「快走爛漫Ⅱ」

アウトドア大好き人間です。 (since2005.10) 

悪沢岳

2013年07月14日 14時26分42秒 | 山歩き

 「悪沢岳」

 その山は国土地理院地図には東岳となっているのでその呼称が普及しつつあるようだが、
 私たち古い登山者にとっては、 どうあっても悪沢岳であらねばならぬ。  

 読者にお願いしたいのはどうかこれを東岳と呼ばず、 悪沢岳という名で呼んでいただきたい。
 いったい東岳という平凡な名はいつ付けられたのであろう。 おそらく荒川岳の東方にある一峰と
 見なしたに違いない。 しかし荒川岳の続きと見るにはあまりにこの山は立派すぎる。
 南アルプスでは屈指の存在である。

                              深田久弥  「日本百名山」  より抜粋引用。

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 7/12(金) ~ 13(土)      金曜快晴欄漫、   土曜突風烈風大ガスガス雷至れり尽くせりチョー危険。


 93座目。    悪沢岳に登ってきました。

 海の日週間です。   というわけで待望の念願の  “南アルプス南部大縦走”  に行ってきました!

 って、 二日目大荒れの天候でこの先突っ込んでも天候回復の兆しはなく、 また南アのド真ん中に入って行って
 数日間退避していてもアレなんで今回は潔く二日目で敗退しました。 それでも下調べもでき次回へつながる山行となった。   
 今まで深すぎて行くのに躊躇していたが、 今回行ってみてその懐の深さを初めて知って虜になってしまいました。


 7/11(木)  

  退社後いったん家に戻り風呂食事後 畑薙ダム目指し21時出発。
 
  佐野IC → 首都高、東名・新東名 → 新静岡IC → 県27、県60で井川 → 真夜中2時 畑薙第一ダム着、 仮眠。
  (真夜中の狭い狭い1車線の林道を70km、2時間。 夜中の山道走りが好きなボクでもあの道は少々ビビッタぜ)


 7/12(金)

  明けた金曜快晴!  3時間の仮眠から目覚め準備後 8時出発のバスに乗り登山口の椹島 (サワラジマ) へ。

 一般車は畑薙第一ダムまでで、 その先は東海フォレスト会社の送迎バスの乗り登山口がある椹島へ行く。
 前金3000円を支払い山中にいくつかある山小屋に泊り、下山時その領収書を運転手に見せれば帰りのバスに乗せてもらえる仕組み。
 たぶん全国にある山行バスの中にあって ここが一番奥地で交通の便は悪いと思う。  南アは本当に深く厳しい。

 なので余計に南アルプスは憧れの山域だ。      (行ってみればその奥さにビックリするだろう)

 9時到着、 準備後本日の宿泊地である千枚小屋目指し出発。
 

 快晴です。
 

 Pから林道を少し行った所に本当の登山口がある。
 

 ゆらーり~    ゆ~るりららー♪ 
 

 ここから遠くに悪沢岳が見える。
   

 急登が続き額からドッと汗が流れてくる。
 

 小石下、 トラバース路を過ぎ足もパンパンになる頃水場に到着。

 頭から水をかぶり、  そして思い切り飲み、  持参のプラスティバの水を入れ替えた。
 

 気持ちのいいしらびそ林。    ここは全編風が抜け涼しく気持ちよかった。
 

 6時間かけて本日の宿泊地、 千枚小屋着。 
 

 ※バスで支払った3,000円を宿泊代に充当し、 その他差額を現金で支払う。
  ボクの場合食事なし(自炊)、 寝具持ち込みだったので、 4,500円-3,000円=1,500円で泊れた。 

 千枚小屋本館は食事付きの登山者用だった。    で、 ボクのようなシュラフ持参自炊組は別棟の小屋を案内された。

 そう、  千枚から大分格下げされた、  “百枚小屋”  である。  (爆) 
 

 これはどうみても非難小屋に近い印象だ。     が、 雨風凌げて万全、 とも言える。   (んんっ?) 
 

 別にこれで十分さね。 

 で、、、  お約束、     お疲れしたー!    
 

 富士山 眺めながら一人乾杯♪

 ここまで大汗かいて登ってきた苦労が報われる瞬間、  極上の居酒屋ここにあり。     

 

 この時間から 後ろ側で見えない悪沢岳から吹き下りてくる風がスゴク強くなってきた。
 寒いので小屋に入り二次会開始。

 地図を眺めながら明日からのコース取りをアレコレと・・。     言いようもない至福のひと時。。
 

 向こうで休んでいる方とバイクの話題で大盛り上がり。

  
 話をするうちにどうやら同年代、 そしてお互い乗ってきたバイクの種類やその頃のバイクを即理解し合いヤンヤヤンヤ。

 
 (渋めなところでは、、  DAX、 シャーリー、 ミニトレ、 XE75、 DT1、 シルクロード、
  RD250/350、 CB250T、 サンパチ、 350F、 GS400、 TX650、  他・・)

 ※35年前の高校2年生。  ゾーはGS400に乗ってたね、 もう一人のゾーはZ400だった。  能登半島ツーに行ったね。

 ハイ、  戻って。


 そんなこんなの初日が終わりました。    明日晴れますように。。。

 夜半過ぎから強風が屋根を叩き始めた。    そんな音に幾度か目が覚め・・・。



 7/13(土)     大風強風烈風てやんでいな天気。

 ちーっス。        今日もよろしこ~    
 

 真正面の富士山は暁に萌えている。    

 がしかーし!       裏手の赤石岳山頂はどうかな。。

 じぇじぇじぇ。

 ラピュタ雲が・・    天気悪し。。    
 

 加古隆のパリは燃えているか。     じゃなかった、 ヤスの赤石は赤く燃えているようだ。  (爆) 

 「ヤベベ」    である。       厚い雲が右から左にスゴイ勢いで流れ頂上では渦を巻いている。

 本日のご予定は・・
 あそこの見える (雲でじぇんじぇん見えない) 赤石岳をクリアしその右手肩下にある百間洞 (ひゃっけんぼら) 
 小屋まで行く予定、、   なんだすよ。。       今夜はうんまいトンカツが待ってるぜ! 

 準備中も行く気を萎えさせるスゴイ風。   しばし様子見して出るのを遅らせた6時前出発。

 森林限界を過ぎた瞬間体を持っていかれそうな突風。 
 

 さっきより雲厚くなってね?    あの中へ突っ込むのか!?    昨年撤退した空木岳よりヒドイぞ。

 期待していた空中散歩と、 今が旬なキレイな花回廊は望めない。    

 ここで合羽を着込み暴風に備えた。   まずはすぐ上にある千枚岳へ。
 

 この先どうするか・・    撤退するにもとりあえず悪沢岳まで行って考えよう。
 

 ここは縦走のゴールデンコース。    前後見える範囲に他人がいるので比較的安心していられた。
 ただ、千枚岳後からは急峻なガレやザレ場始まり、 一歩間違えばガスで見えない深い谷に落ちてしまうので慎重に歩いた。 

 

 頂上直下のようだ。   こういう岩場は好きです。  面白くなってきました。
 

 オオ!!    見えるぞ、 見えるぞ。
 

 「悪沢岳」      (荒川岳)
 

 ここで昨夜同宿の人と再会しお互い熟考。

 彼はこの先の中岳非難小屋に泊ると。   ボクはこの先行っても天候回復の兆しは無しで予報では悪くなる一方。
 こんな暴風の中稜線歩いても期待していた景色は見られず危険この上ない。  ここから百間洞まで6時間以上、 ムリだな。


 「また次回のお楽しみにとっておこう」


  
 今回は荒川三山の一山しか登れなかった。    これは登った気にならない、 やり直しかな。    

 ということで次回への下調べと理解し即下山開始。   これにて偵察完了~ってことで・・。   (^^;

 帰り最終のバスは14時発。   なのでここから結構飛ばして降りました。    

 右下崖のトラ路を慎重に渡り、、
 

 ほぼ垂直なカベをよじ登り、、
 

 赤石岳と悪沢岳にお別れを言い、、、        (ここで雷鳴。  下山選択で正解だった)
 

 千枚小屋を後にし、、、 
 

 とっとと下り小石下と言う場所へ。   ここからあと少しで椹島ロッヂ。
 

 林道分岐ではこの天候の中大勢の人が登っていった。  皆さん限られた3連休、 とにかく上へ上へと行くのです。
 ボクはと言えば天候と相談し即撤退。  悪沢東岳登れただけでも良しとしよう。


 すれ違い時 数人に聞かれた。  
 「荒川小屋周辺の雪渓はアイゼン必要だったか」  とか、   「今日はどこから来たのか」   とか、、
 「いつから歩き始めたのか」   等々。。   (きっとボクが既に数日間かけて縦走して来たと思ったに違いない)

 今日が3連休の初日。   皆さん殆どの方が今日から登り始め3日間? かけて縦走するハズ。   
 ボクは毎年この時期、 駐車場、バスや山中の混雑を避けるため金曜休みを取って1日早く山に入ることにしている。

 ボクの回答は・・・     「ハイ、  昨日千枚小屋に入り  今日下山し帰ります」    と。


 これもひとつの山歩き、 全然悔しくはなかった。     むしろ次また来れる幸せの方が大きかった。 


  

 14時発の最終便を目的に降りてきたら なんと13時発のバスに間髪入れずに乗れた。  ラッキー♪
 (本当はここで1時間まったりも悪くないなと思っていたので思いもよらぬ早き展開に自分でも追いつかない状況)


 バスは当然ボク一人、 貸切です!     
 こんな時は運転手さんの後ろに陣取り道中いろいろと地元の話を聞きまくりました。    (^^v

 

 ゲートの鍵番号をどこからか聞き出して勝手に開けて沢に入ってしまう釣り師たち、
 自転車は自己責任 (黙認) で通れる、  この山域の始まりやその後の大倉財閥の森入り、
 当時財閥廃止の動きに伴い国からこの地域の山々を買わされた。 切った木は下の大井川に流し静岡市まで運んだ、
 そのうちにダムができ伐採した木の運搬に川が使えなくなる、 やがて大々的な運営は無くなり今は細々と伐採している。

 そして大倉社長の有名な大名登山、   頂上での風呂。
 (明治時代数百名引きつれて人夫に背負わせた籠に乗り2カ月以上かけて赤石岳登頂、 風呂桶も下から運ばせた)

 その名が今も残る大倉尾根だそう。    これは一度その尾根を歩かねば。 

  

 少し前聖沢で遭難した4人組釣り師の当時の行動や絶命した沢の場所、 その他いろいろと教えてもらった。   
 あのバスの小1時間の世間話し、 こんな山奥に来て久しぶりに人と会話したとても有意義でゆっくり
 休めたいい時間でした。     (無事故で下山でき安堵してたのも大きな要因だろう)

 別れ際渋い運転手さんに言われた、
   
 「バス乗り場で今日の営業開始日から、 井川の観光大使 (おばさん(笑)) が来ていて、
 おいしい井川茶を出してくれるから飲んで行きなさい」   と。

 
 
 バス待ちの人と情報交換、 おばちゃんとの会話。   のほんとしたムード漂ういい雰囲気。
 これから山に入る人、 帰る人(ボク)、  ここまで来る登山者は皆いい顔しているしモノホンが大井川。 (多い)

 山登り。    山を登るだけが山登りじゃない、 こういう地元の人とのふれあいも全部が全部山登りだ。

 “南アルプス南深部”    

 今までは深すぎてなかなか腰が重かったけど、 一度ここまで入ってみてそのスゴサや人の温かさに感動した。
 ここまで来る大変さ、 奥深さ全てが一発で好きになったよ。  この山域は山人生の中の定番所のひとつとしよう。

 この山域はちょこっと来てパッと制覇できるようなそんな簡単な山脈じゃない。  
 そう、 たぶん数年来かけてじっくり歩く山域なんだと思った。  

 「初回で制覇するなんて甘い、 また来いや」     と言われた気がしたよ。     

 華やかな北アと違ってここは限られた人、  南ア南深部に魅せられた人たちが幾度となく訪れる山域。

  

 ここまでスンゲー遠くて真夜中走行お化け出そうでチョー怖だけど、  近いうちにまた来るよ。 


 南アにハマリそ。   


 
 以上です!      


 (帰り東名が事故渋滞のため急遽御殿場ICで降り、 この前登った富士山横目に中央高速からいつもの道で帰りました)



  悪沢岳
 


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 山行を終えて・・。

 帰り、 井川周辺で もしや望月さんが走っているかも?  みたいな期待をしながら山道を走っていたら
 目の前に2人ランニングしている人がいた。 安全にと思いスピードを落としゆっくりその二人を追い越した。
 
 その時、 二人のうち前を走っている人がボクに軽く会釈してくれた。   
 その顔を見た瞬間 (通り過ぎるほんの一瞬) にその人のことがわかった。

 「望月将悟」      トランスジャパンアルプス優勝者。    ここ井川出身の消防士。

 この前NHKでやっていたのを見て顔を知った。  
 さっき入浴した白樺荘にも大きなポスターが貼ってあった。
 ここ井川集落の全住民が応援する偉大なトレラン者だ。

 ボクはハザードを付けて窓から手を振った、 そしたら望月さんも手を振ってくれたのをルームミラーに見た。

 大感動モノでした!!      (これホントの話です。    邪魔しちゃ悪いと思い写真は控えた)

 これもあってか あの山奥に突然現れる小さな集落の井川界隈や、 南アルプス南部地域が好きになりました。  再訪!

 http://www.tjar.jp/2012/athlete/07/





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