とはずがたり

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唐辛子を食べると末梢血造血幹細胞が増えるかも?

2020-12-28 13:01:17 | 疼痛
悪性腫瘍に対する化学療法による造血障害対策として、一般的に自己末梢血幹細胞移植が行われます。これはあらかじめ自らの造血幹細胞(hematopoietic stem cell, HSC)を採取しておいて、化学療法後にこれを移植するというものです。HSCの採取においてHSCを骨髄から末梢血へと動員することが重要で、このために顆粒球増殖因子(granulocyte colony-stimulating factor, G-CSF)やplerixaforなどが用いられます。しかしこれらのみでは十分なHSCが確保できないこともあります。Albert Einstein College of MedicineのPaul Frenetteらのグループが発表したこの論文は、HSCの末梢への動員における侵害受容器(nociceptor)の重要性を明らかにした大変興味深いものです。
彼らはまず骨髄に存在する神経線維の多くがnociceptorであることを明らかにしました。骨髄におけるnociceptorを薬剤でブロックしたり、欠損させたりしてもHSCの数は変わりませんでしたが、G-CSFによる末梢への動員が著しく阻害されました。このようなnociceptorの作用は神経ペプチドであるcalcitonin-gene-related peptide(CGRP)を介していると考えられ、CGRP投与によってG-CSFやplerixaforによるHSCの末梢血への動員は促進されました。CGRPはHSC膜状のcalcitonin receptor-like(CALCRL)やreceptor activity modifying protein(RAMP)1発現を促進し、これらの分子をHSCにおいて欠損させると末梢血への動員が抑制されました。興味深いことに、マウスにnociceptorを活性化するcapsaicin(唐辛子の辛味成分)を豊富に含んだ食餌を与えるとHSCの動員は促進されました。臨床的に応用されればこれらの結果は末梢血造血幹細胞移植をより効率的に行う上で極めて重要な知見であると考えられます。CALCRL-RAMP1の刺激がどのようなメカニズムでHSCの動員を促進するかはわかっておらず今後の検討が必要です。
Gao, X., Zhang, D., Xu, C. et al. Nociceptive nerves regulate haematopoietic stem cell mobilization. Nature (2020). https://doi.org/10.1038/s41586-020-03057-y 


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