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今日も映画でまったり

ゲッベルスと私

2018-06-23 17:54:42 | 映画 2018
原題は「A German Life(あるドイツ人の人生)」です。

ナチス政権の国民啓蒙・宣伝相ヨーゼフ・ゲッベルスの秘書を務めた、
ブルンヒルデ・ポムゼルが69年の沈黙を破り、
初めてインタビューに応じたドキュメンタリー映画。
撮影当時103歳でした。
ポムゼルはその後、2017年の1月に106歳で亡くなっています。

1942年から終戦までの3年間、
ポムゼルはゲッベルスの秘書としてナチス宣伝省で働いていました。
近代史上最悪の戦争犯罪者のひとりであるゲッベルスに、
誰よりも近くにいた彼女の30時間に及ぶ独白を通し、
戦争における人道の危機や抑圧された全体主義下のドイツで、
恐怖とともにその時代を生きた人々の姿を浮かび上がらせています。
ポムゼルが淡々と独白してゆくその合間には、
当時の資料映像が挟まれていきます。
後半では当時の強制収容所の映像が次から次へと。
かなりショックな映像です。 
米国ホロコースト記念博物館に所蔵されているもので、
「 編集、カラー化していないオリジナルの素材」で「世界初公開」
というのを基準に使用しているとか。
各国のプロパガンダ映像でもあるため、
「 映画に意図的なカラーをつけないように、
使用している映像には『いつ、どこで、誰がつくったのか』
というラベルを貼っただけ。
それ以上説明してしまえば、思考が入ってしまう。
あくまでニュートラルにしたかったんだ」
と監督のひとりバイゲンサマーは言ってます。

「 なにも知らなかった、私に罪はない」
「 ドイツ国民全体に罪があるなら私にも罪がある」
「 ドイツ全体が強制収容所だった」
「 あの時代にナチスに反旗を翻せた人はいない」
「 ホロコーストについては知らなかった」
「 自分は与えられることを、きちんとこなしたかった」
「 いまの若い人たちは、もし自分があの場にいたら、ユダヤ人を助けた、
と言う。でも、彼らも私たちと、同じことをしていたと思う」 

そんな言葉をポツポツと呟きながら、
ポムゼルは子供時代からの自分の人生をも語っています。
当時は当り前だったというドイツの家庭の躾けの厳しさ、
恐ろしかった厳格な父親。
そんな環境が当時の自分を形作っていたとも。
ユダヤ人女性の友達の話もしていました。
就職のためにナチ党員になり、放送局で働き始めて、
その後ゲッベルスの秘書となったポムゼル。
政治について深く考えなかった自分を、
「 私は浅はかだったかもしれないけど」
と何度も言いつつも、それが普通だったと言ってしまう、
そんな揺れる言動に、彼女のその後の何十年という人生を思ってしまいます。


監督クリスティアン・クレーネス
オーラフ・S・ミュラー
ローラント・シュロットホーファー
フロリアン・バイゲンザマー 
出演 ブルンヒルデ・ポムゼル
2018年6月公開







「なにも知らなかった 私に罪はない」
チラシのこの言葉を読んで、
この映画を観に行こう、と思いました。