Sally's BLOG

写真、映画、アロマ、英語、料理、etc. 好きなこと、いろいろ。
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生きる意味、生きた証(「嫌われ松子の一生」)

2006-10-22 23:51:00 | 読書
初めてこの小説を手にしたのは、2年ほど前だったか、他の目的で書店を物色していたときだった。そのときには映画化が既に決定していたのだが、全くその内容も何も知らず、帯に書かれたあらすじを読んで、余りの陰鬱さに書棚に戻してしまったのだった。栄光の優等生生活から転落の一途をたどり、結末「殺害される」という人生、想像するだけで寒気がした。
あきれから2年、何かに吸い寄せられるようにこの本を手に取り、読み始めることになった。いつものことだが、自分に必要な答えをもたらす本に出会うときが、それである。
物語はヒロイン川尻松子と、その甥、川尻笙、二人の視点から交互に語り手を変えて展開される。冒頭で松子が何者かにより殺害され、それをきっかけに、松子の存在さえ知らなかった甥、笙が彼女の人生の糸を手繰り寄せることで、人間としての成長を手にする、そんな話。映画化され、テレビ化され、余りに有名なストーリーなので、ここで明かしても問題は無いと思うが、敢えてそれさえも知りたくない、帯のあらすじも読まない、と仰る方は以下は読まれませぬよう・・・。

川尻笙は典型的な今どきの大学生。確固とした目的は持たず、漫然と日々を暮らし、面倒なことは深く追求しない、そうして漠然と毎日が過ぎていく、それが当然だったはず。そこへ存在すら知らなかった伯母、川尻松子が殺害されたと知らされ、その伯母の一生の軌跡をたどるうちに、伯母松子に対する共感、葛藤、慕情、さまざまな感情を胸に、人間の情の不可解さ、愛の偉大さ、尊い命の存在を感覚として、追体験として、手にしていく過程が描かれている。そして、そのすべては未だ自分には未知の道程であり、この先自分に起こることは予測不可能で、伯母松子に起こったすべての不幸は、とりもなおさず自分にも起こるかもしれない危険性に満ちていることを実感するものでもあった。
松子に起こった不幸の原因は、おそらくすべて、彼女の人生に対する姿勢に帰属するもので、デフォルメこそされているが、(私自身を含めて)おおいに一般的な日本女性のそれと似通っているのだ。
「周囲に評価されることで、自分の存在を確認する」
親に認めてもらう、恋人に受け入れてもらう、職場で評価される、いずれも大きな喜びにつながるだろう。が、ここに「自分なりのビジョン」と言う要素が加わることで、評価されるべき対象、事態を取捨選択でき、「言いたい奴には言わせておけ」的な開き直りが生まれるのだが、松子の場合、この「人生のビジョン」が欠けていた・・・。
その「欠点」を差し引いて考えても、松子は素晴らしい女性であり、情の深さ、決断力、熱心さ、直感のシンプルさ、どれをとっても魅力的な人間である。
愛によってすべてを許し、自分を必要としてくれる人間の存在を求め、自分の生きる意味を求め続けた女性、それが松子なのだ。
「私を理解して欲しい、認めて欲しい」と願いつつ一生を終えた松子。
その人生を丁寧に紐解いて、自分の人生を真摯に見つめ始めた笙。
同じ時間を過ごしはしなかったけれど、この伯母と甥の関係が松子の「生きた意味」なのかもしれない。
命が尽きた後、その人生が他の誰かの心で蘇り、且つ生き続ける、素晴らしいことだと思う。

ことり・・・ありがとう、私の為に泣いてくれて。もういいのよ、私は幸せだから。


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1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
生きることの意味は? (風の又四郎)
2006-10-23 22:27:23
はじめまして。

お邪魔でしたらごめんなさい・・・・・。



もう10月下旬になり、日毎に秋が深まり、北海道では雪虫が

飛んでいますので、初雪も近い季節になりました。

晩秋から初冬の季節は人生の哀愁とか「孤独」を感じさせる

季節ですね・・。



ところで、

人はどこから来て

何のために生きて

どこへ向かっているのでしょうか・・・?。

この世界の終末はどうなるのでしょうか・・・?



神の存在、愛とは何か、人生の意味は何か、いのちと死の

問題などについて、ブログで分かりやすく聖書の福音を書き

綴っています。ひまなときにご訪問下さい。

お待ちしています。



人は何のために生きているのでしょうか?



●「わたしの目には、あなたは高価で尊い。わたしはあなたを

 愛している。」(聖書:イザヤ書43:4)。



●「すべて、疲れた人、重荷を負っている人は、わたしのところ

に来なさい。わたしがあなたがたを休ませてあげます。」

                   (マタイの福音書11:28)。



●「彼(キリスト)はいたんだ葦を折ることもなく、くすぶる燈心を

消すこともない。」(マタイの福音書12:20)。



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