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表皮プロテインC受容体が抗リン脂質抗体症候群の病態に関与する

2021-03-12 09:42:27 | 免疫・リウマチ
抗カルジオリピン抗体 (aCL)や抗β2GPI抗体などの抗リン脂質抗体 (aPLs)の出現を特徴とする抗リン脂質抗体症候群 (APS)患者は、臨床的に動・静脈の血栓症、血小板減少症、習慣流産・死産・子宮内胎児死亡などを呈する難病で、原発性APSとともに、全身性エリテマトーデス (SLE)などの自己免疫疾患にしばしば合併することが知られています。APSにおける凝固亢進のメカニズムには不明な点が多く、aPLsがどのような抗原を認識するのかについての理解も進んでいないことが、APS治療法開発が進まない原因となっています。この論文で著者らは、endothelial protein C receptor (EPCR)がaPLsの標的となり、APSの病態に重要な役割を果たすことを明らかにしました。
EPCRは内皮細胞、骨髄細胞、胎盤のtrophoblastなどに発現が見られるCD1d様膜貫通糖タンパクであり、リン脂質と強固に結合します。正常状態ではホスファチジルコリンと結合したEPCRは抗凝固因子であるprotein Cを活性化しますが、EPCRは凝固開始因子tissue factor (TF)によるprotease-activated receptor 2 (PAR2)活性化にも関与し、TLR4の下流でtype I interferon (IFN) responseを誘導することも知られており、抗凝固のみならず凝固亢進、自己免疫反応にも関与する可能性が示されています。
主としてlate endsomeに発現するlysophosphatidic acid (LBPA)はEPCRと反応して複合体 (EPCR-LBPA)を形成することが知られていますが、著者らはaPLsがEPCR-LBPAを認識し、EPCR依存的にendosomeに輸送され、TLR7/8活性化を介してtype I IFN resposnseを誘導して組織炎症、凝固亢進、胎児死亡を誘導すること、そしてB1a細胞活性化によってaPLsの産生を促進することを明らかにしました。抗体によってEPCR-LBPA抑制、あるいは遺伝的にEPCRを欠損させることによりAPSモデルマウスの凝固亢進は抑制されました。またSLEモデルマウスにおけるaPLs産生もEPCR-LBPA抗体によって抑制されました。
これらの結果は、aPLsによるEPCR-LBPAの活性化がAPSのみならずSLEの病態に重要な役割を果たす可能性を示しています。新型コロナウイルス感染症においてもaPLsの出現と凝固亢進が報告されており、この病態におけるEPCR-LBPAの関与にも興味がもたれます。
Nadine Müller-Calleja et al., 
Lipid presentation by the protein C receptor links coagulation with autoimmunity.
Science  12 Mar 2021: Vol. 371, Issue 6534, eabc0956 DOI: 10.1126/science.abc0956


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