「柔よく豪を制す」
日本のサポーターが掲げる横断幕に目がとまった。確かに、大柄な選手を数多く擁すフィジカルなオーストラリア代表に対し、小柄な日本代表が精密な技術を駆使して主導権を握るという図式はイメージするに心地よい。
しかし、実際のピッチでは、その認識がまったく正しくないことが証明された。
日本は我々が考えているほど技術に秀でたチームではない。トラップやショートパスなどの、ごく基本的な技術で細かいミスが多すぎるのだ。とくに相手からプレッシャーをかけられると簡単にボールを浮かせてしまうのは考えものだ。日本サッカーの特徴はパス回しにあるとする評論家は多いけれど、僕はとても素直に頷くことはできない。
フィジカルで劣る日本がパス回しに活路を見出すのは理にかなっていると思うけれど、細かいミスが少ない中村俊輔や遠藤保仁のような選手をもっと増やさないと、とてもではないがワールドカップを勝ち抜くことはできないだろう。また、パススピードにも大幅な改善の余地がある。接触プレイを極限まで避けるため、少なくとも現在の倍くらいは速いパスを意識する必要があるはずだ。
フィジカル面も致命的な欠陥を抱えている。日本は運動量を武器とすべきという意見は、これも正しいと思うけれど、この日の試合では後半30分を過ぎると途端にオーストラリアのフィジカルに圧倒されるようになった。ドイツワールドカップの教訓はまったく活かされてはいない。あの試合と同様に、75分間、大柄な選手に圧力をかけ続けられたことで、日本代表はまたもや疲弊してしまったのだ。
欧州リーグで活躍する中村や、韓国代表のパク・チソンが証明しているように、運動量はアジア人選手が世界で戦ううえでの生命線となる。欧米やアフリカの選手と比べて体格で劣るアジアの選手は、少なくてもそのハンディキャップを補うだけの体力がなければならない。中村に代わって10番を背負った松井大輔は試合途中で足をつらせてしまったけれど、そんなことでは厳しい。
オーストラリアのようなレベルの高いチームとの真剣勝負は、厳しい現実を浮き彫りにする。ワールドカップのような最高峰の大会で戦うに相応しくない選手が、残酷なまでに目についてしまうのだ。この日の試合で明らかになったのは、それは長友佑都であり、橋本英郎であり、そしてマークしたティム・ケイヒルに2得点を許してしまった阿部勇樹だった。
まだ若い長友は、将来性のあるサイドバックかもしれない。しかしそれは彼が右サイドでプレイしたときに限る。歴史を振り返っても、ワールドカップの準決勝に到達したチームが、左足でボールを蹴れない選手をレフトバックに起用した例はない。また、ガンバ大阪の重鎮である橋本はクレバーな好選手だけど、代表チームのスタメンを張るに値する選手だとは思えない。少なくとも橋本が、ドイツのフランクフルトでプレイする稲本潤一よりも優れた選手ということはないだろう。
そして阿部。僕が思うに、阿部はセンターバックにコンバートされるようになって本来のレベルを落としたように思う。センターバックとしては屈強というには程遠い彼が、ガンバの山口智や鹿島アントラーズの岩政大樹を抑えて、代表のセンターバックをつとめるのはどうも腑に落ちない。かつて所属したジェフユナイテッド市原では毎シーズン10ゴール以上あげるボランチだったけど、センターバックを兼任するようになってから、持ち前の得点力はめっきりと影を潜めた。
一方で、この大一番でレベルの違いをみせつけた選手もいた。
前半40分、プレミアリーグでもトップレベルの選手として一目置かれるティム・ケイヒルの頭上から、信じられない打点でオーストラリア守備陣を陥落した田中マルクス闘莉王のことだ。193センチのジョシュア・ケネディを完封したうえで、攻撃面でも決定的な働きをしてみせたのだから驚く。ただし、後半に2発を返したケイヒルもさすが。このふたりはアジアではちょっとレベルが違う。現地で試合を観戦したオーストラリアの友人も、闘莉王に対して特別な感情を抱いたようだ。「真の侍」。試合後、彼は闘莉王をたった一言そう賞賛した。
さて、またしてもケイヒルに冷や水を浴びせられた日本は、これでアジアの盟主の座をオーストラリアに譲り渡した格好になる。グループAを首位で通過したオーストラリアに対し、勝ち点5、得失点差で6もの差をつけられた。これは紛れもない屈辱だ。
ちなみに、オーストラリアはワールドカップ本大会では、グループリーグを通過できるかどうかというレベルだと思われる。岡田監督が掲げる「ベスト4」という高い目標を、僕はたいへん結構なことだと好意的に捉えているけれど、現実は掲げる目標の大幅な修正を促している。
↓面白いと思ったら応援はこちら
日本のサポーターが掲げる横断幕に目がとまった。確かに、大柄な選手を数多く擁すフィジカルなオーストラリア代表に対し、小柄な日本代表が精密な技術を駆使して主導権を握るという図式はイメージするに心地よい。
しかし、実際のピッチでは、その認識がまったく正しくないことが証明された。
日本は我々が考えているほど技術に秀でたチームではない。トラップやショートパスなどの、ごく基本的な技術で細かいミスが多すぎるのだ。とくに相手からプレッシャーをかけられると簡単にボールを浮かせてしまうのは考えものだ。日本サッカーの特徴はパス回しにあるとする評論家は多いけれど、僕はとても素直に頷くことはできない。
フィジカルで劣る日本がパス回しに活路を見出すのは理にかなっていると思うけれど、細かいミスが少ない中村俊輔や遠藤保仁のような選手をもっと増やさないと、とてもではないがワールドカップを勝ち抜くことはできないだろう。また、パススピードにも大幅な改善の余地がある。接触プレイを極限まで避けるため、少なくとも現在の倍くらいは速いパスを意識する必要があるはずだ。
フィジカル面も致命的な欠陥を抱えている。日本は運動量を武器とすべきという意見は、これも正しいと思うけれど、この日の試合では後半30分を過ぎると途端にオーストラリアのフィジカルに圧倒されるようになった。ドイツワールドカップの教訓はまったく活かされてはいない。あの試合と同様に、75分間、大柄な選手に圧力をかけ続けられたことで、日本代表はまたもや疲弊してしまったのだ。
欧州リーグで活躍する中村や、韓国代表のパク・チソンが証明しているように、運動量はアジア人選手が世界で戦ううえでの生命線となる。欧米やアフリカの選手と比べて体格で劣るアジアの選手は、少なくてもそのハンディキャップを補うだけの体力がなければならない。中村に代わって10番を背負った松井大輔は試合途中で足をつらせてしまったけれど、そんなことでは厳しい。
オーストラリアのようなレベルの高いチームとの真剣勝負は、厳しい現実を浮き彫りにする。ワールドカップのような最高峰の大会で戦うに相応しくない選手が、残酷なまでに目についてしまうのだ。この日の試合で明らかになったのは、それは長友佑都であり、橋本英郎であり、そしてマークしたティム・ケイヒルに2得点を許してしまった阿部勇樹だった。
まだ若い長友は、将来性のあるサイドバックかもしれない。しかしそれは彼が右サイドでプレイしたときに限る。歴史を振り返っても、ワールドカップの準決勝に到達したチームが、左足でボールを蹴れない選手をレフトバックに起用した例はない。また、ガンバ大阪の重鎮である橋本はクレバーな好選手だけど、代表チームのスタメンを張るに値する選手だとは思えない。少なくとも橋本が、ドイツのフランクフルトでプレイする稲本潤一よりも優れた選手ということはないだろう。
そして阿部。僕が思うに、阿部はセンターバックにコンバートされるようになって本来のレベルを落としたように思う。センターバックとしては屈強というには程遠い彼が、ガンバの山口智や鹿島アントラーズの岩政大樹を抑えて、代表のセンターバックをつとめるのはどうも腑に落ちない。かつて所属したジェフユナイテッド市原では毎シーズン10ゴール以上あげるボランチだったけど、センターバックを兼任するようになってから、持ち前の得点力はめっきりと影を潜めた。
一方で、この大一番でレベルの違いをみせつけた選手もいた。
前半40分、プレミアリーグでもトップレベルの選手として一目置かれるティム・ケイヒルの頭上から、信じられない打点でオーストラリア守備陣を陥落した田中マルクス闘莉王のことだ。193センチのジョシュア・ケネディを完封したうえで、攻撃面でも決定的な働きをしてみせたのだから驚く。ただし、後半に2発を返したケイヒルもさすが。このふたりはアジアではちょっとレベルが違う。現地で試合を観戦したオーストラリアの友人も、闘莉王に対して特別な感情を抱いたようだ。「真の侍」。試合後、彼は闘莉王をたった一言そう賞賛した。
さて、またしてもケイヒルに冷や水を浴びせられた日本は、これでアジアの盟主の座をオーストラリアに譲り渡した格好になる。グループAを首位で通過したオーストラリアに対し、勝ち点5、得失点差で6もの差をつけられた。これは紛れもない屈辱だ。
ちなみに、オーストラリアはワールドカップ本大会では、グループリーグを通過できるかどうかというレベルだと思われる。岡田監督が掲げる「ベスト4」という高い目標を、僕はたいへん結構なことだと好意的に捉えているけれど、現実は掲げる目標の大幅な修正を促している。
↓面白いと思ったら応援はこちら
まさか書いた本人からコメントが届くとは!
凄いな~!うれしいです。
毎度、おもしろいこと書いてる人がいるな、と思ってたんですが、同じグループの方だったんですね。こんど、スタジアムでみかけたら声かけてみます。
とても残念な結果でしたが、これからも共に日本サッカーを応援していきましょう。
今後ともよろしくお願いいたします。
現地で、「柔よく豪を制す」を掲げてた者です。
「柔よく豪を制す」で検索して、辿り着きました。
ちなみに、ドーハでの「カタールに勝ったる」、タシケントでの「ウズベキを討つべき」のゲーフラも、僕らが掲げてますw
試合結果があんなんだったので、きっと僕らのゲーフラも翌日の紙面では使われないんでしょうな。。