とはずがたり

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中枢神経性のトレランスが炎症による自己傷害に対して重要な役割を果たす

2020-03-13 18:14:46 | 免疫・リウマチ
病原体に対する免疫反応は病原体を除去するのに重要な反応ですが、その過程で生じる炎症は自らの組織に対しても傷害性に働き、場合によっては個体の生命維持をも困難にする場合があります。この論文で著者らは、中枢神経性のトレランスが炎症による自己傷害に対して重要な役割を果たしていることを明らかにしました。TGF-βファミリーであるGDF(growth and differentiation factor)15は炎症によってさまざまな組織で発現誘導され、脳のarea postrema(最後野)に特異的に存在する受容体GFRAL(GDNF family receptor alpha like)に作用することによって交感神経系を活性化し、肝臓におけるtriglycerideを促進することで心筋や腎に対して保護的に働きます。GDF15ノックアウトマウスやGDF15抗体投与マウスはsepsisやLPS投与などによる致死率が高いのですが、ICUでも用いられるtriglyceride-rich parenteral supplementationの投与、あるいはrecombinant GDF15の投与によって生存率が有意に改善することも示されました。炎症による自己組織傷害を中枢神経が制御する仕組みが解明されたという点で、極めて重要な発見です。 
Cell. 2019 Aug 22;178(5):1231-1244.e11. doi: 10.1016/j.cell.2019.07.033. Epub 2019 Aug 8.
GDF15 Is an Inflammation-Induced Central Mediator of Tissue Tolerance.


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