向かいの棟1階にS君はいる。
団地住まいは私達と同じ位の長さで、S君は私より5歳位年下かな・・
昔亡くなった奥様と私の妻が女同士団地仲間で付き合っていた頃からの縁で・・
S君が赤帽ドライバーの仕事をしていた頃、私の仕事に巻き込んでしまって年上の私の仕事を10年程手伝って貰った時期も有った・・
その後、年上の奥様を亡くし、3年前には唯一の息子さんが脳梗塞で倒れ、永い看病生活の末に半年ほど前に亡くなられて・・
亡くなられた息子さんの葬儀には身内だけでする手筈で・・いや息子さんが病院で亡くなられたのを団地内で他の誰にも知らせずにいたらしいのだが・・
隣り棟2階の私の妻が気配を知って・・
団地近くの葬儀場で行われた身内だけの葬儀にも私達夫婦だけが参列して・・
その後、一人暮らしのS君・・
時々窓越しに自転車で買い物に出掛けたりする姿を見掛けて・・
「Sくん元気のようだな~」「あ~そうみたいね~」と安心したり・・
散歩の途中でバッタリ出会えば・・「自転車で買い物?・・変わりない?・・」「え~何とか・・リハビリ行ったり・・でもしんどいですわ・・アチコチ膝も痛くて・・ゆっくりゆっくりですわ・・」「ま~お互い元気で・・」
男同士だと何も会話が続かない?でも毎日元気で過ごしている事の確認ができて・・
帰ってから「S君に会ったよ・・ウン元気そうだった・・」「良かったね~、私もここ何日もお家に気配が無かったり、夜灯りが点いていなかったりで心配していたのよ・・良かった・・」
そのS君が四日ほど前の午後突然我が家に来てくれたのです。
団地の狭い玄関先で
「田舎から野菜を送られて来たんだけど・・とても食べきれない量なのでお裾分けに・・それと家で採れたブルーベリーも少しだけど・・」
S君の大きな声で玄関に出た私「ま~上がれや・・」妻も「そうよ折角来たのだから上がってよ・・」「でも~・・・そうですか・・それじゃチョッとだけ・・」躊躇するS君を無理やり座敷の方へ促した私ですが・・
振り返ってドアを閉めようとして・・何故かモタモタ?「家と反対にノブが付いているから・・」そうか部屋の構造が反対になっているのだ・・S君の家は入り口の左側に・・我が家は右側に・・ノブもドアも屋内の部屋位置も大きさは同じでも全て逆になっている・・
戸惑うS君は苦笑い、私達も大笑い「成程ね~・・」
他人様の家に訪問するのも、訪問されるのも滅多にない団地の人々ですが・・
さて、膝の悪いらしいS君を6畳の座敷に招き入れた私達ですが・・・・
「もう1回分有るかな・・」「そうか昨日ブルーベリー買って来なかったので助かったな~」ゴチソウサマ