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【ニュース紹介】「新しい在留管理制度」がスタート

2012年07月15日 | ニュース紹介
 外国人の法的、行政的取り扱いを規定する在留管理制度が新しくなり、7月9日から始まっています。

「在留管理:新制度スタート 「カード」を交付」(毎日新聞、7月9日)
 3カ月以内の短期滞在者などを除く外国人正規滞在者(中長期在留者)に「在留カード」を交付する「新しい在留管理制度」が9日、スタートした。同日早朝、羽田空港(東京都大田区)の入国審査場では、米国籍の男性が同制度で初の在留カードを手にした。
 羽田空港では、8日深夜から法務省入国管理局の担当者らが新制度への移行に向けて待機。日付が9日に変わると、入国審査ゲート上の看板の表示を新しくする作業を行い、カード交付用窓口の表示を「中長期在留外国人」に変えた。
 9日午前4時半過ぎ、米ロサンゼルスからの航空機に搭乗していたうち2人が初めて在留カードの交付手続きを実施。第1号の取得者となった米テネシー州のカルロス・ショーさん(37)は「山形の小中学校で英語を教えるため、初めて日本に来た。今日から在留管理制度が新しくなることは知らなかったので、第1号だと聞いて、とてもラッキーな気分だ」と驚いていた。
 新制度の導入により外国人登録証が失効するため、既に国内に滞在している中長期在留者は9日以降、在留カードへの切り替えを行うことになるが、不法滞在者は新制度の適用外で、カードを取得できない。


 2009年に行われた今回の制度改定は、戦後初の大改定だということができます。

 従来の在留管理制度は、①外国人の入国や在留期間更新を管理する出入国管理法(入管法)上の在留管理と、②外国人の居住について、自治体レベルで管理を行う外国人登録法(外登法)上の外国人登録制度という、2つの柱からなっていました。
 それが今回、外登法が廃止されることによって二つの管理制度が新入管法に一元化されると同時に、新しく住民基本台帳システムと接続が行われることになりました。

 これによって、日本に滞在する外国人ひとりひとりの個人情報が一元化され、加えて、大学や企業に対しても情報提供を求めることができるなど、外国人に対する「管理」がいっそう強化されることになります
 また、個人情報を一元的に管理し、データマッチングを行うことは、日本国民には許されていません(最高裁判決平成20年3月6日 民集62-3-665)。プライバシー権の観点から、大きな問題があります。

 他方、従来の管理制度から国際的にも指摘されてきた、広範な義務規定と、それについての重い刑事罰は、継続されています
 たとえば、16歳以上の「中長期在留者」にあたる人々には、在留カードの常時携帯と、求められた場合の提示が義務付けられており、提示を拒否すると、1年以下の懲役または20万円以下の罰金(懲役刑が科されたら退去強制)、不携帯だと20万円以下の罰金が科せられます。また、住居地変更を届け出る義務もあり、変更から14日を超えると20万円以下の罰金が科され、90日を超えると在留資格が取り消されてしまいます(加えて、住民基本台帳法による5万円以下の過料も取られます)。

 さらに、超過滞在者や難民申請者など、「非正規滞在者」とされる人々が、行政サービスから排除されてしまうおそれが指摘されます。
 従来は、入管法による在留資格を持っていない人々でも、自治体で外国人登録をし、外国人登録証を取得することによって、問題なく行政サービスを受けることができていました。しかし、管理制度の一元化によって、在留資格のない人々は在留カードを得ることができなくなったため、行政サービスが受けられなくなるのではないかという心配がなされました。

 これについては、総務省から各省庁に向けて、「今回の住基法改正によって、こうした行政サービスの対象が変更されることはないと認識して」いるが、「当該行政サービスの根拠法等の趣旨・目的を踏まえ、」「行政上の便益を受けられることとなるようにするとの観点から」検討を加えたうえ、「必要な措置を講ずること」を求める通知が出されています(法務省自治行政局外国人住民基本台帳室長通知、総行外第20号、平成23年11月11日付)。

 しかし、なおも現場レベルでの混乱、トラブルが予想されています(「外国人登録 あすから新制度」(中日新聞、7月8日)「在留管理制度:新制度スタート 不法滞在者ら、自治体でサービスに差 /群馬」(毎日新聞、7月10日))。もっとも、基本的人権の享受は、国籍や在留資格に左右されない普遍的なものであるという観点から考えられなければなりません。

 以上、新しい在留管理制度の問題点を指摘してきましたが、ここに挙げたものはその一端にすぎません。
 また、そもそも制度自体が、窓口となる自治体の職員や、制度の対象となる人々にさえ周知されていないということも大きな問題となっています。ここには、日本の外国人政策が外国人を「管理」の対象としかみなさない思想が底流しているといえるでしょう。

 同じ社会に生きるものとして「共生」するための運営、実践と、根本的に新しい制度設計が求められています。

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