11人の侍

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“興味深い痛手“ 松井の出場停止

2008年09月09日 21時45分10秒 | サッカー
イビチャ・オシム前日本代表監督が2007年アジアカップで実践したアジア各国との戦い方は、セオリーとして日本サッカーに定着したようだ。

酷暑での戦いの際には、ポゼッションに力を注ぎ、ボールと相手を動かす一方で、自身の体力の消耗を極力抑える。
日本代表を率いる岡田武史監督は、ワールドカップアジア最終予選バーレーンとの一戦で、オシムさんよりもさらに多くの技巧型の選手を起用した。

中盤を構成した中村俊輔、松井大輔、遠藤保仁、長谷部誠の4人はいずれもポゼッション志向で、ドリブルが得意な田中達也と玉田圭司のツートップ、ディフェンダーの田中マルクス闘莉王や阿部勇樹も含めて、ボール保持の技術はおそらく歴代のどの日本代表チームよりも優れている。

阿部や稲本潤一、今野泰幸のような強さのある選手を中盤に欠くことに対する心配があったが、オーストラリアやイラン、そしてウズベキスタンあたりと比べると細身の選手が多いバーレーン相手では、杞憂に終わった。

日本は技術を活かして試合展開を完全にコントロール。とくに玉田と田中は数多くのFKを獲得して、中村や遠藤に活躍の場をお膳立てした。玉田はいずれもセットプレーからあげた最初の2点に絡み、田中は大げさなダイビングでバーレーン人を退場に追いやっている。

ツートップを組んだのがこの小柄なふたりだったことを考えると、左サイドバックに阿部を起用したことは利に適っていた。
阿部は左足でクロスを上げることができないが(一度トライしてみたが、あさっての方向に飛んでいった)、最前線にいるのが田中と玉田ではそもそもクロスを上げる必要がない。

阿部の役割はバーレーンの右サイドを完璧に封じることだった。センターバックを任されるほど対人プレーに強く、空中戦でも大いに力を発揮する阿部がいることで、バーレーンはこのサイドからの攻撃の糸口が見出せなかった。

左サイドバックの攻め上がりは日本の伝統的な特徴だが、最近の代表でこのスペースを突くのはウインガーの松井の役目になっている。本来MFの阿部は、攻撃面では松井のサポートができれば十分だった。自身満々の風情でトリッキーな足技を連発する松井は、バーレーンにとって非常にやっかいな存在だった。

その松井は累積警告により、10月15日に埼玉で行われるウズベキスタン戦に出場できない。イエローカードを受けたファウルは大した接触ではなかったから、松井としては不運な出場停止だろう。日本にとっても彼の出場停止は痛い。

しかし岡田采配を観察するという意味では、この出場停止は非常に興味深い。
松井の不在により、岡田監督は左サイドから攻撃する他の術を見つけなければならなくなったからだ。

サイドバックに駒野友一を起用する手があるが、彼の適正ポジションはあくまで右。
長友佑都にしても同様で、右ならともかく、左サイドバックとして日本代表のレベルにあるとは思えない。個人的には同じく右利きながらも左足で鋭いクロスをあげる安田理大を推したいが、岡田監督は守備面のリスクを好まないだろう。

左サイドバックの選択肢が限られている以上、岡田監督は引き続き阿部をこのポジションで起用する可能性もある。その際はサイドアタックを期待してはいけない。前方に松井の役割をこなせるMFが必要だ。

ただし、前述したとおりウズベキスタンは体格に優れたチームで、中盤のセンターラインにフィジカルな選手を欠くことに対する危険度は、バーレーン戦よりも確実に増すはずだ。
稲本がフィットしないようであれば、阿部をこのポジションで起用する必要があるかもしれない。

ウズベキスタン戦では阿部のプレイするポジションが鍵を握ることになりそうだ。