。しかし、自動車学校・予備校などと同様に各種学校である朝鮮高級学校に対する助成金は、日本の学校と比べて極めて少なく、現在でも東京都の場合、日本の私立学校と比べてもおよそ20分の1の金額であるといいます。そんな中、歴史的に朝鮮民主主義人民共和国から教育援助費が送金されてきたのですが、現在はその規模自体が縮小しており高級学校がそこから受ける恩恵は極めて少ないといわれています。そもそも送金の事実は一貫して公開されてきたものであり、他の外国人外国人学校でも本国から支援を受けている場合が少なくないということも忘れてはならないでしょう。
 


 国際人権規約の自由権(B)規約委員会は、2008年に以下のように日本政府に勧告しています。

①朝鮮学校に対する国の補助金を増大させること
②朝鮮学校への寄付を行う者に他の学校に寄付を行なう者と同じ財政的な利益(免税や税金控除)を与えること
③朝鮮学校の卒業証書を直接大学入学資格として認めること

 同様のことは国連の他の委員会や日弁連がしばしば「重大な人権侵害」「学習権の侵害」として日本政府へ是正勧告を行っています。3月16日現在も、国連の人種差別撤廃委員会が報告書において朝鮮学校除外に対する懸念を表明すると報道されました。



 民主党は、政策集や「高校無償化法案」においても、「すべて者に教育の権利を保障する」国際人権A規約13条を理念として掲げています。しかし、拉致担当相のたった一言で除外へと舵が切られ、政府(民主党)内で何の議論や反対も起こらないのは極めて異常というしかありません。国際化の中、外国人参政権や「東アジア共同体」を謳う民主党政権が、朝鮮学校と北朝鮮・拉致問題を容易にリンクさせ、それをバッシングの対象とする事態は自民党政権時代となんら変わらないどころか、普天間基地移設問題と同様マニフェスト違反をしようとしている点でさらに問題だといえるでしょう。



 わたしたちセイピースは「新しい歴史教育」プロジェクト(http://www.saypeace.org/actve/index-rekisikyouiku.html参照)において、「証言聞き取り・保存」事業を展開しています。そこでは、在日コリアンの方から朝鮮学校の歴史的背景や現状などの具体的な話を直接うかがう機会も同世代の若者に提供しています。また、日々の活動では、東アジア近現代史の学習を中心に、フィールドワークやドキュメンタリー映画『ウリハッキョ』(http://sengosekinin.peacefully.jp/book/book/mv_urihakkyo.html参照)などから朝鮮学校についても学習を重ねています。実際には、不当な除外理由とは異なり、朝鮮学校についてとても簡単に知ることが出来るのです。「万人に教育の機会を保障する」という国際社会では当たり前のことが、現在の日本においても実現されていない現状にたいして、セイピースもこのプロジェクトをさらに発展させることで何らかの改善策・提言を追求していきたいと考えています。

 また、喫緊の課題としては、核軍縮ワーキングチームや普天間基地移設問題と同様に、他団体と協力して学生署名活動を予定しています。興味をもたれた方はぜひご連絡ください。

【連絡先】
MAIL:mail@saypeace.org
TEL/FAX:03-6802-4231

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