11人の侍

「生きている間に日本がワールドカップを掲げる瞬間をみたい」ひとたちの為のブログ

日本チームが欠いていた真剣を携える侍

2008年08月27日 21時49分23秒 | サッカー
未来のサッカーはバスケットボール選手さながらの巨人が集まるスポーツになっているに違いない。こんな予測に少し綻びが生じ始めている。

EURO2008を制したスペイン、北京オリンピックで金メダルを獲得したアルゼンチンはいずれも小柄なチームで、170センチに満たない選手さえ見受けられる。
両チームが頂点に立ったという事実は、日本サッカー界にとっては明るい兆しといえるかもしれない。

しかし忘れてはいけないのは、彼らが小柄なチームの特徴として良く挙げられがちな機動力やスキルによって勝機を見出しているのではなく、火傷するかのような獰猛な灯りを目に宿らせてプレイするという事実だろう。

彼らはその荒々しさと勇猛さによって体格のハンデを帳消しにしている。

例えば、ブラジル生まれのスペイン代表マルコス・セナは、EURO決勝で巨躯のドイツ主将ミヒャエル・バラックをノックアウトしてしまった。
バラックを流血させた頭突きが意図的だったとは言わないが、少なくとも威嚇の役目を十分に果たしたことは記しておく必要がある。
この決勝ではバラックの持ち味のひとつである荒っぽいプレイが鳴りを潜めたからだ。

一方のアルゼンチンに到ってはアグレッシヴネスこそが最大の武器であり、その荒々しさときたら餌食になった対戦相手が"獣"呼ばわりするほどだ。
同じくドイツと対戦した2006年のワールドカップでは、序盤から格闘技と見間違うほどの荒業の応酬となった。

ドイツと対戦ではいつも心身の強さが試される。
ゆえにドイツは日本が最も苦手とするタイプの相手だ。

ホームで手も足も出ない惨敗を喫したこともあったし、ドイツワールドカップ前のテストマッチでは加地亮が骨折の憂いき目にあった。
日本チームはこの加地への暴行に対して抗議することもなく、ましてや報復するでもなく、ただ見て見ぬ振りをした挙句、2失点を献上して勝ち試合を追いつかれた。

8月20日に札幌で行われたウルグアイとの一戦で起きたことは、これとよく似ているように思う。

ウルグアイ戦は親善試合らしく友好的に進んでいたが、後半に小野伸二が見舞った背後からのタックルによりウルグアイのディエゴ・ペレスが激昂。掴み掛からんばかりに怒りを表現したことで、ウルグアイチームのスイッチが入ってしまった。

そして僕の目には、この揉み合いの後から日本チームが完全に縮み上がってしまったように思えた。

事実、日本はそのわずか数分後に、日本の先制ゴールを挙げたセバスティアン・エグレンに易々と汚名返上のゴールを許すと、その後はそれまでの緊迫した展開が嘘のように一方的に失点を喫している。

僕はこの試合を観ながらドイツワールドカップのときとまったく同じ感想を持った。

「闘莉王がいれば、もう少しなんとかなったかもしれない」

アジア王者の浦和レッズにしても同様だけど、田中マルクス闘莉王を欠いたチームは明らかに弱くなる。
ブラジル生まれのセンターバックはこれまで長く過小評価され続けてきたし、いまもその評価が十分なものだとは思わない。

闘莉王はスペイン人やアルゼンチン人と同様に、火傷するかのような獰猛な灯りを目に宿らせてプレイする。
彼はドイツワールドカップでプレイするべきだった。

そして腕章を巻いて北京五輪でプレイするべきだったのだ。