とはずがたり

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前立腺癌骨転移におけるTGF-βの役割

2020-03-13 17:24:42 | 癌・腫瘍
抗CTLA4抗体や抗PD-1などの免疫チェックポイント療法(Immune checkpoint therapy, ICT)は様々な腫瘍に対して有効性が示されていますが、転移性去勢抵抗性前立腺癌(metastatic castration-resistant prostate cancer, mCARC)に対する抗CTLA4抗体ipilimumabの有効性を検証した第2相臨床試験では、骨転移を生じた前立腺癌に対する有効性が極めて低い(骨転移ありでは4%、なしでは18%)ことが報告されています。興味深いことに骨外転移に対してはICTは有効であることも分かっています。本論文で著者らは、前立腺癌が転移した部位の骨髄ではTGF-β1が高濃度に存在し、TGF-β1の産生に破骨細胞による骨吸収が関与していることを明らかにし、TGF-β1によって腫瘍組織内のTh1細胞の分化が阻害されており、細胞傷害性CD8 T細胞のクローン増大(clonal expansion)が不十分であることが免疫チェックポイント阻害薬の有効性が低い原因であることを報告しています。また抗CTLA4抗体と抗TGF-β抗体のコンビネーションはマウスのmCTRCモデルにおいてoverall survivalを高めることから、転移部位特異的な治療選択が必要な可能性があるとしています。 
Cell. 2019 Nov 14;179(5):1177-1190.e13. doi: 10.1016/j.cell.2019.10.029.
Differences in Tumor Microenvironment Dictate T Helper Lineage Polarization and Response to Immune Checkpoint Therapy.


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