Sally's BLOG

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東京タワー/オカンとボクと、時々、オトン

2006-11-18 02:47:49 | 読書
「何でも知ってるつもりでも、ホントは知らないことがたくさんあるんだよ」

アニメ「おでんくん」の冒頭に流れる台詞。著者(リリーフランキー)によれば、この「おでんくん」と「東京タワー」のコンセプトはこのフレーズに集約されるらしい。

さて、この「東京タワー」、巷で話題になって久しい1冊。
著者リリーが何か一つのことを書き綴った、というのではなく、母親にまつわるエピソードと自分の内省を絡み合わせて、その時々の思いを書き連ねた、そんな物語。
元々、エッセイストという感の強い彼。初めのうちは文体が不安定で、ぎこちない気がして、恐る恐る読み進めるものの、ストーリーが進むにつれ多用される博多弁が何とも優しく、しっとりと心に沁みてくる。どんどんリリーの母親である「オカン」が光を放ち、結末(オカンの死)を知っているのに、それを意識の外に放り出したくなる。
天真爛漫なオカン。
何があっても決して挫けないオカン。
自分の人生を切り分けてでも、息子である「ボク」に注ぐ愛情は惜しまないオカン。
いつも前向きなオカン。
それは、主人公「ボク」も、オカンの連れ合いである「オトン」でさえも信じて疑わない、「オカン」その人だ。

(このあと一区画ネタバレ)
そんなオカンが、死の数日前、病の苦しみに耐えかねて見せた姿、「もう死にゃぁええ(もう死んでしまいたい)」と口にするその瞬間、「ボク」の受けた衝撃が、コンセプト「何でも知ってるつもりでも・・・」に繋がるのだろう。
息子の「ボク」も、夫の「オトン」も知らない「オカンの真実」。
すべてを知っているつもりでも、見えているのはやはり一面であり、見えない「真実」にこそ、敬意を払うべきなのかもしれない。

この大筋とは別に、この本の中にちりばめられた言葉達が私に響いた。
「完全でなければ、すべて偽者だ。永遠でなければ、すべてが幻覚だ。しかし、永遠たるものが、この世にはひとつもない。」
リリーの人生観なのだろう。私自身も、ある意味真実だと思う。
しかし人間はその「永遠」を求めて「家庭」を築こうとするのだろう、彼の言うところの「親子関係以上の美しく確かなる関係」を求めて。苦悩し、落胆し、失望し、それでも求め、同じ思いを繰り返す -ぐるぐる ぐるぐる- それが人生なのだ。
そして、永遠であるかに思えた唯一のもの、母親の愛情も「オカン」の死と共に失われる。
オカンの死後、親交のあった松田美由紀がリリーにかけた言葉が印象的だ。
「寂しいだろうけど、男は母親が死んでからやっと一人前になんのよ」

リリーは一人前になれただろうか?

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